前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン/2022年はどうなるのか講座➂』★CO2とEV世界戦の2022年』★『COP26では石炭火力発電は、当初の「段階的な廃止」から「段階的な削減」と表現を後退させた』★『●EV市場の将来を予測する週刊「エコノミスト」(2021年9月7日付)の「EV世界戦特集号」』

   

 

CO2とEV(電気自動車)大競争の2022年になる

  前坂俊之(ジャーナリスト)

2021年も世界は新型コロナと地球温暖化問題で大きく揺れた。昨年10月31日、「国連の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会(COP26)が英国グラスゴーで開幕したが、世界気候機関(WMO)は2021年版の気候報告書を発表した。

「猛暑や大洪水などの異常気象は、もはや新常態となった。過去20年間の平均気温は、産業革命前と比べて初めて摂氏1度以上に上昇。海面上昇も過去最高となった」と警告した。

COP26議長国の英国ジョンソン首相は記者会見で「サッカーの試合にたとえれば、人類は気候変動に1対5で負けていたが、この開催で1点返し2対5となった。延長戦に持ち込むこともできる」と語り、世界各国の積極的な取り組みを求めた。

首脳級会議では温室効果ガス(CO2)の一種「メタン」の削減に100ヵ国以上の首脳が合意した。

石炭火力発電の廃止については英国、フランス、ドイツ、EUなど46カ国・地域が署名したが 日米中などは署名しなかった。また、ガソリンを使う新車の販売を主要市場では2035年までに、世界全体では40年までに終えると宣言。これに賛同した欧州などの23ヵ国が加わる有志国連合ができたが、日本は参加を見送った。

一方、世界最大の排出国・中国の習近平国家主席は一連の会合には出席せず、ビデオメッセージで「2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、60年までに実質ゼロにする」と従来通りの目標を繰り返し、排出削減目標の前倒しを見送った。

これに対して、バイデン米大統領は「中国は大きな過ちを犯した」と非難。温暖化対策でも米中対立の火花が散った。

会議は難航し、G7と排出国のインドなどとの対立が解けず、会期を1日延長して議論を続け、13日に成果文書「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕した。

石炭火力発電については、当初の「段階的な廃止」から、「段階的な削減」と表現を後退させて決着、「産業革命前からの気温上昇は1.5度以内に抑える努力を追求する」と明記した。

COP26で私が1つ気になったのは日本ではタブーとなったいる小型原発が脱炭素の切り札として世界では開発、設置が増えていることだ。

電力輸出国フランスはCOP26期間中、原発建設の再開を発表。EU加盟の9カ国とともに原子力共同宣言をまとめ、無炭素電源としての原子力活用の重要性を訴えた。 一方、日本のエネルギー基本計画では、排出削減に貢献するとして原発再稼働は盛り込んだが、原発立て替えや新設の議論は反発を恐れて,論議もされていない。難問先送りで日本政治は取り残されている。

●世界は脱炭素社会、グリーンエネルギー、ガソリン車からEV(電気自動車)へと大きくカジを切った。

中でも環境重視の欧州連合(EU)はCO2の排出ゼロと電気自動車(EV)普及の戦略プログラムで主導権を握って、世界をリードしている。

19年に欧州グリーンディールを発表、二酸化炭素などの排出を実質ゼロにす気候変動対策をまとめた。20年末には「クタソノミー規制」(持続可能性に貢献する経済活動)を成立させた。これは26年以降、「ゼロエミッション車」(大気汚染物質、CO2を排出しない車)以外の車を「SDGs(サステイナブル投資」の対象から外す規制である。

この結果、ガソリン車、HVの比重が高い日本自動車関連企業は「環境に配慮しな企業」のイメージ与え開発費の資金調達ができず、株価下落のリスクが高くなる可能性も出てきた。

EU経済の屋台骨を支えるのはドイツの自動車産業(雇用者数は全体の20%)であり、将来導入が検討されている国境炭素税など含めた「温暖化対策」は「EV保護主義政策」の裏返しではないかとの批判が出ている。

