『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊹★『明石謀略戦((Akashi Intelligence )の概略と背景』★『ロシアは面積世界一の大国なので、遠く離れた戦場の満洲、シベリアなど極東のロシア領の一部を占領されても、痛くも痺くもない。ロシアの心臓部のヨーロッパロシアを突いて国内を撹乱、内乱、暴動、革命を誘発する両面作戦を展開せよ。これが明石工作』
2017/07/27
『明治裏面史』 ★
『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,
リスク管理 ,インテリジェンス㊹★
明石謀略戦(明石工作)の概略と背景
日露戦争は、近代日本が国の存亡をかけた絶体絶命の一戦だった。
ロシアとの国力差(面積60倍、国家歳入8倍、陸軍総兵力12倍、海軍総トン数27倍)は、太平洋戦争開戦時の日米差よりはるかに大きい。約260年の鎖国を解いて世界デビューしたばかりのアジア極東の島国・日本の存在など、世界はほとんど知らなかった。
その新興貧乏小国がいきなり超大国ロシアに戦いを挑んだのだから世界は驚惜し、がぜん注目した。「巨大シロクマ」に挑む「イエローモンキー」に勝ち目はあるのか。かつて大津事件で顔を斬られたロシアのニコライ皇帝は、「あの子猿が朕に戦争を仕掛けるなど想像もできない。帽子の一振りでかたづける」と一笑にふした。
開戦八カ月前に敵前視察に日本を訪れたクロバトキン大将も「日本兵3人にロシア兵2人で間に合う。戦争ではなく、これは軍事的散歩みたいなもの」と問題にしていなかった。
ヨーロッパ各国も、ナポレオンまで破った最強のロシア軍に日本はすぐやられてしまうだろう、と思っていた。大人対子供、白色人種対黄色人種の戦争、ヨーロッパ列強対アジアの小国の戦争であり、過去三百年負け続けていた有色人種の国がまさかロシナ相手に開戦するなどとは、誰も予想していなかった。
ァルゼンチンから日本に譲渡された装甲巡洋艦「日進」で日本海海戦を観戦したアルゼンチン海軍武官マヌエル・ドメック・ガルシアは、ロシア側の油断と、日本の参謀本部の周到な準備を次のように高く評価した。
「戦争が起こる数週間前、少数の心あるロシア政治家が、日本との衝突の危機が最高潮に達したと判断し、回避の方策をとるよう政府に要請した。しかし、政府高官は『何も恐れることはない。日本との戦争などは起こるはずがない』と返答した。その理由は、『ロシアが戦争を望んでいないから……』というものであった。ロシアは、日本人を軽蔑しており、日本のような小国がまさかロシアに立ち向かうはずはないと過小評価していた」
「戦争準備の成否が国の命運にかかわることを、日本の国防の指導者たちは、よく認識していた。海軍、陸軍を問わず、参謀本部は数多くの人員を使って敵のあらゆる分野の資料を収集することに専念させた。有能な士官がヨーロッパで評価の高かった海軍や陸軍を研究するために外国に派遣された。日本がロシアに対する諜報組織を設けたのは開戦五年前であった。参謀本部が組織した秘密情報機関であり、それは極めて優秀かつ洗練された調査機関でもあった。
ここにはロシア軍人と親しくなった優秀な日本人諜報員が入手した貴重な数々の情報や、ロシア軍人の生活の詳細までが報告された。
日本の軍事諜報活動は、それを遂行する者にとっても不名誉ではなかった。その活動によって戦争を勝利に導き、国の将来がかかっている極めて名誉ある任務とざれていた」
(以上はマヌエル・ドメック・ガルシア著、津島勝二訳『日本海海戦から100年 アルゼンチン海軍観戦武官の証言』鷹書房弓プレス 2005年刊)
明治三十七年(一九〇四)二月四日、日露開戦を決定した御前会議が開かれた。
明治天皇は十日はど前から、苦悩のあまりに食事ものどを通らず、眠れぬ日が続き、前夜も一睡もしなかった。
伊藤、山県、松方正義、井上馨、大山巌と、政府から桂太郎首相、山本権兵衛海相、寺内正毅陸相、小村外相、曾禰荒助蔵相が集まり、午後一時四十分から開かれた御前会議は夕刻まで続き、開戦が決定した。
伊藤枢密院議長は御前会議を終えて帰ると、すぐ自邸に腹心の金子堅太郎(元農商務大臣)を呼んで、アメリカ行きを命じた。金子は米国ハーバード大学の出身で、ルーズヴエルト大統領とは同窓生で、多くの友人がアメリカにいた。
伊藤は、金子のルーズヴエルトコネクション、ハーバード人脈を使って、世論工作とルーズヴエルトの早期の和平斡旋を計画した。また、ヨーロッパにも女婿の末松謙澄 (前内務大臣) を派遣して、世論工作にあたらせた。
これが「金子工作」といわれるもので、伊藤博文の卓越した外交インテリジェンスが示されていた。『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊷★『日露戦争開戦の『御前会議」の夜、伊藤博文は 腹心の金子堅太郎(農商相)を呼び、すぐ渡米し、ルーズベルト大統領を味方につける工作を命じた。』★『ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー金子堅太郎の世界最強のインテジェンス(intelligence )』http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/25910.html
