前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン講座・日本リーダーパワー史(1231)』-桂太郎の研究②「ニコポン、幇間」ではない、真の「人間学の 大家」「胆力のあった」桂太郎首相の実像

   

2013/06/24 日本リーダーパワー史(389) 再録

前坂 俊之(ジャーナリスト)

人物論を書く場合に私が座右において最も重宝いるのは森銑三の「近世、明治、大正人物逸話」である。コピー機がない時代に、森銑三の長年、図書館通いをしながら古典を書き写してきた膨大な人物研究のデータを駆使しての精緻な人物百科エピソード集こそ、研究者のお手本のような仕事であり、人物エピソードの決定版であろう。

40年以上愛読しているが、これも若い時に感心したエピソードと、年寄って読み直して感心するエピソードは当然違ってくる。古希となった筆者にとって、自分の体験と照らし合わせて、困難な時代に遭遇した中でその重責を一身に担い、泣き言も言わず、逃げ出しもせず、必死に生き、責任を果たし、亡くなった人物の生きざまが若い時以上によくわかってくる。同じ年を超えて自分なら果たしてうまくできるかどうか、とてもできないと思う。。

そんな感じで、いまの日本の政治家、リーダー、インテリゲンチャーを斜めにみていて、「明治の人物のすごさ」をひしひしと痛感するこの頃、この齢である。森銑三の年取ってなるほどと思った人物エピードと引きながら「日本リーダーパワー史」の桂太郎のエピソードと胆力、人間通を紹介したい。

歴代、最長の総理大臣である桂太郎についての、戦後歴史学界での評価は「ニコポン」「政界の太鼓持ち」「サーベルをさげた幇間(ほうかん)」と芳しくない、というか最低である。戦後長く続く軍人否定、戦争否定の風潮の中で生まれた評価だが、日本史最大といっていい国家プロジェクトを大成功させた日露戦争の時の首相、陸軍のトップだった最高リーダーという点を比較、考慮すればこの、最低評価は間違っていると思う。

桂の首相在任期間は断トツの第1位(2,886日)」第2位 佐藤 榮作、第3位 2,720日 伊藤 博文、第4位 (2,716日 吉田 茂)、第5位 ( 1,980日 小泉 純一郎)である。

小泉首相以降の半年、1年交代の回転ずしならぬ回転首相による政治の停滞混乱、混迷沈滞、日本沈没を経験したわれわれにとっては、日露戦争という<世紀の大勝負>の監督の手腕が、なぜかくも低評価なのか、学者、研究者の判断基準が理解できないと、年取って実感したので、このような拙文を書いているのである。

森銑三の「明治人物逸話辞典」(1965年、東京堂書店)から、桂のリーダーシップの所以と胆力、リーダーパワーの秘訣を探った。

「桂公は、思想や傾向や個人的の立場などが単純でない五人の元老(伊藤博文、山形有朋、松方正義、井上馨、大山厳)- 随分やかまし屋もあれば、気むつかし屋もある五人の舅姑をまとめて、画期的な大経綸を現実化し、大体有終の美までに漕ぎつけた。その働きというものは、

して、伊藤公(博文) 1山県公(有朋)のような人が、首相となって事を行なう場合とは、難易同日の談ではない。「外交よりも内交がむつかしいのだ」と、

小村寿太郎もいわれ、陸奥宗光も嘆かれたが、桂公はその内交に、周到・錬達の手腕と、人一倍の忍耐や粘りをもって向かわれ、いざという時には捨て身の覚悟をもって当られたのであるから、小村侯もその外交手腕を、十分に発揮せられたのである。

桂内閣の全盛時代には、≪サーベルをさげた幇間(ほうかん)>だなどという悪評をした政治家があったが、これは一片の悪口に過ぎぬ。日露開戦の数ゕ月前に帝国大学の七博士が公を訪間して、開戦論を説き、「軍事上より見ても、今日をおいて開戦の機はない」と論じたら、公は微笑を浮べて、「太郎も軍人です。軍事上より見ての開戦の時機云々にいたっては、諸君の教を受ける必要がありません」と応酬された。これなどはいわゆる幇間的軍人にして出来る芸当ではない。(本多熊太郎「先人を語る」1939年)

「 日露戦争で日本軍の困ったのは、弾薬の欠乏したことだった」山県元帥(有朋)も、その実情を見て、たとえ首は斬られても、講和しなくてはならぬと決心した。

そうした状態だっためだから、講和会読によって償金が取れるなどとは、桂首相も思っていなかった。それを取れるかのように虚勢を張ったのは、一流の計略で、これには新聞記者達も、すっかりだまされた。

東京朝日新聞(池辺三山)などは、その虚言を怒って、強く講和条約に反対したので、桂もこれには困却した。明治四十二年(一九〇九)の頃、桂首相の講によって、池辺氏は記者(土屋大夢)を同伴して桂太郎を訪問したことがあるが、池辺氏は口を開くなり、「先年は・・」といい出した。

ところが機敏な桂は、すぐにそれと察して、「全く僕が悪かった。君をだまして相済まぬ」と、折れて出た。多年、国家を担うて立っていた人だけに、さすがに度量が大きいなと感心したた。(土屋大夢薯『夢中語』)

