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百歳学入門(63)「財界巨人たちの長寿・晩晴学②」―出光 佐三、三島海雲、蟹江一太郎、松下幸之助、土光敏夫、岡崎嘉平太

   

百歳学入門(63)
 
財界巨人たちの長寿・晩晴学②
出光 佐三、三島海雲、蟹江一太郎、原安三郎、松下幸之助、
土光敏夫、岡崎嘉平太、正田英三郎
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 
●明治時代の平均寿命は50歳ほどですから、90歳近くまで活躍したという長寿者は、寿命ののびた現在では100歳以上となりますね。数少ないですね。結局、時間的に長生きしたというよりも、晩年に何をしたか、人生の質が大切なのはいうまでもありません。晩年学よりも『晩晴学』こそ大切です。
 
 
①  出光 佐三(1885―1981)95歳
 
『確かにね、耳庵松永は最高の経済リーダーでしたが、骨太さ、その独創性、行動力では出光興産創業者・出光佐三(1885―1981)95歳も決して引けをとらない。
 
「人間尊重」「家族経営」を実践した信念の経営者で、昭和二十八年(一九五三)、メジャーを向こうに回してイラン産石油の電撃輸入に成功した日章丸事件は日本の実業家の壮挙である。六十代後半での大ばくちで経営者として晩年になってもその気魄、胆力は衰えるどころか、ますます磨かれている。
 
九十歳になっても一向に衰えない元気の秘訣は「指圧と週一回のゴルフ」。指圧は大家から直接指導を受け、前立腺肥大や心臓肥大も自分で治したというから驚く。また、ゴルフは当初毛嫌いしていたが、自分で実際にやってみてとりこになったといいます』
 
 
『今回いろいろ調べてみて気がついたのですが、食品関係の創業者がそろって長寿なことですね。世界のラーメン王・安藤百福(日清食品創業者)96歳は自分が作ったカップヌードルを毎日食べたことが長寿になったと言っていますよね。カルピスの創業者・三島海雲は96歳ですし、江崎利一(グリコ創業者)は97歳、カゴメ創業者の蟹江一太郎96歳、磯野 長蔵(キリンビール創始者)93歳などです。
 
江崎グリコの創業者・江崎利一(一八八二~一九八〇)は「薬(グリコーゲン)よりも保健栄養剤の方が将来性がある」といわれてキャラメルの製造に転換し、「一粒300メートル」「一粒で2度おいしい」のグリコの有名な標語を作って、グリコキャラメルは大ヒットしました』
 
② カルピス創業者の三島海雲(1878-1974、96歳)
 
『初恋の味・カルピス創業者の三島海雲(1878-1974、96歳)は早稲田大学を作った政治家の大隈重信の勧めで若くしてモンゴルに渡りその「酸乳」をヒントにカルピスをつくったのです。彼も病弱で30歳以上は生きられないと思っていたのが、強い意志と独自の健康法で驚異の長寿を達成しています。
80歳を過ぎた頃でも、十時間の睡眠、八時間を健康維持に当てて次の5つの健康法を実践していたといいます。
 
①       光 浴=1年中、夏は朝、直射十分、冬期も朝、直射三十分の後、必ず木蔭などで三、四十分日光浴を続ける。また、拡大鏡を使ってお灸の要領でへソの回りを焼かんばかりの高温で照射するのが三島流の秘訣。
②      ロイヤルゼリーの服用
③ 生活=野菜、果実、海草、牛乳などのアルカリ性の食品をたくさん食べる。
 
④ 行禅=朝食前に四千歩、夕方も三千歩以上歩く。足が弱ると脳の働きも弱る。
 
⑤ 手足の温浴=朝、昼、夕の食前に、手足を四十度ぐらいの温湯で十二、三分間あたためる。就襲前に全身入浴を行ない、足の裏を軽石でこすり老廃細胞を取り除く。
 
 
これ以外に、歯根の摩擦と他力体操も毎日続けた。とにかく、散歩をなさい。足が弱ると、脳の働きや腰の力まで弱ってくる。腰の力まで弱ってくると、人間もうダメである。頭と足をできるだけ働かす日常生活を実行することです、といっていますね』
 
 
③「カゴメ創業者の蟹江一太郎(1875―1971、96歳)
 
「カゴメ創業者の蟹江一太郎(1875―1971、96歳)は愛知県の農家の長男として生まれる軍隊に入って、西洋野菜の栽培を勧められ1899年(明治32)西洋野菜の栽培に着手、明治39年には工場を建設し,本格的にトマト栽培とト加工に着手、トマトソース作りを始めた。
 
何度も失敗をして,トマトケチャップを作った。そしてなんとか栽培できるようになるが、当時日本人にとってなじみの薄い野菜であったため、なかなか売れなかった。メーカーとして現在の「カゴメ」の発展に至るのである。自らもトマトを食べ続けた蟹江一太郎は96歳で他界。トマトが健康にいい事を身をもって証明したようである。』
 
 
④昭和30年代に“財界の重鎮”として活躍した原安三郎(1884 – 1982)98歳
 
 
この人物は今では忘れられていますが、昭和30年代に“財界の重鎮”として活躍した原安三郎(1884 – 1982)98歳は日本化薬社長、日本化学工業協会会長などを歴任し、数多くの経営不振の会社を再建し、「会社再建の名医」と称された。
 
原は六十歳すぎてからは義理、見栄、メンツなどで頭や身体を使わぬこと。少しでも気にそわぬこと、いやだと思うことはあえて行なわないこと。いつでも平常心を持って急迫の事態にも冷静にこれを迎え、判断し、処理すること」などを心構えに、次のようなビジネス長寿10ヵ条を実践しており大いに参考になりますね。
 
