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速報(124)<座談会・フクシマの教訓①>『事故原因、原子力村、事故処理、低線量被爆など徹底討論する』(上)

   

速報(124)『日本のメルトダウン』
 
<徹底座談会・フクシマの教訓①>
 
『事故の近因、遠因、原子力村の体質、事故処理のシステム、低線量被爆、エネルギデモクラシ―の確立、フクシマの教訓を徹底討論する』(上)
 
 
<座談会「原発体制の臨界」は季刊誌『日本主義』主催で72日に行われた>
座談会出席者(敬称略・アイウエオ順)

 勝原光治郎(市民エネルギー研究所・原子力工学専攻)
 後藤政志(元東芝・原子炉格納容器設計者)
 古川路明(名大名誉教授・原子力資料室理事、放射線科学専門)
 前坂俊之(元毎日新聞記者、前静岡県立大学国際関係学部教授・戦後社会史)
 渡辺幸重(前畿央大学教育学部教授、フリージャーナリスト)

司会・前坂俊之 
(雑誌発売は824日)
 
 
 
これは「第3の敗戦」と言える
 
 
本誌 福島の原発事故以来ちょうど4ヵ月が経過しました。この事故の現状と、問題点、考えられる今後の処埋対策、そして何よりも長期的な日本社会のあり方とエネルギー政策の関連について、それぞれご専門の見地からのご意見、さらにはご専門の枠を超えて大いに議論を深めていただきたいと思います。それでは本日の司会役の前坂さんからお願いします。

前坂 私は、今回の3/11日があったとき、直感的に「広島原爆後」だ、「ザ・デイ・アフター」だ、という実感を持ちました。一週間目に菅さんが連合の笹森さんを呼んで、「最悪の場合には東日本が全滅すると」といった発言をしましたし、アメリカの原子力専門家も、「今未知なるゾーンに入ったと」 いう発言をしていました。その段階で、これは大変だということでビデオを持って、後藤さんや広河(隆一)さんの話を聞いてyoutube配信しました。
 
 今回の3・11の認識は、それはもう第3の敗戦だ、太平洋戦争に敗れて、その後、原発の上に乗っかった経済大国化の末に今回のメルトダウンがあったんではないかという、そういう認識を持っています。
 事故から4カ月経った現在も、中に入っての調査ができませんから、どういう原因で原発事故が起こり、格納容器がどういう状態になっているかということもどの新聞も書けない、そういう状態です。半年経った現在も全く変わらない状態ですよね。
 
そうしますと、これを収束する方法がない。それからどうやって収束するかというのも、現在、水処理の施設を造ってやっていますが、毎日のように故障して一向に進まない。じゃあ一体どうすればいいのか、政府の対応なり対策も、結局未知なるゾーンの中ではっき
り分からないまま、手探りの状態でやっている現状ではないかと思います。
正に広島原爆の50個分言われる大量の放射能が放出されて、それでも対策が行われていないという状況の中で、国民の不安感はますます募るばかりだと思います。
 
渡辺 3月日日の大震災が起きましてから、主に住民の方や自治体、あるいは日本人全体がこの事故をどういうふうに受け止めて、どういうふうに行動をしているのかということを中心に取材をしています。
事故は依然として収束していないわけで、住民にとって一番大きな問題である、避難生活から正常化へプロセスということをどういうふうに考えていかなければいけないのか、さらに長期的には、エネルギー政策をどういうふうにすればいいのか、われわれの生活、考え方自体をどういうふうにしなければいけないのか、というようなところでウオッチングをしています。
 
 福島の南相馬を歩いていて、共同体、コミュニティーがこれからどうなるのかということが、住民の皆さんの非常に気がかりなところだと感じました。南相馬の20キロから30キロ圏内、いわゆる緊急時避難準備区域というところに行って、医療問題を調べているのですが、完全な医療崩壊状態です。
 
小児科の病院は、子どもさんは学校がないからみな現地からいなくなっているので、仕事ができない。もちろん産婦人科にもほとんど来る人がいない。しかし、病院は開けてないと保証がもらえないということで開けているのです。そういうわけで、いま、医院が倒
産するということが心配されています。
逆に、住民は帰ってきているんだけども、入院できない、とかいうようなことで、医療危機状態になっている。
 
 飯館村の人たちも、非常に悩んでいます。指示に従って避難したんだけれども、牛馬の世話(むごい話ですが、と殺も含め)とかの仕事は村に戻ってきてしなければならない。あるいは村人がいなくなっても老人ホームだけがそこに残っているとか、何かコミュニティーとしてどうも中途半端な形で、しかもそれがいつまでそういう状態が続くのかというこ とが十分に知らされていない。
どういう状態になったらどうコミュニティーを立て直していいのか、あるいはもう戻れないのか。

