前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本一の「徳川時代の日本史」授業⑦福沢諭吉の語る「中津藩での差別構造の実態」(「旧藩情」)を読み解く⑦

   

 日本一の「徳川時代の日本史」授業 ⑦

 

「門閥制度は親の仇でござる」と明治維新の立役者・

福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の

差別構造の実態」(「旧藩情」)を読み解く

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

 

徳川封建時代の武士はどのような社会、政治。経済環境の中で、

生活をしていたのか、福沢諭吉の「旧藩情」を読み解く⑦


「旧藩情」⑦

 


 また、下士の内に少し和学(日本学)を研究し、水戸の学流を悦ぶ者あったが、田舎の和学、田舎の水戸流にして、日本と世界の実情を知らなかった。

 

すべて中津の士族は他国に出ることが少なく、他の藩の人間と交ること稀だったので、藩外の事情を知る由もなかった。故に、下等士族が教育を得てその気力を増し、心の底には常に上士を蔑視して憚(はばかるーいばること)っていたが、その気力なるものはただ一藩内に養成したる気力にして、いわゆる世間見ずの田舎者なれば、他藩の例にならってこれを実地に活用することはできなかった。

 

また、その仲間の教育なり、年齢なり、また門閥なり、一様に同等であり抜群に優秀な人間がいないがために、藩士を結集して改革をすることができなかった。

このために、ついに明治維新の前後より、廃藩置県から今日に至るまで、中津藩に限っては無事静穏お理由である。もしもこの際に流行の洋学者か、または有力なる勤王家が、藩政を攪擾(かくじょうー混乱させること)

http://kotobank.jp/word/%E6%94%AA%E6%93%BE

 

することがあったら、とても今日の旧中津藩は見ることができなかったであろう。

今、そうでないことは、これを偶然の幸福、因循の賜(たまもの)というべきであろう。 


 中津藩はすでにこの偶然の僥倖(ぎょうこう)によって、明治維新の際に諸藩にあった普通の禍(わざわい)を免かれ、その後もまた重ねてこの僥倖を固くした。

 

けだし、そのこれを固くしたるものとは市学校の設立である。明治四年廃藩のころ、中津の旧官員と東京の慶応義塾と商議の上、旧知事の家禄を分ち旧藩の積金と合して洋学(西洋の学問)の資本として、中津の旧城下に学校を立ててこれを市学校と名づけたり。

 

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A5%E5%B9%B3%E6%98%8C%E9%82%81

http://syou.oita-ed.jp/nakatu/nanbu/syoudamontonakatushigakou.pdf

http://www2.ocn.ne.jp/~fukuzawa/jinmyaku.html

 

学校の規則はもとより門閥、

http://kotobank.jp/word/%E9%96%80%E9%96%A5

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A8%E9%96%A5

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1327858168

 

貴賤(きせん<身分の高低)

http://kotobank.jp/word/%E8%B2%B4%E8%B3%A4

 

を問わずと、表向の名にだけではなく、事実にこの趣意を貫き、設立のその日から釐毫(りごう)

 http://kotobank.jp/word/%E9%87%90%E6%AF%AB

 

も仮すところなくして、あたかも封建門閥の残夢の中で、純然たる四民同権http://dictionary.goo.ne.jp/examples/jn2/100881/m0u/

 

の一新世界を開いたのである。

 

 けだし、慶応義塾の社員は中津の旧藩士族からの者が多いといえども、従来少しもその藩政に嘴(くちばし)を入れず、旧藩地に何等の事件あっても恬(てん)として呉越の観

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/idiom/%E5%91%89%E8%B6%8A%E5%90%8C%E8%88%9F/m0u/

 

をした者もあれば、往々誤って薄情の譏(そしり)

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/130593/m0u/

 

は受けるも、藩の事務を妨げる何れの種族に党派するなどと評されたことはない。

故にこの市学校を設立するにも、真に旧藩地一般のためにするのであって、何等の陋眼(ろうがん、狭い見識)

http://kotobank.jp/word/%E9%99%8B

 

をもってこれを視ても、、上士を先にするものでも、下士を後にするものでもなく、その目的とするところは、正しく中津旧藩の格式りきみ(格式,旧習)をただして、共に日本社会の虚威(からいばり)

http://kotobank.jp/word/%E8%99%9A%E5%A8%81

 

を圧倒するものにして、藩士のこの学校にくるかどうかは自然に任していたが、士族の上下に別なくしばらくこの学校に就く者多く、なかんずく上等士族の有力なる人物にて、その子弟を学校に入れる者も少なくなかった。
 すでに学校に入れば、門閥のことも同時に断絶してその痕跡を見ることはできない。市学校は、あたかも門閥の念慮(思慮)

http://kotobank.jp/word/%E5%BF%B5%E6%85%AE

 

