前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(593)『安倍外交への提言(2)「 明治以来、最高の戦略家・児玉源太郎と後藤新平の黄金コンビの台湾統治の成功―そのしたたかな英国流の「植民地統治外交術」に学べ

   

日本リーダーパワー史(593) 

『安倍外交への提言(2)

 明治以来、最高の戦略家・児玉源太郎と後藤新平の黄金コンビの

台湾統治の成功―そのしたたかな英国流の「植民地統治

外交術」に学べ

前坂 俊之(ジャーナリスト)

安倍晋三首相は22日から28日まで中央アジアのトルクメニスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタンの計5カ国を歴訪する。経済団を引き連れての資源外交であり、中国の「一帯一路」シルクロード経済ベルト構想」政策にくさびを打ち込む狙いだ。

安倍首相:22日からモンゴルと中央アジア5カ国を訪問

http://mainichi.jp/select/news/20151021k0000m010058000c.html

中央アジアで安倍氏を待ち受ける新たな現実

http://jp.sputniknews.com/opinion/20150716/589416.html

安倍政権誕生と同時に高らかに打ち上げた「『地球儀外交』なるものの、この3年間結果は惨散たるもの、肝心の中国、韓国,北朝鮮には首脳外交は展開出来ず、その周辺をグルグル周遊している状態で、地球儀外交どころか、アジア近隣非外交(害交)であろう。

これは安倍首相の「中国・韓国・北朝鮮」と友好な関係を築きたいという真意が、歴史認識問題、戦後70年問題などを逆手に取られて裏目に出た結果であり、各国が心血を注いで国益を守るしたたかで、虚偽、ダーティーな手法、恫喝、威嚇、札びら外交など,なんでもあり外交、あの手この手、猫の手外交戦に負けているということだ。

ちょうど、現在、それこそ地球儀の裏側のロンドンで、習近平外交が英国の国賓待遇、議会演説、エリザベス女王主催の歓迎パーティー、の最大級の歓迎の中で「英中蜜月時代」を演出、中国お得意の『遠交近攻外交』と計5兆円付のビックリボーナス外交を展開している。

英国:習主席迎え夕食会 女王「野心的な高み」と歓迎http://mainichi.jp/select/news/20151022k0000m030009000c.html

 

習主席訪英:「英国は経済重視…人権問題の優先順位低い」

http://mainichi.jp/shimen/news/20151020ddm007030036000c.html

 

習近平主席訪英の思惑――「一帯一路」の終点

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/10/post-4001.php

 

中国、イギリスへの原発3機の輸出で最終合意・総工費は300億ポンド

http://www.businessnewsline.com/news/201510210730420000.html

 

晩餐会で「抗日」「日本の残虐性」を強調、演説で口にした中英以外は「日本」のみ 法による統治は中国初?

http://www.sankei.com/world/news/151021/wor1510210054-n1.html

 

「英国記者が日本侵略者の暴行暴く」「中国の4大発明が英国の発展開く」……習近平主席・晩餐会スピーチ全文

http://www.sankei.com/world/news/151021/wor1510210057-n1.html

 

中国GDP成長率「本当は3%」米英メディア“暴露” 中国の統計は幻想 (1/3ページ)

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151021/frn1510211140001-n1.htm

 

「多強一弱」なぜ、安倍外交は完全に行き詰まったか

http://president.jp/articles/-/16230

  

対ロシア外交に独自色強める安倍首相の意欲と誤算

http://www.nippon.com/ja/column/g00306/

 

「安倍外交」を象徴 外務省の衝撃人事 (1/2ページ)

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20151020/plt1510200830001-n1.htm

 

中国古来からの「遠交近攻」外交、札束外交そのものだが、それにしてもかっては人権外交を掲げた『世界植民地経営外交術』の第一人者・英国外交の中国マネー欲しさの180度の大転換、テイタラクぶりには驚く。

それ以上に、外交の要諦とは戦争ではなく、貿易、通商であるという英国流の何でもあり「軍事力・通商外交」のしたたか外交に驚く。「平和外交」「国連外交」1点張りの日本外交にもこの手の直球・スローカーブばかりでなく、それこそ『戦略サプライズ、変化球、打率3割の外交」が求められる。