「桂公は、徹頭徹尾、実際政治の舞台劇における千両役者であった。(私人中島久万吉)等の公に最も感服するところは、頭脳が弾力性に富んでいて、いかなる不如意な、不愉快な場面に臨もうと、我慢して事態の推移に身を任かせて、最後の段階を守るところにある。この辛抱強さは、第一次桂内閣において、最もよく現われた。

それ以前の内閣といえば、いわゆる維新の元勲が首班だったので、公にいたって初めて第二流内閣を組織したわけであり、伊藤(博文)・山県(有朋〉・松方正義)・井上(馨)等、顔役連の環視の中で大芝居を打つのに、これらの顔役連は、ただだまっては見ていてくれず、何のかのと世話を焼く。その世話が、人々によって皆違い、時には内閣の方針とも、政府当局者の立場とも相容れぬのに、その人々を巧みにあやなして、行き違いの起こらぬようにする。そうした人事の錯雑している間にあって、公は実に前後の処置を誤らぬ、人間学の大家であった。(中島久万吉著「政界財界五十年」1936年)

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

日本の最先端技術「見える化」チャンネル『第2回、Japanドローン展2017』(3/23-25)幕張メッセ)ードローンビジネスの市場規模2016年度は353億円から5年後は2116億円と約6倍に急拡大が見込まれる。(動画版)』②

 日本の最先端技術「見える化」チャンネル 『第2回、Japanドローン展2017 …

「6年前の鎌倉カヤック釣りバカ動画日記」再録-『地球環境異変はますます深刻化」★『豊穣の鎌倉海も海生物が激減、魚クンたちは逃げ出してしまったよ』●『米離脱後のパリ会議の行方はどうなる』

   2017/12/27  「湘南海山ぶらぶら日 …

★『ゴールデンウイーク中の釣りマニア用/巣ごもり動画(30分)』★『10年前は豊饒の海だった鎌倉海は、今や<死の海>となりつつある』★『鎌倉カヤック釣りバカ日記ー梅雨空の逗子小坪沖で巨カサゴ、カワハギ爆釣―雨の日は大漁の海で雨の波紋を楽しむ』

 2012/06/13  <梅雨本番だよ・天然生活 …

no image
   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題>『120年前の日清戦争の真実』② 陸軍でも秀吉の朝鮮出兵以来の大陸へ進出する『日清戦争」が開始された。開戦の詔勅に「国際法を遵守すべし」

   日中北朝鮮150年戦争史(37)<歴史復習問題> 『120年前の日清 …

no image
『鎌倉釣りバカ人生30年/回想動画録』㉓★『コロナパニックなど吹き飛ばせ』★『10年前の鎌倉沖は豊饒の海だった』★『めざせ!センテナリアン!鎌倉カヤック釣りバカ日記で、カワハギ大漁! 半パソコン半漁の仙人生活、カワハギ尽くしで 地産地消じゃ!

  2012/10/24  <百歳学入門 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(265 )★『60,70、洟垂れ小僧、生涯現役、カヤック人生』★『定年なし、年齢差別なしの米国では65~74歳はベビーオールド(赤ちゃん老人)、75~84歳まではリトルオールド(小さい老人)、84~94歳はヤングオールド(若い年寄り)、95歳以上がリアルオールド(真の高齢者)』だよ。』★『シニアを襲う燃え尽き症候群 “仕事ロス”など吹き飛ばせ!』

 2014/09/15 /百歳学入門(99)『百歳挑戦・鎌倉バカ仙人の …

★スクープ写真『2011年3月11日福島原発事故約1ヵ月前の『鎌倉カヤック釣りバカ快楽日記』★『老人と海、大カサゴのお出まし』★『若者は書を捨てて大海に出よ』★『ネットサーフィンをやめて、海でサーフィン、カヌーをやれ、そのあとにネットサーフィンやれば、もっとエキサイティングに世界一周できるぜ!』

2022/09/20 記事再編集 前坂 俊之(ジャーナリスト) 『三寒四温』とは …

『Z世代のための百歳学入門』★『玄米食提唱の東大教授・二木謙三(93歳)の健康長寿10訓』★『1日玄米、菜食、1食のみ。食はねば、人間長生きする』★『身体と精神の健康は第一に欲を制するにあり、食べなければ頭がより働く』

2012/11/05 百歳学入門(54)記事再録再編集 玄米食提唱の東大教授・二 …

『2022年よさらば!鎌倉材木座ウインドーサーフィン』-冬の嵐のキラキラ海で波と遊ぶサーファーたち、見るだけで太陽光・波動発電で体内バッテリーがアップする』★『鎌倉材木座・由比ガ浜海岸は健康・スポーツ・長生きロングビーチ、高齢者の健康ランドだね』

鎌倉材木座ウインドーサーフィン(2022年12月24日pm100)-冬の嵐のキラ …

no image
百歳学入門(48)ー東久邇稔彦(皇族・102歳)はギネスブックの首相ー自由奔放に生きたその最晩年

 百歳学入門(48)   東久邇稔彦元首相(皇族・102歳) …