前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『コロナ共存社会は数十年続く』(英大学教授)★『世界人口の10%が新型コロナ感染の可能性 WHO推計(10.07)』★『WHO、新型ウイルスの死者200万人は「かなりあり得る」ワクチン開発でも』

   

『コロナ共存社会は数十年続く』

  前坂 俊之(ジャーナリスト)

7月24日は1年延期された2020年東京オリンピックの開催式予定日だったが、世界中は新型コロナウイルス「パンデミック」の第2波に見舞われた。ロイター電によると、同日の全世界の累計感染者数は1564万人、死者数は63万6千人に上った。中でもトップ米国の1日の感染者は6万9千人で、1時間当たり平均2600人強の最悪の増加ペースで累計感染者が404万人を超えた。2位のブラジルが6万人(死者8万4千)、3位インドが4万9千人(同3万)で、この3カ国で全世界の6割を超え、世界の新規感染者は28万人を突破した。

一方、日本でも第2波が襲来、東京では23日は366人で過去最多、24日は260人、大阪府は7月24日に過去最多となる149人、25日は132人、愛知県でも25日、新たに78人、鹿児島県与論島(ベットは4床)では23人のクラスターが発生し、地域医療崩壊の危機が迫った。

政府は約3ヵ月停止状態の日本経済を何とか回すため、観光業を支援する「Go To トラベル」事業をスタートさせたが、東京の除外やキャンセル料の補償問題などで二点三転したためマスコミ、世論から一斉に非難を浴びた。

しかし、考えてみても前代未聞の今回のコロナ禍で世界中が大混乱した中で、デジタル化の遅れ、スローモーでチグハグ対応はあったものの、死亡者数を米国の100分の1以下に抑え込んだ日本の取り組みは非難に値するものなのか。

政府の役割は経済と人命尊重は両立させることだ。日本経済の基盤を支えているのは、企業数の99%を占め、雇用の約7割を占める中小零細企業、飲食業などであり、これがつぶれては元も子もなくなる。

 

PCR検査で陽性(ウイルス5個の検査)と確認されても無症状者、若い人の場合は軽傷で重症患者にならない、検査は陰性であってもその後に陽性になるケースなどさまざまで、陽性率も正確とはいえない。そのため、陽性反応者から感染症状が明白にあらわれる「患者」は何人いるのか、東京都の統計ではわからない。治る確率が高いとすれば一番重要な数字は死亡者数であろう。

7月24日の時点で、総感染者数は27956人(死者数は992人)で2ヶ月前(5月24日)は16550人(同820人)と比較すると感染者数は1.68倍に増えたが、死亡者数は1.2倍に留まっている横ばいの状態だ。7月に入りPCR検査数は増えたが、死者数は毎日0~3人で世界と比較するとダントツに少ない。

この実数字の傾向を見ても、今後の2波、3波によって死者数が一挙に跳ね上がる可能性は低いのではないだろうか。米欧での死者の激増は慢性腎不全やパーキンソン病、糖尿病などの基礎疾患のある高齢者に集中しており、米、ブラジル、インドなどのワースト国は医療崩壊と保健医療制度の不備が重なって起きた可能性が高い。日本の場合は医療崩壊、検査崩壊、介護施設崩壊を何とか食い止めたのが功を奏したといえる。

共同通信(7月24日)によると、WTOはこれら基礎疾患のある高齢者で、新型コロナに感染すると重症化するリスクを抱えている人口を推計したところ、世界人口全体の22・4%、約17億人に上る、という。

日本では世界平均を大きく上回る人口の33%にリスクがあるとしているが、これはあくまで老齢人口との単純比較なので、今後の日本の実際の死者数は最小値は続くものとみられる。そのためにも高齢者施設では「3密排除」と面会禁止措置を継続する必要があるだろう。

結局、パンデミックに終止符を打ち、経済活動再開の決め手になるのはワクチン開発にかかっており、世界中でし烈な開発競争とワクチンの囲みこみが始まっている。

米国では「戦時スピード計画」(予算約1兆円)として英アストラゼネカと英オックスフォード大学が組んで3億人分のワクチンを、来年1月までに開発する。現在は「第3フレーズ」の約1万人を対象にした臨床試験を英国、ブラジル、南アフリカの3国で実施、次には米国で約3万人を対象にした治験を行う。今年9月には量産体制が整い、医療機関等へワクチンの提供を始めるが、20億回分のワクチンを製造すると発表、日本なども予約している。

ただしワクチンの開発には、普通は実用化まで5~10年はかかり、1,2年で免疫性と安全性を確保したワクチン開発はむつかしいといわれる。ポリオの根絶計画は15年間続いているのに、ポリオワクチンはいまだにできないと、今回のスピード開発に疑問を投げかける専門家もいる。

