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世界/日本リーダーパワー史(917)米朝首脳会談開催(6/12)―「結局、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)は先延ばしとなりそう』★『米朝会談の勝者は金正恩委員長か』(上)

      2018/07/03

米朝首脳会談開催―「すべてはこれからはじまる」

前阪俊之(静岡県立大学名誉教授)

トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の歴史的な首脳会談は6月12日にシンガポールで開催された。友好的な雰囲気で会談はおこなわれ、署名式でトランプ氏は「包括的な文書だ」、金委員長は「北朝鮮は今後速やかに非核化を進める」と握手した。

トランプ大統領は拉致問題も話題に取り上げ解決を促しし、懸案の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」,「朝鮮戦争の終結宣言」などは今後継続して話し合うことになった。錆びついていた東アジアの火薬庫の歴史の歯車はやっと回り始めた。すべてはこれから始まる。

(「朝鮮戦争終結(1961)以来57年ぶりの初の米朝首脳会談だったが、トランプ大統領の米選挙民への派手なテレビ外交ショウで、サプライズや具体策に欠ける内容だったね。共同声明の内容をみても

➀トランプ大統領は北朝鮮の安全を保証することを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた確固たる変わらない約束を再確認した。

②平和と繁栄に向けた両国国民の願いを踏まえ、米国と北朝鮮の新たな関係を築く。

③両国は朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和を構築するため、共に努力する。

④米国と北朝鮮は身元の確認ができた戦争捕虜、行方不明者の遺骨を直ちに送還することを含め、戦争捕虜、行方不明者の遺骨収集を約束する。

⑥ポンペオ米国務長官、北朝鮮の高官が主導する後続交渉を可能な限り最も早い時期に開催することを約束する。―などというもので、サプライズは全くない。」

「トランプ氏は北朝鮮に対する経済制裁を当面維持するとしているが、共同声明では制裁には触れなかった。共同声明は朝鮮戦争を正式に終わらせる和平合意も盛り込まなかった期待外れの内容です」

「トランプ氏も記者会見で2週間ほどしか時間がなかったので、非核化のプロセスはポンペオ国務長官に詰めの作業を急がせると弁明していた 「ニューヨーク・タイムズ」(電子版)は、米韓合同軍事演習の中止に言及したことは「北朝鮮への重要な譲歩であり、金正委員長に核放棄させられるかの賭けだ」と批判。
「ワシントン・ポスト紙」(電子版)は、トランプ氏の金委員長に対する態度を「へつらった」と酷評、「非核化へのあいまいな約束を成功だと選挙民にアピールするだろう」との意見を掲載した。一方、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は「金委員長とトランプ大統領は、朝鮮半島の和平と安定、非核化の実現に向けて段階的で同時並行的な行動の原則に従うことが重要との認識を共有した」と金氏の勝利宣言と大きく伝えている。」

  • 日本側はトランプ氏が前のめりの発言をしないように3重のチェック体制

 

「トランプ氏はこの合意文書を上院に批准を求める予定という。将来の米政権が北朝鮮との合意を簡単に破棄できないようにするもので、また金正恩委員長に対し合意が恒久的なものだとも保証するものだ。

北朝鮮を非核化させるいかなる合意も共和、民主両党から十分な支持を得られるとみており、この条約の批准には上院で3分の2の賛成票が必要といいます。」

 

「トランプ氏が記者会見で米韓軍事演習の中止と米軍撤退も示唆した発言が韓国に衝撃を与えている。トランプ氏は北朝鮮の非核化を巡る交渉を促進するため、「非常に挑発的」な米韓軍事演習は非常に高額で、その大半(の費用)をわれわれが負担している」と指摘した上で、将来的に、在韓米軍を撤退する考えを示した。」

朝日新聞電子版は(6月12日)は「日本政府クギ刺し、トランプ氏に利かず 落胆の声も』の見出しで、肝心の非核化について、日本政府がこれまで主張してきた非核化の具体的な期限や「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の文言はない。日本政府関係者からは「非核化が骨抜きになる」「ゼロ回答だ」と落胆する声が上がった。

またトランプの「非核化費用は韓国と日本画負担する」との発言にショックを受けた」と報道している。米朝首脳会談の現地には谷内正太郎・国家安全保障局長や外務省の金杉憲治アジア大洋州局長が入り、トランプ氏が安易な合意に流れないようクギを刺す狙いだったが、当てがはずれたと書いている」

