立花隆氏が拙著『『言論死して国ついに亡ぶ』を激賞 (2003年11月)
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  立花隆氏が拙著『『言論死して国ついに亡ぶ』を激賞 (2003年11月)
  前坂 俊之
  今週の「週刊文春」(2003 年11月6日号)で、私のいつも愛読している読書コーナー文
  春図書館『私の読書日記』で、立花隆氏が(ノンフィクション作家)私が10年以上前に
  出版した『言論死して国ついに亡ぶー戦争と新聞1936-1945』(社会思想社、199
  1年刊,現在絶版)を取上げ、紹介しているのには驚いた。
  立花氏は「東京日日」(現・毎日)の太平洋戦争の開戦スクープについての部分、太平
  洋戦争中の検閲の実態などについて紹介しているが、イラク戦争、自衛隊のイラク派
  遣、北朝鮮問題ときな臭い時代に突入しつつある現在、戦争とメディアの歴史に関心
  を寄せいるであろう。
  立花氏の書評の一部を紹介する。
  「知り合いから、一九四一年十二月八日の日米開戦
  は同日朝の東京日日(現在の毎日)でスクープされて
  いるたと聞いて、『そんなバカな。当時の新開は全部
  検閲されていたから、そんな重大事をスクープできる
  わけがない』といったら、前坂俊之著『言論死して国
  ついに亡ぶー戦争と新聞1936-1945』(社会思想社
  絶版)という本を貸してくれた。十年ほど前の本だ
  が、なるほどその通り(といっても、”事実上の〟と
  付け加えるべきだが)だったのでびっくりした。
  しかし、なぜそんなことが可能だったのか。開戦近いと見た敏腕記者が、十一月はじ
  め米内海相の自宅でカバンの中の書類を盗み見て、「武力発動十二月初頭」をつか
  む。
  だが「何日」なのか? さらに取材すると、陸軍では気象観測原簿を気象学博士に見
  せて、十二月初頭の太平洋海域の気象状況を分析させたところ、「統計上、十二月八
  2
  日がいちばん」と出たという情報をつかんだ。
  さらに、十二月七日に海軍省の海軍大臣付運転手から、七日早朝に大臣と海軍軍令
  部総長が明治神官と東郷神社にお参りして大きなお札を受けてきたという事実をつ
  かむ。
  社の大先輩徳富蘇峰にぶつけると、「そうだろう。もうすべての準備はでき上がり、ふ
  宣戦の詔勅も用意されている」という。
  しかし、どういう紙面を作って、検閲をどう通すか?
  「日米交渉は決裂のほかないところまで追いこまれた」という書き方で行こうということ
  になり、「そういう記事を出すが、いいか」という問い合わせを新聞検閲担当の情報局
  次長にすると、「事実がそうだという記事は困るが」君の社の判断として、決裂以外に
  道はないという表現なら差し支えない、という約束をとりつける。
  そこで、一面トップに、「東亜攪乱・英米の敵性極まる」「断乎駆逐の一途のみ」「隠忍
  度あり1億の憤激将に頂点」「驀進一路・聖業完遂へ」などの大見出しをならべ、一面
  はもちろん、社説欄から社会面の記事まで開戦の日にふさわしい内容の紀面を作り
  あげた。
  どこにも、「本日開戦」とほ書いていないが、事実上の開戦スクープだった。
  しかし、新聞が配達される頃のラジオ臨時ニュースでみんな開戦を知ってしまったか
  ら、この「開戦スクープ」を記憶している人はほとんどいないという。
  この本の面白いところは、このスクープの話より、戦時中の検閲の実態が詳しく書
  かれていいることだ。たとえば、開戦直前の野村・ハル会談ほ、特派員が六十数行の
  記事を送ってきたのに、検閲でズタズタに切られ、わずか二行半しか残らなかった。
  「二人はまず握手を交し」が対米親和感をあらわすので不可。「会談一時間」が交渉
  緊迫感を示すので不可。「交渉はなお続行されるだろう」も、いらざる前途推測で不
  可。
  社会面の記事にしても、あれもダメこれもダメで、新聞はやがて何も書けなくなってい
  く。情報の流れが止まることで、やがて国家全体が死んでいく」
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  以上である。
  十五年戦争をメディアはどのように報道したか、戦争報道について書いたものでは
  『兵は凶器なりー戦争と新聞1926-1935』『言論死して国ついに亡ぶー戦争と新聞19
  36-1945』(いずれも社会思想社刊、現在絶版)が一番詳細である。
  目次も紹介しておこう。
  『言論死して国ついに亡ぶー戦争と新聞1936-1945』(1900円)
  <目次>
  ・水野広徳の反戦平和思想
  ・永田鉄山暗殺事件
  ・二・二六事件でトドメを刺された新聞
  ・二・二六事件と『時事新報』の抵抗
  ・斎藤隆夫の粛軍演説
  ・スクープ・取引所改革問題
  ・国策通信会社『同盟通信社」の誕生
  ・南京大虐殺を「武士道の精葺こと報道
  ・日・独・伊三国同盟訪ソ道
  ・太平洋戦争下の報道
  ・歴史をふりかえることは
  ・あとがさ
  ・引用資料・参考文献
  『兵は凶器なりー戦争と新聞1926-1935』(社会思想社、1989年刊、1700円)
  <目次>
  ・なぜ戦争を阻止できなかったのか。
  ・言論弾圧法の実態
  ・金解禁を支持した社説
  ・吹き荒れる言論への暴力
  ・スパイ政治との対決
  ・満州事変前夜
  ・満州事変勃発
  ・満州事変へり批判的言論
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  ・爆弾三勇士の真実
  ・国際連盟脱退
  ・菊竹山ハ鼓のたたかい
  ・桐生悠々と顧山岩り抵抗・
  ・ゴー・ストップ事件
  ・言論弾圧と自己規制
  ・命がけの報道
  ・「近畿防空演習」社説訂正事件
  ・陸軍ハンフレット事件
  ・美濃部達吉と天皇機問説
  ・ 引用資料・参考文献
  この二冊を出版した社会思想社はすでに解散しましたが、私の元には在庫がまだあ
  るますので、読みたい読者は前坂俊之(静岡県立大学国際関係学部教授)=静岡市
  谷田53まで申し込んでください。上下3000円送料別でおくります。
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