前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

<歴史張本人・坂西利八郎の日中歴史認識>講義⑧」-「(百年前の)同情すべき隣邦支那(中国)の民衆」を語る。

      2015/01/01

  

袁世凱の政治・軍事顧問となった坂西利八郎(在中国25年)が

が語る「(百年前の)同情すべき隣邦支那(中国)の民衆

 

以下は坂西利八郎が1927年(昭和二)二月十八日に「大阪毎日新聞社講堂」
で行った講演の全文。<「日中友好の捨石、秘録 土肥原賢二」芙蓉書房 
昭和
47年」に収録>

 

 

 

同情すべき隣邦支那(中国)の民衆―

 ところが多くの支那国民のうちには、わからない人がいる。
排日をやり、不平等条約を撤廃しろとやかましく騒ぐものもある。ストライキをやるものもある。そのために、この大阪の方々にはもっとも迷惑を受けられた人もあるでしょうが、たとえ迷惑を受けられたからといって、そんな支那人は死んだっていいじゃないか、亡びたっていいじゃないかとは申されんでしょう。

 

支那には普通称える四億という国民がおります。実際は四億ほどないかも知れませんが、とに角、億をもって算する民衆がある。この民衆はいかなることがあるとも、一度になくなるわけはない。しかも、その土地は日本の面積の十六倍もある。

 

物資が少いとの説を聞かぬこともないが、とに角われわれが実地を見たところでは、石炭なんかは沢山ある。鉄もある。とても日本にないような鉄山が沢山ある。羊もごろごろ沢山群れている。綿花が沢山出来ることも確かである。そこで、われわれは一部支那人を憤ると同時に、物資から見た支那は、日本のために必要であるかないかを考えなければならんと思うのです。私等は必要と思っている。

つぎに物資ということは問題外として、日本国民は、支那国民を如何に見るべきか、如何に待遇すべきかを考えて見る必要がここにあると思う。とに角三億いくらの民衆が、一衣帯水の地、すなわちじき向うに住んでいる以上は、全然これと没交渉であるわけに行かない。

 

況してや協約が厳存して国際的の付合いをしている。この国民に対して、人道上からいうても、彼等が今日の如き窮地に陥っているならば、日本人はこれを救わなければならぬと私は思うのです。悪いものは、悪いものとして相手にせんでもよろしい。

 

また制裁を加うべきは加えてよろしい。しかし善良なる支那国民が非常なる窮地に陥っているとするならば、日本人は人道上救済しなければならんと思う。彼国へ行ってそれを救わないまでも、いやしくも日本八千万のわが国民としては、これに同情を与える必要が確かにあります。

 

この同情こそ、最初に申上げた日支親善の実を挙げ得るものであります。日支親善が、日清戦役後、一遍上ったが、三十七八年の日露戦役(日露戦争)後下り坂になり、二十一ヵ条問題でさらに下り今日では最低の水平線に下っている。

この時に方って、彼れ支那国民が、名状すべからざる窮状に陥っているから、これを救けるという考えだけでも、日支親善の標高は必ず上って来るものと私は思うのであります。況してやこの大阪には支那と事業上で密接の関係をもっておられる方が沢山あるでしょうが、そういう方には、なお更支那の苦境に同情を寄せて、この国民を救うということを考えていただきたいのであります。

 しからば支那を救うには、どうするか、これが問題であります。今日の北京政府は、政府と申しましても、その政令のおよぶところは、僅に東三省と、察恰爾、熟河、緩遠、直隷省、山東省あたりで、支那の東北の政治関係から申しますと、全国二十二省の中八つくらいであります。

 

それも十分に威令が行われているのではない。南京政府またしかり、この政府の政令が果してどれだけの範囲におよぷか、今日はまだわかりません。またそれについでは武漢政府というのがある。

 

すなわち現に自ら政府と唱えているものが三つあります。しからばそれでは、北京政府というものは支那共和国の唯一の政府でないということが出来るか。とに角、政令が八つの省にしかおよばないのでありますから、これを支那全国の政府と認めて交渉するわけには行かない。が、しかし、北京政府は、昔から支那共和国の政府の印を持っている。この印は、南京政府にも、漢口の政府にもないのであります。だから、外交上の交渉の手続きをして、大きな判を捺すのは、北京政府でなければ出来ない。これが北京政府の強味である。

 

しかし、今日の南京政府、武漢政府みな事実においては対立の形でありまして、国際的の交渉は、南京事件は南京に行ってやり、漢口事件は漢口に行ってやらなければ出来ない。北京政府を相手にしたところで「私の方でしたことではない、私の方で仮にお約束したところで、南方でこれを実行するかしないか判りません、だから、どうぞ南方に行って下さい」という。

