『Z世代のための昭和政治史講座/大宰相・吉田茂論①」★『<国難を突破した吉田茂(84歳)の宰相力、リーダーシップ、歴代宰相論』★『首相なんて大体バカな奴がやるもんですよ』★『明治と昭和のリーダーの違い、総理大臣バカ論』★『文芸春秋』1962年2月号の「私は隠居ではない」より)』
2011/3/11/福島原発事故があった 半年後の09/22 日本リーダーパワー史(194)記事再録/再編集
「首相なんて大体バカな奴がやるもんですよ。首相に就任するや否や、新聞雑誌なんかの悪口が始まって、何かといえば、悪口ばかりですからね、この世にこんな大バカはないように書かれますよ。そんなバカばかり集まって話をしたって面白かろうはずがない。(吉田茂の「私は隠居ではない」より)
明治と昭和のリーダーの違い、学歴が目をくもらせる
明治の軍人と先頃の戦争の時の将軍連と同じ日本人と思えない、というようなことをよく聞きましたがね。明治の将軍連は士官学校出ではないんでね。寺子屋でやって来ているわけでしょう。古典というものが、廻りくどいようでもいいところがあるんでしょうね。
教育というものは便利一方だけじゃいけないんじゃないでしょうかね。日本の士官学校教育というものは、どんなものか知らないが、何か不足するものがあったのではないでしょうかね。
海軍になると、卒業すると練習艦隊で世界を廻って来るから、世界を見る眼が開けてよほど違って来ると思いますがね。戦争直後の何にもない、一面の焼野原だった日本、生産力の殆どなくなってしまった日本が、よくここまでやって来たと思いますよ。何と云っても日本人が勤勉で優れているところがあると考えていいんでしょうね。
中国が世界一の文明国であった唐代の頃にしても、奈良時代にすぐそれをとり入れていますからね。遠く離れた島533国でありながら、地続きの南方の国々より優れた文明を造昭和37年より上げていたんではないでしょうかね。
日本人は優れている、「非常に興味ある人種だ」と云った外国人があるが、たしかにそうでしょうね。戦後の復興というか繁栄に、みんな眼を見はっていますよ。
やれ世界大学ランキングの低い東大だ、慶応だの、松下政経塾など、世界に出れば何の役にもたたない、せめてハーバード、ケンブリッジ、オックスフォードで将来の米英大統領、エリートと友人関係を築け、明治の金子堅太郎(農商大臣)、小村寿太郎(外相)はハーバード大で、ルーズベルト大統領と同窓生、それで、日露戦争のポーツマス講和条約は有利に進んだ。
落第首相・鳩山由紀夫の祖先の鳩山和夫(エール大学大学院、国際法の名誉博士)ではないか、2代3代目の語学力も国際競争力もない市会、県会議員クラスのノホホン2世3世議員に一体何ができるのか。選挙制度、政治家の資格、政治家の教育のすべてを見直し、エリート、リーダー教育を早期に考え直す必要がある。(前坂の言)
イギリスの紳士の資格というのを聞いたことがあるが、ライディング(馬に乗ること)にシューティング(銃猟)にドリンキング(酒を飲むこと)でしたかね。リーディング(本を読むこと)なんて含まれていませんよ。
大分以前のことだが、皇太子殿下(平成天皇)にお眼にかかることがありましてね、その時、今の話を申し上げて、読書なんてことは、あまりなさらないでも宜しい、と申し上げたら、お付きの宮内官が渋い顔をしていましたね。
元首相というと、誰がいるのかな…ああ、東久邁さん、あの方の内閣に私は初めて外務大臣として起用されたんで恩誼があるんですがね。あの方は大正の後半、ヨーロッパに来ておられてね、私もイギリスにいた頃で、侍従武官の溝口伯爵が私と縁続きでもあり、前から懇意にしていたもんだから、チョイチョイお眼にかかることがありましたがね、なかなか聡明で直感力も確かだし、お考えになることが鋭くてね、皇族にもこういう方がおありかと感心させられたものでしたがね。
その次が幣原さん。幣原さんは死んじゃったし、それから私となるわけだが、私は御承知のように、なりたくってなったわけでないので、鳩山君の追放のあと頼まれてなったわけでね。暫くの間というようなつもりだったが、その後、鳩山君が半身不随になったりして、……鳩山君が俺に譲れ、譲れというのを「大切なお役を中気病みに任せられるか」と云って大層憎まれてね。といってお国のためを思えば無責任なことは出来ませんからね。
鳩山君とは昔は「俺、貴様」の仲でね、何でも云えたんだが、矢張り病気をしてから変ってね、冗談も云えなくなりましたよ。
誰の時だったか、築地の本願寺で盛大な追悼会があってね、私も行った。行って見ると鳩山君が来ている。緒方君が隣に坐っていたが席を譲ってくれて隣同士に坐っていたわけなんだ。その内、焼香が終わって鳩山君が、「このままもう帰ってもいいのか?」と聞くから、
「ああ、いいんだ。だが僕も今帰ると、君と一緒に並んで.歩かなくちゃならないからもう少しいるよ」 と云ったら怒ってね。
「そんなにいたきゃあ、死ぬまでいろッ」と云って帰って行きましたがね。
その次が、片山内閣か。片山君とは何度か会ってますがね、普段つき合いがないから話がうまく運ぶかどうかな。石橋君はまあ、口が不自由だから気の毒でね、となると、あとは岸君、池田君というわけだろうが、どうです。あんまり面白い話は期待出来ないでしょう。私はイヤですよ。
欧州の自由国家間では相互の国境を実質的に撤廃して欧州を一国として見るような動きになって来ていますね。それでこっちでも、パシフィック・パクト(太平洋協約)というようなものを造って、カナダ、アメリカ、濠州などのような太平洋を囲む諸国と連繋を密にして対抗しなくてはと思うのですがね。
