前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン/日本議会政治の父・尾崎咢堂による日本政治史講義②』ー『売り家と唐模様で書く三代目』②『80年前の1942年(昭和17)の尾崎の証言は『現在を予言している』★『 浮誇驕慢(ふこきようまん、うぬぼれて、傲慢になること)で大国難を招いた昭和前期の三代目』

   

  

  日本リーダーパワー史(237)記事再録

 80年前の1942年(昭和17)の尾崎の証言は『現在を予言している』

浮誇驕慢(ふこきようまん)で大国難を招いた昭和前期の三代目

<今回の福島原発事故と同じ。クリーンエネルギーという原発神話、技術大国日本では原発事故はありえないという技術過信と驕り。事故、地震、津波を想定外とする油断、怠慢こそ浮誇驕慢(ふこきようまん)そのもの>

 第三代目ころの社会、国民感情はどうなったのか

 全国民は、右の如き精神状態を以て、1930年(昭和四、五年)ころより、第三代目の時期に入ったのだから、世態民情は、いよいよ浮誇驕慢(ふこきようまん=うぬぼれて、傲慢になること)におもむき、

あるいは暗殺団体の結成となり、あるいは共産主義者の激増となり、あるいは軍隊の暴動となり、軽挙盲動、きびすを接して起こり、いずれの方面においてか、国家の運命にも関すべき大爆発、すなわち、まかりまちがえば、川柳のいえるが如く『売家と唐様でかく3代目』と書かねばならぬ運命にも到着すべき大事件を巻き起こさなければ、止みそうもない形勢を現出した。

 私はこの形勢を見て憂慮に耐えず、何とかしてこの大爆発を未然に防止したく思って、八方苦心したが、文化の進歩や交通機関の発達によりて世界が縮小し、その結果として、列国の利害関係が周密に連結せられたる今日においては

国家の大事は、列国とともに協定しなければ、裏誠の安定を得ることは不可能と信じた。よりて列国の近状を視察すると同時に、その有力者とも会見し、世界人類の安寧慶福を保証するに足るべき方案を協議したく考えて、第四回目、欧米漫遊の旅程に出た。

 しかるに米国滞在中、満州事変突発の電報に接して、愕然自失(がくぜんじしっ)した。

この時、私は『これは明白なる国際連盟条約違反の行為にして、加盟者五十余ヵ国の反対を招くべき筋道の振舞である。日本1ヵ国の力を以て、五十余ヵ国を敵に廻すほど危険な事はない』と。

果たせるかな、その後開ける国際会議において、我国に賛成したものは、一国もなく、ただタイ国が、賛否いずれにも参加せず、棄権しただけであった。

 このころまでは、我国の国際的信用は、すこぶる篤く、われに対して、悪い感情を抱く国は支那(中国)以外には絶無といってもよいほどの状況であって、名義さえ立てば、わが国を援(たすけ)けたく思っていた国は、多かったように思えたが、何分、国際連盟規約や不戦条約の明文上、日本に賛成するわけにいかなかったらしい。

連盟には加入していない所の米国すら、不戦条約その他の関係で、わが満州事件に反対し、英国に協議したが、英政府はリットン委員(会)設置などの方法によって、平穏にこの事件を解決しょぅと考えていたため、米国に賛成しなかった。

また米国は、国際連盟の主要国たる英国すら、条約擁護のために起たないのに、不加入国たる米国だけが、これを主張する必要もないと考えなおしたらしい。予は王政維新後の二代目、三代目における世態民情の推移を見て、一方には、国運の隆昌を慶賀すると同時に、他方においては、浮誇驕慢(ふこきようまん)に流れ、ついに大国難を招致するに至らんことを恐れた。

故に1928年(昭和三年)、すなわち維新後三代目の初期において、思想的、政治的、および経済的にわたる三大国難決議案を提出し、衆議院は、満場一致の勢いを以て、これを可決した。

満州事変に関して上奏文を宮相に密送す

 上述の如く、かねてより国難の到来せんことを憂慮していた予なれば、満州事件の突発とその経過を見ては、一瞬も安処するあたわず、煩悶懊悩の末、ついに、天皇陛下に上奏することに決し、一文を草し官相(内大臣)に密送して、天皇の書見に供たせられんことを懇請した。

満州事変を視て、大国難の種子が蒔かれと思いなせるがためである。ムッソリーニや、ヒトラーの如きも、武力行使を決意する前には、列国を怖れて、躊躇していたようだが、我が満州事件に対する列国の動静を視て安心し、ついに武力行使の決意を起こせるものの如く思われる。

 しかるに、支那事件(日中戦争)が起こり、英米と開戦するに至りても、世人はなお国家の前途を憂慮せず、局部局部の勝利に酔舞して、結末の付け方をば考えずに、今日に至った。

