前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

終戦70年・日本敗戦史(78)戦後70年―決して忘れてはならない敵国の温情、中華民国・蒋介石は「徳をもって怨みに報いる」と宣言①

      2015/05/27

 

終戦70年・日本敗戦史(78)

戦後70年―決して忘れてはならない敵国の温情、

「戦後一早く経済復興できたのは自力本願よりも他力本願」①

  • 中華民国・蒋介石は「徳をもって怨みに報いる」と宣言、日本への報復禁止②戦争賠償の放棄③占領軍派遣中止をきめた。

  • マッカーサーの米国一国支配の日本占領政策によって、ドイツ、朝鮮のような分断国家になることを免れた。

  • ソ連はあくまで北海道占領、日本分断を企てたが、マッカーサー、蒋介石が共産化を一致して阻止した。

    以下は「蔣介石秘録⑭日本降伏」(サンケイ新聞社、1982年刊)より。

「 徳をもって怨みに報いる――日本、降伏文書に調印」

一九四五年九月二日、連合軍にたいする日本の降伏調印が、東京湾に停泊した米艦ミズーリ号上で行われた。

日本代表の外相・重光葵、参謀総長・梅津美治郎が、まず降伏文書に調印したあと、連合軍票司令官マッカーサー、米国代表二ミッツにつづいて、中国代表・徐永昌、さらに各適合国代表が署名した。

『雪恥の日記』(1928年の済南事件以来雪続けていたもの)は十年以上も続いてきた。きょう、わが国最大の敵国日本は、東京湾においてわれわれ連合国に禁件投降をした。50年来の最大の国恥と私(蒋介石)が歴年受けてきた圧迫と汚辱は、ここにいたって、ことごとくそそぐことができた。

が、旧恥はそそいだにもかかわらず、新恥が次々に生じている。この恥をいつの目にそそげるかはわからない。励まなければならないのだ。これからの雪恥とは、書にこの新恥をそぐことなのだ。とくにこの日、しるしておく』(九月二日の日記)

この日、中国軍は空路、南京、上海にはいった。

中国戦区の受降典礼は、九月九日午前九時、南京の旧中央軍校におかれた陸軍総部の大礼堂で行われ、日本の支那派遣軍総司令官・岡村寧次が降伏文書に署名、中国陸軍総司令・何応欽に提出した。

『きょうは革命をめざして最初の起義を広州で起こした(一八九五年旧暦九月九日臣第2巻参照)記念日である。そして日本の投降典礼がまさにきょう南京で挙行された。じつに、本党(中国国民党)の五十年にわたる革命の光栄と勝利の日である。

しかし、東北の失地はなおソ連軍の手にあり、新疆の重要地区もまた、ハーミにあるソ連ウルムチのカイライ匪賊の反乱により喪失している。ウルムチ(新壇省の省都)も恐慌状態におちいっており、夕べのことを朝に予測するのもむずかしい状況にある。また、外蒙問題も決着がついていない。

人々は今日をもって栄誉としているが、私(蒋介石)は深い憂慮と屈辱を感じている。 ああ、抗戦は勝利したが、革命はいまだに成功しない。

第三国際(コミンテルン)の政策は打ち破られておらず、共匪も粛清されていないのでは、革命が成ったとはいえないのである』(九月九日の日記)

ソ連、中国共産軍のねらいは日本の武器弾薬

長年の苦闘を経て、ようやく勝利を手にした中華民国にとって、ソ連と共産党は、新たな国恥″の根源であった。

ソ連は中ソ同盟条約を早くも踏みにじり、東北地方占拠のかまえをみせ、さらに新疆省のウ-スー、精河などの中国軍陣地に爆撃を加え、対華侵略を開始していた。

中国共産党もまたソ連の力を借り、勝利の果実をかすめとろうと策動していた。

彼らがもっと欲しがったのは、日本軍の持っていた武器弾薬の類である。そのねらいは、いうまでもなく国民政府に対して武力による反乱をおこすところにあった。

日本軍の武装解除については、連合軍最高司令部の第一号通告によって、東三省を除く中国、台湾、および北緯一六度以北の仏領インドシナの日本軍百二十八万余人は、すべて中国軍にたいして投降することに決まっていた。

このため、中国陸軍総司令部は、全土を十六の受降区にわけ、各戦区、各方面軍ごとに日本軍の投降受け入れを実施した。しかし、共産軍はその命令にしたがわず、各地で勝手に日本軍を武装解除しようとし、また輸送路を破壊して、政府軍の接収地点到達を妨害しようとした。

『党と国の危機は、1931(満州事変)以来、今日よりはなはだしかったことはなかった。もしわずかでも慎重さを欠けば、ソ連のスターリンと毛沢東と共産党が、私を罪におとしいれる口実となる。個人の失敗は小事だが、民族の存亡、前途は重大で、はなはだしくは永遠に回復不能におちいる。

