前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(972)ー初代ベンチャー企業の「真珠王」御木本幸吉(97歳)★『「資源もない」「金もない」「情報もない」「技術もない」「学歴もない」「ないないづくし」の田舎で、独創力で真珠養殖に成功した不屈の発明魂』★『エジソンも「わたしもできなかった」と絶賛』★『『スタートアップ企業は御木本幸吉の戦略から学べ』

   

日本リーダーパワー史(972)

世界史を変えた『ミキモト真珠』ー『スタートアップ企業は御木本幸吉の戦略から学べ』

                     

私は8年前から東京ビッグサイトで開催されている国際展示会に毎週、出かけている。

経済産業、ITデジタル技術、商業、農業、生活、医療などあらゆる分野の国際展示会が開かれており、日本、世界の経済動向がよくわかり、たいへん勉強になる。日本の出展ぶりは大企業や老舗企業が多く,中小、ベンチャー企業の出展はあまり増えていない。一方、欧米各国、中国、台湾などは出展数も増えており、新興のベンチャー企業の躍進が目立つ。

日本経済がなかなか再生できない原因は「ゾンビ企業」が淘汰されず生き残り、元気なベンチャー企業が生まれないこと、いわゆるシュンペーターの「創造的破壊」が起こらないことだが、国際展示会に行くとその盛衰がよく見える。開業率の国際比較では欧米先進国が10-15%に比べて日本は半分以下の5%、中国の起業家は全人口の9%、1億2千万人といわれ日本は先進国中最下位に低迷している。

東京ビッグサイトからの帰りに神田神保町の古書店で「御木本幸吉の思い出」(御木本美隆著、1975年刊 非売品)を買って読んで、改めて明治人の気力と体力パワーに圧倒された。

御木本幸吉といえば人工真珠を作った明治の企業家としか知らなかったが、明治の初代ベンチャーとして、エジソンもできなかった「人工真珠」を発明し、日本の最高の高価な輸出特産品に育て上げた。

御木本幸吉は1858年(安政5)1月、三重県鳥羽でうどん屋の長男に生まれた。当時、鳥羽地方の海女による天然真珠の採取は乱獲で水揚げは激減していた。「このままでは志摩の名物が絶滅する」と地元漁民は危機感を募らせていた。21歳となった御木本は、鉄道東海道線はまだ名古屋まで開通していなかったので、11日かけて歩いて上京し、文明開化の風が吹く東京、横浜の異人街などで2ヵ月間、欧米ビジネスを勉強した。ここで、天然真珠が世界の王侯貴族、金持ちが女性へ贈る最高の高額なアクセサリーであることを知り、人工真珠の養殖をがひらめいた。

30歳となった御木本はわが国最初の動物学者の東大理科・箕作佳吉博士の指導を受けながら全財産をつぎ込み、英虞湾の孤島に一家で移住して、人工真珠の養殖に取り組んだ。

「狂っている?」「大法螺吹(おおほらふき)きや!」と周囲から疎んじられながら来る日も来る日も貝やガラスなどの小破片を埋め込んだ何百というアコヤ貝を開くが、中は一向に変化はない。5年後の1893年(明治26)7月、ついに貝の中にピンクに輝く半円形の5ミリほどの真珠を発見した。

「資源もない」「金もない」「情報もない」「技術もない」の「ないないづくし」の田舎で、独力で真珠養殖にチャレンジして、成功した瞬間である。その後、この半円形真珠から完全な円形真珠を作る技術も完成し真珠養殖の一大産業化に成功した。

1905年(明治38)、明治天皇が伊勢神宮に行幸した際に、御木本は「世界中の女性の首を真珠でしめてご覧にいれます」と大見得を切ったが、その通りミキモト・パールの大部分は海外に輸出されて大いに外貨を稼いた。1927年(昭和2)にニューヨーク、次いでロンドン、パリにも出店するなど海外販売網を築き、日本企業の海外進出のさきがけ的な存在となった

1927年2月、欧米視察旅行にでかけた御木本はニューヨークでエジソンと会見、「私はダイヤモンドと真珠の発明だけはできなかった。その真珠を発明されたことは世界の驚異です」と絶賛され、70歳の御木本は大感激した。

御木本の成功の秘訣は当時の最新のメディアの新聞、電話、ラジオを活用したこと。

「ねりたくって」行え(考え抜き、練りに練って戦略を練る)

②「商売は仕入れにあり」「信用が第一」

➂「商機を逸すな」

を口癖にしていた。

「新聞のニュースは朝刊ではおそい。夕刊を早く読め」が持論で、店員を新聞社の近くで待機させ、夕刊を入手して事務所まで配達させた。電話もいち早く導入し、事務所、自宅、工場のほか毎日散歩する山の中にまで電話ボックスを設置。散歩中に考えを練って、思いついたことを山からすぐかけてきた。

ラジオは朝6時のニュースから、1日九回のニュースを必ず聞いていた。来客中でも失礼といって、ニュースの時問が来ると聞いて事業のタネにしていた。それを自分で「ねりたくつて」て戦略を立てた。

もう1つ、御木本の偉大さは、独自の健康法を編み出して、生涯現役で96歳8ヵ月の長寿を保ったことだ。

40年間を通じて毎朝5時に起床、夜は8時に就寝、主食はムギ飯1杯で若い時の腹6分に。酒、タバコは飲まず。盛夏でも腹巻を離さず腹を冷やさない。逆に冬はシャツを着ずに薄着主義。夜の宴会を好まず。一日に二回入浴した。

