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日本リーダーパワー史(921)-「売り家と唐模様で書く3代目」―『先進国の政治と比べると、日本は非常識な「世襲議員政治』★『頭にチョンマゲをつければ江戸時代を思わせる御殿様議員、若様議員、大名議員、お姫さま議員がまかり通る不思議な国『時代劇ガラパゴスジャパン政治』』

      2021/05/28

 

〇「売り家と唐模様で書く3代目」―『総理大臣は8割が世襲総理、

4割は世襲大臣、自民党議員の世襲は3割」

国会議事堂の敷地内の一角に「憲政の神様」「議会政治の父」といわれる尾崎咢堂(行雄)の記念館と銅像がある。

咢堂は1890年(明治23年)の第一回総選挙から連続当選25回、議員勤続年数63年間、94歳まで衆議院議員を務めあげて日本政治の興亡のサイクルを見つめてきた。

太平洋戦争中の1942年(昭和17)の東条内閣下の翼賛選挙で「売家と唐模様でかく三代目」という江戸川柳を引用した応援演説を行って軍国主義を批判し、それが昭和天皇に対する不敬罪に当たるとして起訴された。

明治天皇の治世に発展した日本が3代目の昭和天皇になって亡国のピンチに立っている世相を皮肉った言葉だが、一審では懲役8月執行猶予2年の有罪判決、1944年の大審院(最高裁)判決で無罪となった。

 

「売り家と唐模様でかく3代目」とは「初代が裸一貫、貧乏から苦労して築き上げて残した家や財産を、苦労を知らずの二代目は遊びや趣味にふけって事業に失敗し、借金を重ね、三代目となると没落して、ついに売り家に出すはめになる」という喩である。

今年は明治維新150年だが、この間の日本興亡のサイクルを象徴したとえであり、国家、企業、個人にも適用する栄枯盛衰の浮沈でもある。

 

トランプ大統領の出現以来、世界は激動期に入り、世界各国の政治は混迷している。日本政治のがたつきもひどくなる一方だ。危機感をもった自民党は「世襲制」「定年制」「選挙区改正」『一票の格差是正』「定数削減」などの政治制度改革の小田原評定を続けているが、内部の反対で難航している。

1945年から現在まで73年間でみると、日本は2度目の亡国中で「少子超高齢人口減少国家」の負のサイクルに陥っており、「将来に借金のつけ回しをしている」昭和の三代目の責任は重い。

 

先進国の政治と比べると、日本は非常識な「世襲議員政治」である。日本の「格差」の象徴とも言える「世襲議員」の多さでは、「総理大臣8割、各大臣では4割が世襲」、自民党、永田町の世襲率は30%と異常に高い数字。

ちなみに米国の連邦議会では、世襲比率は約5%、日本が議会制度のお手本にした英国の世襲議員は9%というからその3倍にのぼる。

  • 総理大臣は8割が世襲総理、大臣の4割は世襲

稲井田茂 著「世襲議員 構造と問題点」(講談社2009年)などによると、過去10人の総理大臣のうち、8人がいわゆる世襲政治家。橋本龍太郎氏、小渕恵三氏は2代目、小泉純一郎氏は祖父が逓信大臣、父は防衛庁長官の3代目で、進次郎氏(二男)は4世議員である。
安倍首相の父は元外相、祖父の岸信介氏が元首相の三代目。福田康夫氏の父赳夫氏も元首相。麻生氏の祖父は吉田茂元首相。
民主党政権で最初の首相の鳩山由紀夫氏は父が元外相、祖父が元首相という政治家一族。弟の邦夫氏も元総務相。民主党の菅直人氏、野田佳彦氏以外は全員が世襲政治家なのである。

頭にチョンマゲをつければ江戸時代を思わせる御殿様議員、若様議員、大名議員、お姫さま議員がまかり通る不思議な国『時代劇ガラパゴスジャパン政治』といえる。

 

アメリカの世襲大統領といえば共和党の、名門ブッシュ一族で2人の親子大統領が登場したが、民主党の名門ケネディ家もジョンF,ケネディー大統領の暗殺以後見るかげもない。実力主義、合理主義のアメリカでは『世襲』はすくない。

英国の場合もかつては上院(貴族院)の大半を世襲貴族が占めていたが、99年に大幅な制度改革が行われ今や大半が「一代貴族」。下院(庶民院)でも世襲議員による「地盤継承」という考え方は英国にはないという。

世襲制とはかって世界各国のすべてにあった世襲君主制の旧弊であり、現在の西欧流の議会制民主主義体制とは全く異なり、家族制度や長子(男子)相続制の基盤に成り立っている。

日本では歌舞伎、伝統芸能、茶道、伝統文化、伝統産業では家元制度が代々継承され、老舗稼業、老舗企業、貴族、名門、ブランドが尊敬される文化である。

世襲議員はこの伝統的な家元制度の名残であり、公的な政治家の家業化、私物化した「特権階級化」である。国民の利害が一層、複雑化し、社会構造の変化への対応力(政治力)がそがれてしまう。世襲議員が「地盤」「看板」「カバン」を譲り受ければ、「非世襲」の議員に比べて圧倒的に有利となる。優秀な外部人材の参入の障壁となり、政治の貧困を招く。

世襲議員がはびこる理由のもう1つは政治家が引退して身内に継がせる場合、一般的には後援会などの政治団体を資金ごとそっくりそのまま引き渡す。これには税金は一切かからない。金、地盤、知名度はそのままタダで相続されるが、この相続税免除の優遇措置は断つ必要がある。

大企業には『世襲、2世、3世社長』は大幅に減っている。経済は実力主義、成果主義であるからで、政治も実力主義、成果主義に変えなければ、国の発展はあり得ない。

特に世界がグローバル競争時代に突入している中で、グローバルな実力のある政治家を生み出さなければ、20年前には世界1位(現在は9位)だった国際競争力ランキング低下の歯止めはできず、じり貧は免れない。

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