BBC電子版(7月22日付)によると、7月20日「臨床試験で、免疫反応と安全性が確認された」と発表した英オックスフォード大学について、同大のサー・ジョン・ベル教授は「ワクチンが役立つかを確認するには、まだ多くの作業が必要だ。新型ウイルスが消滅する可能性は低い。この病原体はこの世界に永遠に存在し続ける。どこかへいったりはしない」とコメント。

英政府の新型ウイルス非常時科学諮問委員会のファーラー教授も「この感染症は消えてなくなったりしない。ワクチンや非常に優れた治療法があったとしても、人類はこの先も、何十年間も新型ウイルスと共存していくことになる」と述べている。

時代は大きく変わった。昔を振り返らずこれからの「コロナ共存社会」を見据えて前を向いて歩きだす時なのであろう。

 

界人口の10%が新型コロナ感染の可能性 WHO推計2020.10.07

https://www.bbc.com/japanese/54429746

 

WHO、新型ウイルスの死者200万人は「かなりあり得る」 ワクチン開発でも

https://www.bbc.com/japanese/54292165

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
 日本メルトダウン(1007)ー『揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件の巨大衝撃 極右派の台頭も懸念される事態に』●『対岸の火事ではない、厳戒下で起きたドイツのテロ 右傾化を煽るように欧州で頻発、東京五輪の警備に抜かりはないか』●『米国メディアの評価は「ロシアが日本の希望を粉砕」 領土問題で少しも妥協を見せなかったプーチン大統領』●『2017年の世界は型破りトランプ政権を中心にこう変わる』●『中国の覇権主義は底堅い経済を背景にますます強固化する』●『コラム:元安容認とAIIB出資、米中取引あるか=村田雅志氏』

  日本メルトダウン(1007)   揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件 …

『オンライン/日本議会政治の父・尾崎咢堂による日本政治史講義②』ー『売り家と唐模様で書く三代目』②『80年前の1942年(昭和17)の尾崎の証言は『現在を予言している』★『 浮誇驕慢(ふこきようまん、うぬぼれて、傲慢になること)で大国難を招いた昭和前期の三代目』

    2012/02/24 &nbsp …

no image
日本メルトダウン脱出法(705)「TPP交渉「合意先送り」でー日本の成長戦略に「停滞」の恐れ」「ハイブリッド車、終焉危機?ケタ違いの低燃費&低CO2排出のPHEV、欧州を席巻の予兆」

 日本メルトダウン脱出法(705) TPP交渉「合意先送り」でー日本の成長戦略に …

no image
速報(368)<総選挙を斬る-緊急ビデオ座談会(11月27日開催>『日本倒産をくいとめる投票行動をとる』(2/3)

速報(368)『日本のメルトダウン』         <総選挙を斬る- …

no image
★人気動画再録/日本の最先端技術『見える化』チャンネル-「海上大型風力発電こそ原発、火力発電に替わるの日本の再生エネルギのフロンティア』★『日立造船の「バージ型基礎構造物による次世代浮体式洋上風力発電システムー国家戦略で取り組め」

    2019/03/16 &nbsp …

no image
名リーダーの名言・金言・格言・千言集⑨『汗馬でなければ、千里の道はいかぬ』(中上川彦次郎)『徹底してやる』(本田宗一郎)

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言 ・千言集⑨       前坂 俊之選 &n …

no image
日本の最先端技術「見える化」チャンネル-『世界最小、直径30㎛ (=0.03mm)の手術用針を開発した河野製作所の開発秘話』

日本の最先端技術「見える化」チャンネル 「ジャパンライフサイエンスウイーク201 …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(101)記事再録/アメリカの石油王・ジョン・ロックフェラー(97歳)「私の健康長寿の8ヵ条」★「 経営の秘訣は数学 ・数学・数学・すべて数学が第一だ。いかなる場合でも』

  2015/09/10/知的巨人たちの百歳学(120)再録 …

no image
  世界、日本メルトダウン(1029)ートランプ大統領、習近平の注目の米中会談が6日から始まった。『米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ ソウルは火の海に、日本も報復攻撃されることは確実』★『北朝鮮攻撃の日は近い?米国で崩れてきた前提とは 米中首脳会談は成果を出せるか(古森義久)。』

 世界、日本メルトダウン(1029)ー トランプ大統領、習近平の注目の米中会談が …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]➄」『開戦2週間前の『英ノース・チャイナ・ヘラルド』の報道『日本が決意しているのは,中国と朝鮮との 独立と保全の維持なのだ。この点で,日本は英米の支持を 受けている』★『外交面で,日本はロシアを完全に負かしてきた。合衆国の40年にわたるロシアへの友情は.全く消失した』

    2019/10/08 &nbsp …