前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(524)「国難は複雑性を増し、国民全体の遠謀、熟慮と決断、実行が求められている」(高橋是清のケース)

      2015/01/01

  

日本リーダーパワー史(524

 

現在直面する5大国難はー

「福島原発の処理問題」「迫りくる大地震」「1000兆円突破

の国家債務」「急速に進む超高齢化・人口激減・少子化・

認知症800万人」など、国難は複雑性を増している。

リーダーと同時に国民全体の遠謀、熟慮と決断、断行

が求められている。

 

                  前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

 

以下の記事は2011/07/10に書いた「 日本リーダーパワー史(172『高橋是清の国難突破力』『日露外債募集戦争』奇跡的に外債募集に成功した高橋是清のインテリジェンス(1)」だが、3/11東日本大地震、福島原発事故から4ヵ月後の「国難突破」をどうするかの記事である。

現在は3/11から3年半が経過した。現在の国難は「原発問題」と同時に「迫りくる大地震」「1000兆円の国家債務問題」「急速に進む超高齢化・人口激減・少子化・認知症800万人時代」など、国難難問はさらに複雑性を増している。

リーダーと同時に国民全体の遠謀、熟慮と決断、断行が求められている。

この記事をもう一度再録して、現在から「国難」を考えて、どう対応するかの参考にしたい。

 

2011/07/10での執筆↓

 

 国家戦略本部がない国、対外インテリジェンス組織のない珍国がわが日本である。国益がなにかの規定もない。だから、タテ割の各省庁が自らの省益に固執して、国益を無視して暴走し、利用もされない箱モノ行政を続けて、天下りの組織、団体を作り続ける。民主党益、自民党益、公明党益、経団連益は追及しても、日本全体の利益、国民の利益、国益を目指す『大同小異』の『大同団結』の行動はとらない。つまり、『頭脳のない図体(経済)、のおおきな私益的な国家が日本なのである。


 以上の点は、日本人にいかに戦略的思考がないか、インテリジェンスがないか、の証明だが、このシリーズの中では再三その点を指摘してきた。その証拠の1つとして、日露戦争について見てみても、膨大な本が出版されているが、大半の本は軍事的な視点で、軍人中心に記述したものがほとんど。その軍事的なものでも戦略的、インテリジェンスの面から日露戦争を分析した本はまだまだ少ない。ましてや、高橋是清のロンドン市場での外債募集の奮闘記を徹底して調べた本は、軍事日露戦争本に比べるとあまりにも少ない。

 

 「金がなければ戦(いくさ)は出来ぬ」は世の東西、歴史の法則である。日露戦争は表向きは日露の軍事衝突と同時に、グローバルに見れば英、仏両金融資本の極東における覇権争いの一部である。ロシアは軍費をフランスからの外債に頼り、日本はイギリスに頼り、高橋是清がロンドン市場での外債募集に成功したのが勝利を決定した。

 

 今回は、高橋是清がなぜ成功したのか、その情報、交渉術、インテリジェンスを見てみる。明石工作が何個師団のh兵力に相当したように、、高橋のインてテリジェンスが日本を救ったのである。

 

 今、日本は『第3の敗戦』、福島原発暴走阻止戦争に突入している状況である。日露戦争、太平洋戦争と同じである。敵国との人間がもった武器と武器との戦いではなくて、未知なる放射能物質との戦いであり、敗北すれば大量の被爆死がでる国難であることにはかわりはない。ここでは歴史的な想像力を駆使する必要がある。

 

 日露戦争では難攻不落の203高地を陥落させるために下から38歩兵銃をもって、上から丸見えの、丘をよじ登って、夜間突撃を繰り返すことによって、ロシア側から機関銃、大砲で一斉射撃されて死者累々の屍の山を築いた。日本軍兵力は10万人のうち死傷者:6万212人という日本兵の集団自殺的な戦死といわれた。これほど長期にわたって災害をもたらした例は、戦争史上に類がないと言われる。

 

 一橋大学名誉教授・藤原彰氏の調査によると、アジア太平洋戦争における戦死230万人の内、その約六割、約140万人が「餓死」と推定している。

その出典『餓死した英霊たち』(藤原彰著 青木書店)では「餓死」とは、栄養失調による「不完全飢餓」によって病気に対する抵抗力を失った結果としての戦病死をもふくむ広義の規定である。

 「ガダルカナル島の場合、方面軍司令官は死者2万、戦死5千、餓死15千と述べている。ブーゲンビル島では、死者約2万はほとんど餓死。ソロモン諸島の死没者の四分の三にあたる 66千名が餓死したと考えられる」。


 「厚生省の調査では、東ニューギニアの戦没者は127千。いずれも死者の九割以上、実に114840名が餓死だったとしている。

 インパール作戦をふくむビルマ方面軍でも死者の78%、145千人かそれ以上が餓死者と推定。中部太平洋では、サイパン、グアム、テニアン、ベリリューなどの諸島では日本軍は上陸した米軍と戦って「玉砕」した。全体では12万以上が病死・餓死していたと見られる。

 日本軍が最も多くの死者を出したフィリピン戦線で、8割の40万人が餓死と推定。中国戦線での死者は455千だが、栄養失調に起因するマラリア、赤痢、脚気などによる病死者は死因の三~四割を占める。