中国流の外交幻術ー清国にダーティーなアヘン戦争を仕掛けて、中国を植民地化した英国に対して、そこには目をつぶり女王主催のパーティーのスピーチで抗日戦の日本をやり玉にあげる中国流の「謀略外交」「秘密外交」「敵の敵は味方」などなど、そのあくどい外交の数々は、今日たまたま古本屋でみつけた「日清役後の支那外交史」(矢野仁一著、東方文化学院京都研究所、1937年、700P)に驚くほど詳細に語られている。

日清戦争後の「3国干渉」をさせるために中国がいかにロシア、ドイツ、フランスに執拗な外交工作して、下関講和条約をつぶしたか。戦争には全く弱い中国は、『舌先三寸』「針小棒大」の口先謀略外交、小切手外交では日本の何倍もの狡知なのだ。

この内容には、後藤新平のあとにの後に連載する。外務省、国家戦略室はこの本の概略を早速、ブリーフィングすべきであろう。

では、前置きが長くなったが、本題の『安倍外交への提言(2)<明治以来、最高の戦略家・児玉源太郎と後藤新平の黄金コンビの台湾統治の成功―そのしたたかな英国流の「植民地統治外交術」に学べ>に入る。

<以下は鶴見祐輔『後藤新平決定版後藤新平③台湾時代、藤原書店、2005より>

「児玉源太郎総督をして、台湾統治の最初にあたり、統治方針の声明を差し控えさせたことは、後藤新平の台湾統治政策の第一の成功であった。

では後藤はなぜに児玉総督に、施政方針の演説を思い止まらせたのか。それには2つの理由があった。

その第一は、植民政策の要諦は、不言実行にあるということだった。   

民衆を承服させるものは、言葉にあらずして行いである。名にあらずして実である。この点、民衆というものは、案外に敏感である。いかに美辞麗句を羅列して、千言万語を連ねても、実現せざる政策に対して、民衆は馬耳東風である。したがって新任者の施政方針声明なるものは、多くの場合,新任者に自己慰籍(いしゃ)にすぎない。しばらくは沈黙を守り、その間に、最も手近にあって、容易に着手しうる緊急の問題を、片ッ端から片付ければよいのでる。

「今度の当局者は、黙ってはいるか、やることはやるぞ!」-このウワサはすぐ伝わり、信頼が民衆の間に起こって、初めて統治政策の実行に権威を生ずるのである。生来、豊かな政治家的本能に恵まれていた後藤は、はやくもこの真実を観破していたのだ。

 その第二の理由は、もっと深淵なる根底の上に立っていた。それは総ての植民政策は、その植民地の民度、風俗、習慣に従わねばならぬという原則であった。それを後藤は独特の「生物学」という名前で表現した。                                                    

 およそ政治の対象は、概念にあらずして社会にある。ゆえに、いかに巧緻なる政治理論および法律理論を案出すといえども、それが、それを運用すべき時代社会に適合せざる場合には、三文の価値もないばかりでなく、巧緻なれば巧緻なるだけ、それだけ有害である。すなわち政治の基礎は、常に、対象たるべき社会の徹底的なる研究と、正確なる認識の上にあらねばならぬ。

これはすべての政治に共通なる原則であるが、ことに植民地のごとく、あらゆる点において、母国と客観的情勢を異にする土地については、しらくの間は忘れてはならない鉄則である。

後藤が赴任後ただちに「生物学」を説き、台湾統治の根本義を、旧慣調査に置いたのは、そのためであった。

この後藤流の台湾統治は成功し、日本流を頑迷に押し付けた『韓国統治」は失敗した。

以上のように、日本政治の根本的弊害の1つは、法律制度のみを中心とする形式的政治である。

それは日本の官僚政治家の大部分が、法律科出身に占められていることに由来する。

ことにこの弊害は、植民地経営について、母国の法律的尺度を、そのまま適用せんとする場合、最も有害に作用する。ゆえに従来の台湾統治の失敗の大半は、この点にあったと言ってよかろう。しかるに日本は、初めて、科学を基本とする政治家を見いだした。これが後藤の、日本政治史の上に独特の地位を占むるべきゆえんであるが、同時にまた、後藤が台湾および満洲の経営に、特に顕著なる成功を収め得た理由でもあった。

