前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(109)「領土紛争、民族対立の悲劇を繰り返すな」●「小松法制局長官の「集団的自衛権」容認の姿勢」

   

 池田龍夫のマスコミ時評(109)

 

◎「領土紛争、民族対立の悲劇を繰り返すな」(3/5 

◎「小松法制局長官の「集団的自衛権」容認の姿勢は
おかしい」
(3/3)

 

    池田龍夫(ジャーナリスト)

 

領土紛争、民族対立の悲劇を繰り返すな(3/5

 

 尖閣諸島の帰属をめぐって、日本・中国の対立はいぜん続く。韓国とも竹島問題の行方が心配されるなど、領土紛争が世界各地で起きている。日中韓3国は、挑発的行動を控えているものの、何らかの外交的決着を急ぐことが肝要だ。

 

 尖閣諸島帰属をめぐる日中対立と、石垣島への陸自配備

 

 沖縄県石垣市長選は3月2日、現職の中山義隆氏(自民、公明推薦)が対立候補に大差をつけて当選。政府与党は、先の名護市長選で「辺野古移設反対派」の市長に敗れており、自民党総力をあげての選挙戦で雪辱を果たした。

 

中山新市長は、石垣島への陸上自衛隊配備に柔軟姿勢を示しており、沖縄の基地問題への影響は大きかろう。
 中国は最近、尖閣周辺への領海侵犯を繰り返し、東シナ海上空に防空識別圏を一方的に設定するなど、膨張主義的な姿勢を取り続けている。


 こうした中国の脅威を念頭に、防衛省は陸自が常駐していない南西諸島の防衛態勢強化を企図している。艦艇や航空機をレーダーで探知する陸自の沿岸監視部隊を日本最西端の与那国島に置くのに続き、有事で初動対処に当たる警備部隊を石垣・宮古両島に配備することを計画だ。

 

琉球新報223日付朝刊は、「防衛省は陸自が常駐していない南西諸島の防衛態勢強化を重視。有事の際初動対処に当たる警備部隊を石垣・宮古両島に配備することを計画している」と報じていた。

 

ロシアのウクライナへの軍事介入は許せない

 

尖閣諸島に危機が迫っているとは考えていないが、ロシアのウクライナへの「軍事介入」の動きが連日のようにトップ報道されていることに驚愕したからだ。米ソ冷戦時の〝悪夢〟を想起させるような紛争に発展する恐れはないか、世界は震撼している。

 

シリア、チュニジアなどの政府軍・反政府軍の抗争が憂慮されている折、今回は大国ロシアの「軍事介入」とあっては、安閑としていられない。


 トンキン湾事件でっち上げで始まったベトナム戦争、国連安保理決議を無視してイラク戦争に突っ込んだ米国ブッシュ政権など、世界史の混乱は「大国の傲慢」が引き起こしたケースが多い。

 

根底には民族問題、領土紛争が潜んでおり、特に少数民族は常に悲劇的結末に泣かされている。各国とも「民主主義の重視」を謳い文句にしているが、少数民族にとっては弾圧の歴史の繰り返しである。当面急ぐべきは、「ウクライナ軍事衝突」の回避だ。

 

 

小松法制局長官の「集団的自衛権」容認姿勢はおかしい(3/3)

 

 安倍晋三首相に抜擢された法制局長官の小松一郎氏が226日、初めて衆院予算委員会分科会に出席。集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更について「それ自体は厳しい制約の中でありうる」と述べ、内閣の方針次第で可能との認識を示した。

 

小松長官は体調不良のため入院していたが、24日同局に出勤した際「内閣法制局は内閣の一部局だ。首相の方針に従ってやるべきことはやる」と記者団に「容認に前向きな考え」を示している。

 「法の番人」といわれる内閣法制局は歴代、「憲法9条は国際紛争解決の手段としての武力による威嚇または武力行使を禁じており、自国の防衛以外に武力行使はできない」と説明してきた。

 

学界・弁護士会の多数は「集団的自衛権容認」に批判的で、世論の反対も強い。例えば日米同盟関係を理由に、国連安保理決議もなしに行った米国のイラク攻撃などに、日本が引きずり込まれることになり、危険な解釈変更である。

 

 公明党が反発、自民党の一部にも危ぶむ声

 

 自民党の一部にも危険視する声が上がっており、与党・公明党も厳しく反発している。同党の漆原良夫国会対策委員長は226日「歴代の首相や内閣法制局長官が何遍も何遍も答弁してきたことを変えるのなら,国民に十分納得してもらうことが必要だ」と記者団に語った。

「拙速な結論を避け、閣議決定の前に国会で熟議せよ」と要請したのは、理にかなった発言である。

 

 国家行政組織法第3条に基づき内閣府や省に外局として設置される第三者機関で、独自に規則を制定したり告示を出す権限を有する。国家公安委員会や原子力規制委員会なども同様の権限を持つ。

