<ヨーロッパ3国の面白ミステリーとは⑥●「ドイツの『ベルリンの壁』の崩壊」「イタリア男の流儀」「スウェーデン妖精の国」
●「ドイツー「ベルリンの壁の崩壊」は勘違いからの発表ミス」
◎「イタリアーイタリア男の流儀エスプレッソとバールとは何・・」
◎「スウェーデンーメルヘンの児童文学者を輩出した妖精の国」
前坂 俊之(ジャ-ナリスト)
ドイツー「ベルリンの壁」の崩壊は勘違いからの発表ミス
20世紀後半の世界は「米ソ対決」「東西両陣営の冷戦」の時代である。「ベルリンの壁」の崩壊(1989)が20世紀の終焉と21世紀の幕開けを告げた事件である。ベルリンの壁の崩壊によってドイツ統一、東欧革命、東欧の社会主義政権やソ連も崩壊と連鎖的につながっていったが、この崩壊の原因はニュース誤発表から起きた。
ベルリンの壁は1961年、当時の西ベルリンと東ベルリンを分断するために建てられた。この壁を命がけで越えた人は4万人、壁を越えようとして殺された人が81人 にのぼる悲劇の壁である。
1989年、ハンガリーは東西の人の移動の自由化を認め、東ドイツ人がハンガリーを経由して西ドイツへ脱出する人が3万人にも上った。東ドイツ国内でも移動、旅行の自由化を求めて大規模なデモが発生。弱った東ドイツ内務省では「外国旅行を無条件で認め、出国ビザを遅滞なく発給する」と政令案を作った。
その政令案には「報道機関へと発表は明日(11月10日)午前4時以降とする」となっていた。
1989年11月9日、報道官に就任したばかりのギュンター・シャボウスキー(政治局員)は詳しい内容を把握せず書類を受け取り午後6時、世界各地からの200人もの記者会見に臨んだ。
ここで、記者の質問に答えて「東ドイツ国民は自由に外国旅行できる」「東ドイツ国民は今すぐ全ての国境通過過点からの出国が認められます」と報道解禁前の内容を
間違って発表してしまった。
この会見はすぐさまテレビで大々的に報道され、東西両方から何万人という人々がベルリンの壁に押し寄せてきて大混乱、検問所での流血の惨事を恐れて東ドイツ内務省は午後11時30分、ついに30年間もドイツ国民を分断していたベルリンの壁を解放した。広報官の勘違いのミス発表が平和的に歴史を大きく変えたのである。
イタリアーイタリア男の流儀エスプレッソとバールとは何・・
コーヒーはヨーロッパでは17~18世紀にかけて広く飲まれるようになった。最初にコーヒー豆と砂糖を煮出すトルココーヒーが入ってきて、ヨーロッパ各国にカフェ・オレ、カプチーノ、アメリカンに発展しいき、イタリアでは風味のある濃いエスプレッソが定着した。エスプレッソマシンの原型はミラノの人が作り、ナポリのエスプレッソがおいしいといわれる。
議論好きのイタリア人はエスプレッソが大好きで朝起きたらコーヒーを飲み、出社して仕事の前にはコーヒーを飲み、ランチの後にも一日に何度もコーヒーを飲みながら、おしゃべりをする。
そのコーヒーを飲んでは議論する場所が「バール」。アメリカの西部劇でおなじみの酒場は馬をつなぐ「棒」(Bar)からきており、日本の「バー」とも同じ。ただし日本の「バー」では酒が中心だが、イタリア式はコーヒー店も兼ねており、男のたまり場、議論の場、地域の飲み屋なのだ。
店ごとにカラーがあり、サポーターのサッカー酒場で、ワイワイガヤガヤ、3S(政治、サッヵー、セックス)で、話が盛り上がり、ホットスペースにもなる。イギリスのパブ、フランスのサロンと同じようなもの。昔は広場でよくやっていたような男の井戸端会議的な演説が、今はバールであり、「バールは小さな国会」ともいわれるイタリアの社会を象徴して存在なのである。
そのためか、イタリアの男の子はワインは小さいときから飲んでいるが、「コーヒーは18歳から飲む」「バールに行ってコーヒーを飲めば、大人の仲間入り」とも言われているほどの、イタリア式の男の流儀なのだ。
スウェーデンーメルヘンの児童文学者を輩出した妖精の国
スウエーデンといえば世界一の高福祉国家、ノーベル賞を出す国として有名だが、世界的な児童作家を輩出していることはあまり知られていない。首都ストックホルムは北緯六〇度線に位置し、極東ではカムチャツカ半島に相当する。日照時間は少なく、冬至には太陽は六時間しか出ていない。来る日も来る日も厚い雲に覆われた暗い日々が続き、光あふれる春が待ち遠しい。太陽へのあこがれる自然条件からメルヘン、おとぎ話、児童文学が生まれた。
