★『「日本の死を避ける道はー日本興亡150年史』③『2050年の世界」で日本は衰退国ワーストワンになるのか!
2020/07/07
★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか
ー―日本興亡150年史』③―
<『2050年の世界」で日本は衰退国ワーストワン
になるのか!>
<月刊『公評』3月号掲載>(記事執筆は2013年1月10日時点の認識dす)
前坂 俊之
(静岡県立大学国際関係学部名誉教授)
●「2050年の世界」では日本が衰退国のワーストワンになるのか!
(A)「エコノミスト誌の「2050年の世界」では世界で最も悲惨な2050年迎える国は何と日本だとして、日本を衰退国のワーストワンに挙げているね、トホホだね、その理由は一体何なの」
(B)「人口動態はある程度確実に未来が予測ができる重要な指標であり、すべての予測の基礎となるものです。エコノミストの予測では2050年までには世界人口は現在の70億人から増えて90億人になる。
高齢化が進み、世界の平均年齢は、50年までに9歳上がって38歳となる。富裕国では90歳以上生きることが当たり前になるとみています。
この結果、2030年代はアジアの時代だが、それ以降は人口増(本書では人口ボーナスといっている)の地域はアフリカで、2050年の世界の人口増加分23億人の約半分はアフリカで増える。
経済発展の基礎となる労働年齢人口も増え続ける。一方、人口減少の負の人口ボーナスは、日本と欧州、中国などで著しい。中でも、負の配当を最も受けるのは中国。安い労働力による世界の製造工場の役割を中国は終える、一方、日本は世界史上、人類が経験したことのないウルトラ超高齢社会になるというわけです。」
(B)「同書は世界全体の2050年を予測しているので、日本に関する部分は多くはない。その他のデータを含めてみてみると、日本は世界最速で少子高齢化が進み、2050年には総人口(2013年で1億2千万強)が1億人を割り込み、9000万ほどになる。
65歳以上が約4割を占め、労働力人口は約4400万人に減少、平均年齢は52歳(2010年は45歳)で最も高齢化の進んだ社会となる。この結果、日本の経済は没落するというわけです」。
(C)「当然、人口動態によって国の経済力も激変する。2010年には、世界経済の5・8%を占めていた日本のGNPは30年では3・4%、50年は1,9%。つまり、3分の1以下になるわけだ。
2010年には、アメリカの7割あった日本のGNPは、2050 年には5割まで低下。これを日本人1人当たりのGDPでみると、2010年の100とすると、2050年には80に下がる。韓国は2010年は88と日本よりも低いのだが、2050年は146と逆転され、一気に日本の倍近くにまで差が開いてしまう。中国だけではなく、韓国、インドよりも日本は貧しくなり、先進国から脱落する。世界に影響力のない明治の初めの東洋の一島国に逆戻りするというのです」
●2030年時点の総合力ランキングは1位米国、2位中国、3位インド、4位日本、
5位英国、6位フランス、7位ドイツ、8位ロシア
5位英国、6位フランス、7位ドイツ、8位ロシア
(C)「これを、対中国との経済競争で見てみると、米国自身が経済での敗戦を認めている。米CIAなどの米国「国家情報会議」(NIC)が4年ごとにまとめた最新報告書『世界潮流(グローバル・トレンド)2030』(2012年 12月 )によると、「2030年より数年早く、中国が米国をしのぐ最大の経済大国になる見通し」。
10%成長を続けた中国の経済成長は高齢化の進行とともに減速するが、2025年時点で世界全体の経済成長の3分の1を占め、2030年時点の国内総生産(GDP)は日本の2,4倍。
その一方、「欧州、日本、ロシアの経済は引き続きゆっくりとしたペースで相対的に後退する可能性が高い」との見方を示した。
ただし、世界の覇権国は経済力、軍事力やソフトパワーなどの総合力が必要で、そのトップには相変わらず米国が指導的地位を維持すると分析する。
2030年時点の総合力ランキングは1位米国、2位中国、3位インド、4位日本、5位英国、6位フランス、7位ドイツ、8位ロシアとなっている。
日本については、急速な高齢化と人口減で「長期的な成長の可能性が大きく阻害されている」と指摘している。OECDの12年11月のデータでは世界のグローバルGDPでは日本の比率は2011年で、3、9兆ドル(全体の7%)、2030年は4,9兆ドル(4%)、2060年は7,6兆ドル(3%)となっているね」