●EV市場の将来を予測する週刊「エコノミスト」(2021年9月7日付)の「EV世界戦特集号」

を見ると、2035年に世界の主要市場で販売される電気自動車(EV)は約5000万台と見込まれている。

そのうち最大は

⓵EUで35年にはガソリン車の新車販売を禁止し、EV車2200万台の販売を見込む。

②2位は中国で1950万台で新車の50%をEVに、残りをHVとする。

➂3位は世界制覇をもくろむテラスの米国で2030年に新車の50%をEVにして900万台の販売を見込む。

番外は日本で、中国と欧米を動向を両にらみするスタンスで30年代の半ばに新車をEVやHV化するが、その比率についてはまだ未定といい、EVの普及では世界のEVレース1,2周回遅れの状態だ。

日本メーカーではホンダが脱ガソリンを明言しているが、トヨタは水素自動車に特化して、高性能、汎用性の高い燃料電池FCシステの開発に成功し、長距離トラック、大型タンカー、電力設置型の幅広い用途に向けの水素発電の独自戦略をとっている。

しかし、現段階で、米電気自動車(EV)最大手「テスラ」と「トヨタ」とを比較してみると、テスラの時価総額はすでに世界一の118兆円、トヨタは34兆円とすでに3倍先を走っている。トヨタの販売1台あたり利益は25万円、テスラは73万円でその差は大きく開いている。.

ますます加熱するCO2排出削減、EV世界戦で日本の戦略は相変わらず不在のままで、土壇場で漂流している。官民一体で取り組まなければ日本経済のエンジンは失速するばかりだ。

 

 

 - 健康長寿, 現代史研究, 湘南海山ぶらぶら日記 , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン/ウクライナ戦争講座⑨』★『ウクライナ戦争勃発―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上)』★『植民地時代の恫喝・武力外交を相変わらず強行するロシアの無法』★『テレビ戦争からYoutube・SNS戦争へ』★『無差別都市攻撃・ジェノサイドの見える化」の衝撃』』

  ウクライナ戦争―第3次世界「見える化」SNS大戦へ(上) 前坂俊之 …

★<新刊予告>前坂俊之著『世界史を変えた「明治の奇跡」』(インテリジェンスの父・川上操六のスパイ大作戦~)海竜社(2200円(+税)、8月上旬刊行)★『 明治維新150年特別企画 張り巡らされるスパイ網、発揮された智謀。日清・日露戦争大勝利の背景には、川上操六の指導力があった!』

新刊予告『世界史を変えた「明治の奇跡」』   ~インテリジェンスの父・川上操六の …

no image
百歳学入門(88)農業経済 学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力

  <百歳学入門(88)>   旺盛な研究力を支え …

no image
速報「日本のメルトダウン」(503) 福島原発事故から1000日ーIEAのファンデルフーフェン事務局長の会見動画」

  速報「日本のメルトダウン」(503) 3・11福島原発事 …

最高に面白く、やがて悲しくなる人物史⑪『日本風狂人伝⑦ ー アル中、愚痴の小説家の葛西善蔵』

  2009/06/23  ・日本風狂人 …

no image
片野勧の衝撃レポート(36)太平洋戦争とフクシマ⑨原発難民<下>「花だいこんの花咲けど」

     片野勧の衝撃レポート(36) …

no image
速報(397)『日本のメルトダウン』『3・11から丸2年』事故1週間後から反原発ブログを立ち上げたが、その連載20回分を振り返る』①

速報(397)『日本のメルトダウン』                      …

日本メルトダウン脱出法(621)[見直される「対テロ戦争」●[歴史的大事件が起きている年に共通する「5」

  日本メルトダウン脱出法(621)     [凶 …

no image
日本リーダーパワー史(735) 明治維新150年『明治極秘史』① 『日露戦争の勝因は!―空前絶後の名将・川上操六参謀総長 のインテリェンスー田中義一(後の首相)をロシアに 派遣,徹底調査を命じ、田中は名前を変えてダンスを習い、隊付となって上流貴族と親友となって秘密情報を入手、ロシア革命のレーニンにも接触した。①

日本リーダーパワー史(735) 明治維新から150年、『明治極秘史』① ―日露戦 …

no image
 世界、日本メルトダウン(1036)– 『4/25は北朝鮮軍創立記念日、まだまだ続く朝鮮半島チキンレースの行方はどうなる!』●『対北朝鮮「武力行使なら全面戦争」=米専門家にインタビュー』★『北朝鮮危機は金正恩の「怯え」が原因だった 米国のメッセージで彼が感じる「命の危険」』●『トランプ政権がこのままいくと「リーマンショック」が再現されるのではないか』

 世界、日本メルトダウン(1036)– 『4月25日は北朝鮮軍創立記 …