ジョーク日本史・禅語は落語以上におもしろい
2009,05、10 前坂 俊之(愚魚)
ジョーク日本史・禅語は落語以上におもしろい
仙厓義梵(せんがいぎぼん)編①
<(一七五〇~一八三七)臨済宗。美濃の生まれ。月船禅慧に参じ、のち聖福寺の盤谷に師事した。その瓢逸な絵でよく知られている>
仙厓はジョークの達人
1・・
仙厓が美濃(岐阜)の清泰寺に住職していた時のこと。金森美濃守による藩政は乱脈を極めていた。そこで家老職を更迭してなんとか刷新を図ったが、いっこうに政道は改まらない。
これを見ていた仙厓はさっそく狂歌一首を詠んだ。
よかろうと思う家老が悪かろう
元の家老がやはりよかろう
これが、早速、その悪家老の耳に入ったからたまらない。
「清泰寺の坊主、僧の身にありながら、ご政道に口出しするとは不届き千万」
と、国外追放の厳罰を言い渡した。しかし、仙厓はいっこうに平気の平左の屁の河童。使いの役人を前に、また狂歌一首をひねった。
傘(からかさ)をひろげて見れば天(あめ)が下
たとえ降るともみのは頼まじ
仙厓は飄然と美濃国を出たが、それ以来、二度も美濃に戻ることはなかった。
2・・・・
ある時、仙厓は江戸から博多への帰途、箱根の関所にさしかかった。ところが、どう見間違えたのか、番所の役人が和尚を「尼僧か、面を上げい」と問いただした。
すると、仙厓は無言のままやにわに衣のすそをたくし上げて、股間の一物を突き出しては、カッカッと大笑。度肝をぬかれてロあんぐりの役人を尻目に、すたすたと関所を通りすぎていったとさ・・・。
3・・・・・・
仙厓は博多の聖福寺の住職となっていた時のこと。福岡の藩主・黒田播磨守は、菊の花が大好きであった。このため、城中の庭園には色とりどりの菊花が栽培しては楽しんでいた。もし、誤って家臣が菊の花を折りでもすると、厳罰を下していた。家臣たちは菊にさわらぬ神にたたりなしで戦々恐々としていた。
ところが、小姓のひとりが誤って大輪の枝を折ってしまった。案の定、黒田侯はカンカンに怒り、さっそく閉門を申しつけた。小姓は悲観のあまり、切腹を決意した。この話を聞きつけた仙厓は早速、この小姓を訪ねて言い渡した。
「武士たる者が、菊、の花一本ぐらいで犬死にして何になる。ここはわしにお任せあれ」と自決を思いとどまらせた。
その夜、こっそりと城中の菊園に忍び入ると、何を思ったか、今を盛りと咲き競う菊花を片はしからカマで切り倒してしまった。
あやしい物音に気づいて出て来た黒田侯は、びっくり仰天、刀を引き抜いて、
「おのれ曲者、何やつじゃ」
と切り殺す勢いで迫ると、何と日ごろから敬愛している仙厓和尚ではないか。
「和尚、気でも狂うたか。何をしておるか」と怒り、ただすと、仙厓は平然として
「こんな草でも、こうして刈り取って積んでおけば、何かの時には埋草(城攻めの時、堀を埋めるのに使う草のこと)ぐらいにはなりますぞ」
<足軽小者であっても、日ごろ目をかけておけば、必ずいざという時には役に
立つものだ、と諭したのである。>
明君といわれた黒田侯はすぐに悟って、
「いや、和尚、わしが間違っていた」
と、さっそく閉門を許し、その後は好きな菊の栽培もやめてしまった。
関連記事
-
百歳学入門②ー知的巨人たちの往生術から学ぶ②
≪知的巨人たちの往生術から学ぶ②≫ …
-
<百歳学入門(86)>宮武外骨の『人生70、古来稀ならず』 ―日本史の<百歳健康長寿者調査表>
<百歳学入門(86)> 宮武外骨の『人生70、古来稀な …
-
記事再録/『中国/内モンゴルのゴビ沙漠の不毛の砂漠を300万本のポプラの木を植えてと緑の農地によみがえらせた奇跡の男・遠山正瑛(97歳)★『中国で、生前銅像が建てられたのは毛沢東と遠山の2人だけで、その台座には「90歳の高齢ながらたゆまず努力し、志を変えなかった」』
2009/05/06   …
-
『知的巨人の百歳学(158)記事再録/吉川英治創作の宮本武蔵の師・沢庵禅師(73)の『剣禅一致』 <打とうと思わず、打たじとも思わず、心海持平(しんかじへい) なる時、前に敵なく、後ろに物なし。ここが無の境地じゃ>
百歳学入門(73) 前坂 俊之 (ジャーナリスト) …
-
『オンライン/バガボンド講座』★『永井荷風のシングルライフと孤独死願望 』★『「世をいといつつも 生きて行く矛盾こそ、人の世の常ならめ。」言いがたき此よに酔わされて、われ病みつつも死なで在るなり。死を迎えながらも猶死をおそる、枯れもせで雨に打るる草の花』(76歳の心境)』
『バガボンド』(放浪者、漂泊者、さすらい人)の作家・永井荷風のシングルライフ 前 …
-
『百歳学入門(202)』<100歳社会の手本―葛飾北斎に学ぶ -「創造力こそ長寿力」★『70歳以前に画いたものは取るに足らない。八十歳にしてますます精進し、九十才にして奥義を極め、百才にして神技となり、百才を超えて一点一画を生きているように描きたい』(画狂老人述)
100歳社会の手本―葛飾北斎に学ぶ ―「創造力こそ長寿力」 私は富士山マニアであ …
-
『リモートワーク/京都世界文化遺産/外国人観光客へお勧め/豊臣秀吉ゆかり醍醐寺をぶらり散歩動画(2016/09/04 /30分)』★『桃山時代の面影を残す秀吉ゆかりの古刹』★『秀吉が設計した三宝院の庭園の天下の名石・藤戸石』★『秀頼の作った西大門から入り広大な伽藍に向かう』★『本堂の金堂(国宝)は秀吉の命で紀州湯浅から移築、本尊の薬師如来像がある』★『西大門の仁王像、運慶、快慶以前の現物残る傑作、なぜ国宝でないのか』
★⒑外国人観光客へお勧めベスト①『京都古寺・醍醐寺」のすべて➀桃山時代を残す秀吉 …
-
百歳学入門(37)『ロケットの父・天才老人・糸川英夫(86)の『加齢創造学』ー人間の能力は6,70歳がピークだよ
百歳学入門(37)―『百歳長寿名言』 『ロケットの父・天才老人・糸 …
-
百歳学入門(104)「シュバイツァー博士(90歳)の長寿の秘訣」「世界的チェロ奏者のパブロ・カザルス(96歳)」の「仕事が長寿薬」
百歳学入門(104) スーパー老人、天才老人になる方法— 『会社』には定年があっ …
-
『オンライン/鎌倉ウインドサーフィン動画』★『鎌倉材木座の青春の輝き』(2020/11/22)★『太陽がいっぱいの青い海にカラフルでキラキラ輝くウインドサーフィンの美しいチョウチョの舞が見えた。
鎌倉材木座の青春の輝き(2020/11/22am11)-太陽がいっぱいの青い海( …