前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(122)「吉野文六氏の苦悩と外交密約の罪」(4・13)「両陛下パラオ訪問と世界平和への努力」 (4・10)

   

池田龍夫のマスコミ時評(122)

 吉野文六氏の苦悩と外交密約の罪(4・13

沖縄返還交渉をめぐる日米間の「密約」の存在を認めた元外務省アメリカ局長の吉野文六さんが3月29日、横浜市の自宅で肺炎のため死去した。96歳だった。1941年に外務省に入省。アメリカ局長として沖縄返還日米交渉を担当していた72年、米側が負担すべき米軍用地の原状回復補償費を日本側が肩代わりする密約があったとする機密電文の存在が国会で問題化した。

電文の写しを持ち出した外務省女性事務官と、依頼した西山太吉氏(元毎日新聞)は国家公務員法違反容疑で起訴され、有罪判決が確定した。2000年になって密約の存在を裏付ける米公文書が明らかになったものの、外務省は一貫して密約を否定。しかし吉野氏が06年、「ジェーリック氏と私が密約文書に署名した」と告白、09年には密約文書をめぐる情報公開訴訟で証人として法廷に立った。

当時東京地裁で傍聴していた私は、証言を終えた吉野氏と西山氏がガッチリ握手していた姿を思い出す。13年には国会審議中だった特定秘密保護法案について、「秘密が拡大すれば、国民の不利益になる」と述べた姿も立派だった。

 

「機密を解除せよ」と西山太吉氏が新著で強調

吉野氏は他界したが、「沖縄密約」は現在に強い影響を残した事件だ。東京新聞3月31日付夕刊が1面トップで報じた判断に活目した。「歴史歪曲、国民にマイナス」との大見出しで情報公開軽視を真っ向から批判。西山氏の「民主主義に残る証言」とのコメントを添え、吉野氏の死を悼んでいた。

新聞制作は難しい。直近で起きたニュースの価値判断は紙面の優劣に響く。今回東京新聞の判断は詳らかではないが、「吉野氏死去と密約」の関連を重く見たに違いない。毎日新聞が3段扱い、朝日・読売は2段扱いだったが、当日の重要ニュースを点検してみて、東京新聞の斬新な判断に軍杯を挙げたい。

西山氏は今年2月、岩波書店から「機密を解除せよ―裁かれた沖縄密約」を上梓した。自らの事件だけでなく、「特定秘密保護法の危険性」を憂えている。

「政権中枢や外務省関係者は明白に虚偽の証言をした。検察の調べに対しても、上から下まで虚偽の供述を重ねていたのです。国家権力は、場合によっては、国民はもちろん、司法に対しても積極的に嘘を言う。そういうことが端無くも歴史上、証明されたのが密約事件です。歴史のなかで、あそこまで露骨に虚偽で塗り固めて押し通したものはありません。国家の秘密をめぐっては、こういうことがあるんだと、検察官、裁判官も、事実として認識すべきです」と後書きで強調している。

日本の主権者は、権力のこの恐るべき現実を改めて直視し、監視を強めなければならない。

 

 両陛下パラオ訪問と世界平和への努力

 (4・10

太平洋戦争の犠牲者を慰霊するため、天皇、皇后両陛下は4月8日夕、パラオ共和国を訪問された。9日にはペリリュー島に渡り、「西太平洋戦没者の碑」に白菊を供え、米軍慰霊碑も詣でた。わずか2日間のハードな日程を終えられた両陛下は10日夜帰国された。

天皇陛下は、パラオ共和国主催の晩餐会で、「戦後70年に当たる本年、皇后と共に、パラオ共和国を訪問できましたことは、誠に感慨深く、ここにレメンゲサウ大統領閣下のこの度の御招待に対し、深く感謝の意を表します。この訪問に合わせ、モリ・ミクロネシア連邦大統領御夫妻、ロヤック・マーシャル諸島共和国大統領御夫妻がここパラオ国を御訪問になり、今日、明日と続き、私どもと行動を共にしてくださることに感謝いたします。

