前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界/日本リーダーパワー史(968)―『今年6月はG20が大阪で開かれるなど安倍地球儀外交の総決算の年となる』★『安倍首相にとって恫喝、強圧外交のこわもてのトランプ氏、プーチン氏、習近平国家主席、金正恩委員長との外交決戦を迎える』

   

世界/日本リーダーパワー史(968)

今年は安倍外交の総決算の年となる

1853(嘉永6)年7月8日、ペリーの黒船4隻が日本開国を求めて浦賀に来航した。

当時の人口は清(中国)が約4億人でトップ、日本が約2760万人、米国はその半分の約1420万人しかなかった。産業革命後の英仏米ロ、西欧各国は産業製品の輸出と原料輸入の貿易相手国として中国、日本、アジアに開国を迫ってきた。石油が発見される前だったので、主要燃料の捕鯨油をもとめて日本に捕鯨、食料、飲料水基地の確保が目的だった。

すでに、2年前から黒船来航のニュースはオランダ風説書により幕府には知らされていたが、幕府は厳重に秘密にしていた。

「当時の幕閣、関係者の多くは何の成算もなくただ何とか口実を設けて、交渉の先延ばししか考えていなかった。黒船4隻は東京湾奥深くまで侵入、測量し、軍事的に威嚇した。さらに開国を拒めば近海、カルフォルニアにいる軍艦100隻を出動させると恫喝・強圧外交を展開した。幕府は震え上がり、ペリーの国書をしぶしぶ受け取り、「将軍(家定)が病気で決定できないので1年間待ってほしい」と返答した。ペリーは再来航を約束して中国との貿易交渉に向かった。

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船) たつた四杯で夜も眠れず」。幕府も世の中も上を下への大騒ぎとなった。国の掟の鎖国の厳守、民には情報は一切知らせずの無策の幕府は初めて各大名から意見を聴取、識者の意見を求めた。病弱、愚劣な当時の将軍家定より、もっと賢明な将軍の世継ぎが必要との声が高まり、一橋慶喜(最後の将軍)の擁立運動がおこった」(徳富蘇峰著「近世国民史、開国日本、神奈川条約締結編」(講談社学術文庫)。

「実にぺリーこそ慶喜擁立運動のパトロンであった」とも徳富は書いている。

この黒船来航をきっかけに「攘夷か、開国か」をめぐって、幕末動乱に突入、徳川幕府崩壊、明治維新の開国までにさらに15年を要した。

この歴史を振り返ると、現在の国際政治、経済情勢とはあまり変わっていないデジャブ(既視感)を覚える。150年後の今でも、世界貿易の地政学的な中心は中国、日本、アジア地域(人口約40億人)が握っており、米国トランプ大統領による米中貿易交渉もこの類似ケースである。

しかも外交交渉もトランプ大統領の恫喝、強圧ディール外交と同じであり、ロシアプーチン大統領、中国習近平国家主席、金正恩主席らも共産主義・独裁・強権国家として、19世紀さながらの帝国主義的な強圧外交(恫喝外交)を展開し、取り囲まれた日本は右往左往、振り回されている状態だ。

徳富蘇峰は『幕府崩壊』の原因として、徳川幕府の260年にわたる鎖国島国閉じこもり政策と封建的な家制度、身分制度、情報閉鎖、秘密主義、三猿主義によって制度的な矛盾だけでなく、日本人の性格そのものが因循姑息(いんじゅうこそく=古い習慣ややり方にとらわれて改めようとせず、その場しのぎに終始するさま)に固まり、公正明大な気風をなくし、イエス、ノーの態度を明確にせず、巧言令色、一時逃れの言葉に終始。近代的科学的精神が育たなかった」と指摘する。

今年が最後の「平成30年間」は「経済敗戦」と「失われた30年間」だった。その間、安倍政権はアベノミクス(経済再生戦略)を打ち出したが「森加計疑惑」「情報隠し」「公文書の偽造」「厚労省の統計不正事件」などが次々に発生。「改正入管難民法」では、ある新聞は『移民は国家の衰退を招く』と強く批判するなど難航してきた。政府の鎖国閉鎖体質、外交下手、紙とハンコの前例踏襲主義で改革できず、因循姑息な「心の鎖国」に陥った国民精神も100年たても容易に改革できないのだ。

 

黒船来航から5年後の1858年に、治外法権、関税自主権のない不平等条約としての日米通商条約が成立、各国とも同じの不平等条約を結んだがこの外交無知によって不平等条約の改正にこぎつけたのは1894年(明治27)で、実に約30年近くを要したのである。