中国戦線での全死者の約半数が栄養失調にもとづく病死であり、22万以上である。合計では 1,276,240名に達し、全体の戦没者2,121,000名の60%強。77年以後の戦没軍人軍属230万という総数に対して換算すると 140万前後が戦病死者、そのほとんどが餓死者ということになる」と結論づけている。

 

 太平洋戦争での米軍による空襲によって1945310日 米軍による東京大空襲死亡8万、負傷4万人 被災家屋:26,同年8月6日  米軍による広島への原爆投下 死者十数万―30万人、8月9日 米軍による長崎への原爆投下 約74千人―15万人が死亡するなど、数十万人が犠牲になった。


 今回の福島原発事故、放射能漏えいは広島型原爆の50発以上に相当すると言われる。海洋汚染、地下汚染はなお続いており、事故の収束には数十年かかる見込み。

いま、長期の阻止戦争が始まったばかりだが、地球上での最凶、最悪の「死の灰」「放射能」との阻止戦争を迎え撃つわが国の体制は、いまだ国防に当たる政府、防衛省などの1本化された体制ではなく,大失敗をした民間の営利会社・東電が中心となってわずか千人単位の下請けの作業員でおこなっているという前代未聞の体制である。(ちなみにチェルノブイリでは軍隊など60万人の総動員体制で一挙に鎮圧した)

日露戦争、太平洋戦争とくらべても、最凶、最悪の敵に対する兵力、軍備、情報は天文学的にすくない。これで勝てるわけがなく、数年後、数十年後の『静かなるガン死者続出』、死者累々という国難、戦争になるののではと危惧する。かつてのテツを絶対踏んではならない。

 

 古来「国、大なりといえども、戦いを好む時は必ず亡ぶ。国、平和といえども戦いを忘れた時は必ず危うし](史記)と言われる。明治以来の歴史は正にこの通リである。

 - 現代史研究 , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(65)『日本のメルトダウン』★☆『日本の原発依存症を生む補助金中毒文化』①『ニューヨーク・タイムズ』5月30日)

速報(65)『日本のメルトダウン』   ★☆『日本の原発依存症を生む補 …

日本リーダーパワー史(654) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(47) 「川上操六のインテリジェンスー 日清戦争後、野党の河野盤州領袖を説得して、 陸軍6個師団増強に協力させた驚異の説得力」

日本リーダーパワー史(654) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(47)   …

日本リーダーパワー史(701)日中韓150年史の真実(7)<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した。

日本リーダーパワー史(701) 日中韓150年史の真実(7) 「福沢諭吉の「西欧 …

『オンライン講座/ 初の現代訳『落花流水』一挙掲載 ―ヨーロッパを股にかけた大謀略 「明石工作」の全容を記した極秘文書 小説より面白いスパイ報告書。

『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』(前坂俊之著、新人物 …

『オンライン昭和史講座/白洲次郎の研究②』★『日本占領から日本独立へマッカーサーと戦った2人の日本人』★『吉田茂とその参謀・白洲次郎(2)』★『戦争に負けても奴隷になったのではない。相手がだれであろうと、理不尽な要求に対しては断固、戦い主張する」(白洲次郎)★『憲法問題の核心解説動画【永久保存】 2013.02.12 衆議院予算委員会 石原慎太郎 日本維新の会』(100分動画)

2013/03/14  /日本リーダーパワー史(368) 『吉田さんに …

no image
 日本リーダーパワー史(753)–『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争を英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」は どう報道したか」を検証する①(20回連載)」★『6ヵ月間のロシアの異常な脅迫、挑発に、世界も驚く模範的な礼儀と忍耐で我慢し続けてきた 日本がついに起った。英米両国は日本を支持する」』

 日本リーダーパワー史(753)– 『日本戦争外交史の研究』 世界史の中の『日露 …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『コロナ共存社会は数十年続く』(英大学教授)★『世界人口の10%が新型コロナ感染の可能性 WHO推計(10.07)』★『WHO、新型ウイルスの死者200万人は「かなりあり得る」ワクチン開発でも』

『コロナ共存社会は数十年続く』   前坂 俊之(ジャーナリスト) 7月 …

no image
『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊶★『明治37(1904)/2/4日、日露開戦を決定する御前会議が開催』●『明治天皇は苦悩のあまり、10日ほど前から食事の量が三分の一に減り、眠れぬ日が続いた。』★『国難がいよいよ切迫してまいりました。万一わが軍に利あらざれば、畏れながら陛下におかれましても、重大なるご覚悟が必要のときです。このままロシアの侵圧を許せば、わが国の存立も重大な危機に陥る(伊藤博文奏上)』

  『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 …

no image
日本メルトダウン脱出法(594)『任務を負った安倍首相―行先は不明』(英FT紙)『吉と出るか凶と出るか?解散総選挙」

 日本メルトダウン脱出法(594)     ●『任 …

no image
日本メルトダウン脱出法(853)「事故から5年、福島第一原発の「いま」を見てきた」●「米国の悲劇?もしもトランプ政権が誕生したらー大手シンクタンク研究員が予測した3つのシナリオ(古森義久)」●『シリア内戦 新しい世界戦争なのか』●『新興国の債務:ついに井戸が涸れた?』

  日本メルトダウン脱出法(853)   事故から5年、福島第一原発の …