を測量する試験器というものだ。

(余輩(福沢)はもとより市学校に入らない者を見て、皆が門閥守旧の人というのではない。近来は市校の他に学校も多ければ、子弟のために適当の場所を選ぶのは全く父母の自由であり、これがため、敢てその人物を軽重

http://kotobank.jp/word/%E8%BB%BD%E9%87%8D

 

するわけではないが、真に市学校を心から疑わなかった者は、門閥の考えを断絶する人物なので、この文章をよくわかると思う)下等士族の輩が上士に対して不平を抱く理由は、専ら門閥虚威(門閥はからいばり)の一事にあって、しかも、その門閥家の内にて有力者と称する人物に向って敵対の意を抱くことはなかったが、

その好敵手(ライバル)と思う者が先頭に立って自から門閥の陋習(ろうしゅうー悪い習慣)を脱したために、下士はあたかも戦おうとしてたちまち敵の所在を失った者のようだった。敵のためにも、味方のためにも、双方共に無上の幸というべきである。故に、市学校は旧中津藩の僥倖(ぎょうこうー幸福)を重ねて固くして真の幸福となった。

 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「オンライン決定的瞬間講座・日本興亡史」⑬」★『国会議員63年間のギネス政治家・尾崎行雄(96歳)の「昭和国難・長寿逆連突破力』★「日本盛衰の原理はー売り家と唐様で書く三代目」で不敬罪で82歳で起訴される』

  第5章―国会議員63年間のギネス政治家・尾崎行雄(96歳) ますま …

no image
★5<まとめ記事再録>『歴史の復習/戦争報道の研究』/『世界史の中の日露戦争』-『英タイムズ』,『米ニューヨーク・タイムズ』など海外紙はどう報道したか②(連載21回―34回)』★『緊迫化する米/北朝鮮の軍事的衝突はあるのか、日露戦争勃発直前の英米紙の報道と比較しながら検証する②』

★5<まとめ記事再録>『歴史の復習、 戦争報道の研究問題』/ 『世界史の中の日露 …

no image
 日本リーダーパワー史(181)<百年前にアジア諸民族の師父と尊敬された犬養毅①>大アジア時代の先駆者

 日本リーダーパワー史(181)   <百年前にアジア諸民族の師父と尊 …

no image
知的巨人の百歳学(128)ー大宰相・吉田茂(89歳)の晩年悠々、政治健康法とは①<長寿の秘訣は人を食うこと>『「いさざよく、負けつぷりをよくせよ」を心に刻み「戦争で負けて、外交で勝った歴史はある」と外交力に全力を挙げた。』

2013/11/04  記事再録/百歳学入門(83) 大宰相・吉田茂( …

『リーダーシップの日本近現代史』(237)/『日本人に一番欠けているものは自由と正義への希求心』ー冤罪と誤判の追及に生涯をかけた正義の弁護士・正木ひろし氏を訪ねて』★『世界が尊敬した日本人―「司法殺人(権力悪)との戦いに生涯をかけた正木ひろし弁護士の超闘伝12回連載一挙公開」』

    2017/08/10 &nbsp …

no image
日本リーダーパワー史(496)<オバマのアジア歴訪、日米首脳会議の結果はー明治国家の参謀・杉山茂丸の外交力の教訓

     日本リーダーパワー史(496) …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(274)★『江戸を戦火から守った <勝海舟、山岡鉄舟と共に幕末三舟の一人として知られた高橋泥舟の国難突破力②-泥舟の槍・淋瑞の禅』

       2011/06/11&nb …

『Z世代のためのオープン講座』★『ウクライナ戦争と「アルマゲドン(最終戦争)」の冬の陣へ(上)』★『WHOが「コロナの終焉近い」』★『クリミア橋爆破事件の衝撃』★『悪名高い「アルマゲドン将軍」の異名を持つスロヴィキン将軍を総司令官に抜擢』★『EUはロシアの「最も野蛮で凶悪な戦争犯罪」と非難』(10月15日までの情報)

   前坂俊之(ジャーナリスト)   ウクライナ戦争はクリミ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(105)』 「パリ・ぶらぶら散歩/オルセー美術館編(5/2日)④

ホーム >  湘南海山ぶらぶら日記 > …

『日本一の刑事弁護士は誰か!」『棺を蓋うて』ー冤罪救済に晩年を捧げた正木ひろし弁護士を訪ねて』★『世界が尊敬した日本人―「司法殺人(権力悪)との戦いに生涯をかけた正木ひろし弁護士の超闘伝12回連載一挙公開」』

    2017/08/10  『棺を蓋 …