 

現在の唯一の政策は、国内各地区の敵軍の投降と武装解除を受けつけ、ついで東北の失地を接収して、ソ連が条約の義務履行を第一とせざるをえないようにすることである。敵(日本軍)はまだ武装を解除されておらず、西方の辺境では不穏な動きもある。.ソ共と敵倭につけ入らせるところとなれば、中国を分裂、混乱させ、収拾できなくなるだろう。そうなっては革命はまさにすべて失敗におわる』(九月九日、前週反省銀)

つづく

 - 戦争報道

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(947)ー『日中関係150年史』★『日中関係は友好・対立・戦争・平和・友好・対立の2度目のサイクルにある』★『日中平和友好条約締結40周年を迎えて、近くて遠い隣人と交友を振り返る」★『辛亥革命百年の連載(31回)を再録』③(16回から31回まで)

★★(再録)日中関係がギグシャクしている今だからこそ、もう1度 振り返りたいー『 …

no image
『オンライン講座/太平洋戦争の研究』★「生きて虜囚になることなかれ」の戦陣訓こそ日本軍の本質』★『「戦陣訓」をたてに、脱走事件を起こした「カウラ事件」もあまり知られていない。』

    2015/06/01 &nbsp …

no image
世界/日本リーダーパワー史(965)ー2019年は『地政学的不況』の深刻化で「世界的不況」に突入するのか』④『2021年の米大統領選でトランプ再選の目はない。』★『今年は日本は外交決戦の年になる,安倍首相の地球儀外交の真価が問われる。』

2021年の米大統領選でトランプ再選の目はない。 中間選挙の結果、米議会は下院は …

『目からウロコの世界史大発見クイズ! 20世紀を変えた世界最大の戦争とは何ですか❓」★『答えは?ー ◯◯◯◯です。』

答えは・・・・? 日露戦争の勝利、和平講和(1905年)は北米大陸を発見したコロ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(164)記事再録/『袁世凱の政治軍事顧問の坂西利八郎(在中国25年)が 「日中戦争への原因」と語る10回連載』●『万事おおようで、おおざっぱな中国、ロシア人に対して、 日本人は重箱の隅を小さいようじでほじくる 細か過ぎる国民性が嫌われて、対立がエスカレーとし戦争に発展した』

       2016/09/13日中韓 …

『Z世代のための昭和100年、戦後80 年の戦争史講座』★『「元寇の役」はなぜ勝てたのか⑸』★『当時の日本は今と同じ『一国平和主義のガラパゴスジャパン』★『一方、史上最大のモンゴル帝国は軍国主義/侵略主義の戦争国家』★『中国の『中華思想』『中国の夢』(習近平主義),北朝鮮と『核戦略』に共通する』

 2017/12/01日本の「戦略思想不在の歴史」⑸ 記事再編集 クビ …

『Z世代への現代史復習問題』<ウクライナ侵攻1年>―戦争は『予断と誤断』で起きる]米国の「シリコンカーテン」(半導体制裁)☆『世界外交史の奇跡ールーズベルト大統領と金子堅太郎の友情外交で日露戦争に勝利した』

  ウクライナ侵攻1年―戦争は『予断と誤断』で起きる(23年2月) & …

『中国近代史100年講座』★『辛亥革命で孫文を助け革命を成功させ革命家・宮崎滔天兄弟はスゴイ!、宮崎家は稀有な「自由民権一家」であった。(下)』★『1905年(明治38)8月20日、東京赤坂の政治家・坂本金弥宅(山陽新聞社長)で孫文の興中会、黄興の華興会、光復会の革命三派が合同で「中国同盟会」の創立総会が開催され、これが『辛亥革命の母体となった。』

  2011/10/22 『辛亥革命100年』・今後の日中関 …

no image
『オンライン講座/日本教育失敗の研究』★『「死に至る日本病(日本の悲劇)』★『 日本人には何が欠けているのか?論理の技術、科学的思考法だ。西欧の近代合理主義と中国文化圏(古代中華思想)を分ける重大な方法の違いは、中国・日本の教育制度は.ただ記憶力だけを対象としていることだ』と150年前の明治維新後に来日した『フランス新聞』が指摘している。現在もこの状態が続く日本。

2014年4月21日  日本リーダーパワー史(494)記事再 …

no image
 日中朝鮮,ロシア150年戦争史(50)ー副島種臣外務卿(外相)の証言②『明治の外交の争点はいつも朝鮮問題』 日清、日露戦争の原因は朝鮮をめぐる清国、 ロシア対日本の紛争である。北朝鮮問題のルーツ・・

 日中朝鮮,ロシア150年戦争史(50) 副島種臣外務卿(外相)の証言―② 『明 …