今年は6月末にG20が大阪で開かれるなど日本外交の総決算の年となりそうだ。安倍首相が「地球儀外交」「価値観外交」「トップ同士の親密外交」を掲げて登場したのは7年前である。特に北方領土返還問題には熱心で日ロ平和条約の締結をねらって、媚態外交を展開している。安倍首相のプーチン訪問、首脳会談は実に10回にのぼる異例の多さだが、逆にプーチンの訪日は1回のみで、その冷厳な態度に変わりはない。北朝鮮外交はこれからだ。

対中外交は停滞、対韓外交は最悪を迎えた中で、残された対ロ交渉を何とか成功させたい安倍首相の胸の内は『国益よりも2島先行返還で、政権のレガシー作りたい一心』といわれている。

一方、2回目の米朝首脳会談はベトナムのダナンで2月末に実施されることが決った。これまた前のめりトランプ大統領は非核化の問題、朝鮮戦争の終結、平和条約締結について、日本側の思惑以上の結論を出すのか、どうか目が離せない。

トランプ大統領とこれまた個人的に親密な関係を築いてきた安倍首相にとって、恫喝、強圧外交中心のこわもてのトランプ氏、プーチン氏、習近平国家主席、金正恩委員長との外交決戦の本番である。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
<最強の外交官・金子堅太郎⑨>『外交交渉の極致―ポーツマス講和会議で日本を支持したルーズベルト大統領』(終)

<日本最強の外交官・金子堅太郎⑨>  ―「坂の上の雲の真実」ー 『外交 …

no image
●★5『 京都古寺巡礼のぶらり旅!』『秀吉ゆかりの「京都醍醐寺」全動画案内30分(9/3)』―わが 『古寺巡礼』で深く感動した古刹、庭園です②』 金堂、不動堂、祖師堂ななどゆっくり散歩

 『 京都古寺巡礼のぶらり旅!』 『秀吉ゆかりの「京都醍醐寺」全動画案内30分』 …

no image
『縦割り110番/オンライン/デジタル庁はすぐ取り組め動画』ー日本の最先端技術「見える化」チャンネル 『働き方改革』EXPO(幕張メッセ20201/9/16)での「スーパープレゼン」紹介― ドレ ロドリゲス グスタボCEOによるアルバイトの入社手続きをラクに、簡単に、シンプルにできる「WelcomeHR 」(クラウド労務サービス)」

日本の最先端技術「見える化」チャンネル 『働き方改革』EXPO(幕張メッセ202 …

「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編』①」(5/3日)周辺の光景 ー‏開館前から行列ができ、終日長蛇の列、20世紀最大の画家・ピカソの圧倒的な人気がしのばれる。

 2015/06/01  記事再録 『F国際ビジネスマンのワ …

★『オンライン講座・国難突破力の研究②』★「日本史最大の国難・太平洋戦争敗戦からGHQ「日本占領」と「単独講和」を乗り越えて戦後日本の基礎を築いた吉田茂首相の<国難逆転突破力>③』★『ダレス米国務長官の強硬な再軍備要求を断固拒否した吉田茂のリーダーシップ・外交術を学べ(田中角栄の証言)』

「オンライン・日本史決定的瞬間講座⑧」   2021/10/ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(43)記事再録/国難リテラシー⑩最後の首相・鈴木貫太郎の突破力ー『まな板の鯉になれ』★『負けっぷりを良くせよ』

    2011/06/19 /日本リー …

no image
速報「日本のメルトダウン」(521)●日本経済、2014年が正念場(英FT紙)○「シェールガス」バブルの崩壊は目の前」

 速報「日本のメルトダウン」(521)     ● …

no image
世界リーダーパワー史(934)ー『迷走中のトランプ大統領のエアフォースワンはついに墜落寸前か!』★『政府高官たちは大統領失格のトランプ氏に対して憲法修正25条の適用を水面下で検討したものの、同条の適用は史上初となるため「憲法上の危機」を招くため、同氏の退任まで政権を正しい方向に導くことで一致した』

世界リーダーパワー史(934) 『迷走中のトランプ大統領のエアフォースワンはつい …

no image
知的巨人の百歳学(106)ー農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力

睡眠健康法の農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後 …

★『オンライン講義/コスモポリタン・ジャパニーズ』◎『192,30年代に『花のパリ』でラブロマンス/芸術/パトロンの賛沢三昧に遊楽して約600億円を使い果たした空前絶後のコスモポリタン「バロン・サツマ」(薩摩治郎八)の華麗な生涯』★『1905年、日露戦争の完全勝利に驚嘆したフラン人は、日本人を見るとキス攻めにしたほどの日本ブームが起きた』

ホーム >  IT・マスコミ論 > & …