つづく

 - 人物研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(952)ー『政府はこれまでの方針を大転換し、外国人労働者を受け入れの入管難民法案を提出、来年4月からは14業種で計約4万人を受け入れる方針』★『日米戦争の引き金になった「排日移民法」、大正時代に米国カルフォルニア州の日本人移民と現地の白人住民の間で生活、宗教、経済観念などで摩擦、対立がおこり「米国に同化できない民族だ」として1913年に「排日移民法」が成立した』

日本リーダーパワー史(952)   人口減少、深刻な人手不足対策として …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(61)記事再録/国難の研究― 日露戦争開戦までの外交交渉の経過と政府の対応①『児玉源太郎が2階級降下して参謀次長に就任、全軍を指揮、病気静養中の桂太郎総理の決意、参内し上奏、旨趣

―国難の研究― 日露戦争開戦の外交交渉の経過と政府の対応①   &nb …

no image
日本経営巨人伝⑫大沢善助ーーーわが国電気事業の先駆者・大沢善助の波乱万丈人生

日本経営巨人伝⑫大沢善助   わが国電気事業の先駆者・大沢善助 <波乱 …

no image
明治150年「戦略思想不在の歴史が続く⒂」-『明治維新を点火した草莽崛起の革命家・吉田松陰⑶』★『言葉だけの武士、政治家、学者を最も軽蔑していた』★『辞世の句は「此程に思ひ定めし出立を けふきくこそ嬉しかりける」享年30歳』●『身はたとえ 武蔵の野辺に朽ちぬとも とどめおかまし大和魂』

松下村塾の塾生の松蔭の人格を語る 松陰の性格、人柄は謹厳実直、厳格ではと思われる …

no image
日本リーダーパワー史(119)孫文を助けた岡山県人パワーの犬養毅・秋山定輔・坂本金弥ら

日本リーダーパワー史(119)孫文を助けた岡山県人パワーの犬養毅・秋山定輔・坂本 …

no image
日本メルトダウン( 972)『トランプ大統領ショックの行方!?』―『安倍首相とトランプ氏、17日初会談=日米関係強化で一致』●『米、TPP承認見送りへ「年内審議ない」』●『トランプ氏勝利で日本の通商戦略は崖っぷち TPP漂流視野 (1/2)』●『トランプ氏勝利 日本政府「誰がキーマン?」 パイプ細く関係構築急ぐ』●『  トランプ経済は、実は「大化け」の可能性を秘めている!』●『【トランプ勝利の7つの波紋】』

     日本メルトダウン( 972) トランプ大統領ショックの行方! …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(286)/★『高杉晋作のインテリジェンス突破力②』●『上海租界地には「犬と中国人は入るべからず」の看板。ここは植民地である』★『内乱を抑えるために、外国の経済的、軍事的援助を受けることは国を滅ぼす』★『大砲を搭載した蒸気軍艦を藩に無断で7万両で購入幕府軍を倒すことに成功した、倒幕の第一歩!』

    2017/11/16 /「戦略思想不在の歴 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(98)記事再録/ 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(31)<川上参謀総長からロシアに派遣された田中義一大尉(後に陸相、首相)はペテルスブルグで活躍<ダンスを習いギリシャ正教に入信して情報収集に当たる>②

   2016/01/14/日本リーダーパワー史(638) …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(42)』★『金子サムライ外交官は刀を持たず『舌先3寸のスピーチ、リベート決戦」に単身、米国に乗り込んだ』

  『金子サムライ外交官は『スピーチ、リベート決戦」に単身、渡米す。 …

no image
日本リーダーパワー史 (25) 中国建国60周年のルーツ・中国革命の生みの親・宮崎滔天に学べ②

日本リーダーパワー史 (25)   中国建国60年・中国革命の生みの親・宮崎滔天 …