今から80年前に発行されていた驚異のマンガ全集『現代漫画大観』〈全10巻〉大空社から復刻する
今から80年前に発行されていた驚異のマンガ全集を復刻する
前坂 俊之(ジャーナリスト)
現代日本の<漫画文化>の源流がここにある。
日本の漫画―その面白さ、楽しさ、ユーモア、笑い、いやし、ギャグ、風刺のすべてのルーツがこの全集に集約されている。知られざる『日本初の満画の大全集』をここに一挙に復活。クリエーター、デザイナー、アニメ作家、志望者、テレビ、メディア、歴史、文化研究科、大学、美術館、図書館に必読の文献である。
『現代漫画大観』(全10巻別冊1)大空社 セット定価 105000円
驚異のマンガ、ビジュアル版明治・大正・社会・文化・人間史(3000P)である。
80年前の本書の発刊の辞は今の世の中と何と似ていることかー
『現代人の生活は息苦しいほど行き詰まっている。陰惨だの険悪だの聞くだけでうんざりする。その息苦しさを忘れる抜け道が1つある。そこは明るくてさわやかな世界だ。ひとは人生の重荷をおろして、一服しくつろぐ心地はいかに幸福であろうかは他言を要しない。その楽境は漫画の世界だ。われこそ世界の和合神よと名乗り出た『現代漫画大観』実に苦しい世の中の安全弁だ。子の1冊を手にして、一見すれば抑えきれない微笑が浮かぶ、爆発するような笑いが出る。しかも、興味ばかりでない、人間の生活に無限の教えを垂れてくれる。』(昭和3年の発刊の辞)
『現代漫画大観』の七大特色をー清水 勲氏(漫画研究家)はこう書いている。
1 日本初の漫画全集
昭和3年に中央美術社から刊行された『現代漫画大観』は、漫画というものを歴史的視点でとらえて編集した日本初の漫画全集である。この全集のヒットによって、そのあと『一平全集』(先進社・昭和4~5年)、『楽天全集』(アトリエ社・昭和5年)、『現代連続漫画全集』(アトリエ社・昭和10~11年)などが刊行されることになる。戦後でいえば昭和44年に刊行されだし、戦後の漫画全集刊行の突破口を開いた筑摩書房の『現代漫画』に匹敵する全集である。
2 漫画を歴史的視点で分析・編集
漫画というものを歴史的視点でとらえるとはどういうことか。それはまず、漫画が表現あるいは諷刺するものは「風俗世相」 「政治社会」 であることを理解し、編集に反映させることである。本全集は、江戸の「鳥羽絵」、明治の「ポンチ」、大正以降の「漫画」にいたる発展をたくさんの具体例をあげてたどっている。また、外国漫画の発展史概略も入れている。第6編・第10編がこのテーマに沿って編集されている。
③ 漫画は風俗世相・政治社会を諷刺する、という視点で編集
漫画は時代の風俗世相を適確に記録しているという点で一種の文化財・歴史資料なのである。その視点で第1編・第8編・第9編がまとめられている。また、とくに新聞では一枚絵の政治漫画・社会漫画が描かれ、大正以降は一枚絵で少し長めのキャプションを付けた漫画漫文スタイル (岡本一平がその流行
の端緒を開いた) の政治漫画・社会漫画が発展していった。第3編・第10編がそうした漫画を集めたもの。
4 文学作品漫画化の多様性・可能性を紹介
現代では珍しくなくなった小説の漫画化はすでにこの全集で紹介されていた。漱石「坊ちゃん」、紅葉「金色夜叉」、トルストイ「カチューシャ」など名作の漫画化(第2編)、川柳・民謡・小鴨など滑稽文学の漫画化(第5編)、㌢らには漫画漫文調の紀行文(第7編)など、多様な文学の漫画化版を載せ、漫画表現の可能性を紹介している。
5 コミックの原点・子供漫画の源流を紹介
江戸以来、漫画は大人を対象にしたものだったが、幕末から浮世絵の一分野に「おもちゃ絵」など子供向けのものが出てくる。日清戦争後から日露戦争期にかけてはポンチ本(「ポンチ」という題が付いた戯画本)の中に子供向けのものが出てくる。大正期に入ると多色刷の子供漫画本が出版され、新聞の子供