ミクロネシア地域は第一次世界大戦後、国際連盟の下で、日本の委任統治領になりました。パラオには、南洋庁が設置され、多くの日本人が移住してきました。移住した日本人はパラオの人々と交流を深め、協力して地域の発展に力を尽くしたと聞いております。

クニオ・ナカムラ元大統領始め、今日貴国で活躍しておられる方々に日本語の名を持つ方が多いことも、長く深い交流の歴史を思い起こさせるものであり、親しみを感じております」と答辞を述べた。

パラオは、第一次世界大戦で占領した日本が、終戦までおよそ30年にわたって統治したが、太平洋戦争で軍の拠点となり、日本軍だけでおよそ1万6000人が犠牲になっている。両陛下の世界平和を願う行脚。実にさわやかな国際交流で、地元民はもとより各国から賞賛されている。安倍晋三政権も、このような平和外交に徹してほしいものだ。

          (いけだ・たつお)毎日新聞ОB。

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日本スタートアップ企業史講座』★『リサイクルの巨人・浅野総一郎(82歳、浅野財閥創業者)の猛烈経営』★『廃物コークスをセメント製造の燃料として使用』★『究極の廃物利用の人糞尿処理に目をつけ、肥料として農村に売り込んだ』★『わが国初の京浜工業地帯、コンビナートを完成した。』

2010/11/27  日本経営巨人伝①記事再録 前坂 俊之 …

歴代首相NO1は明治維新の立役者・伊藤博文で『歴代宰相では最高の情報発信力があったと英『タイムズ』の追悼文で歴史に残る政治家と絶賛>

    2010/11/26  日本リー …

no image
日本メルトダウン脱出法(807)「独裁国家の打倒は今後20年の世界的政情不安を招く」●「欧米がISとの戦いに勝てない理由 酒井啓子・千葉大学教授に聞く」●「復活か?沈没か?2016年の日本経済 飯田泰之×小黒一正 新春対談(上)」●「慰安婦問題の日韓合意は 本当に「不可逆的な解決」となるのか」

 日本メルトダウン脱出法(807) 独裁国家の打倒は今後20年の世界的政情不安を …

no image
高杉晋吾レポート⑤ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に壊滅ー巨大構築物建設の危険性!④

2011年3月25日 ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に役立たず無残 …

★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (171)』 『オーストリア・ウイーンぶらり散歩⑤』(2016/5) 『旧市街中心部の歩行者天国を歩く②』

★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (171)』 『オース …

no image
『リーダーシップの日本近現代史(15)人気記事再録/『日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名語録

記事再録/日本リーダーパワー史(80) 日本の最強の経済リーダーベスト10・本田 …

no image
知的巨人の百歳学(128)ー大宰相・吉田茂(89歳)の晩年悠々、政治健康法とは①<長寿の秘訣は人を食うこと>『「いさざよく、負けつぷりをよくせよ」を心に刻み「戦争で負けて、外交で勝った歴史はある」と外交力に全力を挙げた。』

2013/11/04  記事再録/百歳学入門(83) 大宰相・吉田茂( …

no image
速報(152)『日本のメルトダウン』 「ソブリンリスクの本質」『ユーロの崩壊は近いーユーロを救えるのは政治統合だけだ』ほか

速報(152)『日本のメルトダウン』  「ソブリンリスクの本質」 『ユ …

no image
日本リーダーパワー史(581)「半世紀にわたる朝鮮半島ウオッチャーの国際ジャーナリスト・前田康博の『ディープ・韓国・北朝鮮ニュース」(10/9)(動画計90分)

日本リーダーパワー史(581)  ★10「半世紀にわたる朝鮮半島ウオッチャーの …

no image
世界/日本同時メルトダウンへ(908)『コラム:英国離脱で何が起こるか、5つの疑問=吉田健一郎氏』●『「英国EU離脱」はどちらの結果でも株価上昇離脱は最悪シナリオだが不透明感は払拭へ』●『コラム:アベノミクスに国内「収縮論」の壁、打破困難なら長期停滞も』

 世界/日本同時メルトダウンへ(908) コラム:英国離脱で何が起こるか、5つの …