産業経理協会月例講演会>2018年「日本の死」を避ける道は あるのか-日本興亡150年史を振り返る③
2015/01/01
<産業経理協会月例講演会>
2013年6月12日
2018年「日本の死」を避ける道は
あるか–日本興亡150年史を振り返る③
ジャーナリスト/静岡県立大学名誉教授/
前 坂 俊 之
◎「前坂俊之HP 地球の中の日本、世界の中の日本人を考える」
★『前坂俊之youtubeチャンネル』
http://www.youtube.com/user/TOSHIYUKI1812
明治のトップリーダーは凄い!
人口減少、少子超高齢社会の到来と国家債務の激増という二つの深刻かつ複合的に絡み合う難問に直面し、現代日本のリーダーは惰眠を貪っているかのような感があります。
こうした現状であるからこそ、徳川幕府崩壊後の近代国家建設期、すなわち明治時代のトップリーダーの戦略について振り返ってみる必要がありそうです。たとえば、日露戦争について考えてみても、当時世界一の軍事大国であったロシアをアジアの新興国・日本が破ったことは、世界史的な大事件であったはずです。
日露戦争については、東郷平八郎と日本海海戦とか、二百三高地の旅順といった軍事的な面にばかりが強調される憾みがありますが、そこで注目すべきことは、日本海海戦が最新の無線技術を駆使した情報戦での勝利であったということです。
当時の海軍のトップは、マルコーニによる無線通信の発見の重要性について正しく認識し、連合艦隊にこれを配備していました。この無線の配備と同時に、戦争が始まる前に児玉源太郎は、日本、朝鮮、台湾周辺に海底ケーブルを敷設し、ネットワークを構築していたことも注目に値します。
このようなシステムを構築してバルチック艦隊を迎え撃ったわけです。要するに、明治のトップリーダーたちは、最新のIT技術に対する優れた理解を持ち、それを十分使いこなすことができたのであり、こうしたインテリジェンスを持っていたことこそが、情報戦略に見事に成功する要因として作用したのです。
また、明石元二郎という陸軍参謀本部の大佐をヨーロッパに派遣し、ロシア革命を起こしたレーニンに面会させ、レーニン率いるボルシェヴィキ党に資金を提供し、ロシアの体制を内部から崩壊させることまで画策しています。
さらに、当時ロシアの植民地であったポーランド、フィンランドにも手を伸ばして、反ロシアの国民運動の火を焚きつけました。こうした謀略活動を取り仕切っていたのは山県有朋だったようですが、それに100万円を投入しています。当時、国家予算が2億3,000万円ですから、これを現在の国家予算で単純計算すれば、大体5,000億円ということになります。
優れていた外交のインテリジェンス
また、当時のトップリーダーたちは外交面でも優れたインテリジェンスを発揮しています。
たとえば、ロシアと戦うに先立って日英同盟が締結されていますが、そこには秘密裏に秘密情報軍事協定が盛り込まれ、日英間のスパイ(諜報)、軍事情報を全面的に交換することとされていました。7つの海を制したと言われた当時の大英帝国の情報網は、対象の広さもさることながら、その内容の精度も高いものでしたので、世界中から集められたロシアの軍事情報、ロシアに対峙する運動に関する情報が日本側に提供されました。
日本はこうして得た多様で質の高い情報によって日露戦争の戦略、戦術を組み立てることができたのです。小が大を制するには何といってもこういうインテリジェンスが最も肝心です。
戦争とは外交の一手段ですから、戦争をせずに外交によって勝利に至るのがベストです。いまの北朝鮮を見ても、あれだけ小さな国であるにもかかわらず、大国アメリカを引き廻していることに感心させられます。
つい先日も、韓国との自由貿易特区を拒否したかと思えば、またそれを再開するなど、あの手この手を使って情報を撹乱しており、そういう点で、北朝鮮の瀬戸際外交は困ったことではありますが、一つの外交的インテリジェンスの発揮であると捉える必要があるのかもしれません。
それに引き換え、日本外交は全くお粗末です。明治以降150年近い間、日本外交の勝利は日露戦争に先立つ日英同盟だけであったのではないでしょうか。