欄や子供雑誌の中に子供漫画が連載される。大正末期には「正チャンの冒険」が大ヒット、昭和に入ると子供漫画は漫画界の一大分野になっていく。そうした大正子供漫画の数々が第4編に紹介され、コミックの源流がどのようなものだったかを知ることができる。
6 ギャグマンガの原点であるナンセンス漫画の源流を紹介

諷刺漫画はこれまで風俗世相を諷刺するもの、政治社会を諷刺するものしかなかったが、大正中期頃から海外で人気を得ていたナンセンス漫画が入ってくる。これは「あわて者」とか「太っている」など人間性を諷刺する漫画で、『新青年』や『アサヒグラフ』などで紹介されて日本でも人気を得ていく。ナンセンス漫画は一枚絵漫画であるが、戦後、この笑いはコマ漫画やコミックの中にも取り入れられ、ギャグ漫画と呼ばれるようになる。第6編は大正・昭和初年の日本に紹介されたナンセンス漫画の数々を紹介し、ギャグ漫画の源流を知ることができる。この編には西洋漫画史・日本漫画史の紹介もある。
7 漫画史研究の基本文献
大正期は「漫画家」「漫画記者」「少年漫画」といった言葉が使われるようになる。大正5年には東京漫画会(岡本一平が会長格)が結成され、職業漫画家が数十人規模で誕生する。子供漫画・ストーリー漫画・ナンセンス漫画が登場し、漫画史の研究も行われるようになり、現代漫画の原点となる漫画分野の基盤ができ上がる。その意味で全10編は漫画史と大正デモクラシー期の社会を知る上の基本文献である。 現在、古書市場では全10編がまとまって出ることはほとんどなくなった。その点で一括入手できる絶好の企画だといえる。
全10巻の内容紹介
第1編 現代世相漫画
民衆の生活が締り出す。活動写真、デパート、モダンガールモダンボーィ、婦人問題、住宅問題、銀プラと浅草、スポーツ、交通、学生、郊外生活、金、家庭、独身生活、プルショア・プロレタリヤ、青年、軍事教育、カフェー、サラリーマン、音楽、劇場、恋愛、政治…
第2編 文芸名作漫画
夏目漱石「坊ちゃん」「草枕」、菊池寛「恩讐の彼方に」、尾崎紅葉「金色夜叉」、谷崎潤一郎「痴人の愛」、岡本綺堂「半七捕物帖」、トルストイ「カチューシャ」、メリメ「カルメン」を漫画に。文芸と漫画の結合。
第3編 漫画明治大正史明治大正史のトピック約二八〇を漫画で描く。政治・社会・世相・風俗・事件・天変地異・生活が見える。漫画漫文で解説する近代日本史。
第4編 子供漫画
絵物語風のコマ漫画など、現代コミックの源流をまとめている。
第5編 滑稽文学漫画
川柳、俳句、民謡、小咄を題材に漫画化して漫画表現の新しい可能性を示している。「滑稽文学」としての漫画の集大成。
第6編 東西漫画集
古代ローマから近代の絵画から選んだ「西洋漫画集」、明治のビゴーまでを鳥撤する「日本漫画集」、ス漫画の傑作を豊富に集録。
第7編『日本巡り』
本州、四国、九州、北海道、また樺太、朝鮮、台湾、約二五〇の名所をめぐる紀行漫画。漫画日本観光ガイドブック
第8編 職業づくし
多種多様な職業の特徴をいきいきと捉える世相漫画集。社会世相研究に豊富な材料を与える。巡査、女車掌、探偵、活弁、大道パンや、梵鐘屋、辻占売、広目屋、毒消売り、こわ色使い散布業…消えた明治大正の風俗をよく残す。
第9編『女の世界』
過去の女性観を比較するときに絶好の材料。東洋と西洋に分けて(女と男)の諸相をくまなく描き出す。スポーツ選手、婦人、主婦、令嬢、女優カリカチュアは貴重記録。ウエートレス、店員、モデル、
化粧、流行、職業と女性…有名女優の記録など・
第10編『近代日本漫画集』
近代に描かれた「政治漫画」「社会漫画」のまとめ。とくにイギリス人C・ワーグマン、フランス人G・ビゴーという日本近代漫画の形成に大きな影響を与えた二人の外国人漫画家の作品を紹介し、『団団珍聞』『東京パック』『トハエ(大正期)』などの主要雑誌作品を紹介しているのも近代漫画史をよく大観。
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