避難したところでどう生活を立て直すのか。ずっと自分の仕事を探して子どもを育てる場とすればいいのか、いや一時的なもので最後は帰るのだということでやっていくのか。

福島の状況が今よりもっとひどくなる可能性も考えれば、もうどういうことかわけが分からない、という不安を持っている人が多いのです。マスコミ自体も混乱しているところがあって、私自身としては、自分自身でもまとめきれないので、ひとつひとつ見ていって、見たものをなるべく事実として記録をしていって、あとから検証できるようにしたいということで今動いているという状態です。
 
 
原発に「絶対安全」という防災設計はありえない
 
後藤 私は原子炉の格納容器の設計に十数年携わっておりました。原発の事故が分かったのは3月の12日なのですが、私は、話を聞いたとき、炉心の冷却が難しくなっていることと、格納容器の圧力がすでに2倍近くなっているという情報で、これはもうシビアアクシデントだ、というのが直感で分かりました。
 
 なぜかというと、その状態ですと、格納容器がもつはずないのです。もうチェルノブイリがどうこうというレベルではない。放射性物質の量が圧倒的に多いので、これは大変なことになると思ったのです。1号機、2号機、3号機、4号機ともみんな同じ状態です。
そういうことがあって、ちょっと我慢できなかったかといいますか、今まで個人的には日本の原子力発電に対して心配だったので、ペンネームで批判的な文章を書いていたのです
 
 が、今回始めて 実名で出すことにしました。格納容器の設計を 担当していた関係から、これは 黙っていられないと思ったからです。
  現在の状況をどう見ているかと申しますと、例えば、「収束」ということに関しては、何をもって「収束」かということがある。現在の状態になったら収束もへったくれもないというのもあって、ずっとダラダラと冷却を続けていますが、原子炉を冷温停止して放射性物質を閉じ込めることができていない状態がずっと続いている。そうすると、被害できるだけを極小に留めるための努力がどこまでできるかということになります。
 
本誌 今回の福島の事故で、東電が、大分前に専門家による可能性が指摘されていたにもかかわらず、大地震・大津波に対して甘い想定をしていた、ということが指摘されていますね。
 
古川 実は、今度の3月11日、僕は最初女川が一番危ないかなと思ったんです。あっちのほうはかなり揺れたと聞きましたから。実際は女川じゃなくて福島だった。「福島はそれだけ揺れたのか、あっちのほうが何しろ古いしな」と、思いました。私は、1980年頃のことだけど、福島原発に行ったときに、まだGE(米ゼネラル・エレクトリック社) の宿舎があったりして、これはGEの匂いが強いところなんだなという感じは持ちました。あとから、福島第1原発は日本がつくったというよりは、GEがつくったようなものであることを知りました。
 
本誌 女川の場合は、大津波への対応ができていたけれど、福島は、防災設計思想が、今のアメリカに比べても、古いと言われますよね。
 
後藤 私自身が一番気にしているのは、今回の事故は津波がどこまで関与しているか? ということです。私は、地震が、電源喪失と、プラントの中に損傷をもたらしたと推測しています。田中三彦さんが、配管(3号機の炉心冷却緊急システム「高圧注水系」の配管など)を含むプラントの地震による損傷を指摘されている。
私もデータからみるとそういうふうに見ているのです。それによって格納容器が機能喪失している。そういう複合的な事故原因の追求をきちんとしないといけない。今、それがちゃんと出来ていないと感じています。
 
 津波対策は、私が現役の頃に、高さ14mの想定が出されていました。地震・津波の専門家に聞くと14mを超える可能性はないとは言えないということでした。自然現象なんだから、そんな数字を出す自体が無理だと。となると、原発サイドとしては、設計の条件として、自然現象をどう想定して決めるかということは、ものすごく厳しい、難しいということになって、どこかで「手を打つ」ことになる。それだけではありませんが、それがきっかけになって実際の事態に手の打ちようがなくなる。
 
 普通、プラントの安全設計の考え方は、もし万一事故が起こって、一つのものが駄目になったら次、またその次と、多層防備とか過重防備といいますか、重ねていくわけです。事故の確率を落としていくといったらよいでしょうか。ところが、今度の場合、そうしてやっていた結果が突破されたのです。
 
