日本天才奇人伝③「日本最初の民主主義者・中江兆民―③第一回総選挙で当選、国会議員の惨状に「無血虫の陳列場」をすぐやめた
☆日本天才奇人伝③「国会開設、議会主義の理論
を紹介した日本最初の民主主義者・中江兆民―③
を紹介した日本最初の民主主義者・中江兆民―③
<明治24の第一回総選挙で当選したが、あきれ果てた国会議
員の惨状に「無血虫の陳列場」(国会)をすぐやめた>
員の惨状に「無血虫の陳列場」(国会)をすぐやめた>
前坂 俊之(ジャーナリスト)
明治十五年(一八八二)に土佐の赤岡海岸で、約二千人が集まって海南自由党の大懇親会が開かれた。この中で一際目立ったポロをまとい、頭には折笠をかぶり、腰にはミノをつけて走り回っている者がいた。
人々は不思議に思い、「狂人か、乞食か工と、よく見れば「今、ルソーの中江兆民」であった。ある時、自由民権の集会に兆民は印ハンテンに腹かけ、股引きという大工、左官と同じスタイルで登場して演説して、聴衆を驚かせた。農工商の身分意識差別は変わりなかった。「平等」「自由」「人権」などの概念は西欧語の翻訳語として入ったもの。「すべての人は平等である」という兆民の「平民主義」を、聴衆にわかるように行動で示したのである。
兆民は水浴びが大好き。ある夏、東京・新宿で、暑さにたまらず道端の大きな天水桶に飛び込んだ。人だかりができ、飛んできた警官が「道で水浴びして醜態をさらすのは犯罪にあたる」と命令した。
明治になっても、人々の士
「お前が言うのは裸のこと、私は裸ではない」と兆民は立ち上がり、衣服のままを見せてもう一度、首までつかった。警官は立ち去った。
明治二十二年二月十一日、大日本帝国憲法が発布された。
兆民は一読するや黙って苦笑した。お粗末な、〝憲法″と呼ぶにはほど遠い「ニセモノ憲法」であったからだ。
兆民は明治二十四年の第一回総選挙で、全く選挙運動をせず大阪郊外の被差別部落から立候補して当選した。しかし、土佐出身の先輩・板垣退助、後藤象二郎らが伊藤博文に買収されて藩閥政府に寝返って自由党を裏切ったことに呆れ果て、
「小生こと、近日アルコール中毒症相発し、行歩困難、何分採択の数に列し難く、よって辞職
つかまつり候」と辞表を出して、「無血虫の陳列場」の国会を去った。
つかまつり候」と辞表を出して、「無血虫の陳列場」の国会を去った。
ノドに異常をかんじて医者に診てもらうと、喉頭ガンと診断された。兆民は「あとどれくらい生きていられるのか」とストレートに質問した。
「長くみて一年半の命……」と宣告された。それならば残された命を「一日たりとも多く利用せん」と考えて 『一年有半』を書き始めた。
「一年半、諸君は短促なりといわん。余は極めて悠久なりという。もし短といわんと欲
せば、十年も短なり、五十年も短なり。百年も短なり。それ生時限りありて、死後限り
無し」
当時、ガンの痛み止めの薬などなかった。激痛と闘いながら一冊の参考書も手元になく書き上げた『一年有半』は一大ベストセラーになった。続けて『続一年有半』まで書きあげ、明治三十四年十二月十三日、五十四歳でなくなった。
『一年有半』の中で「大人長者の風あり、かつ今の世、古の武士道を存している者は、ひとり君あるのみ」と最も評価をされた頭山満が東京麹町の兆民宅を見舞いに行った。奥さんが「病人が毎日々々会わせてくれと、あなたの名前を書いています」という。
兆民は大変喜んで、頭山の手を握り涙を流した。しかし、喉頭ガンのため声が出ない。側の黒板に、バクボクで、「伊藤、山県だめ、後の事たのむ」「マダ、立ったっ」と書いて、拳を突き上げて、笑った。その日から一、二日してなくなった。
関連記事
-
-
『Z世代のための日本・インド交流史講座①』日本リーダーパワー史(33)『日本とインドの架け橋』―大アジア主義者・頭山満とインド人革命家・ラス・ビハリ・ボース』
2010/01/19 日本リーダーパワー史(33)記事再録 前坂 …
-
-