日露戦争が始まると伊藤博文はその子分であり農商務大臣を務めていた金子堅太郎にある指令を出しました。
それは「アメリカに行ってセオドア・ルーズベルト大統領を工作せよ」というものです。
金子は明治の初め、日本から最初にハーバード大学に赴き、そこで学んだ留学生でした。同じクラスではありませんでしたが、ルーズベルトと同じ時期に学んでした仲で、金子とは親友だったのです。
その金子が日露戦争と同時にアメリカに派遣され、ホワイトハウスに赴いた時のルーズベルトの最初の発言が「この戦争は日本が勝つ」というものだったそうです。
そして金子はルーズベルト大統領の別荘や自宅を訪れて一緒に食事をしたり、一緒にハンティングなどをして、親友同士の付き合いをしながら、ルーズベルト大統領の持つロシアの秘密情報を入手し、「日本を応援する」との言質を引き出したのです。
要するに、アメリカという大国の大統領との個人的関係を使って情報を入手し、なおかつアメリカの世論を日本贔屓にしたのです。このような巧妙な外交は世界の外交史を見てもあまり見付けることができないのではないでしょうか。
まさに優れた外交インテリジェンスの見本と言うべきです。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(14)記事再録/『第3の敗戦を迎えた今、政治家に告ぐー150年前の「岩倉遣米欧使節団」の国家戦略と叡智に学べ
2012/09/22   …
-
-
速報(103)『日本のメルトダウン』ー『世界は破滅が待っておりー日本は原発放射能の被曝を待っているのか!?』
速報(103)『日本のメルトダウン』 『世界は破滅が待っておりー日本は原発放射能 …
-
-
速報(440)『日本のメルトダウン』『参議院選結果は『自民の圧勝か?、どうなるのか」ー各社世論調査前の緊急座談会(6/5)①』
速報(440)『日本のメルトダウン』 ●『 …
-
-
「トランプ関税と戦う方法論⑬」★『日露戦争勝利と「ポーツマス講和会議」の外交決戦始まる①』★『ロシア皇帝ニコライ二世は「あの黄色子猿の日本軍」などは簡単に勝てる」と侮っていた』★『皇帝が寵愛したロシア総司令官・アレキセーエフと陸軍大将・クロポトキンの2重指揮体制が対立し分裂、混乱、敗戦した』
2022/04/04 オンライン講座/ウクライナ戦争と日 …
-
-
『F国際ビジネスマンの『世界漫遊・ヨーロッパ・カメラ・ウオッチ(16』★『オーストリア・ウイーンぶらり散歩⑥』(2016/5) 『世界遺産/シェーンブルン宮殿』その広大な庭園に驚く(上)」★『6才のモーツアルトが女帝の前で演奏し、アントワネットと遊んだと言う逸話がある』
2021/11/26 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(173) …
-
-
「世界最先端技術<見える化>チャンネル」『TSMC関連最新動画ニュース』★『半導体受託生産の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はソニーグループの半導体製造小会社の横の熊本県菊池郡菊陽町に建設予定。熊本空港、熊本市、阿蘇山との地理的関係などを現地レポートする。
「世界最先端技術<見える化>チャンネル」 工場建設のための造成工事 …
-
-
日本の最先端技術「見える化」チャンネル(6/25-27)②ものづくり大国日本は3Dプリンタ のシェアは3.3%と完全に出遅れ
●<日本の最先端技術の「見える化」チャン …
-
-
高杉晋吾レポート⑧☆衝撃内幕レポート!!『民主党が原発撤退を言い出せない訳は?、なぜ!』
高杉晋吾レポート⑧ ☆衝撃内幕レポート!! 民主党が原発撤退を言い …
-
-
『Z世代への日本戦争学講座』★『世界海戦争史上、空前絶後の勝利だった日本海海戦ー山本権兵衛のリーダーシップとインテリジェンスに学ぶ』
2009/04/08 2015/01/02、記事再編集 1・・パリで最高にもてた …