 いずれにしても、プラントの内部に防災設計が組み込まれていない。しかし、原子力発電所は、その設計思想ではだめなんです。今回も、核事故対策としてプラントの外に電源や水源、資源を求めようとしている。津波対策をそれでやろう 沌と言いはじめているわけです。しかし、プラントを設計している側から見ると、「何を言っているのか」ということなのです。
 
例えば具体的に言いますと、電源車を何十台も用意しておく。しかし大地震などがあれば、渋滞で到着しない。地割れがあったら来れない。これは当り前だと思うのです。これはわれわれ技術者同士でシビアアクシデントの研究をやっていた中で議論しているのです。
「こんなの無理だよ、保証の限りじゃない、でもやらないよりやったほうがいい」その
レベルで話しているのです。それがその通りになっている。
 
本誌 原子炉に関しては、「絶対安全」という防災設計は成り立たない、ということですか?
 
後藤 例えば外部から電源をつなごうとする。すると電源が届かないとか、口が合わないとか、入れられないとかいった話がゴロゴロ出てくるわけです。こういぅのは当り前なのです。ちょうど火事場で緊急事態になりまして、備え付けのスプリンクラーとか色々な消火用のものが駄目だったので、隣へ行ってバケツを借りてきて水をかけているのと同じ感覚なのです。それが現在の核事故対策。
 
本誌 対症療法的対策しか打てない、と。現在行われている循環冷却装置も、アメリカやフランスの機械を継ぎ扱ぎしているためか、しょっちゅう事故が起きていますね。
 
後藤 津波対策も同じことで、今までの津波の高さの想定が甘かったから今度は少し上げてみよう、といった「安全対策」では、まったく通用しないと思います。
そうしますと、これまでの対策が保証の限りではないということですから、全体にプラント自身の基本的な見直しが必要になると思います。津波もそうですが、特に地震なのです。先ほど地震でプラントが機能喪失している可能性が高いと申しましたけれども、具体的に申しますと、沸騰水型の格納容器は、タンクの水で炉心を冷やす。これが駄目になった。
 
多分地震で配管のどこかが破損して少しずつ水が漏れて炉心が露出して機能を喪失した可能性が高いです。今回その原因ではないとしても、この方式は絶対駄目だと思います。この原因追及は安全委員会のほうがきちんとやるべきだと思っています。
 沸騰水型原子炉の安全設計では、地震との組み合わせを今まで考えていなかった。それ自身が問題なのです。
 
   
批判勢力を封じてきた「原子力村」の体質
 
後藤 あと、私が心配しているのは、加圧水型の-IIA「話題の玄海の古いプラントもそのタイプですが - 水素爆発です。沸騰水型は格納容器のなかに窒素を満たしているので、水素が外に出て爆発する。だから福島原発の爆発の被害もこの程度で済んだと言えます。加圧水型は格納容器が大きくく、水素が中で爆発する可能性があるので、で中に水素を処理する施設をつけている。私はすごく前から疑っているのです。本当にそれがうまく動いたらいいですけど、ちょっと機能をうのではないか、と懸念しております。
 
古川 加圧水型って、色々厄介ですね。リチウムを入れると、トリチウムができちゃうし。
 
後藤 私は、ある技術者から、加圧水型の場合は、制御棒を100%入れていても、沸騰水型の状態とは全然違う。ホウ酸でコントロールしているから。温度が下がったとき反応炉のケースが逆転して危険な状態が起こりうると聞きました。
 
それで、実際のプラントでホウ酸の濃度を測ってこれならOKということを確かめた上で、安全・保安院が、承認する。ところが、そこのある企業の技術者が調査をしたら、反応炉が危ないと出た。駄目だということでやり直しをしたのです。その記録を残して出そうとしたら、上司が、「新しくやり直したやつだけを残せ、駄目だったやつは消せ」と言ったので彼は拒否した。そうしたら首を切られて、今裁判をしているんです。
 
前坂 どこの会社の人ですか。
 
後藤 三菱です。日立や東芝から(批判的な技術者が)出てきたのに、なんで三菱から出てこない? なんて言われていたら(笑)、出てきたんですよ。今非常に頑張っておられます。
 
勝原 私は大学の専攻を選ぶときに、原子力発電の開発をしたくて原子力工学を・専攻したのですけれども、実際に大学や大学院でそういう研究、議論をし、実際の社会を見てみると、なかなか原子力の安全利用と言っても、そう話がきれいにはできていないということに気が付きました。それで危ないところは大いに議論すべきだということで、安全面の研究を大いにやりたかったですけれども、実際には、そういう、原子力に対して不安を持った意見の人間が「原子力の社会」の中にいてはいけないという状況だった、と思います。
 