アジア・アフリカ諸国と同調しなくてはいけない、日本はアジアの一員だからという論がある。それはそうだが、戦後に独立したアジア・アフリカの国々は今が明治維新なんですからね。昔からの独立国の日本とは、事情が違うところがありますよ。これからの発展に期待するのはいいが、誤った優越感を持たず、その国々の本質を過大評価しないように、理解と同情を持って行くべきでしょうね。
こんなことを云うと、すぐ「米国の植民地化反対」などと騒ぎ出す一派があるが、どういうわけですかね。昔の日英同盟の時などは全くそんなことがありませんでしたね。当時の英国と日本の国力の相違なんか、非常なもんでしたが、同盟成立によって植民地化なんてことを恐れる者は一人もなかった。すべて対等の誇りを持ってやっていた。これからも対外的に誇りを忘れずにやっていきたいと思いますよ。
箱根会談の折に、ラスク長官が寄ってくれてね。いろいろ話して行ったんですが、その時、日本がリーダーとなって、東南アジアのユニティ(統合)を図ってくれというんですよ。それは請け合いかねる。日本の国内のユニティが出来ないで困っているくらいなんだからと云って断ったんですがね。
『文芸春秋』1962年2月号「私は隠居ではない」
関連記事
-
-
『オンライン/明治外交軍事史/読書講座』★『森部真由美・同顕彰会著「威風凛々(りんりん)烈士鐘崎三郎」(花乱社』 を読む②』 ★『川上操六陸軍参謀次長と荒尾精はなぜ日清貿易研究所を設立したのか』★『鐘崎三郎は荒尾精に懇願して日清貿易研究所に入ったが、その「日清貿易研究所」の設立趣旨は欧米の侵攻を防ぐためには「日中友好により清国経済の発展しかない」という理由だった』
2021/06/01 日本リー …
-
-
日本リーダーパワー史(784)-「日本史の復習問題」「日清・日露戦争の勝利の秘訣は何か」明治人のリーダーパワーとリスク管理能力、外交力を現在の昭和人のそれと比較する』
日本リーダーパワー史(784) 「日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」 …
-
-
『Z世代ための異文化コミュニケーション論の難しさ②』★『日本世界史』-生麦事件、薩英戦争は英国議会でどう論議されたか②ー<英国「タイムズ」の150年前の報道><日本の現代史(明治維新からの明治、大正、昭和、平成150年)は 日本の新聞を読むよりも、外国紙を読む方がよくわかる>
2019/11/08 『リーダーシップの日本近現代史』(1 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(318)★『日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ㉑ [ 日清戦争は明治天皇は反対だったが、川上操六、陸奥宗光の戦争であった」★「 戦争は避けることばかりを考えているとますます不利になる」(マッキャベリ)★『「チャンスは刻々と過ぎて行く、だから「兵は拙速を尊び、リーダーは速断を尊ぶ」(孫子)』
2015/12/22 /日本リーダーパワー …
-
-
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉟「日本が民情に従い、善隣関係を保つべきを諭ず」
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年 …
-
-
『新型コロナパンデミック講座』★『歴史の教訓に学ばぬ日本病』★『水野広徳海軍大佐が30年前に警告した東京大空襲と東京五輪開催の「スーパースプレッダー」(感染爆発)発生の歴史的類似性』
明治を代表する軍事評論家となった水野広徳海軍大 …
-
-
近現代史の復習問題/記事再録/日本リーダーパワー史(160)-『3・11<第3の敗戦>から3ヵ月後』★『日本をチェンジせよー明治維新の志士は20歳の 若者たち』★『今こそ「ゲームチェンジャー」(時代を変える若者)が立ちあがり『日本老害社会をぶち壊せ!』この夢も期待も今や幻に終わりぬか!
2011、6,14に書いた< 日本リーダーパワー史(160)> 『3・11<第3 …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』★『「財界巨人たちの長寿・晩晴学』★『〝晩成〟はやすく〝晩晴″は難し』★『伊庭貞剛、渋沢栄一、岩崎久弥、大倉喜八郎、馬越恭平、松永安左衛門―』
2012/12/29 百歳学入門(62)記事再録 ★『 …
-
-
『Z世代への昭和史・国難突破力講座③』★『吉田茂の国難突破力』★『GHQ草案を受入れるかどうか「48時間以内に回答がなければ総司令部案を発表する』★『 13日、日本側にGHQ案を提出、驚愕する日本政府』
2021/06/24日本リーダーパワー史(356)<日本の最も長い決定的1週間> …
- PREV
- 『Z世代のための百歳学入門(187)』★『「長崎の平和祈念像」を創った彫刻家・北村西望(102歳)の創造の秘訣』★『日々継続、毎日毎日積み重ね,創造し続けていくと、カタツムリの目に見えないゆっくりした動きでも、1年、2年、10年、50年で膨大なものができていくのだ。』
- NEXT
- 『Z世代のための昭和政治史講座/大宰相・吉田茂論②」★『<国難を突破した吉田茂(84歳)のリーダーシップ』★『吉田茂は戦争反対で憲兵隊に逮捕されたが、そういう政治家でないと本当の政治家ではない。佐藤栄作、池田勇人は吉田学校の優等生だが、彼らは政治上の主義主張で、迫害を受けて投獄されて屈服しなかった本物の政治家じゃない』★『ところが80年たった今や自民党の2,3,4世の政治屋家業が約30%、江戸時代に逆戻したかのような政治状況と化している』(羽仁五郎)』