 

ゆえに支那の国際的交渉は、ただ一つの北京政府を相手にしてやることは出来ないのであります。また商品を日本から持って行くにしても、普通の五分の関税を納める外に、今日では、関税会議でおよそ極っている二分五厘の付加税をはじめている。事実それを払わなければ、商品を陸揚させない。陸揚させても、奥地へ持って行かせないというから、仕方なしに払う。払うけれども、それは国際条約で取極められた次第ではないのであります。

 

ところが、国際条約で取極めないことでも、事実、払わなければ商品を取扱わせないから、商品を取扱うものがやむを得ず払う。そこで、条約違反としての抗議は抗議、事実は事実、外交上の手続は手続ということになっているのであります。

現に、この間、青島に行っておりますと、付加税を払うとか、払わぬとか議論をやっている。しかるに、その貨物は何かというと、魚であります。

それで、二分五厘払うとか、払わぬとかいっている間に、当の魚は腐ってしまいました。腐っては元がふいになるから、いやでも応でも払って行くというような状態であります。関税の外に、いろいろな借款の担保になっている塩の税、これも各地方の政府でとってしまって、殆んど中央政府に集まって来ない。ただ海関税だけが、イギリス人の監督の下にありますから、条約両の五分だけ来る。こういう状態であります。

                            つづく

 - 現代史研究 , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『知的巨人たちの往生術から学ぶ』★『明治初期にフランスに留学、哲学者ジャン・ジャック・ルソーに学んだ日本最初の民主主義者-中江兆民「(ガンを宣告されて)余は高々5,6ヵ月と思いしに、1年とは寿命の豊年なり。極めて悠久なり。一年半、諸君は短命といわん。短といわば十年も短なり、百年も短なり」

 2019/07/09 知的巨人の百歳学(143)記事再編集 &nbs …

no image
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑰『開戦4ゕ月前の『米ニューヨーク・タイムズ』報道ー『ロシアがもし撤退を遅らせるなら,世界の前で破廉恥な背信を断罪される』●『ロシアの日本に対する待遇は協調的とは逆のもので,現実に欲しいものはなんでも取り,外交的にも,絶大な強国のみがとってはばからぬ態度で自らの侵略行為を正当化している』★『ロシアの倣慢な態度は,人類に知られた事実に照らし,正当化されない』

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑰ 1903(明治36)年10 …

no image
『オンライン/真珠湾攻撃(1941)から80年目講座④』★『日米リーダーシップ/インテリジェンスの絶望的落差』★『東京五輪開催で日本は2度目の新型コロナ/ワクチン/経済敗戦につながるか』

  2015年5月19日/日本リーダーパワー不在史(568)再録 &n …

no image
★「 熊本地震から2ゕ月」(上)『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。(上)<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の 「地震予知はできない」の正論>

          「 熊本地震を考える」 『地震予知はできない』ー政府は約3千 …

晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111)戦後の高度経済成長の立役者・財界の巨人「電力の鬼」 の松永安左衛門(95歳)の長寿10ヵ条ー「80歳の青年もおれば、20歳の老人もおる、年齢など気にするな」

  晩年長寿の知的巨人たちの百歳学(111) 戦後の高度経済成長の立役 …

世界を変えた大谷翔平「三刀流物語/前任者たち⓼』★『2013年/MLBを制したレッドソックスの守護神・上原浩治投手の必勝法10か条ー「過去のことは過去のこと。引きずっても仕方ない。すぐ切り替え今日、明日を見た方が人生楽しい」★『 上原は74%がストライク。900球以上投げた投手で、こんなすごい投手は2000年以降いない』など

    2013/10/11記事再録   …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(134)』『独 VWの排ガスデータ捏造事件ー「ポルシェ一族の長年の支配構造がこの超大企業を真にグローバル化できず、不完全なガバナンスのままでいた」

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(134)』 『独 フォルクス …

no image
TPP交渉、日中交渉で外交力を発揮せよ①>日本は戦争では勝ったり、負けたり、外交では負け続けてきた「交渉力無能国家」

   <TPP交渉、日中交渉で外交力を発揮せよ①> &nbs …

『大迫力!台風24号接近中の怒涛の稲村ケ崎サーフィン10分間動画決定版(2018年9/29am720-8.30の圧縮版)-怒涛の大波とサーファーの対決決闘編!だれが勝つか!

  2018/10/02 大迫力!決定版◎台風24号接近中の稲村ケ崎サ …

『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交の研究講座④』★『日清戦争の原因の半分は朝鮮紊乱(大院君派と閔妃一派の激烈な権力闘争)とそれによる壬午事変・甲申事変と長崎事件がある』

逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/11/08am700) 朝鮮紊乱と長崎事件 …