 

これだけ世間の批判を浴びている集団的自衛権問題に、法制局長官を独自の見解を示すべきではなかったか。「安倍首相は、外務省出身で行使容認に前向きな小松氏を法制局長官に起用し、解釈変更への布石を打っていた」との記事(朝日新聞225日付朝刊)は、的を射た指摘と思う。

 

「立憲主義」を無視した安倍首相の暴走

 

「安倍首相は国会で政府の憲法解釈について「『最高責任者は私だ』と発言したが、憲法に基づいて権力を縛るという立憲主義の基本を根底から否定していて、危険だ」と、長谷部恭男東大教授が朝日新聞228日付朝刊で警告を発していた。

国民が関心を持つべきことなので、要旨を紹介しておきたい。

 

「立憲主義とは『政治権力は憲法を守らなければならない』という考え方。その憲法には国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という三原則が明記されている。立憲主義を否定するとなると、国民主権や基本的人権なども守らなくていいということになる。

 

集団的自衛権容認は憲法9条の存在意義を失わせてしまう。国の基本原則を変えたいなら、憲法自体を変えるほかない。(法制局は)企業で言えば顧問弁護士に当たる。独立した存在として、法的な問題がないかどうかを助言する権限がある」。――安倍首相の暴走を慨嘆した憲法学者の投じた一石の意義は大きい。

 

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

 

 

 

 - IT・マスコミ論 , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『ユビキタスが実現するーあらゆるものにつけられた超小型チップが主役』-

『ユビキタスが実現するーあらゆるものにつけられた超小型チップが主役』- 前坂 俊 …

no image
再録『世田谷市民大学2015』(7/24)-『太平洋戦争と新聞報道』<日本はなぜ無謀な戦争を選んだのか、500年の世界戦争史の中で考える>②

『世田谷市民大学2015』(7/24)- 戦後70年夏の今を考える 『太平洋戦争 …

「Z世代のための、約120年前に生成AI(人工頭脳)などはるかに超えた『世界の知の極限値』ー『森こそ生命多様性の根源』エコロジーの世界の先駆者、南方熊楠の方法論を学ぼう(1)』

      &nbs …

no image
日本のソフト・パワーは?―文化は国境を越えるー

1 国際コミュニケーション論 2005,11 前坂 俊之 ―<ビデオ『映画ビジネ …

no image
『世界サッカー戦国史』④『西野サッカーはベスト16位に辛くも食い込み、さらにベルギー戦(7/3)での奮戦が期待される』★『西野監督の「名将」の証ーポーランド戦最後の15分間でコロンビアの勝利にかけた決断力(勝負勘)こそ、2次リーグへの突破を決めた名将の戦略』

『世界サッカー戦国史』④ 前坂 俊之(ジャーナリスト) 予選敗退確実とみられてい …

no image
新刊を出版しました『図説 明治の宰相』(伊藤雅人、前坂俊之編著)河出書房 1800円)明治のリーダーシップを学ぶ

新刊を出版しましたー 『図説 明治の宰相』(伊藤雅人、前坂俊之編著)河出書房 1 …

『オンライン講座・日本戦争外交史①』★『決裂寸前だった日露戦争・ポーツマス講和会議①―戦争で勝って外交で敗れた日本』★『ロシア外交に赤子の手をひねられるようにやられた』

  前坂 俊之・静岡県立大学国際関係学部教授 <山川書店MOOK『坂の …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㉟」★『120年前の日露戦争勝利の立役者は児玉源太郎』★『恐露派の元老会議に出席できなかった児玉源太郎』★『ロシア外交の常套手段の恫喝、時間引き延ばし、プロパガンダ、フェイクニュースの二枚舌、三枚舌外交に、日本側は騙され続けた』

元老会議の内幕   (写真右から、児玉総参謀長、井口総務部長、松川作戦 …

no image
★『オンライン/天才老人になる方法➅』★『世界天才老人NO1・エジソン(84)<天才長寿脳>の作り方』ー発明発見・健康長寿・研究実験、仕事成功の11ヵ条」(下)『私たちは失敗から多くを学ぶ。特にその失敗が私たちの 全知全能力を傾けた努力の結果であるならば」』

 2018/11/23  百歳学入門(96)再録 …

no image
★『オンライン/新型コロナパンデミックの世界』(2020年12月―21年1月15日)★『 コロナ第3波に襲われた世』★「トランプ大統領の最後の悪あがき、支持者が米議事堂に乱入!』★『バイデン新大統領の就任式(1/20日)★『中国の強権、戦狼外交が続く』★『今年7月に中国共産党は結党100年を迎える』(下)

  「トランプ大統領の最後の悪あがき、支持者が米議事堂に乱入!」 前坂 …