前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『「ロシア紙」からみた「日中韓150年戦争史」(66)『(日清戦争開戦2ヵ月後―「新たな世界的強国の誕生」『ノーヴォエ・ヴレーミャ』

      2015/01/01

  

『「申報」『外紙」からみた「日中韓150年戦争史」

日中韓のパーセプションギャップの研究』66

 


1894(明治27)年10 露暦922日『ノーヴォエ・ヴレーミャ』

 

 

『(日清戦争開戦2ヵ月後―「新たな世界的強国の誕生

 

  日本人はヨーロッパ人の陸海軍の戦略だけでなく,その外交戦略をも学び取っている。モルトケのみならずビスマルクをも理想としている。

日本が「内政の苦境から注意をそらせる」つもりで戦争を企てたのでは決してない。日本政府は1885年以来中国に.地方当局の許可を得て(!).スパイにもなれば扇動員にもなる「半官の手先(インテリジェンス網)」を多数置いていた。(つまり、モルトケに弟子入りした川上操六参謀本部次長のインテリジェンスの勝利だったのである。)

 

 

「新たな世界的強国」-ドイツ人外交官のこの感嘆が.この10日間に変化した情勢を,何よりも鮮やかに描き出している。

 

ヨーロッパ外交が,調停の申出の形式,内容および適当な時期を審議している間に-日本は行動していた。そして.今や介入の時を逸してしまったとも、うことは,外交官のロからさえ聞くことができるし,あるいは少なくとも彼らの会話の端々からうかがい知ることができる。

和平が締結されてからでも.「条約を結んでいる列強」が日中条約を再検討および修正に付することができるだろうと考えて,自分を慰めている者もいる。

 

 ところがこれに対して,日本が示す和平はおそらくヨーロッパの貿易にとって有利な条件を含んでいるだろうとする反論がなされている。日本政府がいかなる特権も要求するつもりはなく,ヨーロッパおよび日本の外国貿易に対し全中国を開放するよう主張するだろうということは,日本政府のさまざまな声明から明らかだ。

 

この1つをとっても,西欧は,この条件に対して好意的なまなざしを向けてしかるべきだ。また朝鮮については,その現状維持をロシアが求めているのは周知のとおりだが,東京の内閣は,朝鮮の独立を形式的に尊重し.日本の望む「改革」を朝鮮王の名で行うことによって.このロシアの要求を満たすことだろう。

 

 

 さらに.あらゆることからわかるとおり,日本人はヨ一口ッパ人の陸海軍の戦略だけでなく,その外交戦略をも学び取っている。明らかに彼らは,モルトケのみならずビスマルクをも理想としている。比本の外務大臣は,ヨーロッパの代表たちの質問や助言から慇懃なほほえみを浮かべて逃れるときはいっでも,軍がうるさいので.というのを口実にしている。

 

日本の為政者たちは,ヨーロッパがなんらかの重大な行動を起こそうとする前に,この戦争を終わらせようと努めているのだ。

 新聞のみならず外交の情報も一致して伝えるところによると,日本政府は中国に対し.一連の猛攻を仕掛けることを決定しており,そのため中国皇帝は,日本の要求に屈服するか,あるいは満州人王朝を廃せざるを得ないだろう,ということだ。

 

日本がやみくもに,あるいは「内政の苦境から注意をそらせる」つもりで戦争を企てたのでは決してないことは,今や明らかとなっている。逆に,それが企てられたのは.中国王朝の内政状態を日本政府が知ったからだ。

日本政府は1885年以来中国に.地方当局の許可を得て(!).スパイにもなれ

ば扇動員にもなる「半官の手先」を多数置いていた。このため日本政府は.ヨ一ロッパの国々の政府よりもよく中国の軍事力や中国人民の気分について知っていただけでなく.事件に大きな影響を及ぼすことができるその地方の共感にも支えられている。

 

 私はこの数日間で何度も,こちらの日本人留学生や居住者たちと会談した。彼らのうちの何人かは,さまざまな政府機関からの任務を受けている。彼らの話に共通する意義から私が思い起こしたのは,つい最近本紙紙上で取り上げられた日本の小冊子だった。私は彼らとの会話の中に,新奇で非常に興味深いものを見出した。それは汎モンゴル志向である。

 

 あらゆる政党やあらゆる傾向の日本人がロをそろえて,極東のさまざまな民族に対するヨーロッパ人たちの不公正で校滑な態度について,憤りながら倦むことなく語っている。イギリス領インドについては,彼らは思慮深く沈黙を守っているが,その代わり.インドシナの民たちが味わっている屈辱には心を砕いている。

 

シャム王に対するフランスの待遇に至っては.それが東洋全体への侮辱であるかのように.彼らはほとんど口角泡を飛ばさんばかりに語る。すべての答は,何世紀にもわたる自らの権利を利用せず,トンキンにおける民衆運動を支援せずに放置し,アジアの人々全員の面前で,恥ずべき戦争と,それよりももっと

