前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(147)』『アブーバクル・バグダディの「イスラム国宣言」についてーイスラム国自称カリフーを読み解くー「イスラム主義のグローバル化が進行し、民主主義、世俗主義、国民国家との戦いが これから延々と続く。

   

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(147)』

「イスラム主義のグローバル化が進行し、

バグダディが不信心者と名指した民主主義、世俗主義、

近代以後の世界各地の国民国家との戦いが

これから延々と続く。

『アブーバクル・バグダディの「イスラム国宣言」について

 ー イスラム国自称カリフ ー(参考 ’15/6/2 文春

浅川芳裕氏の 記事を要約)

<F氏のコメント>

ISISのテロリスクは拡大の一途です。「地球規模のジハード唱道運動」が本格化して行く、という安全保障上の脅威も現実のものとなりつつあります。
パリ政治学院教授で中東専門家の「ジル・ケペル」によれば、今は、ジハードの三代目で、理論的支柱はシリア生まれの技師、政治思想家の「アブムサブスーリー氏」だそうです。
80年代に仏留学、第三世代ジハード理論を出す。著書「世界イスラム抵抗運動への呼びかけ」はネット経由で過激派のバイブルになっている由。
第二世代のアルカイダの失敗に学び、大スペクタクルは不要、安上がりな作戦を世界各地で展開中。
アブムサムスーリーをジハードの武闘派戦略家とすれば、下記のバグダディは現代ジハードのイスラム宗教学上の総合的な意義を、コーランと関連させたイスラム学者といえる?

’14/7、バグダディのカリフ就任時の演説は甚大な影響を及ぼしている。

アブーバクル・バグダディの「イスラム国宣言」について ー イスラム国自称カリフ ー
(参考 ’15/6/2 文春 浅川芳裕氏の 記事を要約)

*バグダディ 経歴
1971年イラク生、44才、バグダッドのイスラーム大でイスラーム学の学士、修士、博士号を取得と云われる。イスラム教 スンニ派。2013年6月イスラム国の建国とカリフへの即位を宣言。

• バグダディの最初の演説は`14/7/4
イラク第二の都市モスルのモスクで行われ、次の様に民衆に呼び掛けた。
1) 「イスラム教徒よ、急げ  ︎ アッラーに帰依する宗教とともに移住せよ」
「そしてアッラーの道において移住する者は、大地に多くの避難所と豊かさを見出す。また、アッラーと彼の使徒の許への移住者として自分の家から出た者は、その後死が彼を捕えても、彼への報酬はアッラーに対して確定した」

2)続けて、「我々が必要な人材は、イスラム法学者と共に、軍事、行政、サービスの専門家、医者、あらゆる分野のエンジニアである」とISへ移住してほしい具体的な専門職種を述べている。極めて実務的な人材募集の呼び掛けである。

日本国内の報道は、ISのリクルーターによって、戦士要員が移住している様が取り上げられているが、国家建設に優位な人材の採用にも力を注いでいる。
3)バグダディは自らをどう位置付けているのか? バグダディの呼び掛けにイスラム教徒が応じる義務があるのか?

7/4の演説に先立つ6/29、ISの報道官、アブ・ムハンマド・アルアドナニからの発表がそれへの回答となっている。
① 従来の「イラクとシャーム(シリア)のIS」から名称をイスラム国に改める。
② カリフ制を採用すること。
③指導者バグダディの真の名と系譜はカリフ・イブラヒームであること。

カリフとは「ムハンマドの死後、イスラム教徒が選んだ指導者(後継者代理の位)」のこと。
カリフ制はカリフに主導されるイスラム共同体(ウンマ)を意味する。又、バグダディが本当にカリフなのか?
実はイスラム教には誰がカリフか?を決める公式機関は存在しない。
バグダディをカリフと認めたムスリム一人一人の心の中で彼はカリフである。
また、カリフ制宣言と同時にわざわざ国名を「イスラム国」と変えたのは何故か? その答えも次の演説にある。

4)「お前たちの勝利によって、何世紀も空位であったカリフ制が回復した。アッラーが長年のジハード、そして忍耐を伴うジハードに励む兄弟たちに勝利を与え給うた。それ故彼らはカリフ制を宣言し責任者としてのカリフを置いた。ムスリムとしての義務を果たしたのだ。」

ここで、バグダディは、武力闘争に勝利した事でカリフ制が復活出来たと言う。この宣言の根拠は、「戦争で実効支配を勝ち取った指導者にはカリフの位が認められる」というスンニ派のイスラム法学にある。

そして、カリフ制を宣言した途端に地域的限定は意味をなさず、領土の概念を超えて、カリフ制の世界は、地球上のイスラム教徒の精神の中に存在することになる。

つまり、バグダディをカリフと仰ぐムスリムが居る場所は、ISの飛び地となる。

5) ここでバグダディはコーランを改めて引用する。「まことに大地はアッラーのものであり、彼の下僕たちの内の望みのものにそれを継がせ給う」と。

この様に地球の主権はアッラーにある事を強調した上で、バグダディは自分の言葉で新たに宣言された「イスラム国」の歴史的な位置付けを次の様に解説する。

6) 「世界のイスラム教徒はカリフが空位になった後、敗北を続けた。それ以来、ウンマ(イスラム共和国)は存在を停止した。不信心者がウンマを弱体化し虐げ、世界各地で優位性を維持し、我々の富と資源を強奪し権利を剥奪した。彼等が広めるスローガンには、欺きと目眩しの言葉が散りばめられ、列挙すると、文明、平和、共存、自由、民主主義、世俗主義、バース主義、民族主義、愛国主義である」