「この朝日の記事が出る前に産経新聞の日米首脳会談の内幕が載っている。内容は朝日と正反対のもので日本側は2重3重のチェック体制をとり、トランプの交渉にクギを刺したということです。

安倍首相は北朝鮮との対語に前のめり気味のトランプ氏に安易な譲歩をしないよう直接、クギを刺す。河野外相はポンベオ米国務長官と会談、谷内正太郎国家安全保障局長も米朝交渉からは外されといわれたボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と会談での、「三重の体制」でのぞんだ。

米朝首脳会談の開催地は当初、板門店に傾いていたトランプ氏を翻させ、シンガポールに決めさせたのは安倍首相とサゼッションと言われる。

トランプ氏を説得できる数少ない人物として安倍首相への米国や米議会の期待も高いといわれる。トランプ氏が拉致問題を確約したのはこのネゴシエイショウなのです」(産経6月8日付朝刊)

 

(A)「それについては別の意見もあるよ。日米会談の前にダニエル・スナイダー・スタンフォード大学教授は次のように警告していた。安倍首相がトランプ大統領の対北朝鮮政策を伝授しているというのは全くの幻想にすぎない。さらに、トランプ大統領にとって「中国は略奪的だが本当の敵は日本」「トランプ大統領にとって、日本はつねに敵だった」と日本で長年の経験を持つ米議会関係者は話しているというもの」

  • 米朝首脳会談の勝者はトランプか、金正恩か、・・

「そうかな。朝日新聞、スナイダー・教授の意見はチョット外れていると思うよ。拉致問題は会談でトランプ大統領が取り上げたが、金委員長はこれまでのように拉致問題は解決済みとはいわず「日本と話し合いたい」と前向きだったという。日朝関係はこれで前に動きます。

ただし、トランプ氏は「心ここにあらずで」朝鮮半島問題にはもともと関心が薄く、中間選挙のことで頭がいっぱいなのです。

経済人のトランプ氏にとって中国、日本、韓国、EUなどとの経済取引、貿易赤字解消や同盟国の防衛費負担増を重点的にディール外交を展開しており、今回のカナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)でも、ケンカ別れして途中でシンガポールに飛んだほどだ。」

「トランプ氏はバカ正直といっていい人物で大統領選挙に立候補して、泡沫候補として完全無視されていた時から、「アメリカ・ファースト」を唱えて、貿易赤字、防衛費の不均衡の是正は政権公約に掲げており、北朝鮮に対しても日本も核を持って対抗せよと公言していたほどです。

大統領になってその「政権公約」を一途に実行して、同盟国ばかりでなく、世界の反対を押し切ってディール外交を進めている。日米首脳会談でも拉致問題の提議と引き換えに日本の防衛費の増額、武器購入を安倍首相に飲ませたといいます。」

「それはこういうことですよ。日米首脳会談でトランプ氏は拉致問題の提議の約束と同時に防衛装備品の購入に感謝すると発言している。

今秋に発表する防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)に「防衛費のGDP(国内総生産)比2%」を盛り込むことを予定しており、防衛装備品の購入は米国の「イージス弾道ミサイル防衛システム」や海上自衛隊巡洋艦「いずも」の空母化に伴う米製の短距離離陸・垂直着陸

(STOVL)型F-35Bステルス戦闘機など高額防衛装備品を導入する予定で、その額は数兆円に上るとみられる。トランプの拉致発言の一言で数兆円が転がり込むという取引成功というわけだ。」

 

「もともと、不動産王のトランプ氏は「商談とはプラスまたはゼロであって、マイナス、損はない」というビジネス哲学の持ち主です、「不動産をたたいて安く買って、高く売りつける」という不動産経営者で出身でもちろん政治家ではない。

米朝会談という「世紀の商談」は世界中にテレビ、ネットで同時中継され、トランプ大統領こそが世界を支配する王様で、若い世襲の独裁者・金正恩を脇役にした世界外交ショーの主役を演じて、米国民へ中間選挙での支持をアピールした格好だね。

会談の成功、失敗に関係なく、世界中にテレビ中継されるだけで、トランプ人気は盛り上がり「商談は成功」というわけだ。トランプ大統領ご自慢の「お前はクビだ」(TVリアリティー番組)のリバイバル版を見せつけたいだけだったのですね」

つづく

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

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