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『リーダーシップの日本近現代史』(255)記事再録/ 『歴史有名人の長寿と食事①天海、御木本幸吉、鈴木大拙、西園寺公望、富岡鉄斎、大隈重信』

   

 

  百歳学入門(30)/記事再録

★『歴史有名人の長寿と食事①

 
107歳? 天海大僧正
 天海僧正は天文五年(一五三六)に生まれた。月日不明。寛永二十年(一六四三)十月二日、死す。初名随風、南光坊と称す。慈眼は勅賜の誼号。俗姓は三浦氏。会津の人。天台の教義に詳しく、家康に信任された。黒衣の宰相といわれる。二代将軍・秀忠、三代軍・家光と歴任した。家光の前で柿を賜ったとき、天海が食べた柿のタネをフトコロにするのを見て、家光が、「どうするのだ」と問うと、「持ち帰って植えるのです」と答えた。
 
家光が、「年をとっているのに無益なことをする」というと、天海は、「一天四海を知ろしめなさるお方が、そんな性急なお考えを持ってはいけません」といった。何年かたって、天海は柿を器に盛って家光に献上した。「どこの産物か」と尋ねると、天海は「先年拝受した柿のたねが生長して実りました」といった。
 
 
96歳  『真珠王』の御木本幸吉 
 
 九十六年の生涯を真珠ひとすじに生きた「真珠王」御木本幸吉は、昭和二十九年(1954)9月21日、志麿の養殖場を見おろす多徳島の真
珠閣で大往生をとげた。青年期に行商をしていた御木本は、天然真珠の養殖に着目し、明治二十六年に英虞湾で真珠の人工養殖に成功。「ミキモト・パール」
は、世界市場の六割を占めるまでに急成長していく。明治天皇が快勢を訪れたとき、「世界中の女性の首を真珠でしめてごらんにいれます」と豪語したという。
 
 衆議院議員の選挙などが始まると、彼を頼って寄付をもらいにきたそうな候補者の先手を打って祝い金を贈ると上京して病院に入り、面会謝絶の札をぶらさげてしまった。ここでゆっくりと入院して健康診断をして運動費ねだりを防いだ。
鰻、天ぷら、魚が好物。サンキストオレンジが好き。孫たちを集めて、「いま一口というところでやめよ。大食してはいかん」といって、ウナギ丼を「大和田」から、天丼を「天金」からとって好きなものを食べさせ自分は独り部屋にこもって両方とも食べてしまった。
 
晩年は悠々自適の生活を送り、ラジオのニュースや英語講座に耳を傾けるのを日課にしていた。息をひきとる日の午後、孫から英語の勉強をしていることについてたずねられると、「人間、何かせにゃいかん。それて英語の勉強をしてんのや」と返事をしたという。体の大きな人で「ああくたびれた」と立つでいったが、倒れると、そのまま亡くなっていた。
 
95歳  鈴木大拙
 
金沢沢に生まれた。昭和41年(一九六六)7月11日鎌倉に死す。世界的名声を博した思想的な学者。本名貞太郎。カッパ先生といわれた:バーナード・ショーもカッパに似た顔をしていた。天才的人物はカッパに似ているのだろうか。
インドの詩聖タゴールが来日したとき、大拙は通訳にしたが、その名通訳に京都市民がわいた。当時、大谷大学の先生だった41歳で、ビアトリスレーンと結婚した。普茶料理の席に、大拙を招いたとき、召し上がりものを聞くと、「どんなものでもいい」といい、「お腹をこわすほどには、食べないから大丈夫だ」と、いった。
長寿法について91歳のころ「フレッチャー式健康法がはやってな、それを50幾年かやっている。よく噛めば自然に多くは食べなくなる。それからまた本当におなかがすかなければ食べんのだ」。
米飯は少ししか食べない。肉食をしたが、どちらかといえは菜食を好んで、またなるべく毎食後、果物を食べた。九十歳になっても、読書、執筆、講演の日々を送った。
 
