前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ⑩』『アラブの生活に身を投じたアメリカ合衆国大使(ニューヨーク・タイムズ9/15)

   

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ
 
アラブの生活に身を投じたアメリカ合衆国大使
A U.S. Envoy Who Plunged Into Arab Life
(ニューヨーク・タイムズ9/15
NYT by STEVEN ERLANGER

 
 
(F氏 コメント)
 
1.アメリカのStevensリビア大使が、任地で不慮の死を遂げた事件は世界を震撼させた。日本の大手メディアは死亡のニュースを6クールに控えめに報じただけである。大使への知見が全くないから、その政治的、組織的影響について論評する事が出来ないし、いわんや開拓者としての一個人の得難い人間性について語る術も持っていない。
国務省と言う強固な官僚組織も人間性全開の一個人が支えている事が良く分かる。対外活動も一個人同士の共感がなければ何事も始まらない。
 
2.筆者のErlanger氏、その筆致は、大使を失った事、Stevens氏と言う旧知?の掛け替えの無い人格を突然失い、その実像を多くの知己の言葉で甦らせ、彼と言う得難い存在を歴史の表舞台に必死で書き留めようとしている。そして、それは見事に成功している。
 
大使のその姿はイスラム圏におけるデモクラシーの宣教師であり、米国国務省の新規対外活動第一線の先兵である。アメリカ教の伝道者そのものである。
(Erlanger氏は現在NYTのパリ支局長であるが、エルサレム支局長時代にStevens氏と交友が有ったと思われる)
 
3.特に深い関心を呼ぶのは、大使個人の人格、精神構造である。 無私、無欲、奉仕、献身、など聖職者の持つ純粋な利他的な行為である。恐らく死をも恐れぬ覚悟で事に対処してきたと想像される。
 
  文中の「骨の髄まで陽気で純粋無垢なアメリカ人」というイラン人記者の理解が、正鵠を射ていると思われる。  
 
 
2012/9/15 NYT by STEVEN ERLANGER
 “ A U.S. Envoy Who Plunged Into Arab Life “
 “アラブの生活に身を投じたアメリカ合衆国大使”

 
 
 
J.Christopher Stevens氏、先週、外交上の任務を遂行中に襲撃され殺害されたアメリカのリビア大使,彼はお喋りが大好きであったが人の話に耳を傾けることで尊敬されていた。歯を剥き出してニヤッと笑う北カリフォルニア人、その彼はアラブ世界とアラビア語が大好きで、彼は役人であろうと商店主であろうと、敬愛の念を精一杯表現しながら、自分のアラビア語を駆使する為に格段の努力をした。
 
彼は人に伝えるべき重要なメッセージを持っている時でさえ、人の声に進んで耳を傾けると言う点で、Stevens氏は珍しいアメリカ外交官であったと、友人や仲間が語っている。彼は、アラブ世界の習慣や礼儀作法、そしてゆっくりとしたペースに進んで身を委ねていた。
 
9.11のWTCへのアタック以来特に、安全への脅威を国務省は高度に警戒し、多くのアメリカの外交官は、要塞にも似た大使館に入ったままか、予定外の停車はせずに装甲自動車の列に入りっぱなしであったが、Stevens氏はアラブ人の社会生活にのめり込んでいた。彼は個人的なリスクをおかして、個人的な交際を実行していた。
 
周囲環境に馴染んだ彼独自の居心地の良さや、安全対策をしている事を誇示する事への嫌悪感が、彼に命を犠牲にさせた一寸した過信に繋がっていたのかも知れない、と或る人達は密かに指摘する。彼が良く知っていた都市、Benghaziでの彼の孤独な死は、他に3人のアメリカ人も共に死亡したが、アメリカの外交使節団に対するリビア義勇軍の攻撃の最中に起きた。一行の中に大使が存在している事は公表されていなかった。
アメリカ合衆国が失ったものは、当代随一のアラブの専門家、リビアの独裁者Qaddafi大佐を倒した義勇軍と部族との架け橋を作った男ということだけではない。パキスタンからスーダンに至る回教国の衝突し易いイスラム圏に吹き荒れている不穏な情勢の中で、既に古臭くなっている外交スタイル、個人的な関係を作り上げて事をやり遂げる世慣れた、抑制の利いたネゴシエイターを失ってしまったことなのかも知れない。
 

