前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『ユビキタス社会の幕開け』一日本に再びビッグチャンスー

   

1
『ユビキタス社会の幕開け』一日本に再びビッグチャンスー
前坂 俊之(静岡県立大学国際関係学部教授)
Toshiyuki/Maesaka
1・自由自在な双方向通信
今、インターネットの通信環境はブロードバンド(広帯域)で一変し「高速アクセス」、
「大容量」、「常時接続」(一日中つなぎっぱなし)、「定額料金」となり、料金も世界的に
見てもー番安い水準に下がった。
このブロードバンド・ネットワークが毎月約30 万件というハイペースで増加しており、
この02年2 月末のNTT 回線を利用したDSL(非対称デジタル加入線)は200 万(総
務省の調で)を突破し、昨年度10 倍以上の急伸ぶりである。
このままいけば、今年度末にはADSL・CATV・光ファイバーを含めたブロードバンド
全体で1 挙に800 万に迫る勢いで、米国、韓国を抜いて、世界一のブロードバンド大
国に躍り出る勢いだ。
また、モバイルでも昨年末からスタートしがコモの第三世代携帯電話「FOMA」はこ
れまでの文字、静止画の環境から映像、動画像送信が中心となるなど、まさにインタ
ーネット第二次革命ともいうべきブロードバンド・モバイル時代を迎えている。
2・インターネットアドレスを次世代通信規格「IPv6」
さらに、もう1 つ重要な点はインターネットアドレスを次世代通信規格「IPv6」に変更
することである。現在のアドレスは「IPv4」によって43 億個しかなく間もなく不足する。
「IPv6」に変更することでアドレスは無限大となり、身の回りのあらゆる機器、モノ、商
品にも固有のアドレスをつけて、家電、機器同士も情報のやりとりが可能になる。
この結果、パソコン、PDA(情報端末)、テレビ、携帯電話、ゲーム機、カーナビ、汀S
(高度道路交通システム)から家庭内の冷蔵庫、電子レンジ、クーラー、照明などのす
べての家電もブロードバンドネットワークスで結ばれ、「いつでも」「どこでも」「どこから
でも」「だれとでも」「どのような端末からでも」自由自在に動
画像、情報が双方向に通信できる『ユビキタス』(ラテン語で神はどこにでも偏在する
2
との意味で、どこからでもコンピュータにっながること)ネットワークが今、幕開けしよう
としている。
田舎の老父母が孫の幼稚園の運動会をパソコンのインターネット中継で楽しんだり、
帰宅前に携帯電話から照明を点灯し、自宅のエアコンを遠隔操作したり、冷蔵庫の
中身をチェックして買い物もできるようになる。
3・老人介護や福祉にも有効
またカーナビが渋滞情報をリアルタイムに伝えてくれるし、常時接続によって監視モ
ニターで老父母の介護や、遠隔医療、福祉など幅広く利用できる状態が現実のものと
なる。短編映画の「オンデマンド」配信も実現するし、企業の社員教育やテレビ会議の
インターネット放送も容易になる。
これまで、回線速度の遅さがネックだったe―コマース(電子商取引)も商品を360 度
いろんな方向から眺めたり、映像が中心でテレビ電話のように店員と実際の近い感
覚で買い物に楽しむことが可能になるなど、社会、経済、産業のさまざまな分野でブ
ロードバンドが起爆剤となって、一大変革をもたらすことだろう。
あるシンクタンクの調査では2005 年に日本は『ユビキタス社会』を迎え、58 兆円の
需要創出効果をもたらすとの試算が出ている。韓国などのブロードバンド大国から大
きく出遅れてしまったIT 後進国・日本にとって、再びビッグチャンスが訪れてきたとい
える。
情報家電分野は日本のお家芸であり、薄型テレビ、PDA やデジタルカメラ、オーディ
オ、家電製品などに家電メーカーは強い技術力をもっており、「情報家電」では世界を
リードしている。
特にカーナビやゲーム機などは圧倒的な強さがあり、第3 世代携帯電話は日本が世
界で最初の市場となっている。
さらに、インターネットのWEBサイトは圧倒的に英語の世界で日本語ではハンディー
があったが、こんどの勝負は日本が強い競争力のある映像やアニメ、動画、ゲームで
の表現力にあり、文字のハンディーが軽減される。
3
インターネットのパソコンを中心とした第一ラウンドでは米国に全く歯が立たなかっ
たが、「ユビキタス・ブロードバンド時代」は日本が強くて得意とする分野が多いだけに、
追いつき逆転できる可能性がなくはない。
政府のIT 国家戦略である「e-Japan」構想では2005年に2500万世帯に光ファイ
バーで超高速インターネットを引くなど計4000万人にブロードバンドを普及させる計
画だが、もっと前倒しして実現すべきだし、通信関係の規制を完全に撤廃して、 通信
と放送の融合を一層加速させるべきであろう。
<聖教新聞2002年4月18日に掲載>

 - IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
<書評>田中等著『仏像経験―おもい出の古寺紀行、つれづれの古仏随想』(展望社 1600円)

<書評>田中等著『仏像経験―おもい出の古寺紀行、つれづれの古仏随想』   (展望 …

『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争④』世界史の中の『日露戦争』⑱『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』『タイムズ』【開戦3週間】★『日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国は好意的にみている。』★『 日本は朝鮮の皇室の「安寧」と「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障している』

    2013/06/18 記事再録 &nbsp …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(23) 参院選・民主党敗北と政治不信- メディアの報道姿勢も検証

池田龍夫のマスコミ時評(23)   参院選・民主党敗北と政治不信&#8 …

『Z世代のための日本興亡史研究④』★『日本海海戦完勝の<東郷平八郎神話>が40年後の<太平洋戦争開戦と敗北>の原因の1つになった』★『ネルソン神話と40年後の東郷神話の同一性』

  第2次近衛内閣(1940年7月22日から1941年7月18)の和戦 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評⑦ 「鳩山論文」批判は行き過ぎ―NYタイムズ→日本各紙の問題点

  池田龍夫のマスコミ時評⑦「鳩山論文」批判は行き過ぎ―NYタイムズ& …

『オンライン/昭和史の外交大失敗から学ぶ講座』★『山本五十六のリーダーシップー日独伊三国同盟(今から80年前の1940年の大外交失敗)とどう戦ったか』★『ヒトラーはバカにした日本人をうまく利用するためだけの三国同盟だったが、陸軍は見事にだまされ、国内は軍国主義を背景にしたナチドイツブーム、ヒトラー賛美の空気が満ち溢れていた』

2012/07/29 記事再録・日本リーダーパワー史(288) <山本五十六海軍 …

「逗子なぎさ橋珈琲店テラス」からみた「冬の富士山ベストビュー」(2025 /12/26-27pm700)

<逗子海岸、鐙摺(あぶづり)海岸、葉山マリーナから見た富嶽36景>  

no image
知的巨人たちの百歳学(178)記事再録/『創造的長寿力の葛飾北斎(89歳)②』★「72歳で傑作『富嶽三十六景』の連作を発表、その巻末に 「私は6歳より物の形をうつす癖があり、70歳以前に描いたものは取るに足らない。73歳となった今やっと、禽獣虫魚(動物昆虫魚類)の骨格、草木を描けるようになった。90歳にして画の奥義を極め、100歳を超えると一点一格を生きた如く描ける神妙の域に達したい』と日々研鑽、努力を続けたのです』★『天才とは日々研鑽・努力の人なり』

 葛飾北斎(89歳)「過去千年で最も偉大な功績の世界の100人」の1人 創造力こ …

『Z世代のための日本の超天才人物伝③』★『約120年前に生成AI(人工頭脳)をはるかに超えた『世界の知の極限値』ー『森こそ生命多様性の根源』エコロジーの世界の先駆者、南方熊楠の方法論を学ぼう』★『「 鎖につながれた知の巨人」熊楠の全貌がやっと明らかに(3)』

前坂 俊之(静岡県立大学名誉教授)     奇人貴人2人の裸 …

no image
日本メルトダウン・カウントダウンへ(901)『安倍首相の退陣すべきを論じる】② 空虚な安倍スピーチをおとなしく拝聴している記者の姿に 『日本沈没メディアコントロール現場』を見た

 日本メルトダウン・カウントダウンへ(901) 『安倍首相の退陣すべきを論じる】 …