 
90歳 西園寺公望(さいおんじきんもち)
 
 西園寺公望は嘉永二年(一八四九)十月二十三日に生まれた。昭和十五年(一九四〇)十一月二十四日、死す。右大臣徳大寺公純の次子。元老の最後の人。公爵。幼名美磨。西園寺家を継ぐ。幼時保育に当たった相模という乳母が男勝りで、教養もあり、手ほどきをして、美麿は七、八歳からたばこも酒も知った。
 
 八十五歳のとき、米食をやめ、パン食にした。酒は晩酌二合、相手があれは三合くらい。昼間に一合ずつ日本酒を飲んだ。若いころは「灘万」が長尻で、興にのると丸裸に褌一つでで杯洗で酒をあおった。「二代目灘万のおかみは布袋さまだが、初代の女主人は、どうして江戸前のなかなかいい女だった」と語った。
 
洋酒もやかましく、桂太郎公爵供応のブランデーは口に合わぬので、つねに
持参したくらいであった。健康のためにフランスのルルドの鉱泉を愛用していた。西園寺が首相のとき、官邸で鍋物を食べていたところ、原敬が来て、一緒に食事をした。あとで、「これは河豚だよ」といわれて、原敬が顔色を変えたという話がある。
 
87歳     富岡鉄斎 
 
 天保七年(一八三六)十二月十九日、京都に生まれた。南画家名は百錬。多作家で生涯の書画は一万点に及ぶといわれる。七十歳から八十歳過ぎの十年間は三千点の絵を描く。もっとも多く描いた記録は明治二十七年六月二日のことで、大小絹本七十葉を一日で描いたといわれる。
 
   晩年、午前と午後の二回入浴。食事は三度とも粥で、番茶の熱いのをかけ、粥のお茶漬にして、梅干を欠かさなかった。朝食には魚肉は摂らない。幾種類もの菜を重ねるのも好まぬ。
 胆石症の持病があったので鳥獣の肉は食べず、野菜を好み、魚肉は脂肪の多いものを好んで摂った。鯉、鮭、ぶり、鰻などは持病に悪いといって制限して食べていた。晩年は山芋が大好きとなり、夏、冬、通して食べた。
日本の画家で鉄斎ほど全世界的な称賛を博した
者はいない。大正十三年(一九二四)十二月三十一日、八十九歳で没した。八十歳以後の作品が華やかで、濃艶で活気があるので、初期のものより優れているといわれる。
 
 
83歳  大隈重信
 
大隈重信は天保九年(一八三八)二月十六日に生まれた。佐賀藩士。明治維新・倒幕運動で活躍する。参議、外相、首相と政界に働き、東京専門学校(のちの早稲田大学)を創立して総長となる。大正十一年(一九二二)一月十日、八十五歳で亡くなる。生前、「わが輩は百二十五歳まで生きるんであるんである」といていった。
 
 午後、毎日入浴、湯のなかで、しきりに手足を動かして一種の自由体操をやる。全身に血液が循環してよいのだという。浴室を出ると、居間に敷かれた床に横たわる。休息し、読書し、お茶の代わりに牛乳を飲む。売薬はいっさい用いず、ただ健胃剤を飲んだ。「わが輩は怒ったことがない、といわれるが、しゃくにさわると風呂に入る。
 
ぬか袋でごしごし体を摩擦する。自然にかんしゃくが治る。それでも治らぬときは酒を一杯飲む。そして寝る。胡
ま麻豆腐を毎日昼食に食べる。それが長寿法の一つだ」といった。議会で、痛烈に大隈攻撃をし続けている星亨を邸の台所に案内して、「あそこに釣ってあるのが神戸の牛肉、こっちが樺太産のシャケじゃ」と説明し、「洋食と日本食とどちらがいいか」と聞いた、という。

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