アラブ民族主義、民主主義が真っ向から否定されている。

6) この演説の中で「カリフ制のイスラム国こそが、ムスリムにとって、威厳、権力、権利、主導権をイスラム共同体に取り戻す唯一の主体である」とバグダディは強調する

7) フセイン、カダフィーの歴史観はアラブ民族主義を標榜するも個人崇拝が前面に出、亡き後それを引き継ぐものは皆無だ。

バグダディの場合は、彼の全ての発言は世界唯一の聖典コーランを逐一法源としており、イスラム世界のどこからか、後継者が永続的に登場するメカニズムが包含されている。

従って、イスラム主義のグローバル化が進行し、バグダディが不信心者と名指した民主主義、世俗主義、近代以後の世界各地の国民国家との戦いがこれから延々と続く事となる。

* 浅川芳裕
1974 生まれ カイロアメリカン大
学、カイロ大学中退、アラビア語
通訳、編集者

なぜ増える?イスラム教への改宗 – 浅川芳裕(ジャーナリスト)

http://blogos.com/article/147563/

「イスラム国」指導者の歴史観 – 2015年06月02日

浅川芳裕(ジャーナリスト)

http://blogos.com/article/114021/

日本の野菜は“ユニクロ”よりも強いーー『日本は世界5位の農業大国』

の浅川芳裕・農業技術通信社専務に聞く

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110208/218363/?rt=nocnt

 

「イスラム国」、臓器摘出認める宗教見解=米入手の文書

http://jp.reuters.com/article/usa-islamic-state-documents-idJPKBN0U80E320151225

アングル:IS特需で米誘導兵器の需要急増、メーカ―の負担に

http://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-usa-arms-idJPKBN0TQ0B920151207

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
書評 「静岡連隊物語―柳田芙美緒が書き残した戦争」静岡新聞社編 静岡新聞社刊(2009年7月刊)

書評「静岡連隊物語―柳田芙美緒が書き残した戦争」 静岡新聞社編 静岡新聞社刊(2 …

no image
『W杯サッカー回想録』★『2014年7月/ザックジャパンW杯の完敗の原因とは?」★『「死に至る日本病」(ガラパゴス・ジャパン・システム)であり、日本の政治、経済、スポーツ、社会全般に蔓延する―』★『ストラジティー(戦略)なし。NATO((No Action, Talk Only)「話すばかりで、何も決められない決断しない日本)』

  2014/07/04  日本メルトダ …

no image
日本リーダーパワー史(35)リーダーへの苦言―『豊かな時代の愚行は笑い話ですむが、国難の際の愚行は国を滅ぼす』(スミス『国富論』)

 日本リーダーパワー史(35) ①リーダーへの苦言―『豊かな時代の愚行は笑い話で …

★10「日本の知の限界値」「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」―南方熊楠先生の書斎訪問記はめちゃ面白いよ①

「日本の知の限界値」「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」―南方熊楠先生の書斎訪問 …

no image
日本メルトダウン・カウントダウンへ(901)『安倍首相の退陣すべきを論じる】② 空虚な安倍スピーチをおとなしく拝聴している記者の姿に 『日本沈没メディアコントロール現場』を見た

 日本メルトダウン・カウントダウンへ(901) 『安倍首相の退陣すべきを論じる】 …

no image
日本リーダーパワー史(889)-NHKの『西郷どん』への視点<自国の正しい歴史認識が なければ他国の歴史認識も間違う>●『今、日中韓の相互の歴史認識ギャップが広がる一方だが、明治維新、西郷隆盛、福沢諭吉への日本人の誤認識がそれに一層の拍車をかけている』

日本リーダーパワー史(889)- NHKの『西郷どん』―自国の正しい歴史認識が …

no image
日本メルトダウン(957)『討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向』●『「日本のせいで巨額の金を失った」とトランプ氏、ヒラリー氏と初の直接対決で日米安保に言及』●『戦略なき日本の「お粗末」広報外交』●『安倍首相の呼びかけで自民議員が一斉に起立・拍手 「北朝鮮か中国」と小沢一郎氏が批判』●『東大、またアジア首位逃す 世界大学ランキング』

   日本メルトダウン(957)   討論初戦はヒラリー圧勝、それでも …

no image
速報(187)『日本のメルトダウン』『子供に関しては検出限界の低い測定器で将来の発病に備える』ほか

速報(187)『日本のメルトダウン』   ●『子供たちに関しては検出限 …

no image
日本リーダーパワー史(266)松下幸之助(94歳)の教え★『人を育て、人を生かすー病弱だったことが成功の最大の要因』

  日本リーダーパワー史(266)   日本で最も尊敬されて …

日本リーダーパワー史(630) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23) 『川上操六参謀次長と日清貿易研究所を設立した荒尾精 「五百年に一人しか出ない男」(頭山満評)ー表の顔は「漢口楽尊堂店長」、実は参謀本部の海外駐在諜報武官。

日本リーダーパワー史(630)  日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23)   …