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『Z世代のための日本の革命家No.1は誰か?講座②』★『明治維新に火をつけたのは吉田松陰であり、230年惰眠をむさぼった徳川幕府を倒したのは高杉晋作②』★『坊主頭をたたいてみれば 安い西瓜(スイカ)の音がする』★『「男子たるもの、困ったということは、決していうものじゃない」』

   

2015/07/29日本リーダーパワー史(575)記事再録再編集

前坂 俊之(ジャーナリスト)

今からもう10年も前の事。2015年7月5日のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」第27回「妻のたたかい」を久しぶりにみた。

「禁門の変」で敗れて久坂玄瑞が自刃して、文が大奥に上がるまでを描いている。あの疾風怒濤の歴史の大回天ドラマを、実にゆっくりとスローモーで、無表情のドラマに描いているのには見ている方が調子がくるってくる。

戦後すぐの東映、東宝、大映、松竹などのチャンバラちゃらちゃら劇もほとんどが歌舞伎調なのは、いただけなかったが、「花燃ゆ」での当時の武士の話し方、風俗、作法などはもちろん「拙者ということもほとんどないセリフ」にはやはり違和感を覚える。

同時に、H・G・ウエルズも書いているが、世界の近代革命史に燦然と輝く「明治維新」の実像を現在の日本人、世界の人々に誤って伝えることになるのではといささか危惧する。

もちろん、最近のNHKドラマは女性が主人公にしたものがおおく、これもそうなので、井上真央(この女優の演技力は高く評価する)扮する文の「妻の孤軍奮闘物語」と明治維新の原動力となった「松下村塾」の縦横無尽の活躍とが同時並行で進むのだろうが、もっと歴史的事実に忠実に男の猛々しい激烈ドラマも描くことが歴史の真実によりそうことができるのではなかろうか。

その意味で高杉晋作の天才こそが、革命の真の原動力になったことは間違いないので、この点に力点をおかねばならない。

田中光顕の『維新風雲回顧録』(河出文庫版)を読み直して、改めて高杉の凄さを再確認した。不惜身命の精神である。高杉に弟子入りして、謦咳に接した田中の回想録だけに迫力満点、「風雲児」高杉の神出鬼没、快刀乱麻、勇猛果敢な飄々としたその突破力を明らかにしている。特に「男子というものは、困ったということは、決していうものじゃない」が高杉の不動の信念であり、岩をも貫ぬく熱誠であり、革命精神であることがわかる。

田中光顕の『維新風雲回顧録』の高杉回顧録は無類におもしろい。これを読んで、今後の「花燃ゆ」での高良健吾君に期待しよう。彼の爛々として燃えさかる炎のような目つきが気に入ったよ。

田中 光顕『維新風雲回顧録』を読むと、中岡慎太郎は、「時勢論」で予言している。

「自今以後、天下を興さんものは、必ず薩長両藩なるべし、吾思うに、二藩の命に従うこと、鏡にかけて見るがごとし、しかして他日、天下近日のう国体を立てて外夷の軽侮を絶つも、またこの二藩にもとづくなるべし、これまた封建の天下に功あるところなり」

事実、天下の風雲は、中岡の明言したように動いていたのである。

この時、長州で、私が、最も世話になったのは、高杉晋作である。中岡は、「兵に臨んでまどわず、勝機をみて動き、奇をもって人に勝つものは、高杉東行、これまた洛西の一奇才」と称賛しているが、彼は長州における人物のみならず、天下の人物である。

最初、私が高杉に会ったのは、1863年(文久3)、春、国もとから京都に出た時であった。

高杉は、当時、髪を剃って、クリクリ坊主になって、法衣のようなものをまとい、短剣を一本さしているというような風体。それにはわけがある。長藩では、彼を国もとへかえして、政務座に抜擢しょうとした。

ところが、高杉は役人になることは御免だと、いい張った。藩の家老・周布政之助が、しきりに、すすめたが、なんとしても聞き入れない。

「拙者は、是非とも勤王の師を起こして、幕府を倒さずにはおかぬ、役人になることなどは思いもよらぬ」

「といって、今、急に、そうはゆくまい、だんだん時勢がすすめば、足下の望みどおりの時機が参ろう、まず・これから十年も待つことだな」と周布はそういった。

「しからば拙者に十年のおいとまを願いたいさすれば、ほかにあって、毛利家のために働きます」

「それほど、足下が熱心なら、たってとも参るまい、十年のおいとまはなんとかして、取り計らって進ぜる」

周布が、中に入ったので、君侯からもお許しが出た、そこで、彼は、すぐに、落籍を脱して坊主となったのである。
  • 西へ行く人を慕うて東行く 我心をば神や知るらん

これはこの時の述懐だ。西へ行く人というのは、西行法師をさす。西行が隠遁したのを慕って、反対の東へゆくという心持ちは、神よりほかに知るものはないという諷意だ。

私と初対面の時は、正にこういう際であって、何でも場所は東山にある料亭で、高杉は、首に頭陀袋をかけていた。

芸妓が、よってたかって、物珍しそうに、この新発意をからかいはじめた。すると、高杉は、坊主頭をたたいて、謡い出したもんだ。

●坊主頭をたたいてみれば 安い西瓜の音がする

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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