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池田龍夫のマスコミ時評(78) 「F35の国際生産に加担していいのか-「武器輸出3原則」さらに形骸化」

   

 池田龍夫のマスコミ時評(78) 

◎「F35の国際生産に加担していいのか

「武器輸出3原則」さらに形骸化」


ジャーナリスト 池田龍夫
                 

 

 政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の国際共同生産に関連して、日本企業が国内で製造した部品の対米輸出を武器輸出3原則の「例外」として認める方針だ。尖閣諸島の帰属をめぐって、日中間対立が続いている折、その影響が気がかりである。

         平和国家の国是とも言える3原則

 そもそも武器輸出3原則は19674月に佐藤栄作首相が衆院決算委員会で、①共産圏②国連決議で武器禁輸になっている国③国際紛争の当事国で、紛争を助長する恐れがある国への武器輸出は輸出貿易管理令で承認しない、と答弁したのがきっかけ。

 三木武夫首相が76年、3原則にある禁輸国以外にも慎むとしたが、その後はミサイル防衛などの個別案件ごと官房長官談話で例外を認めてきた。「武器」とは、軍隊が直接戦闘用に使うもの・人を殺傷・物を破壊する機械・器具・装置と定義しており、日本製トラック、四輪駆動車・無線機などは「武器」ではないため、多くの軍隊で実戦にも使われている。

 

2004年には、政府はミサイル防衛に関する米国との共同開発・生産を3原則の例外とした。さらに野田佳彦前政権は1112月、例外とする基準を官房長官談話で提示。日本の安全保障に資するなどの条件を満たせば武器の共同開発・生産を認めるよう緩和する一方、「国際紛争の助長を回避する」との理念は堅持してきた。

          イスラエルに渡る恐れ

 3原則は形骸化されてきたが、今回さらにF35の部品の対米輸出にまで踏み込んでしまった。特に米国の同盟国・イスラエルがF35導入を計画いていることが心配だ。新レーダーにも捕捉されにくいステレス性を持つ〝第5世代〟のF35

 中国もJ20(殲20)という新鋭機を開発中である。日本の主力であるF15は〝第4世代〟で性能は劣るというが、政府の選択に疑問を呈せざるを得ない。いま、イスラエルが敵対国イランを先制攻撃する可能性が指摘され、イスラム原理主義組織ハマスやシリアを空爆するなど周辺国と緊張関係にある。日本企業が約4割の部品製造に参画するというF35が、米国からイスラエルに渡れば一大事である。

 毎日新聞26日付社説は、「F35問題は、武器開発の経済性や軍需産業の基盤整備を優先して平和国家としての立場を捨て去ることになる。政府の対応について、石破茂自民党幹事長は『3原則の趣旨を逸脱すべきでない』と語り、公明党も3原則を尊重するよう求めている。装備品(武器)が防衛的なものかどうかをはじめ、その性格・使用目的によって共同開発・生産への参加をするなど、あくまで3原則の理念を堅持することを前提に、対応方針を堅持すべきだ」と指摘する。

 そもそも武器輸出3原則は、海外では第3次中東戦争勃発、ベトナム反戦運動の激化、国内では〝黒い霧解散〟総選挙での自民党の停滞と民社党の進出、東京での革新知事誕生や時限爆弾事件の続発など騒然たる1967年の内外政治状況の中で、佐藤首相が政局安定のために表明した国内向け発言だった、とも言われている。

 北海道新聞210日付社説は、「紛争地域に武器を売って儲けるような国になってはならない。半世紀近く守ってきた平和国家としての国是ともいえる理念が揺らいでいる。周辺国と軍事的緊張が続くイスラエルもF35導入を予定しているためだ。3原則に従えば、日本は部品製造に参加できないが、米国と連携し『輸出を厳格に管理』すれば抵触しないとの見解を示すというが、厳格な管理などは現実に不可能。3原則を空文化するもので、到底認められない。

 イスラエルはパレスチナやシリアなどへの攻撃を繰り返している。日本製部品を使ったF35が輸出された場合、3原則に触れるのは明白だ。日本も加わって造った兵器が国際紛争の場で使われる光景を想像したくない。公明党の山口那津男代表は『国際紛争を助長しない配慮をするという原則は守るべきだ』と指摘した。与党内で、政府の行き過ぎを抑える役割を果たしてほしい。

