『オンライン世界が尊敬した日本人講座』<1億人のインド不可触民を救う仏教最高指導者・佐々井秀嶺 >★『「私は求道者。寺などいらぬ。最後はとぼとぼ歩いて、道端で石にけつまずいてどこかの道で行き倒れて死ぬか、草の中で死ねれば本望です」という。』
2013/09/24 の記事再録
<歴史読本(2009年10月号)に掲載>
前坂 俊之(静岡県立大学名誉教授)
〔日本から来た「奇跡の男」〕
人口約11億人、世界第二の大国インドの経済躍進が世界から注目されているが、国内的にはヒンズー教のカースト制度により、数億人の不可触民が、動物以下の差別と貧困と屈辱にあえいでいる。
四十年前にインドに渡った若き日本人僧侶が「不可触民を救え」と立ち上がり、今や信者が一億人を超える仏教界最高指導者に上りつめ、お釈迦様の仏教遺跡を取り戻す運動を指導していると聞けばビックリ仰天だが、この「奇跡の男」こそ、佐々井秀嶺(当時、七十四歳)である。
「日本のODAを足しても佐々井師一人の業績にかなわない」とジャーナリスト・山本宗補が指摘するそのカリスマ指導者は、今年、四十年ぶりに最初で最後の里帰りをして、故郷の岡山を中心に、約三カ月をかけて全国を説教行脚した。
二〇〇九年六月七日、東京最終講演会が東京の護国寺で開かれ、境内は約五百人以上の人々であふれんばかり。朱色の法衣をまとった佐々井師は浅黒い顔に眼光桐々、阿修羅のような顔立ち。一度口を開けば辺りを圧する大音声で、朗々とよどみなく約一時間半にわたって、不可触民を奴隷以下に虐待差別するヒンズー教をきびしく批判した。そして、人を救うのが宗教者の務めと説き、各宗教の連帯を力強く訴えた。
〔博士のお告げ〕
佐々井秀嶺は昭和十年(一九三五)八月、岡山県新見市で左官の長男として生まれた。早熟な少年で、性欲、女性関係で悩んで出奔。放浪、自殺未遂を繰り返しながら二十五歳で出家した。三十歳でタイに留学した後、インド仏教発祥の地ラージキルへ渡った。
ここで日本へ帰国する最後の夜、お告げを受けた。夢の中に白髪白髭の老人があらわれ 「南天竜宮へ行け。なんじの法城はわが法城なり」 と告げられた。南天竜とはインド中央部のナグプール(龍宮)のこと、であり、出かけてみると、夢の老人はアンベードカル博士(一八九一~一九五六、インド憲法の父で、ガンジーと並び称される人物。不可触民出身で仏教再興運動の創設者)であることが分かった。
一九六八年、三十三歳の時である。
以後、博士が仏教再興運動を起こしたこの地に住んで、不可触民と生活を共にしながら救済運動に立ち上がった。断食行、団扇太鼓を持って「南無妙法蓮華経」を唱え、布教と修行を積み、寺も建てた。仏教とアンベードカル博士の教えを実践し、そのうち博士の後継者として、周囲も認める指導者となった。
〔寺などいらぬ〕
ヒンズー教から改宗する仏教信者が増え、数千万人もの大勢力になるにつれて、内外の宗教組織から強烈な反発が起きる。一九八七年七月、佐々井は不法滞在で逮捕されたが、ナグプールでは「釈放して、国籍を与えよ」と、大規模な市民抗議集会が起こり、一カ月で六十万人もの署名が集まった。
仏教徒の強烈な抗議で、ラジブ・ガンジー首相は一九八八年四月、佐々井に正式に市民権を与え、「アーリヤ・ナーガルジュナ」(聖樹の意味)のインド僧名をおくり、名実ともにインド仏教界最高指導者になった。
佐々井がインド国内で一躍有名人となったのは、「大菩薩寺奪還闘争」からである。大菩薩寺とはお釈迦さまが悟りを開いた場所で、仏教遺跡の中でも最も尊い所だが、ヒンズー教徒に占拠、管理されていた。
一九九二年から佐々井は「殺されてもよい」という覚悟のもとに陣頭指揮をとり、トラックに分乗して、中央、州政府、各都市と数千キロにわたってデモ行進し、各地で激しい奪回運動を展開した。
そのせいもあってか、大菩薩寺跡は二〇〇二年に世界文化遺産に登録された。その翌年、佐々井は政府の「インド少数宗教委員会仏教代表」(副大臣級)に指名され、仏教布教と、「シュリーマン」のように発掘にと、両車輪で取り組んでいる。
『破天』(山際素男著、光文社新書)という佐々井の伝記がある。青春期の色欲、煩悩、自殺未遂、野たれ死に行から、意地と度胸と義侠心からインド仏教界の頂点に立ったその人生は、破天荒で波瀾万丈の菩薩道そのものである。
「私は求道者。寺などいらぬ。最後はとぼとぼ歩いて、道端で石にけつまずいてどこかの道で行き倒れて死ぬか、草の中で死ねれば本望です」という。
◎佐々井秀嶺師による原発周辺での人・動物供養(2013年7月 2日 (火)