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座➂』★『1945年(昭和20)8月、終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言』★『徳富蘇峰の語る『なぜ日本は敗れたのか➁』「リーダーシップ・長期戦略の欠如である』
★『1945年(昭和20)8月、終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「 …
-
-
『リモート京都観光動画』/『相国寺は京都五山第二位の名刹、室町幕府三代将軍の足利義満により創建された』
相国寺は五山文学の中心地であり、画僧の周文や雪舟は相国寺の出身である。また、京都 …
-
-
『ぜひ歩きたい!鎌倉古寺巡礼②』★「鎌倉駅から10分の妙本寺の梅が咲き誇る」★『鎌倉・花と仁王像の妙本寺ーこの深閑とした森に囲まれた古刹はいつきても新たな発見、サプライズがあるよ②』
鎌倉ぶらぶら散歩日記・前坂俊之 Wiki 鎌倉・妙本寺https://ja.wi …
-
-
世界、日本メルトダウン(1031)ー「トランプのアメリカは単独でも行動するぞの本気度」★『朝鮮半島有事の可能性はついにレッドラインを超えつつある』●『 トランプ政権が画策する対北朝鮮「静かな先制攻撃」の全容 「発射の残骸」計画をご存じか 』★『アメリカは北朝鮮をすぐには空爆しない~米中首脳会談から見えたこと 日本人は、二つの点を誤解している』
世界、日本メルトダウン(1031) 朝鮮半島有事の可能性はついにレッドラインを …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(967)-『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(下)』★『米中通商協議の期限は3月1日』★『中国経済失速へ!「中所得国の罠」にはまったのか』★『中国の「テクノナショナリズム」「<中国製造2025>のスパイ大作戦』
世界/日本リーダーパワー史(967) 『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショ …
-
-
『オンライン講座/日本興亡史の研究④』★『日本史最大の国難・日露戦争で自ら地位を2階級(大臣→ 参謀次長)降下して、 陸軍を全指揮した最強トップ リーダー・児玉源太郎がいなければ、日露戦争の勝利はなかったのだ。 ーいまの政治家にその叡智・胆識・決断力・国難突破力の持ち主がいるのか?』★『予(児玉)は、全責任を自己一身に負担し、この責任を内閣にも、又参謀総長にも分たず、一身を国家に捧げる決心を以て熟慮考究の上、一策を按じ、着々これが実行を試みつつある』
2017/05/22 日本リーダーパワー史( …
-
-
日本リーダーパワー必読史(742)『歴史復習応用編』ー近代日本興亡史は『外交連続失敗の歴史』でもある。明治維新の国難で幕府側の外務大臣(実質首相兼任)役の勝海舟の外交突破力こそ見習え➊『各国の貧富強弱により判断せず、公平無私の眼でみよ』●『三国干渉くらい朝飯前だよ』』●『政治には学問や知識は二の次、八方美人主義はだめだよ』●『国難突破力NO1―勝海舟(75)の健康・長寿・ 修行・鍛錬10ヵ条」』
2016年10月28日/ 日本リーダーパワー必読史(742) 明治維新 …
-
-
日本リーダーパワー史(456) 「明治の国父・伊藤博文のグローバルリーダーシップ 『伊藤博文直話』(新人物文庫)」を読む⑧
日本リーダーパワー史(456) …
-
-
日本一の三名園「岡山後楽園」の桜は満開で「桜祭り」が開催された(23年3月31日に撮影)★『後楽園・旭川・岡山城』の三拍子そろった『歴史文化景観スペース』は世界の都市の美的景観に引けを取らない』
岡山プラザホテル8階から撮影、後楽園上に岡山城がそびえる。 日本の三名園「岡山 …
