日本リーダーパワー史(815)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス㉚『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力②』★『児玉の決意ー「ロシアと戦って我輩もきっと勝つとは断言せぬ。勝つと断言できないが、勝つ方法はある。』◎『「国破れて何の山河じゃ。ロシアに譲歩することによって、わが国民は必ず萎縮し、中国人、インド人と同じ運命に苦しみ、アジアは白人の靴で蹂躙され、光明を見るのは何百年の先となる』
2017/05/27
日本リーダーパワー史(815)『明治裏面史』 ★
『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、
リスク管理 、インテリジェンス㉚『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力②』★
寺内陸相は「君に就任してもらえば、軍部としても全く心強い。そして、国民もようやく政府の断固たる決意を知って了解するであろう。しかし、内務大臣ではあり、現内閣の柱石の副総理の地位にある君が、その栄誉ある職をなげうってまで……」
児玉は「何をいうか、おぬしは後輩の田村の占めていた地位に就くことを我輩のために気の毒ぢじゃと言いたいのか。そんな馬鹿な!ことをいうな。
親任官であらうと勅任官であろうと国のために、国民のために微力をつくすのは当たり前のことじゃ、そんな斟酌はどうでもいいことじゃ」
桂首相は「その君の気持ちは分る。寺内のいうことも無理でないが、君が政府を去ったら我輩としては、実に片腕をもぎとられる思いで、天下に公約した行政と財政整理も不可能となるじゃろう……」
児玉「おぬしも近眼になったものじゃ、開戦する以上は行政改革も財政整理もない!わしの累生の大事業の地方制度の改革の府県合併案も他日を期する。今後は挙国一致、官民文字通り協力し、勝利を得るため1点にしぼって全力を尽くせばよい。」
児玉はつづけて対ロシア戦の抱負を口にした。
「ロシアと戦って我輩もきっと勝つとは断言せぬ。勝つと断言できないが、勝つ方法はある。考へれば困難、障害は限りなく出てくる。勝つ見込みもやがて曖昧になる。
しかし、ロシアが満州から外交交渉のみによって兵を撤退し、韓国への野望を断つとは期待されぬ。しからば、屈伏するか、起って戦うか、ギリギリの二者択一を日本は選ばねばならぬ!」
「国破れて何の山河じゃ。ロシアに譲歩することによって、わが国民は必ず萎縮し、支那人(中国人)、インド人と同じ運命に苦しみ、アジアは白人の靴で蹂躙され、光明を見るのは何百年の先のことになるかもしれない。
わしは満州の原野に屍を曝しても、白人の奴隷となり、アゴで使われることに甘んずることを断乎として排撃する。」
「桂よ、寺内よ-
我々3人男は明治はじめの血気盛んな『やっとこ大尉』の青春時代にもう一度、還って、内閣総理大臣、内務大臣、陸軍大臣などと、どうでもいい肩書も名誉を放り投げて国のため、国民のため、この日本という国の永遠の発展のために.肉体も心もささげて、眞黒になってロシアに戦いを挑もう。」
と決然たる意志を表明した。
この児玉の一言に桂首相も奮い立ち、「大阪の兵学寮の時代に還るか。よし!ロシアに対する作戦の全責任はおぬしと寺内と俺が分担しょう!明日にでも山県公を訪ねしてくれ、児玉よ!死なばもろ共ぢや!」と意思統一が出来たのである。
以上は宿利重一『児玉源太郎』(国際日本協会、1942年刊、578-586P)の引用である。
この会話の部分は宿利の想像して書いたものだが、児玉の心中を一番よく表していると思うので、そのまま引用した。
大山参謀総長はこの児玉自らの提言に、「すべて児玉さんにお願いする」と辞意を取り下げた。10月12日に児玉の次長就任式がおこなわれた。
式の後、内務大臣だった児玉はフロックコートを軍服に着換え、参謀肩章をつって決然として参謀本部に現われた。参謀本部の部長以下を集めて、『諸君の一層の精励を望む。』とただ一言、語っただけだった。参謀本部は俄然緊張に震えた。
総務部長井口省吾少将は日記にこう書いている。
『児玉男爵、内務大臣を去って参謀本部次長の職に就かるるに合す。以て天の末だ我帝国を棄てざるを知る。何等の喜悦、何等の快事ぞ・・陸軍、中、少将の内に求めて、適任この人の右に出ずる人はあらじ。』。
『東京朝日新聞』の児玉の後日の訃報記事では
「再昨年の秋、参謀次長の田村中将薨去の後、この人が内務大臣より一転下し、フロックコート脱いで再び軍服を着け、急に参謀本部に入れる時は、わが国民の百人中、九十九人までは、みな露国との戦争の到底避くべからざることを内々に覚悟しおりたる際なりしが、相語っていわく、よくも就きたり、又よくも就かしめたり、と。しかし、この人の果決、精毅が国民の信頼を得ありしによる……」
メッケルは「児玉がいる限り、日露戦争は日本が勝つ」と断言していたが、もし、この児玉の名誉も命もいらね、国難に決然とたったリーダ―シップがなければ、明治の『坂の上の雲』はなかったことだけは間違いない。
つづく
関連記事
-
-
記事再録/百歳学入門(66)<世界一の伝説の長寿者は!?> スコッチの銘酒『オールド・パー』のレッテルに残され たトーマス・パー(152歳9ヵ月)」
