前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『異文化コミュニケーションの難しさ―< 『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目>①

      2015/01/01

  

 

月刊誌『公評』7月号―特集『実感』

『異文化コミュニケーションの難しさ―

『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目

 

                       前坂 俊之

(静岡県立大学名誉教授)

 

 

(以下の原稿は5月15日までの状況分析である)

 

STAP細胞疑惑問題にみる「死に至る日本病」

 

このところ、一番考えさせられたニュースはSTAP細胞疑惑問題である。世界的STAP細胞の作成という大々的な発表があったのは201312月中旬のこと、日本中がわきにわいた。マスコミは発見者の小保方晴子氏(30)を『リケジョ』『美人研究者』『ノーベル賞級』と最大級に持ち上げて、政府も山中伸弥教授のiPS細胞とともに、最先端医療技術の開発を「アベノミクス」の第3の矢にしようと、理化学研究所を特別待遇できる特別研究法人を設置するよう要請した。

ところが、年が明けると、疑惑が次々に発覚、雲行きが怪しくなる。『ネイチャ―』に発表した論文の写真コピー疑惑が表面化、小保方氏が早稲田大学大学院の博士号論文の大量コピペ疑惑などが続々と発覚、『ネイチャー』論文の真偽問題に発展した。

当初、論文の信用性は揺るがないと一自信を示していた理研がその後、態度を2転3転し、共同研究者も論文の「取り下げ」を提案し、理研はこの調査結果を3月初めには発表するといっていたのが1ヵ月も遅れて、右往左往の迷走が続いた。

つづく、4月9日の小保方晴子氏の疑惑反論の記者会見は『涙、嗚咽、謝罪』の「まるで芸能人やスターの離婚会見」ばりののり。私はこの「世紀の大発見は虚偽なのか、真実なのか」―その正体をつかみたい一心で、Youtubeでの会見中継の一問一答は全部見たが、あまりのお粗末さに、寒気がして最後まで見なかった。

本来、冷静・客観的で科学的、論理的に反論すべき場なのに、『申し訳けありませんのくりかえし』「涙、涙、嗚咽、・・。絶句!」のセンチメンタル(感傷的)で、感情をコントロール出来ない、情けない説明に終始した。

小保方氏本人の博士号取得を疑わせる非論理的な説明能力欠如と、メディア側の科学認識力の低さと事実関係に肉薄する質問力の不足の競合脱線で、B級どころかD級ドラマ以下、お粗末なショウをみせられた感じで、今更ながら失望した。

その後も混乱はおさまらず425日、理研の調査委員会長の自らの論文疑惑が暴露されて、辞任に追い込まれる。また同日、理研の野依良治理事長は理研約3千人いる研究者に対して過去約10年に書いた全論文(2万本以上)の自主点検を指示した。

4月29日には山中教授の論文の写真コピー問題も発覚して、謝罪会見をする始末で、やっと5月8日に理研は、小保方氏の反論をすべて却下し、「悪意(故意)があったことは明らか」との虚偽認定を行った。また文部科学省は理研の特定研究法人の指定を見送ったが、混乱はまだまだ尾を引きそうだし、小保方氏の疑惑の真相の徹底追及と理研のチェックミスの責任追及と徹底してやる必要があると思う。

このスキャンダルが深刻なのは当事者がいずれも日本を代表する科学者、エリート、知識人の「理性の殿堂」でのドタバタ劇であり、そのあきればかりの低レベルさが日本の科学界、学会、大学、メディア界全体を覆っていることを世界に暴露したことである。

私がHPやブログで連載している3・11福島原発以来の「原発のメルトダウン(安全神話の虚構)」を引き起こした日本の政・財・官・マスコミ、国民のそう癒着現象の「死に至る日本病」http://www.japanesemission.com/

の再発であり、「ガラパゴスジャパン病」(論理的判断力の欠如とコミュニケーション能力の欠陥の正体を見た思いだった。

 

●何が問題で、どこまで深刻か!その「ガラパゴスジャパン病」


 の問題の本質は三流メディアの小保方氏が「美人リケジョ」であるとか「上司と不倫騒動があった、とかなかったとか」ではないことはいうまでもない。「STAP細胞は本当にできたのか、できなかったのか」ーこれが最大の問題で、論文の形式でコピーや写真の偽造があったというのは二次的な問題といってもよい。

論文に昔の写真を張り付けたが、実験に成功した時の写真を提出するか、成功したという科学的、合理的な物的証拠を提出すれば疑惑解消となる。それでなければ再現実験を公開で行い、STAP細胞を作って見せれば、論文の書き方には問題があったにしても、発見、作成は事実であることが立証される。