女性で初めてノーベル文学賞を受賞したセルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940一九四〇)が9歳児の地理の読本として書いた『ニルスのふしぎな旅』(1906)は世界的中の子供に愛読されている。大江健三郎も大きな影響を受けた。
内容はスウェーデン南端に住むワンパク少年ニルスは小人の妖精トムテにいたずらをして魔法をかけられ、小人に変身させられる。小人となったニルスはガチョウの背に乗ってガンと一緒に旅をして,同国を1周するがその先々で様々な動物たちと触れ合いニルスの心は次第に成長して行く物語。この小説を読む子どもたちは、スウェーデンの国土、自然、文化遺産の数々を巡りその意義を悟ってゆくというもの。
「長靴下のピッピ」(1944)の生みの親、アストリッド・リンドグレーン(1907-2002)も
児童文学の世界で揺るぎない地位を築き同シリーズは全世界で1億3000万部以上を売った。その後、「名探偵カッレくん」、
「やかまし村の子供たち」「『やねの上のカールソン」、「エーミルと小さなイーダ」など、数多くのキャラクターを生み出した
国民的な作家である。
また、エルザ・ベスコフ(1874-1953)も代表作『ペンテルとロッタのクリスマス』など多作でラーゲルレーヴに匹敵する児童絵本作家として、自然への愛情たっぷりの物語と緻密な水彩挿し絵で児童を虜にしており、世界的に有名。
関連記事
-
-
『東京裁判のその後』ー裁かれなかったA級戦犯 釈放後、再び日本の指導者に復活した!
裁かれなかったA級戦犯 釈放後、再び日本の指導者に復活! …
-
-
近著・申元東 著, 前坂俊之 監修『ソニー、パナソニックが束になってもかなわない サムスンの最強マネジメント』徳間書店 (8月27日刊行)
近著『ソニー、パナソニックが束になってもかなわないサ …
-
-
『太平洋戦争敗因の導火線となった統帥権干犯問題』
2009,6,10 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(967)-『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(下)』★『米中通商協議の期限は3月1日』★『中国経済失速へ!「中所得国の罠」にはまったのか』★『中国の「テクノナショナリズム」「<中国製造2025>のスパイ大作戦』
世界/日本リーダーパワー史(967) 『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショ …
-
-
速報(175)『日本のメルトダウン』『人間はいかに生きるべきかー小出裕章ら異端研究者たち』(毎日放送ドキュメンタリー)ほか
速報(175)『日本のメルトダウン』 『人間はいかに生きるべきかー小出裕章ら異端 …
-
-
『オンライン講座/独学/独創力/創造力の研究①』★『『日本の知の極限値』と柳田国男が評したー地球環境問題、エコロジー研究の先駆者・「知の巨人」南方熊楠のノーベル賞をこえた天才脳はこうして生まれた(上)』
日本の歴史上、最大の世界的な天才とは一体誰でしょうか>→南方熊楠ですよ &nbs …
-
-
『昭和史キーワード』浜口雄幸内閣のロンドン海軍軍縮条約批准【1930年)に対して、海軍艦隊派が猛反対し統帥権干犯問題を起こし、軍部の政治介入を招き、 政党政治に終止符をうち、軍部専制を許す引き金となった。
『昭和史キーワード』 浜口雄幸内閣のロンドン海軍軍縮条約の批准 に対して、海軍艦 …
-
-
『Z世代への現代史復習問題』<ウクライナ侵攻1年>―戦争は『予断と誤断』で起きる]米国の「シリコンカーテン」(半導体制裁)☆『世界外交史の奇跡ールーズベルト大統領と金子堅太郎の友情外交で日露戦争に勝利した』
ウクライナ侵攻1年―戦争は『予断と誤断』で起きる(23年2月) & …
-
-
『Z世代のための日本・インド交流史講座①』日本リーダーパワー史(33)『日本とインドの架け橋』―大アジア主義者・頭山満とインド人革命家・ラス・ビハリ・ボース』
2010/01/19 日本リーダーパワー史(33)記事再録 前坂 …
-
-
日本リーダーパワー史(698)日中韓150年史の真実(4)「アジア・日本開国の父」ー福沢諭吉の「日中韓提携」はなぜ「脱亜論」に一転したか」③<日中韓のパーセプションギャップが日清戦争 へとトリガーとなる>
日本リーダーパワー史(698) 日中韓150年史の真実(4)「アジア・日本開国 …
