前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(117)/記事再録☆「国難突破力NO1―勝海舟(75)の健康・長寿・修行・鍛錬10ヵ条」から学ぶ』★『⑩学問に凝り固まっている今の人は、声ばかりは無暗に大きくて、胆玉(きもったま)の小さい。まさかの場合に役に立つものは殆んど稀だ』

      2021/06/28

2015/01/01百歳学入門(92

勝海舟(75)の健康・長寿・修行・鍛錬10ヵ条

人間、長寿の法などというものはない。

余裕、綽綽(しゃくしゃく)として、物事に執着せず、拘泥せず、円転・豁達(かったつ)の妙境に入りさえすれば、運動も食物もあったものではないのさ。

人間は、身体が壮健でなくてはいけない。

精神の勇ましさ、根気の強さは、天下の仕事をする上になくてはならないものだ。

身体が弱ければ、この精神と根気とを有することが出来ない。

五十になると、もうじきに隠居だ何だとか言って、世の中を逃げる考へなど起すな。

島国の日本人は、その日暮らしで、五年、十年の先きはまるで考えていない。

昔の武士は、弓馬槍剣などの武芸を修業して鍛えたので、年は取っても身体が衰へず、精神も根気も盛んだった。

昔の武士は、身体を鍛えたが学問はその割にはしなかった。今の人のように、小理屈(こりくつ)を言うものは居なかった。一旦、国家に緩急の場合は決然と行動した。

学問に凝り固まっている今の人は、声ばかりは無暗に大きくて、胆玉(きもったま)の小さい。まさかの場合に役に立つものは殆んど稀だ。

 

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

「海舟先生氷川清話」(吉本襄 撰著 大文館書店 1933)より

勝海舟

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9D%E6%B5%B7%E8%88%9F

 

 人間長寿の法

 

 人間、長寿の法というものはない。俗物には、飲食を摂して、適度の運動を務めなさいと言へば、それでよいが、しかし大人物にはさうはいかない。

 

見なさい、おれなどは何程寒くっても、こんな薄っぺらな着物を着て、こんなせんべいのような蒲団の上に座って居るばかりで、別段運動といふことをするわけででないが、それでも気血はちゃんと規則正しく循環して、若い者も及ばないほど達者ではないか。

 

さあこれがいわゆる思慮の転換法といふもので、すなはち養生の第一義である。つまり綽綽(しゃくしゃく)たる余裕を存して、物事に執着せず拘泥せず、円転豁達(かったつ)の妙境に入りさへすれば、運動も食物もあったものではないのさ。

 

 

  勇猛の精神と根気を持続せよ

 

なにしろ人間は、身体が壮健でなくてはいけない。精神の勇ましいのと、根気の強いのとは、天下の仕事をする上にどうしてなくてはならないものだ。

 

そして身体が弱ければ、この精神とこの根気とを有することが出来ない。

つまりこの二つのものは大丈夫の身体でなければ宿らないのだ。

ところが日本人は、五十になると、もうじきに隠居だ何だとか言って、世の中を逃げ去る考へを起すが、どうもあれでは仕方がないではないか。

 

しかし島国の人間は、どこも同じことで、とにかくその日のことよりほかは、目が付かなくつて、五年十年の先きはまるで黒暗(くらやみ)同様だ。

 

それも畢寛、局量が狭くって、思量に余裕がないからのことだよ。もしこの余裕といふものさへあったなら、たとへ五十になっても、六十になっても、まだなかなか血気の若武者であるから、この面白い世の中を逃げるなどというやうな、途方もない考へなどは決して出ないものだ。

 

 

 それであるから、昔の武士は、身体を鍛へることには、よほど骨を折ったものだよ。弓馬槍剣、さては柔術などといって、いろいろ

の武芸を修業して鍛へたものだから、そこでおれのやうに年は取っ

ても身体が衰へず、精神も根気もなかなか、今の人たちの及ぶところでないのだ。

 

 もっとも昔の武士は、こんなに身体を鍛へることには、ずいぶん骨を折ったが、しかし学問はその割にはしなかったよ。それだから、今の人のように、小理屈(を言ふものは居なかったけれども、その代り、一旦、国家に緩急(かんきゅう)がある時は、命を君の御馬前に捧げることなどは平生ちゃんと承知して居たよ。

 

いはゆる、君辱(はずかしめ)らるれば、臣死すといふ教へが、深く頭の中に染み込んで居たから、いざといふ場合になると、雪のやうなる双肌を押しぬいで、腹一文字に掻き切ることを何とも思わなかったのだ。

 

しかるに、学問に凝り塊まってい居る今の人は、声ばかりは無暗に大きくて、胆玉(きもったま)の小さきことは実に、豆のごとしで、空威張りには威張るけれども、まさかの場合に役に立つものは殆んど稀だ。みんな縮み込んでしまう先生ばかりだよ。

 

 

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
百歳健康超人たちの長生き生活訓―天海(108歳)・平櫛田中(107歳)・三浦敬三(101歳)・三島海雲(96歳)

百歳学入門(32) 百歳健康超人たちの長生き生活訓― 天海(108歳)・平櫛田中 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㉓ 』『ニューヨークタイムズ』(7/10)が日ハム・大谷投手 を取り上げ日米野球論を展開、すごいね

    『F国際ビジネスマンのワールド・ …

no image
kamakura Windsurfing(鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン)(2021年5月5日午後1時)ー連休最後のこどもの日材木座、由比ヶ浜海岸には絶好の風力コンディションにサーファーがいっぱい

kamakura Windsurfing(鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン)(2 …

no image
片野勧レポート『太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災』ー①なぜ同じ過ちを繰り返すのか―仙台空襲と津波<上>

太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災① なぜ、日本人は同じ過ちを繰り返すのか ― …

no image
速報(172)『日本のメルトダウン』☆『柏市高線量汚染土、南相馬子供セシウム検出』『放射能汚染の時代を生きる異端”の研究者』

速報(172)『日本のメルトダウン』   ☆『柏市高線量汚染土、南相馬 …

no image
正木ひろし弁護士の超闘伝⑧全告白・八海事件の真相ー真犯人良心のうずきから「偽証を告白」

   ◎「世界が尊敬した日本人―「司法殺人(権力悪)との戦い …

no image
速報(124)<座談会・フクシマの教訓①>『事故原因、原子力村、事故処理、低線量被爆など徹底討論する』(上)

速報(124)『日本のメルトダウン』   <徹底座談会・フクシマの教訓 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(490)◎「新著『政治の起源』を フランシス・フクヤマが語るー講演動画(90分)』」(11/8)

 速報「日本のメルトダウン」(490)   ◎「『政治の起源 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(490)●「アベノミクスと円安、日本企業の利益を押し上げ」◎「世界的人気シェフ、アンソニー・ボーデインが見た東京」

  速報「日本のメルトダウン」(490)   ◎「 …

no image
日本作家超人列伝(41)小林秀雄、開高健、尾崎紅葉、金子光晴、高村光太郎らのジョークの一束

日本作家超人列伝(41) 小林秀雄、開高健、尾崎紅葉、金子光晴、高村光太郎、菊池 …