 結局、就職口がなくて、専門をまるっきり変えて、別のところに就職いたしましたが、その後も原子力については、スリーマイル島事故、あるいはチェルノブイリ事故、JCOの事故を経験しながら、色々考えましたし、最近は、原発なしでどういうエネルギー政策を出せるのか、という研究にも取り組みました。
 
そういう、40年も前から原子力を考えて、これは危ないんじゃないかと、これを規制する考え方が非常に不十分であるというように思ってきた立場からすれば、今回の事故というのは、細かい話は別にして、大枠は十分想定される事故であったと言えます。前々から裁判の中でもそういう指摘は十分なされていました。
そうした批判勢力の意見に対し、政府の側、推進の側が全く問題にしてこなかったというところに一番原因があるんだと思います。
 
前坂 こうした国家危急存亡の折に、古い言葉ですが、「恩讐を超えて」、日本の英知を集めて全力で対応する体制が、四ヵ月経った現在もできていないというのが不思議です。
実際の日立、東芝、三菱といたプラントメーカーなどの場合も、やはりかつての専門家を呼んで、先輩を呼んでどうやったらいいかというのを普通だったらやると思うのですけれども、そういうこともやってないのでしょうか。
 
後藤 そういうことに今まで関わった技術者、東芝の先輩たち聞いた話だと、彼らが意見を言ってもなかなか受け入れない、聞く状態にないということです。だから今何をやっているかというと、情けない話ですけれども、場外で私と論戦するとか、そういう場外乱闘をしているというか(笑)、バカな話になるのです。
 
もう少し外部の知識・力を有効に使っていければ、と思います。原子力安全委員会関係もそうですね。元安全委員会の人たちが慨悔して「今まで間違っていた」とか言っているけど、では今後の対応は、というと内部に意見が入っていかない。今までの、それなりの基礎的な知識・経験を持った人間の意見が、賛成・反対にかかわらず情報として入っていか
ない。そういう体制になっているというのがあります。
 
私も多少は自分なりに努力したいと思って、政府に対して発言していたことがあるんですが、一個も通りませんでした。聞く耳を持たないというか、届かないのです。ある国会議員を通じてやっていたのですけれども、全く門前払いでした。
 
前坂 そうですか。ということは、政府内部でも、政治内部でも、企業内部でも、メディア内部でも、学会内部でも同じでしょうか?
 
後藤 同じような感じです。
 
今回の事故は、ある面ラッキーな面があった
 
渡辺 今メルトスルーことが話題になっていますが、これは、どのようにして分かるんですか。
後藤 温度の変化を見てしか分からないですよ。
渡辺 今、一応監視はしているんですか。
後藤 ウォッチはしているから、温度が上がったら何かあっただろうということが分かるくらいで、あとは何もできていないです。
渡辺 危ないと思ったら何か対応ができるんですか。
後藤 結果として、何かあったとき、「あー、危なかった。あとから、あれは危なかったなあ」と分かる。事前には分からないです。
勝原 対応できない。
渡辺 地下水に触れて水蒸気爆発しないのですか。
 
後藤 もうそれほどの温度ではないと思います。
渡辺 1000度の差はない…。
後藤 そんなには大きくはないと思います。
 
勝原 例えば球状のものを考えると、大きいと中に体積分の発熱があるわけです。電熱面積といって面積分の放熱部分があるわけです。それが小さくなると、発熱に対して電熱面積の方が大きくなるのです。小さくなると温度が下がるのです。だから最初は原子炉の中に燃料がドッと固まりになっているうちはすごい発熱があって、電熱が少ない。それも水の中に入っていないと電熱が少ないということなんだけれども、水の中に入っていればある程度ではあるけれどもまだ温度は上がっている。
 
 それがコンクリートを破ってコンクリートと反応しながら反応熱を放射したり、コンクリートの壁にくっついたりして、だんだんだんだん小さくなれば、発熱に対して放熱が大きくなる。ましてや地下水にぶつかったりすると、余計に放熱されるということで、まあ今、水で上から冷やされている状態だと思いますから、通常を保っている、そういうイメージですね。
 
渡辺 じゃあ、どっかではメルトスルーは止まるんですね。ずっと続いているわけではなくて。
勝原 それはないです。
後藤 水が入っていれば。
前坂 100以下ならいわゆる冷温状態だといわれていますが。
 
勝原 温度ではないのです。発熱に対して、放熱がどれだけかという、バランスです。発熱が多きければ、最初は60度ぐらいでも、どんどんどんどん温度が上がっていくのです。それだけの話です。
 