三国干渉の 「臥薪嘗胆」 から、一剣を磨いて十年。川上の対麗戦の国家戦略プランは実行段階にステージアップした。
児玉総参謀長は連日、参謀本部に泊まりこみで作戦を練った。
➀長期戦になると勝ち目はないので先手必勝、短期決戦でいく。六対四くらいの勝負で、早期に講和に持ち込む。
②ロシアは面積世界一の大国なので、遠く離れた戦場の満洲、シベリアなど極東のロシア領土の一部を占領されても、痛くも痺くもない。ロシアの心臓部のヨーロッパロシアで、国内に火をつけて内部撹乱、反乱を起こして、両面作戦を展開する。これが明石工作である。
③シベリア鉄道を破壊して軍事輸送の大動脈をストップさせるため、馬賊を糾合したゲリラ部隊「満洲義軍」を組織、攻撃する。
④日英軍事協商によって、世界一の英国の情報機関、情報網からあらゆる対露情報を収集して役立てていく。
こうした情報戦略を実行に移したが、明石工作はなかでも最も重要な諜報謀略活動であった。
ここから明石大佐のインテリジェンス戦争(諜報謀略戦)がスタートする。
≪以上は前坂俊之『日露インテリジェンス戦争を制した天才情報参謀・明石元二郎大佐』
(新人物往来社、2011年)を参考にした>
関連記事
-
-
速報(124)<座談会・フクシマの教訓①>『事故原因、原子力村、事故処理、低線量被爆など徹底討論する』(上)
速報(124)『日本のメルトダウン』 <徹底座談会・フクシマの教訓 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(723)「米政府、中国国家主席の訪米前に中国企業制裁へ」(英FT紙)●「中国が直面する「経済の断絶」のリスク」(英FT紙)
日本メルトダウン脱出法(723) 米政府、中国国家主席の訪米前に中国企 …
-
-
知的巨人の百歳学(147)-「昭和戦後の高度経済成長の立役者・世界第2の経済』大国の基盤を作った『電力の鬼』・松永安左エ門(95歳)の長寿10ヵ条』 「何事にも『出たとこ勝負』が一番」 「80歳の青年もおれば、20歳の老人もおる、年齢など気にするな」
知的巨人の百歳学(147)- 戦後の高度経済成長の立役者・世界第2の経済大国の基 …
-
-
「トランプ関税と戦う方法論⑬」★『日露戦争勝利と「ポーツマス講和会議」の外交決戦始まる①』★『ロシア皇帝ニコライ二世は「あの黄色子猿の日本軍」などは簡単に勝てる」と侮っていた』★『皇帝が寵愛したロシア総司令官・アレキセーエフと陸軍大将・クロポトキンの2重指揮体制が対立し分裂、混乱、敗戦した』
2022/04/04 オンライン講座/ウクライナ戦争と日 …
-
-
日本リーダーパワー史(670) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(52) 「インテリジェンスの父・川上操六参謀総長(50)の急死とその影響ー陸軍での川上の存在がいかに大きかったか
日本リーダーパワー史(670) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』( …
-
-
お勧めの歴史本1冊―2012年1月号『歴史人』(「日清・日露戦争の真実」特集号)
お勧めの歴史本1冊― 2012年1月号『歴史人』(「日清・日露戦争の真実」特集号 …
-
-
★5日本リーダーパワー史(776)ー 『アジア近現代史復習問題』 福沢諭吉の「脱亜論/日清戦争開戦論」を読む』(10) 『英ファイナンシャルタイム紙』(3月2日付)『金正男氏殺害の「大胆さ」に中国の影?』●『北朝鮮は基本的に中世の絶対君主制国家。中世イングランドのプランタジネット朝やオスマン帝国のスルタンを思わせるような殺人だった』
★5日本リーダーパワー史(776)ー 『アジア近現代史復習問題』 福沢諭吉の …
-
-
速報(180)『日本のメルトダウン』『原発リスク・フクシマの教訓と新小型原子炉』『原発事故の子供、経済への影響 ―チェルノブイリ』
速報(180)『日本のメルトダウン』 『原発リスク―フクシマの教訓 …
- PREV
- 『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊸★『日露戦争開戦の『御前会議」の夜、伊藤博文は 腹心の金子堅太郎(農商相)を呼び、すぐ渡米し、 ルーズベルト大統領を味方につける工作を命じた。』★『ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の世界最強のインテジェンス(intelligence )』
- NEXT
- ★『明治裏面史』 -『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊺★『世界史を変えた男・明石元二郎』-『日露戦争勃発。児玉から「至急、ストックホルムに行き、ロシア反体制革命家を扇動して、ポーランド人と一体となって武力闘争を起こせ」との秘密命令を受けた』★『ロシアの植民地なった周辺各民族の革命家を一堂に集めて組織、資金提供、武器援助をしてロシア革命に火をつけた奇跡の男』★『「明石一人で20万人の兵に相当する」とドイツ皇帝は驚嘆した』