http://asama888.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-9367.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E3%80%85%E4%BA%
95%E7%A7%80%E5%B6%BA
-
「日本リーダーパワー史(30)インドに立つ碑・佐々井秀嶺師と
山際素男先生 <増田政巳(編集者)> -
http://maesaka-toshiyuki.com/detail/303
関連記事
-
-
知的巨人たちの百歳学(141)『一億総活躍社会』『超高齢/少子化日本』のキーマンー「育児学の神様」と呼ばれた小児科医 内藤寿七郎(101)「信頼をこめて頼めば、2歳児でも約束を守る。子どもをだます必要などありません」
『一億総活躍社会』『超高齢/少子化日本』のキーマンー 「育児学の神様」と呼ばれた …
-
-
『Z世代のための日本の革命家No.1は誰か?講座①』『植民地中国の惨状を見て、奇兵隊を作って立ち上がった高杉晋作①』★『上海租界地には柵があり『犬と中国人は入るべからず」の看板があった』★『大砲を搭載した蒸気軍艦を藩に無断で7万両で購入し幕府軍を倒すことに成功した』
『外国の借款、軍事的援助を受けることは国を滅ぼし、植民地となる』 1862年(文 …
-
-
新刊発行・ビジアル版『明治・大正・昭和 近代日本の1000人―維新から終戦までエピソードで読む人間ドラマ』世界文化社 2800円 2010年8月刊
新刊・ビジアル版『明治・大正・昭和 近代日本の1000人―維新から終戦までエピソ …
-
-
『オンライン/死に方の美学講座』★『知的巨人たちの往生術から学ぶ②-中江兆民「(ガンを宣告されて)余は高々5,6ヵ月と思いしに、1年とは寿命の豊年なり。極めて悠久なり。一年半、諸君は短命といわん。短といわば十年も短なり、百年も短なり』
前坂俊之×「中江兆民」の検索結果 →69 件 #中江兆民 #大石正巳 …
-
-
日本メルトダウン(1005)ー『 プーチン訪日を批判報道する中国――対中包囲網警戒も(遠藤誉)』●『中国、日露首脳会談「成果なし」に安心?』★『中国の大気汚染、北部23都市で最高レベルの「赤色警報」発令へ』◎『中国の毛ガニが浮き彫りにする汚染危機の根深さ 香港当局が発がん性物質を検出、浄化作戦のモデルの湖が・』●『中国人頼みのカジノは必ず失敗する(李小牧)』●『爆買い客が中国に持ち帰った最も貴重なお土産とは? 日本流ビジネスを自分たちのモノにしていく中国人』●『韓国、中国人観光客の大暴れ多発が社会問題化…飲食店に酒持ち込み無銭飲食、殺傷&暴行多発』
日本メルトダウン(1005) プーチン訪日を批判報道する中国――対 …
-
-
スクープ動画!ー鎌倉材木座海岸に「カゴメ大軍団越冬組」が集結、シラスを狙って大乱舞、大合唱だ!(22023年1月18日午後5時40分)」★『鎌倉材木座海岸ぶらぶら散歩はいつも感動に満ちている!』
30年前から鎌倉材木座海岸で釣りをしたり、カヌー、海水浴で遊んでいるが、こんな数 …
-
-
新著刊行しました !★『人生、晩節に輝く(長寿逆転突破力)』(日経新聞出版社 2022年6月刊 1700円+税)★『渋沢栄一は「人の生涯を重くするか、軽くするかは、一にその晩年にある。人は晩年が立派でありさえすれば、世間はこれを許してくれる』
前坂俊之著『人生、晩節に輝く(長寿逆転突破力)』(日経 …
-
-
速報(257)<原発事故民間事故調報告書『世界を震撼させた3月の7日間」①<菅元首相のリーダーシップは?!
速報(257)『日本のメルトダウン』 <福島原発事故独立検証委員会 …
-
-
日本リーダーパワー史(948)-『日中関係150年史』★『 アジアが世界の中心となる今こそ,100年前に <アジア諸民族の師父と尊敬された大アジア主義者・犬養毅(木堂)』★『アジアの共存共栄を目ざした犬養毅を パールバックはガンジーらとともに高く評価した』
日本リーダーパワー史(948) 人気記事再録<21世紀の新アジア・グローバル主義 …
-
-
『 2025年は日露戦争120年、日ソ戦争80年とウクライナ戦争の比較研究①』★『日露戦争でサハリン攻撃を主張した長岡外史・児玉源太郎のインテリジェンス』★『「ないない参謀本部」のリーダーシップの実態>』
2010/09/06/2015/01/02日本リーダーパワー史(91)記事再編集 …
