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『日本占領・戦後70年』「1946年(昭和21)元旦の天皇の『人間宣言』はなぜ出されたのか、『地方巡幸』はその結果始まった。

   

 『日本占領・戦後70年』

「1946年(昭和21)元旦の天皇の『人間宣言』はなぜ出

されたのか、『地方巡幸』はその結果始まった。

「昭和天皇と地方巡幸」(1)

     前坂 俊之(静岡県立大学名誉教授)

 天皇の人間宣言 

1946年(昭和21〉1月元旦、昭和天皇は終戦後はじめての詔書を発表した。

この中で、「天皇ヲ以テ現御神(あきつみかみ)トシ,日本国民ヲ以テ他ノ民族二優越セル民族ニシテ,世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念二基クモノ二非ズ」と自らの神格化を否定した。これが「天皇の人間宣言」といわれものだが、この詔書の前文には明治天皇がご一新で発布した「万機公論二決スベン」の「五箇条御誓文」に日本の民主主義の原点があるとしたメッセ―ジが入っていた。

人間宣言

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E9%96%93%E5%AE%A3%E8%A8%80

対訳 “人間宣言”

www.chukai.ne.jp/~masago/ningen.html

新日本建設に関する詔書 (いわゆる人間宣言) …. をなさったのは、感心すべきものであると非常に賞讃されて、そういうことなら全文を発表してほしいというマッカーサー司令官の強い希望があったので全文を掲げて、国民及び外国に示すことにしたのであります。

http://www.chukai.ne.jp/~masago/ningen.html

このニュースは全米の新聞でも大きく報道され、注目を浴びた。『ニューヨーク・タイムズ』は「天皇は、詔書によって日本史上の偉大な改革者の一人となり、日本を真の立憲政治国に転換する政治改革への道をひらいた」と書いた。

1945年8月15日の終戦後、GHQの日本占領にとって一番問題となったのは日本の国体である天皇制であった。米国の世論調査などでは天皇の戦争責任追及が過半数を超え、9月10日には米上院が「天皇を戦争裁判にかけよ」と決議していた。

ところが終戦は天皇の鶴の一声で、全軍一糸乱れぬ武装解除し、GHQの日本上陸に対しても一発の銃声もゲリラの反撃もなかった。9月20日、昭和天皇がマッカーサーを訪問、「戦争遂行の全責任は私にある」と明言したのに、マ元帥は感動し、昭和天皇に好感を抱いた。

マッカーサーは「天皇は100万人の軍隊に匹敵する」(アイゼンハワー米軍参謀総長への書簡)と見込み、天皇の威力を利用してGHQの直接統治ではなく、天皇・日本政府による間接統治を行う方針を固めた。約20万人にのぼる駐留軍と7億ドルの経費を削減できるからだ。

一方、天皇・政府は天皇退陣論が日本の新聞でも大きく報道され、天皇が戦犯として訴追されるかどうかの東京裁判での起訴の行方に危機感を募らせた。

12月25日にモスクワでの米英ソ三国外相会議が、東京に米、英、ソ、中、豪、インドによる「対日管理理事会」を設置が決まり、21年2月に第一回会議が開かれることになった。天皇の戦犯訴追の急先鋒のソ連などが乗り込んでくるーとマ元帥は翌26日に旧天皇制と憲法改正作業を日本側に厳しく要請した。

ところで、GHQ内での天皇、皇室担当は、民間情報教育局(C・I・E)のハロルド・G・ヘンダーソン陸軍中佐で、GHQと宮内省との直接の連絡係は、英国人・プライスレジナルド・ホーラス・ブライス(1898-1964)である。同氏の妻は日本女性で、11月から学習院大学で英文学教授に就任、皇太子(現平成天皇)の特別英語教師も務めていた。

十二月初め、プライスは、「天皇自身が神格否定の声明を出したい意向をもっている」と内部情報をヘンダーソン中佐に伝えた。

ヘンダーソン、プライスが「天皇の人間宣言」の草案を作成

ヘンダーソンは直ちに昼食時間を利用して、第一ホテルで、1時間ほどで完全に天皇の神格の否定する草案を書いて、ブライスに手渡した。翌日、プライスはそれを修正した草案を持参した。この草案をみたマッカーサー元帥は驚いたが、すぐ承認し、プライスは草案を官内省に持ち込んだ。

12月23日、前田多門文相は首相官邸で幣原喜重郎から英文の手紙(このプライスの草案)を見せられ、詔書の起草を指示された。(児島襄「史録日本国憲法」(文春文庫、1986年刊)

前田が書き直したが、幣原首相は気に入らなかった。幣原自ら英文で書く決心をし、「これまでの勅語は固苦しいので、せめて五箇条の御誓文程度に平易なものにしたい」と多摩川の私邸で、夜ふけまで英文の推敲を加えた。英文には自信を持っていただけに、古文体ながら凝ったものができた。(猪木正道『吉田茂』(下)読売新聞社、1981年)

この詔書の写しは吉田茂外相の手紙をそえて12月31日にマ元帥に届けた。翌元旦に、マ元帥は「天皇の声明は余の非常に欣快とするところである。天皇は日本国民の民主化に指導的役割を果している」と歓迎表明した。

以上が「人間宣言」の誕生の舞台裏だが、GHQ主導で天皇、宮内省、政府が一体となって「人間天皇への道」を演出したことがよくわかる。

この「人間宣言」が、天皇自らの発意という形で出され、この行動プランとしての「地方巡幸」が企画された。一月十三日の侍従次長木下道雄のメモにはCIEからプライスへ託された天皇への伝言が記されている。「天皇は須らく御自ら内地を広く巡幸あらせられて、或は炭鉱を、又或は農村を尋ねられ、彼等国民の語る所に耳を傾けさせられ、又親しく談話を交えて彼等に色々な質問をなし、彼等の考えを聞かかるべきである」(木下道雄『側近日誌』)。

明治以来「天皇ハ神聖ニシテ犯スへカラス」の「神権天皇」で、見てはいけない雲の上の存在が、これが一転して、地上に降りてきて「見える人間天皇」へと変身し、一大パレードが演出されたのである。

つづく

 - 人物研究, 現代史研究

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