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池田龍夫のマスコミ時評(48)●『原子力規制庁」発足、先延ばしに驚く(3・23)』★『「核燃料サイクル」問題の見直しを(3・21)』

      2015/01/01

 池田龍夫のマスコミ時評(48)
 
原子力規制庁」発足、先延ばしに驚く(3・23)
「核燃料サイクル」問題の見直しを(3・21)
◎「沖縄返還」密約文書の開示、再び認めず(3・19)
 
                 池田龍夫(ジャーナリスト、毎日新聞(OB
 
  
 「原子力規制庁」発足、先延ばしに驚く(3・23)
 
 
 
 原子力の安全規制を目指していた「原子力規制庁」の4月発足が先延ばしされた。野田佳彦政権の不手際から、原子力安全改革法案の年度内成立が絶望的になったからだ。
 「原子力規制庁」は、原発を推進してきた経済産業省から原子力安全・保安院を分離、環境省の外局に一新してチェック体制を強化するための機関。福島原発事故の反省に立って新設を急がなければならないのに、事故後1年経っても設置できないとは、とんでもないことだ。
原発の再稼動の是非、核燃料サイクルの見直し等々、「規制庁」の任務は極めて重大なのに、4月以降も経企省傘下の保安院が審査・認可を当分続けるとは、無責任な話である。保安院の失態を目の当たりにして、国民の安全審査への不安が高まっている。官民の衆知を集め、国民を守る「規制庁」を一刻も早くスタートさせなければならない。
 
 
 
 
      「核燃料サイクル」問題の見直しを(321
 
 
 
 大飯原発の第一次ストレスト結果を受け、野田佳彦政権が再稼動を決めるのではないかと取り沙汰されているが、核燃料サイクル稼動へ向けた動きも気がかりである。
 
                                  MOX燃料を100%使う原発計画
 
朝日新聞3月19日付夕刊が「核燃料サイクル認可進む」と特報した記事によると、経済産業省原子力安全・保安院がMOX燃料を100%使う原発にゴーサインを出すというのだ。
 MOX燃料とは、ウラン・プルトニウム混合酸化物のことで、使用済み核燃料の再利用が検討されてきた。青森県・大間原発で建設が進んでいた施設だが、東日本大地震で工事が中断されていた。
保安院が3月15日、技術的変更計画の申請につき「技術上の基準に適合している」などとして認可する姿勢を示したため、論議を呼んでいる。それは、4月に組織が消える保安院の「駆け込み認可ではないか」との疑念からで、NPO原子力資料室の伴英幸共同代表は「事故の新しい安全規制体制が始まっていないうえ、核燃料サイクルが見直されている途中だ。駆け込みで決めるべきではない」と批判している。
 
                                                  「原子力規制庁」発足を前にして…
 
 電力会社はプルトニウムをMOX燃料に加工し、既設の原子炉の燃料とする計画を推進中だが、トラブル続きで実用化が危ぶまれている。六ケ所村再処理工場や高速増殖炉「もんじゅ」の相次ぐ事故によって、「撤退論」が高まってきており、欧米でも見直し論が上がっている。福島原発事故収束の見通しが全く立っていない今、原発再稼動や核燃サイクル始動を画策する野田政権の姿勢は危険極まりない。「原子力規制庁」発足を目前に、拙速決定だけはやめてもらいたい。
 
                                          核燃料再処理路線から撤退を
 
 毎日新聞3月19日付朝刊(『核心』欄)で、プリンストン大学フランク・フォン・ヒッペル教授は「もし、日本が早期に再処理路線を放棄すれば、それは国際的な(核の)安全保障にも貢献するだろう。日本は現在、唯一、核兵器を持たずに再処理を行っている国であるが、韓国は米国との原子力協定交渉の中で、日本と同じ権利を
認めるよう求めている。他の国がこれに倣えば、分離されたプルトニウムが、核兵器製造に転用されるリスクを高めることになる。米国は再処理をすでに中止し、英国もやめる計画だ。日本が再処理路線を放棄すれば、世界の核不拡散の取り組みを強化し、無駄な支出をなくすことにつながる」と指摘していたが、傾聴に値する提言である。
 使用済み核燃料は貯まる一方で、その再使用を目指した「核燃料サイクル」は完全に行き詰まってしまった。この現状に早く気づき、ヒッペル教授提案のように大胆な政策転換を打ち出すべきだと考える。
       

                                                 「沖縄返還」密約文書の開示、再び認めず(3・19)
 

  沖縄返還(1972年)の密約文書をめぐり、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」三木由希子理事長が、国の不開示決定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は3月15日、一審東京地裁判決に続き請求を退けた。
 
 三輪和雄裁判長は、文書は1971年6月ごろには外務省にあったが、2006年4月の不開示決定時点では存在が確認されなかったと認定。決定自体は適法としたが、「廃棄されたとすれば行政組織の在り方として極めて問題が大きい」と指摘した。
 
 西山太吉・元毎日新聞記者ら25人が訴えた「沖縄密約文書開示」裁判の方が一般に知られているが、「情報公開請求訴訟」としての狙いは同じである。最初の訴訟は一審で原告が勝訴したが、国側が控訴した二審(昨年9月29日)で敗訴している。「密約文書の存在は〝推認〟されるが、いくら探しても問題文書は見つからなかった」という牽強付会な理由で、一審判決を覆したのである。
 
                                                         「無いものはない」と強弁
 
 今回の控訴審では、一審に続き原告の敗訴となった。その判決理由を読み、両控訴審に対する司法判断の類似性に驚かされた。要するに、「密約文書を探したが見つからなかった。無いものはないのだから、文書は開示できない」ということだ。
 
ただ、二審判決理由の末尾に「本件文書が通常の場合とは異なるごく特別な方法や態様により保管、管理されて、正規の手続を経ずに廃棄等がされたとするならば、このこと自体は、『法の支配』の下における行政組織の在り方としては極めて問題が大きいといえるが、本件の結論には影響しない」(原文のまま)との一文が付記されていた。昨年の西山氏らが原告の二審判決でも同趣旨の〝釈明〟的な文章が記されており、いずれも苦渋に満ちた判決理由だったことに、この「密約訴訟」の暗部を感じるのである。
 
                                                      情報公開請求訴訟の厳しさ
 
 三木由希子理事長は「無いものはないという『本件の結論』は裁判所の限界と、それを踏まえた裁判官の本音が垣間見えるような内容です。……正規の手続きではなく隠匿、廃棄等がされたことは、可能性を超えて蓋然性が相当ある。
 
しかも、『隠匿』という言葉を使っているため、単なる廃棄以外の可能性を指摘している。それは『法の支配』の下にある行政組織として極めて問題が大きい。控訴人である私もそうですが、裁判所も外務省に行って探査、捜査ができないというそもそもの限界があるうえ、文書の存否についてはよほどのリーク等がない限りは、外務省に委ねるしかないという現実もあり、この辺は情報公開訴訟における裁判所の限界が垣間見えます

。本来であれば、私が情報公開請求した時点での文書がこの訴訟での主要な争点なのですが、結論的には、現時点では存在しないので私の訴えは認めらないという判決になるのが、それを物語っているように思います」と、「密約文書開示」裁判の厳しさをブログに記していた。

 
 「情報公開法」施行(2001年4月)前後に外務省が大量に文書を廃棄していた事実は明らかなのだが、国家権力の隠蔽体質は変わっていない。情報公開請求の権利を粘り強く行使して、民主社会の基礎を築く努力を怠ってはならないと思う。
 
いけだ・たつお)1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを
歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保

 - IT・マスコミ論

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