① 時間は短かくても、よく眠れ。
② 食事は少なくせよ。朝はパンとオーミルと野菜と牛乳。昼はヌキ。夕食は米食を二椀。
③ 酒、タバコは飲まない。
④ 物事をすべてその場で処理せよ。
⑤ 心配はしても心痛するな。
⑥ 決して物にとらわれるな、物に支配されるな。
⑦ 六十歳すぎると義理や見栄、メンツで頭や身体を使わぬこと。少しでも気にそわぬこと、いやだと思うことをあえてするな。
⑧ 会合や人の依頼も気特にそわぬことはドシドシ断われ。
⑨ 物事を正直に、いつも良心にてらして遺憾のないように。
⑩ 思いついたことは遠慮しないでドシドシしゃべれ。
いつでも平常心を持って急迫の事態にも冷静に対応し、判断することが大切といっていますね』
 
 
⑥ 『昭和の実業家でベスト3に入る松下幸之助(1894 – 1989、94歳)。
 
裸一貫、丁稚奉公からたたき上げて 松下電器産業を一代で世界的大企業に築き上げた彼の成功の秘訣が「病弱だったこと。
それが成功の最大の要因です」というのは意外ですね。
八人兄弟姉妹の三男の末子として生まれたが、八人のうち六人までが亡くなる貧困の家庭で育ち、40代まで生きられないと覚悟していた。病弱なため、会社をやめ独立して商売を始め、“人を使い、育てて、活かす”マネージメントに力を注いだ。「私が健康だったら、仕事も自分でやろうとして、そこそこの成功で終わったでしょう」と語っています。
 
『経営の神様』といわれた松下は1973年80歳で、現役引退し、相談役に。85歳のとき、世界的にも珍しい政治家養成が学校の「松下政経塾」を設立した。
異例の長寿になったのも 幼少から病弱のため、健康管理には最善を尽くしことで、晩年は松下病院の中にある社宅で寝起きして、必要なときに会社に通っていたといいます。
「自分の先天的強弱度をよく自覚し、これに順応した生活態度を持つことが一番健康な生活である」と言ってるのは、うなづけますね』
 
 
⑦ 『東芝社長、第4代経団連会長に就任し、「ミスター合理化、財界の荒法師、
行革の鬼」といわれた土光敏夫(1896-1988、91歳)
 
土光敏夫はその簡素な生活と、「夕食はメザシに梅干」 という質素な食事ぶりで世間には「メザシの土光」 のイメージが定着しましたね。
 彼はもともと健康管理には人一倍注意していて、早寝早起きに心がけ、散歩を欠かさなかった。毎朝四時に起床、食事はメザシと麦飯、自宅でつくった大根やキャベツなど野菜を
食べ、きわめて質素。自宅の応接間にはエアコンはなく、夏は扇風機、冬はストーブと、私生活でもムダ排除・経費削減に努めた。収入のほとんどを母親の創立した学校に寄付していたといいますから、立派です。
 
経団連会長のとき、経団連の階段のエレベ-タ-は来客用の一基だけを稼働させ、残りは停止させ自分の接待はすべて断り、地方出張もすべて日帰りで行った。85歳で臨時行政改革審議会の会長を務め、行政改革の率先垂範し、生涯現役でそれを貫いた。彼のような財界トップはその後は出ていませんね』
 
⑧ 異色の経済人は全日空社長だった岡崎嘉平太(1897 – 1989)92歳
 
 
『なるほどね、土光さんと並ぶ異色の経済人は全日空社長だった岡崎嘉平太(1897 – 1989)92歳ではないでしょうか。彼は日中国交正常化のために101回も訪中して、1人で民間外交を手がけて、大人の風貌を持つ、日本では数少ない哲学をもった人物ですね。
 
その座右銘は「限界に挑む」です。「若いうちに自分の体力、精神力、知力の限界までに何度も挑戦しておれば、より遠くまでいける」。体力の限界に挑戦すれば、精神力の練磨も同時に行われる。若いときから夜行会を組織して、夜間に眠らず八十㌔もの徒歩旅行をしたこともあり、生涯歩け歩けを続けた。『頭もからだも足から衰える。よく歩くことこそ健康長寿の原理』だと。日中国交回復も彼が何十回も歩いて歩いて往復して、地固めした上にやっと出来たものなんですね』
 
『美智子皇后の実父である正田英三郎(1903―1999、95歳)、祖父の 日清製粉グループ本社の創業者・正田貞一郎1870―1961、91歳)ともに長寿なんですね。正田貞一郎は年をとると、「夜の会合に出ない。食事も腹八分で、小食」を実践し、「規則正しい生活」をすることという』
 
2016年の夏のオリンピックの東京誘致が動き出していますが、1964年の東京オリンピック組織委会長で安川電機社長、日本原電初代社長などを歴任した安川 第五郎(1886―1976、90歳)は尺八が趣味。精神を統一するために毎朝食前に二尺五寸の長い尺八を思い切り吹いた。しばらくすると無我の境に入る。これストレス発散に大いに効果があったらしい』
 
 
瀬島龍三95歳、久原 房之助、岩佐凱実、田中勇ら各95歳、江戸 英雄、務臺 光雄94歳、若尾 逸平92歳、石井 光次郎92歳、大谷竹次郎92歳ら、長寿経済人もたくさんいますね、こうした経営長寿力が日本経済発展の活力になったことはまちがいない。
 
 

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