記者会見では当然、小保方氏の論理的な証拠を挙げての説明になるものと期待しながら見ていると、トンチンカンな非論理的な説明とはいえない弁明に終始した。何百人という大勢の記者たちの質問力もこの1点を集中して、攻めるとおもいきやそうでもない。
その時の「お気持ちを聞かせてください」など御用聞きジャーナリズム、腰抜けジャーナリズムから抜け出せず、彼女の科学者失格の論理的思考力の欠如、日本メディアの科学リテラシーの不足によって、いつものごとく「真相はやぶの中」となった。

(以下の文章は6/19日に追加した。⇒小保方氏の『アカウンタビリティー』(説明責任)もなければ、メディア側の真実解明と責任追及のパワーも感じられない。もともと、理研の小保方氏の研究には国民の多額の税金がつぎ込まれているという公的責任の自覚が双方にも皆無であり、政府、司法当局も、責任追及の姿勢が全く弱いのである。)


                            
(つづき)

 - IT・マスコミ論 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座②』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史②』150回連載の16回~30回まで』『日本の最も長い日(1945年 8月15日)をめぐる死闘―終戦和平か、徹底抗戦か①』 ★『終戦を死闘の末になんとか勝ち取った首相官邸と外務省』★『問題は「サブジェクト・ツー」の解釈』★『『大日本帝国最後の日 -かくして「聖断」は下った!』

      2017/07/09&nbs …

『Z世代のための旧統一教会復習講座』★『日本の冬の陣―安倍国葬と旧統一教会』★『●「旧統一教会」は「カルトビジネス(悪徳商法)」「コングロマリッド」(総資産約8千億円)』(22年11月15日までの情報です)

    2022/12/03 の記事再録 日本の冬 …

no image
日本の最先端技術『見える化』動画チャンネルー 『CEATEC JAPAN 2016』(10/4-7)-「Creative Approach for IMPACT」-ロフトワークの実践」同社取締役CMO 矢橋友宏』●『2016年の「デザイン思考」ーロフトワークは「デザイン思考」をやっていない』●『』

  日本の最先端技術『見える化』動画チャンネル 『CEATEC JAP …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(44)●『地震・原発関連「公式議事録」を作らない大失態』『世田谷区が電力〝入札〟に踏み出す』

池田龍夫のマスコミ時評(44)   ●『地震・原発関連「公式議事録」を …

『オンライン/日本リーダーパワー講座』/野球の神様・川上哲治の『V9常勝の秘訣』とはー ①「窮して変じ、変じて通ず」 ②「スランプはしめたと思え」 ③「むだ打ちをなくせ」 ④「ダメのダメ、さらにダメを押せ」

    2011/05/20/ 日本リー …

no image
(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史➀』150回連載の1回~15回まで』★『近衛文麿、東條英機の手先をつとめたのは誰か』●『「近衛内閣、東條内閣はどうして日米開戦に突入したか」』★『野田に決まった民主党総裁選の無惨、じり貧』★『(リーダーシップの欠如で2度あることは3度ある。 日本人の 精神的な構造欠陥!」』●『「 ロジスティックで敗れた太平洋戦争」『1千兆円の債務を抱いて10年後の展望は?」』●『大東亜戦争下の毎日新聞の言論抵抗・竹ヤリ事件の真相③ ―東條首相は「毎日」の廃刊を命令』

(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★ 『ガラパゴス国家・日本敗戦史➀』150 …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< 世界、日本メルトダウン(1039)>『トランプ大統領の就任100日間(4/29日)が突破した』②「トランプ大統領は『恐ろしいほどのナルシスト』」★『[FT]米大統領選、ツイッターの4分の1が偽ニュース』●『速報、スクープ中心の報道から、BBCが打ち出した『スローニュース』戦略への転換だ』★『ルペン氏、偽ニュースも利用=挽回に必死-仏大統領選』

 地球の未来/世界の明日はどうなる< 世界、日本メルトダウン(1039)> 『ト …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(68)●原子力規制委の責務は重大チェック機能を 厳密に果たせー

           &nbs …

no image
近現代史の重要復習問題/記事再録/日本リーダーパワー史(293)ー『凶刃に倒れた日本最強の宰相・原敬の清貧の生活、非業の死、遺書、日記』★『原敬暗殺の真相はー「お前は「腹を切れ」といわれたのを、「原を切れ」と勘違いした凶行だった」』

        2012/08/12 /日本リーダーパワー史 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(120)●「米議会「辺野古移設」を巡る沖縄知事選を厳しく分析」(10・6)

      池田龍夫のマスコミ …