九十歳頃の食事は「朝は3分目、昼は2分目、夜は「うまい物は2箸残す」のダイエット。

最後に「世界史をかえたミキモト真珠」の歴史秘話を紹介する。それまで天然真珠の産地はアラビア湾の奥のクウエ―ト沿岸に限られて、世界市場を独占していた。御木本の発明で、クウェートの真珠漁業は壊滅する。窮地に陥ったクウェート王家は、それまで拒んできた外資による石油探鉱を許可した。まもなく大規模油田が相次いで発見され、世界のエネルギー地図が塗り替えられて、「石油の世紀」が始まった。

                            

 - 人物研究, 現代史研究, 最先端技術『見える化』動画

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン脱出法(588)「日銀はルビコン川を渡った。安倍首相は死線(ナローパス)突破のリーダーパワーを発揮せよ」

      日本メルトダウン脱 …

『Z世代のための百歳学入門』★『「<世界一の伝説の長寿者は!?>スコッチの銘酒『オールド・パー』のレッテルに残されたトーマス・パー(152歳9ヵ月)」か?』

百歳学入門(66)   前坂 俊之(ジャーナリスト)   不 …

no image
日本の最先端技術『見える化」チャンネル/2019国際ロボット展(12/18-21、東京ビッグサイト)ーいま世界中から最も注目されている日本のロボット企業。MUJINの世界初「物流ロボット化トータルソリューション展示」完全無人化とロボット工場のプレゼンテーション

日本の最先端技術『見える化」チャンネル 2019国際ロボット展(12/18-東京 …

「トランプ関税と戦う方法論⑫」★『日露戦争でルーズベルト米大統領との友情外交でポーツマス講和条約を実現させた金子堅太郎の交渉術③』★『ル大統領のオイスターベイの草ぼうぼうの私邸に招かれた』★『米国大統領にトイレを案内してもらった初めての日本人!?』★『ル大統領は私邸での質素な生活ぶりをすべて見せた』

ルーベルト大統領の私邸に招かれた。オイスターベイの私宅は草ぼうぼう。 これは余事 …

no image
日本メルトダウン(959)『石原慎太郎氏、都のヒアリングを拒否 「全面協力」一転【豊洲問題】●『小池百合子氏VS森喜朗氏「3兆円超え」東京五輪予算で本格バトル、これまでの経過は?』●『都議会は「閉鎖的」で「チェック機能が不全」で「私利私欲にまみれている」?!』●『  大成建設、五輪会場99.99%落札に疑問の声』●『自民都議会幹事長が政治資金で銀座クラブ通い』

     日本メルトダウン(959)    石原慎太郎氏、都 …

no image
日本メルトダウン( 974)『トランプショックの行方!?日本人は、「トランプ大統領」を甘くみている過去の「トンデモ発言」には信念がある』◎『トランプ当選で日米安保が直面する重い課題、異色の新大統領が進める外交政策に募る不安』●『  中国とロシアは、なぜ「トランプ支持」なのかー日本と米国の関係は非常にデリケートになる』●『日本人が知らない「トランプ支持者」の正体、米国人が「実業家大統領」に希望を託した理由』●『なぜドナルド・トランプは勝利し大統領になれたのかという「5つの理由」と「今後やるべき5つのこと」』●『中国・人民日報「歴史的な意義ある成果」 米・ニューヨーク・タイムズ 「反動への危機感強める習体制」』●『韓国で核保有論再燃 「自分たちで国守らねば」』●『自滅するフランス大統領:奈落の底へ  (英エコノミスト誌)』

   日本メルトダウン( 974) トランプショックの行方!?   日 …

no image
日本リーダーパワー史(233)●『尾崎行雄の見た明治のリーダーー明治天皇、大隈重信、伊藤博文、山県有朋らの性格』

日本リーダーパワー史(233)   <憲政の神様・ギネス政治家の …

no image
日本リーダーパワー史(890)-『急転直下のビッグサプライズ!』●『正恩氏、トランプ氏を招待…トランプ氏「5月中に会う』●『「安倍首相「高度な圧力続けた成果」…4月に訪米』●『安倍首相が4月に訪米、米朝会談前にトランプ氏と政策すり合わせ』

日本リーダーパワー史(890) 平昌オリンピックは2月25日に閉幕したが、その後 …

no image
『AI,人工知能の最前線がよくわかる授業③』-『第2回AI・人工知能EXPO(4/5、東京ビッグサイト)ー『ITOUCYU×SATの衛星ビッグデータ×AIによる革新的な情報活用』★『HITACHIの「IoTデータモテリングサービス~センサデータの活用を支援する人工知能~」』★『FKAIRのチャットボット エナ、エナジーエージェント 、発電予測パーソナルAI「藤崎エナ」のプレゼン』

日本の最先端技術『見える化』チャンネル ITOUCYU×SATの『衛星ビッグデー …

『ある国際ビジネスマンのイスラエル旅行記①』★『35年ぶりに、懐かしのイスラエル第3の都市・ハイファを訪ねました。』★『エルサレムでは偶然、岩のドームの金色屋根に接近し、数名の自動小銃武装の警官からムスリム以外は接近禁止と言われた』

2018/02/24 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ ウオッチ(229 …