古川 チューブが丸い格好をしているのが、一番悪いよね。
勝原 そうそう。
 
後藤 今回、格納容器の形がマークI型といって、横にドーナツ型のプールがあるでしょう。だから溶融物が初期に落っこちたとしても、下に水がないはずなんです、基本的には。でもマークⅡ型というのは、下にプールがあるんです。それだと溶融物が落っこちたら、そのまま爆発するリスクがものすごく高い。私はそれを恐れていて、マークⅢ型じゃなくて
良かったと正直思っています。マークⅡ型だと格納容器が爆発している可能性があるんです。
 
勝原 マークⅡの小さいタイプ、マックスウェルといいましたか、はあるんですよね。水が入っているかどうかは知らないけれど。
後藤 ありますけど、水は入っていないと思います。
勝原 結果として格納容器の爆発は起きてはいない。
後藤 初期にメルトダウンしたら、ものすごくリスクが高かったわけですよね。今回、メルトダウンはしたけれど、時間がかかってなるのと、早期になるのでは、全然違います。水と接触したときの激しさが違いますから。初期の方でなっていたらと、今考えるとゾツとするんです。
 
前坂 非常にラッキーだったということですか。
後藤 ラッキーでしたね。
渡辺 今も水の中にあるのですか。
後藤 今も水の中にあります。ないとしたら、また今言ったように発熱します。
前坂 神風が吹いたわけですね。
本誌 そういってよいかどうか別ですが、すぐにまた忘れちゃうんですね。喉元過ぎれば……。
 
後藤 スリーマイルの時も、圧力容器の底が抜けなかったのは偶然、なんて言われたのですね。その後10年も研究しているのに、それでもまだよく分からないという世界でしょう。今回また同じような研究を重ねるわけですよ。それから学んで技術を新しくしましょうと言うんだけれども、また10年経って何が分かるのでしょう。そういう世界ですから。
 
 
膨大な量の汚染物質をどうするか
 
勝原 今度の事故では、核爆発と水蒸気爆発の2つの爆発の可能性もあるのですけれども、幸か不幸か、水素爆発だけで建物が吹っ飛んじゃう、施設が壊滅状態になった、という状況にある。
ただ、プラントが多少水素爆発しても、その後の処理というのはそれほど難しくはないのです。問題は、膨大な放射能、放射線があるから、そこの中に近づけない。ですから、事故の原因が何かということも未だにみんなが推測をするというような状態でしかないということだろうと思います。
 
 今後もまだまだ新しい事態が起こる、特に4号炉の使用済み核燃料プールが、もし建物が崩壊をするというようなことになると、また新たな段階に突入するということになるわけで、まだまだ予断は許せないとは思っております。先ほど話題になった、炉心溶融、メルトダウン、メルトスルーというような現象をどういうふうに収束させるのかということについては、今までの経験のないことばかりで、大変困難な課題が待っていますけれども、大枠としては、今回の事故は、放射性物質が存在するために大変なことになっているわけですね。

ある意味で、放射性物質さえなければ、どうということはなかったわけです。しかし、この問題が、もっとも厄介なわけです。

 
古川 今度の件について、多分何かどこかに東京でも放射能が来るだろうと思っていたところ、ある方が東京の台東区で15日にとった試料を、京大原子炉の小出さんが量ったデータが私のところに来たんです。これにはさすがに驚きました。
1㎥中にセシウム137が130ベクレル。これはすごい量でして、実はチェルノブイリのときは、私が測定した中の最大値が、0・1ベクレル足らずです。だから日本で少なくとも70年代から経験した中の最大値の1000倍ということです。
 
これはただことではない。これがずっと続いたら空気を吸っているだけでかなりの内部被爆になる、幸いそう長くは続かなかったようですけど。そんなことを思いました。
 小出さんのデータを見て、1つだけ分かったことは、これは明らかに乾いた核燃料から出ているということです。なぜかというと、湿った溶液の中からは、ヨウ素131は出るけれども、セシウムのようなものは出ません。
 
また、水素爆発が起こって、いろんな物質が飛散したのだとすると、ほかのものもあってもいいはずだが、ほかの物質は少ない。
 原発の一番近くの試料はあまり出てこないのですが、恐らくここは何でもあるだろうと私は思っています。東京などその他の地域については、セシウムだけが問題とされていますが、逆にいうと、セシウムだけが問題だとすると対応はできる可能性があるんです。
 
本誌 5月末現在で約10万5000トン(約70万テラベクレル)という膨大な汚染水の存在も大きな問題ですね。
 
                                                                                    ( つづく)

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