野田前政権は3原則を緩和し、欧米などとの共同開発・生産を認めた。防衛産業に配慮したものだが、今回の事態を招いた責任は重い」と指摘していたが、」安倍政権の責任はさらに重い。

 

      財政難の米国が同盟国に働きかけ

 

 米国の産軍複合体は世界の軍事力を牛耳ってきたが、最近の財政赤字増大よって一国だけでは維持しきれなくなってきた。そこで、同盟国との協力関係を構築して、中国など敵対勢力への備える方針に転換したと考えられる。

 日米同盟の深化が叫ばれて久しいが、最近の軍事同盟強化は、莫大な防衛費負担を肩代わりさせるための同盟深化とも受け取れる。沖縄米軍事費の増額要請をはじめとして、一方的押し付けが目立ってきている。これに対し日本からの独自要請は控えめで、対米追随の様相を深めているように思われる。

 最新鋭機F35の開発費は巨額で、もはや一国だけで難しくなってきた。このため、米国など9カ国が共同開発に合意し、生産も分業システムをとることになった。

 政府関係者は「共同生産する国どこでも作れる部品を日本も作るだけ。F35が日本が知らないうちに第三国に渡ることはない」と説明している。米国が引き渡し先を事前に通知することが理由のようだが、額面どおりにはいくまい。日本が引き渡しに同意しなくても、F35を引き渡す可能性は高いと警戒しなければならない。

 

        日米密室協議は許せない

 朝日新聞25日付社説が「F35のどんな部品を輸出するのか。国際紛争に使われる恐れはないのか。肝心なことは一切明らかになっていない。

レーダーに映りにくいステルス機だが、日本が果たす役割まで見えないといういうのでは話にならない。日米間の密室協議で結論を急ぐべきではない。主力戦闘機はこれまで、米国が開発した機体を日本がライセンス生産する方式をとってきた。

だが、自衛隊だけで輸出はしていない。……武器は攻撃的な性格が強いものか、防御的なものか。部品は民生品に近いものか否か。完成品の輸出も認めるのか。こうした点も含め、国民に開かれた形で、武器輸出について一から議論すべきだ」と疑問を呈していた。

 35が米国経由でシリアやイランなどと緊張関係にあるイスラエルに渡れば「紛争当事国かその恐れがある国」の輸出を禁じた3原則そのものが有名無実なりかねない。政権与党の公明党はもともと3原則の緩和に慎重だった。自民党は危うい橋を渡っているように思えてならない。自・公両党は政策調整を急いで、独自の姿勢を示してほしい。

 

      もつれる沖縄問題にも打開策示さず

 最後に、沖縄問題への政府の冷たい対応を指摘しておきたい。安倍首相は2月2日、沖縄を訪問し仲井真弘多知事と約1時間会談した。

 その5日前の127日には、東京・日比谷野外音楽堂で、米新型輸送機オスプレイの配備撤回と普天間飛行場県外移設を求める「NO OPREY 東京大会」が開かれた。沖縄県38市町村長・県議・各種団体代表約150人を含む、約4000人が全国から集まった。集会後は、「NO OPREY」の横断幕を持って銀座を行進、沿道の人々に支持をアピールした。翌28日、翁長雄志郎那覇市長、稲嶺進名護市長らは「建白書」を首相に提出した。

 普天間飛行場の名護市辺野古移設を県に申請する時期が迫っているだけに、21日の参院本会議の首相答弁が注目された。ところが「(2月下旬の訪米前は)考えていない。まずは現実的、具体的な運用の改善を積み重ねることが重要だ。オスプレイ配備も日米合同委員会合意などにより安全性が十分に確認されていることを認識しており、配備が沖縄に対する差別だとは考えていない」と、冷ややかな答弁だった。

 琉球新報22日付社説は「沖縄は『質草』ではない」と、訪米の手土産にするようなことはお断わりだと批判していた。この社説に関連したブログでは「日本は他県には反対があるので配備せず、岩国市長にはオスプレイを陸揚げして2カ月間置いたことに対して謝罪までしている。これが差別でなくて何なのか」とも書かれていた。

安倍内閣は、具体的施策に乏しい。「米国に相談して…」の政治手法からの脱却を切に望みたい。 

*新聞通信調査会の月刊冊子「メディア展望」3月号から転載

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