恥ずべき1887年の対仏講和によって自分の顔に泥を塗った北京の政府にある,というのだ。

 

 

 日本の若者はもっと過激だ。彼らは,満州人王室の転覆の必要性を唱え,「内政改革を行い,日本と共にモンゴル世界をヨーロッパによる侵害から解放する」ような民族的かつ進歩的な王朝が中国に誕生することの必要性を唱えている。

 

ロシアに関しては,少なくともロシア人と話をする中で,彼らはロシアを「半モンゴル的」な国家だと言っている。彼らはフィンランド人とタタール人をロシアにおける「モンゴル人」あるいは「インドシナ人」とみなしている。

 

 中年の日本人はもっと慎重な言い方をする。彼らは専ら,日本の勝利を見ることはすべての列強にとって利益になる,と力説している。なぜならば,日本が勝利すればその結果,ヨーロッパの貿易が発展し,中国にヨーロッパ文明がもたらされることになるからだ。

 

しかし彼らも,古い文化と歴史的民族性を持ったアジアの国々の問題にヨーロッパが介入する日々は.永久に過ぎ去ったと断固として宣言している。日本は自らはいかなる条約もいかなる法的権利も犯しはしないが.また,日本としては自己の独立性へのいかなる圧迫も甘受しないだろう。

 

 今明らかになりつつあることすべては,ヨーロッパでもっと以前に知られ得たし,知られているべきだった。日本には新聞も国会も,さまざまな情報公開の制度も存在する。ヨーロッパの通信員たちが何にも注

意を払わなかったのには驚きだ。ヨーロッパの外交官がどこに注意を向けていたのかは,さらに言いがたい。

 - 戦争報道 , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本リーダーパワー史(853)ー『来年(2018年)には米朝開戦か、北朝鮮を核保有国と認めて 「核シェアリング」で核抑止するかーギリギリの選択を迫られる 』(上)

  『来年(2018年)には米朝開戦か、北朝鮮を核保有国と認めて 「核シェアリン …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑲ 『日本の最も長い日(1945年 8月15日)をめぐる死闘―終戦和平か、徹底抗戦か④』

 『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑲   『日本の最も長い日―大日本帝国最後の日( …

『日米戦争に反対した』反戦の海軍大佐・水野広徳の取材ノート/遺品の数々」★『水野広徳年譜●『国大といえども戦いを好む時は必ず滅び、天下安しといえども戦を忘るる時は必ず危うし』』

米戦争に反対した』反戦の海軍大佐・水野広徳の取材ノート/遺品の数々 前坂 俊之( …

no image
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉟「日本が民情に従い、善隣関係を保つべきを諭ず」

     『中国紙『申報』からみた『日中韓150年 …

no image
『中国近代史講座』★『『辛亥革命100年で孫文を助け、辛亥革命を成功させた最大の日本人は宮崎滔天で、宮崎家は稀有な「自由民権一家」であった。(上)

2011/10/21  日本リーダーパワー史(201)記事再 …

★『Z世代への遺言・日本ベストリーダーパワー史(2)ライオン宰相・浜口雄幸物語②』★『歴代宰相の中で、最も責任感の強い首相で、軍縮・行政改革・公務員給与減俸』など10大改革国難打開に決死の覚悟で臨み、右翼に暗殺された』

  2013/02/15  日本リーダーパワー史( …

『日中歴史張本人の 「目からウロコの<日中歴史認識><中国戦狼外交>の研究⑦』★『ロシア(旧ソ連)は簡単に『北蒙古(モンゴル)』を手に入れ中国へも手を伸ばした」』

2015/01/01/記事再編集 以下は坂西利八郎が1927年(昭和二)二月十八 …

「Z世代のための日本最強リーダーパワーの勝海舟(75)の国難突破力の研究⑤』★『敗軍の将・勝海舟の国難突破力ー『金も名誉も命もいらぬ。そうでなければ明治維新はできぬ』  <すべての問題解決のカギは歴史にあり、明日どうなるかは昔を知ればわかる>

          &nbsp …

『Z世代のための日中外交史講座②』★『日中異文化摩擦―中国皇帝の謁見に「三跪九叩頭の礼」を求めて各国と対立』★『日中外交を最初に切り開いた副島種臣外務卿(外相)の最強のインテリジェンス②』★『1873(明治6)年8月28日「英タイムズ」は「日中の異文化対応」を比較し、中国の排他性に対して維新後の日本の革新性を高く評価』

• 困難な日中外交を切り開いたのが副島種臣外務卿(外相)の外交力。 この困難な相 …

『リーダーシップの日本近現代興亡史』(225)/★『明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破の交渉力」➃『『軍事、外交は、嘘(ウソ)と法螺(ほら)との吐きくらべで、吐き負けた方が大損をする。国家の命脈は1にかかって嘘と法螺にある。『 今こそ杉山の再来の<21世紀新アジア主義者 が必要な時」』

 2014/08/09 /日本リーダーパワー史(520)記事再録 &n …