 こうして生活の困難は、日に日に増加するばかりで、前途の見透しは誰にも付かない。どこで、どうして、英米、支那を降参させる見込みかと問わるれば、何人もこれに確答することは出来ないのみならず、かえって徴音ながら、ところどころに,やっと『国難来る』の声を聞くようになった。

 全国民の大多数は、国難の種子は、満州に蒔かれ、その後幾多の軽挙盲動によりて、発育、生長せしめられ、ついに今日に至れるものなることは、全く感知せざるものの如し。衆議院が満場一致で可決した三大国難決要の如きも、今日は記憶する人すらないように見える。

維新後三代目に当たるところの現代人は『売家と唐様で書く』ことの代わりに『国難とドイツ語で書いて』いるようだ……」

 現在不敬問題となっているのは、この意味の一端中、議会政治に関するものを略述して、一般公衆、特に選挙人の反省を促せるものに過ぎない。この事実がどうして不敬罪に該当するかほ、何人もこれを理解しかねるだらう。以上

 
昭和十九年四月十四日
大審院第3刑事部
裁判長 三宅正太郎殿
 
                 被告 尾崎行雄
 
                        (つづく)

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
「日本風狂人伝⑥歌人・若山牧水「生来、旅と酒と寂を愛し、自ら三癖と称せしが命迫るや、静かに酒を呑み・」

日本風狂人伝⑥             2009,6,22 歌人・若山牧水 「生 …

no image
『Z世代のための日中韓外交史講座』㉒」★『 日中韓150年史の真実(7)<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回帝国議会で演説した』(カット写真は大阪駅前の高層ビル群6枚掲載)

『オンライン講座/現在のミサイル防衛・抑止力論議の先駆的事例の研究』★ 2020 …

no image
速報(215)『日本のメルトダウン』ー『脱原発世界会議』『今後激増する「内部被曝」「低線量長期被曝」の「何でも質問会」』

速報(215)『日本のメルトダウン』 『「脱原発世界会議」』   ●『 …

no image
速報(232)『ピント外れだったソニー、ストリンガーの7年間』●『「日本の倒産」に賭けるヘッジファンドーとの戦い』

速報(232)『日本のメルトダウン』   『ピント外れだったソニー、ス …

『Z世代への遺言』★『今、日本が最も必要とする人物史研究①」★『日本の007は一体だれか→福島安正中佐』★『ウクライナ戦争と比べればロシアの侵略体質は変わらない』★ 「福島はポーランドの情報機関と協力しシベリア単騎横断でシベリ鉄道の建設状況を偵察した』★「福島をポーランド紙は「日本のモルトケ」と絶賛した』

  2016/04/06 日本リーダーパワー史(556)「知らぬは「自 …

no image
日本リーダーパワー史(205)★『トッドの提言―日本の国家戦略はアメリカの庇護下、核武装、中国従属の3つー』

日本リーダーパワー史(205)   『エマニュエル・トッドの提言―20 …

no image
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(234)/ 『日本のドローン市場の発展を妨げる各種規制を撤廃して成長産業に離陸させねばならない』★『 第3回国際ドローン展(2017/4/20)』ー『ロームの<ドローン産業の未来を支えるI0Tソリューション>』★『JUAVAC ドローン エキスパート アカデミーのドローン女子』のプレゼン(動画20分あり)

    2017/04/22 /日本・世界最先端「 …

『オンライン/2022年はどうなるのか講座②』★『異常気象とコロナ共生、経済再生の2022年(下)』★『TPPでの中国、米国の態度  』★『第2次岸田内閣スタート―前途多難が続く』★『内向き日本と将来を見据える米欧、中国』★『スピード、決断力、逆転突破力が勝負を分ける』

(以下は2021年11月15日までの情報分析で、3人による放談です) ★『異常気 …

『オンライン講座/三井物産初代社長/益田 孝(90歳)晩年学』★『『千利休以来の大茶人・「鈍翁」となって、鋭く生きて早死により,鈍根で長生きせよ』★『人間は歩くのが何よりよい。金のかからぬいちばんの健康法』★『 一日に一里半(6キロ)ぐらいは必ず歩く』★『長生きするには、御馳走を敵と思わなければならぬ』★『物事にアクセクせず、常に平静を保ち、何事にもニブイぐらいに心がけよ、つまりは「鈍」で行け。』

  2012/12/06 人気記事再録/百歳学入門(59) …

no image
梶原英之の政治一刀両断レポート(1)「政治の売り切れ」救うのは総選挙――『敗戦』に政治ゴタゴタはつき物

梶原英之の政治一刀両断レポート(1)   「政治の売り切れ」救うのは総 …