 - IT・マスコミ論 , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★「コロナ騒ぎの外出自粛令で、自宅で閉じこもっている人のためにお勧めする<面白い人物伝>★<超高齢社会>創造力は老人となると衰えるのか<創造力は年齢に関係なし>『 ダビンチから音楽家、カントまで天才が傑作をモノにした年齢はいずれも晩年』★『 ラッセルは97歳まで活躍したぞ』

  <創造力は年齢に関係なし、世界の天才の年齢調べは> 前坂 俊之 ( …

『オンライン講座/日本会社資本主義崩壊の歴史』★『日本興亡学入門⑩1991年の記事再録★『百年以上前に<企業利益>よりも<社会貢献>する企業をめざせ、と唱えた公益資本主義の先駆者』ー渋沢栄一(日本資本主義の父)、大原孫三郎(クラレ創業者)、伊庭貞剛(住友財閥中興の祖)の公益資本主義の先駆者に学ぶ』★『日本で最も偉かった経済人は一体誰なのか? 、120年前に21世紀の経営哲学を実践した巨人・大原孫三郎の生涯 』

   『日本興亡学入門⑩1991年の記事再録              …

no image
池田龍夫のマスコミ時評③「核持ち込み密約」元外務省高官の相次ぐ証言(2)

2009,08,01   「核持ち込み密約」元外務省高官の相次ぐ証言 …

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ回想録④』★「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編」(5/3日)③ーピカソが愛した女たち《マリ=テレーズ・ワルテル」》

  2015/06/03『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッ …

『Z世代のための<憲政の神様・尾崎咢堂の語る「対中国・韓国論①」の講義⑧『中国は無力、無秩序であるにも拘らず、中国人は尊大に構えている誤りと、日本人の過度な中国心酔の誤りとを同時に正すには両国は一度戦って見るより外にないと考えた。』

2013/04/02   <日中韓160年三国志―尖閣問題ル …

no image
日本リーダーパワー史(921)-『メディアと権力の戦い』★『『ジャーナリストはいいたいことではなく、言わねばならむことをいうことだ(桐生悠々)』★『豊かな時代の権力・リーダーの愚行は笑い話ですむが、国難の際の愚行は国を滅ぼす』(スミス『国富論』)★『汝、君主たるすべを知らざれば君主になるべからず』(バルザック)』

2010年1月29日の記事再録/ 日本リーダーパワー史(35) ➀リーダーへの苦 …

no image
2005年、ユビキタスビジネスが生む58兆円の巨大市場

1 2005年、ユビキタスビジネスが生む58兆円の巨大市場 静岡県立大学国際関係 …

no image
『バガボンド』(漂泊者)ー永井荷風の好色人生と野垂れ死考 ③生涯一人暮らし、娼婦、芸妓、女給20人以上と女性遍歴とは・・

『バガボンド』(放浪者、漂泊者、さすらい人)ー永井荷風の好色人生と野垂れ死考 ③ …

『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑫』ポルトガル・リスボン旅行日記①』★『リスボンの繁華街も閑古鳥が泣いている』★『ポルトガルの民謡、FADOに聞き惚れる。しかし、我が一行の他、2組だけでガラガラ(12/14)』

2012/12/21  『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑫』記 …

no image
今から80年前に発行されていた驚異のマンガ全集『現代漫画大観』〈全10巻〉大空社から復刻する

今から80年前に発行されていた驚異のマンガ全集を復刻する  &nbsp …