2013年1月14日/百歳学入門(66) 「<世界一の伝説の長寿者 …
-
-
日本リーダーパワー史(823)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㊳『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力と責任感➉』★『予は、全責任を自己一身に負担し、この責任を内閣にも、又参謀総長にも分たず、一身を国家に捧げる決心を以て熟慮考究の上、一策を案じ、着々これが実行を試みつつある。』
日本リーダーパワー史(823)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」し …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』『東芝問題に見る、会社の危機は個人の危機?』●「 東芝「出直し新体制」を操る「最高実力者」の危険な影響力」
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』 『東芝問題に見 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(754)「仏学者エマニュエル・トッド「VW事件から見えてくるドイツ最大の弱点」 ●「世界で最も稼ぐ作家ランキング「年収110億円」の68歳がトップに」●「世界で最も稼ぐユーチューバー,1位は年収14億円」
日本メルトダウン脱出法(754) 緊急インタビュー!仏学者エマニュ …
-
-
知的巨人の百歳学(106)ー農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力
睡眠健康法の農業経済学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(743)「TPPでGDP12兆円拡大試算、非関税障壁の撤廃効果で」●「女性エベレスト隊隊長に学ぶ、究極の準備」
日本メルトダウン脱出法(743) 焦点:TPPでGDP12兆円拡 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(128)/記事再録★『明治のトップリーダーのインテリジェンスー日露戦争開戦前の大山厳、山本権兵衛の「軍配問答」(出口戦略)にみるリーダーパワー(指導力)』★『アベクロミクス、地球儀外交には出口戦略があるのか!?』★『日韓衝突は近衛外交の「国民政府は相手にせず』の轍を踏んではならない』
2009/08/21 日本リーダーパワー史 ⑩ …
-
-
『日米戦争に反対した』反戦の海軍大佐・水野広徳の取材ノート/遺品の数々」★『水野広徳年譜●『国大といえども戦いを好む時は必ず滅び、天下安しといえども戦を忘るる時は必ず危うし』』
米戦争に反対した』反戦の海軍大佐・水野広徳の取材ノート/遺品の数々 前坂 俊之( …
-
-
『オンライン60/70歳講座/渋沢栄一(91)の見事な臨終の言葉』★『日中民間外交/水害救援援助に 尽力したが、満州事変の勃発(1931年9月)で国民政府は拒否した』★『最期の言葉/長いあいだお世話になりました。私は100歳までも生きて働きたいと思っておりましたが、今度はもう起ち上がれそうもありません。私は死んだあとも皆さまのご事業やご健康をお守りするつもりでおりますので、どうか今後とも他人行儀にはしないようお願い申します』
百歳学入門(234回) 「近代日本建国の父」渋沢栄一の名言② 1931年(昭和6 …
-
-
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝『開戦2週間前の「英タイムズ」の報道/★★『ロシアが極東全体を独占したいと思っており、一方、日本は,ロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東における平和と安全を,中国人、朝鮮人,そして日本人のために望んでいるだけだ』
『日本戦争外交史の研究』/ 『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝ 『 …
- PREV
- 日本リーダーパワー史(814)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス㉙『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力』★『2階級降下して参謀次長になり、この機会(日露戦争開始4ゕ月前)に起って、日本は文字通り乾坤一擲の大血戦をやる以外に途がない。不肖ながらわしが参謀次長として蝦蟇坊(大山厳)の忠実なる女房役になろう』
- NEXT
- <F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(206)> 『7年ぶりに、懐かしのアメリカを再訪,ニューヨークめぐり(5月GW)④』2階建バスツアーでマンハッタンを一周(1)(タイムズスクエアから乗車し、ロウアーマンハッタンへ向かう)★★『まさしくルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」(What a Wonderful World)だね!』