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池田龍夫のマスコミ時評(51)●『原発事故収束」へ5条件の緊急提言』★『原発再稼動「新安全基準」の危うさ』

   

 池田龍夫のマスコミ時評(51)
 
原発事故収束」へ5条件の緊急提言
★『原発再稼動「新安全基準」の危うさ
 
池田龍夫(ジャーナリスト、毎日新聞OB
 
 
        「原発事故収束」へ5条件の緊急提言
                             
 
 大飯原発3、4号機再稼動をめぐって、野田佳彦政権への風当たりは厳しい。与党・民主党内でも、「再稼動は〝安全神話〟の復活だ」との反対論が根強い。重要政策につき党を二分するような論議が行われているのに、メディアの取り上げ方が一方に偏っているように思われる。
 
      免震棟、ベント管などの整備が前提
 
 民主党の「原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)」(荒井聡座長)の論議の行方を注目していたところ、4月10日の総会で原発再稼動の前提5条件を掲げた緊急提言を決定、輿石東幹事長に提出した。①国会、政府事故調査委の事故原因の究明・解析②原子力規制庁法案を成立させ、新組織のもとでマニュアル作成③改正原子力災害特措法に基づく防災計画の策定④免震棟の設置⑤ベント管など放射性物質を除去するためのフィルターの設置――この「5条件」を政府に要望した意義は大きい。ところが、新聞各紙の反応は鈍く在京6紙の中できちんと報じたのは、東京新聞11日付朝刊(2面4段相当)のみ。
 
     メディアの問題意識が足りない
 
民主党内〝脱原発派〟の動きと軽視したとすれば、問題意識の欠如は甚だしい。「提言」は極めて良識的な内容であり、政府に拙速な判断の再考を促す提言と捉える視点こそメディアの責務と思う。東京新聞は「原子力規制庁の新組織や国会事故調の究明などを盛り込んだ5条件は、大阪府・市のエネルギー戦略会議が打ち出した8条件とも重なる項目もあり、大飯原発再稼動に反対する橋下徹大阪市長と足並みがそろった」とコメントしていた。
PTの緊急提言には「関係閣僚のみの判断ではなく、民主党としての見解をまとめることを強く求める」と付記されており、野田政権がどう処理するかが注目される。
 
    大阪府・市も「再稼動反対」へ動く
 
 大阪府・市の統合本部は4月10日、関西電力管内の原発11基を「可及的速やかに廃止する」など、同社定款の変更を求める8議案を決定した。大阪市は関電株9%を持つ筆頭株主で、神戸・京都両市との共同提案が成立しても、出席議決権3分の2以上の賛成が得えられる見込みはない。橋下市長はそんな事は織り込み済みで、「再稼動反対」の世論を盾に関電や野田政権を追い詰め、来る総選挙での躍進を狙っていると見られている。
 
    東京都が「東電」の筆頭株主に
 
 一方、東京都が東京電力の筆頭株主に躍り出たニュースにも驚かされた。昨年9月末時点の東電の株主構成は①第一生命(3・42%)②日本生命(3・29%)③東京都(2・66%)の順だったが、両生命保険会社が3月末までに株の一部を売却したためという。東京都は、東電がビルや工場など大口向け電気料金を値上げしたことに反発。6月末の株主総会で「株主提案権を行使して、株主総会の場で東京都の意見を表明していく方針を練っている。
 東西マンモス自治体と電力会社との駆け引き、攻防の行方はいかに? 安全で公正な電力供給を目指し、知恵を出し合ってもらいたいものである。
 
原発再稼動「新安全基準」の危うさ
                                
 
 野田佳彦首相と3閣僚が4月6日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおいい町)再稼動について協議し、その条件となる新たな安全基準案を正式決定した。この基準は、原子力安全・保安院が先月まとめた30項目の安全対策を基にしている。政府の見直し要請に応えるため、短期的に実現可能なものを抜き出して報告した印象が強い。
 
       わずか2日間、あの「保安院」が決定とは…
 
 高知新聞4月8日付社説は、「保安院が基準案の提示に費やしたのはわずか2日間だ。福島原発事故の検証もまだ終わっていない。絶対安全と言える対策などあり得ないのに、いま再稼働させて安全性を確保できるのか。新基準からまず受けるのは『付け焼き刃』『合格ありき』の印象だ。……そもそも基準案を作ったのがお座なりな審査ぶりで信頼を失った保安院では『安全』の説得力に乏しい。この欄で繰り返し主張しているように、原子力規制庁の早期発足へ、関連法案の審議を加速するべきだ。大飯原発が再稼働しなければ5月上旬に国内で稼働中の原発はゼロになる。政府はそれまでに再稼働にメドを付けたい思惑があるのだろう。だが、今後夏の電力需給の見通しを精査していく中で、前提が変わる可能性もある。再稼働の条件が整っていない中での前のめりな姿勢は、原発周辺自治体の不信感を強めるだけだ」と、「新基準」拙速決定の危うさを指摘していた。
 
      若狭湾の風下〝近畿の水がめ〟琵琶湖が心配
 
4月6日付「ロイター通信」が、嘉田由紀子・滋賀県知事の単独インタビューを報じていた。嘉田知事の鋭い分析・指摘に共感する点が多く、その一部を紹介して参考に供したい。
「新基準は見切り発車ではないか。福島並みの事故が若狭で起きたら一大事だ。風下の141万滋賀県民だけでなく、琵琶湖は京都、大阪、神戸1450万人の命の水源なので、万一のことがあれば近畿の産業も生活も成り立たなくなる。▽30項目の安全対策のうち、電源の配置など既に出来ているところもあるが、防潮堤や建屋の免震強化、ベントの際のフィルター設置など出来てない項目がある。数年間も要するそれらを外して、出来たところだけで基準をクリアしたというのは納得しがたい。▽国会の事故調査委員会の最終報告書さえまだ出来ていない。若狭はかなり活断層もあり、地震の巣窟。地震の影響などの原因究明が出来てないのに、対策が取れたというのも論理的に合わない。国会事故調が重い判断を行い、原因究明を公表してもらわないと国民は納得しないと思う」。
 
     「再稼動の見直し」に取り組め
 
政府が、この「新基準」を地元住民にゴリ押しすれば、新たな混乱も危惧される。在京6紙のうち「朝日」「毎日」「東京」は、高知新聞と同趣旨の社説を掲げ、「原発再稼動を急ぐな」との警告を発していた。東北各県紙はもとより、大部分の県紙が原発再稼動を危惧している現状を、政府は真摯に受け止め、「原発政策の抜本的見直し」を急ぐべきである。
 
(いけだ・たつお)1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。
 
 

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