(C)「では次に、日本国内の状況はどうなるのかも見てみましょう。『日経ビジネス』(2011年10月3日号)の『確実にくる未来』などによると、
人口減少については国土審議会の報告書では2005年の人口1億2777万人が2050年には9515万人(25,5%減)となる。この結果、日本全土で無居住区(人の住まない地域)が増えて、国土全体の6割に達する。特に、北海道、中国、四国で減少率が高い。小さい市町村単位ほど人口減少が大きくなり、過疎地の町村は絶滅市町村となる可能性が高い。同時に、全国の空き家の割合は08年現在で757万戸(13%)が倍増、2040年の空家率は36%になる。
2020年には3世帯に1世帯が1人くらし。2023年には年間の死亡数(150万)に対し、出生数は(75万人)で2倍となる。人口減少のスピードは2024年までは人口の都市集中が進行し、2024年には高齢化率は3割台に突入する。
2025年から10年間は人口減少が本格化して全都道府県で進行、2030年には50歳男性でも3人に1人が未婚となり、少子化を一層加速させる。2035年には人口の3人に1人が65歳以上の高齢者。都市に元気なシニアが増大し、首都圏では75歳以上の男女が約600万人になる。2040年を境に高齢者も減少を迎えて、日本の人口は1億人を割り込む。2055年には63万人のセンテナリアン(百寿者)が誕生するという未来図だね」
(A)「なるほどね。どれもこれも、<日本老齢大国><衰退小国>の厳しいレポートばかりで、全くいやになるね。『予想』は反対から読むと『ウソよ』となるが、これほど世界中のシンクタンクが一致した見方なので外れることはまさかあるまいな(苦笑)」
(C)「確かに、日中の経済力格差は中国が2010年に2位の日本を追い越し,その後は差はどんどん開いて、米国の背中に迫っていることは間違いない。世界の中国躍進レポートに中国がますます自信を深めて、尖閣問題でも中国の鼻息が一層荒くなっているということだな。これに対して、日本側の反中ナショナリズムの高まりは、米中の狭間で沈没中の日本の敗北意識の裏返し。
北東アジアでは両雄あい並び立たずで、互いの自尊心から引くに引けない対立のエスカレートがこわいね。安倍自民党の登場が、この難局をうまく切りぬけられるかどうか、心配だね」
●少子老齢化問題は各国共通の課題。中国も一人っ子政策の結果、
急速な高齢化が大問題
(B)「中国脅威論。中国覇権論は千年以上も前からあるんです。中華思想、事大主義から抜けきれない張り子の虎、白髪三千丈の誇大中国、現在の中国共産党一党独裁、反自由、国家資本主義体制ですから、危うい国家体制であることには依然としてかわりない。
以前から国内総生産(GDP)の統計水増しが行われていたのではとの疑惑が出ていたが、このほど習近平総書記が「経済成長は本物でなければならず、水増しはなくすべきだ」とはっきり認めて物議をかもしているように中国の発表を真にうけると危ないよ。
(C)同じく米国NICの2030年の予測でも『中国が大きく成長すると同時に、民族国家自体が崩壊する可能性も示唆している。これまでのGDP一点張りの尺度も、インターネット、スマホ、デジタル経済の急進展で、なるべくモノを所有しないライフスタイルへと先進国経済はチェンジしつつある。
文書ファイルや音楽データなどあらゆる情報を物理的に所有する代わりに、デジタル化してクラウド上で管理するビッグデータ時代に入った。自動車から住宅までシェア、共有する経済に転換するとの見方もあり、エコノミスト誌の2050年予想が的中するかどうか、まだまだ未知数だと思う』
(B)「それに、少子老齢化の問題でも、財政の赤字でも日本だけではなく、先進国では同じ悩みを抱えている共通の課題。
日本が先頭きって猛スピードで、少子高齢化、老人大国化していることは事実だが、生産年齢人口では日本から約15年遅れて米国は2005年に、欧州は2010年にピークをつけ、中国でも一人っ子政策の結果、急速な高齢化が迫っています。
生産年齢人口(15-64歳)は2015年にはピークアウトし、30年には65歳以上の人口が2億3000万人に迫るという桁違いの老齢人口だ。
一人っ子政策を全廃する方向にも向かっているが、中国の出生率が大きく改善される可能性は低い。中国では日本のような老齢年金、医療福祉制度は全くいない。夫婦2人で両方の高齢両親(4人)の面倒を見なくてはならない。このため、中国は30年以後は、米国との軍事力の差を縮める軍備増大と老人福祉予算をどう両立させるかの決断に迫られる」
(B)『その点、移民大国の米国は活力が持続するというわけです。合計特殊出生率は2・1と先進各国より大変高い。若い移民も生産年齢人口も増えつづけており、30年には2000年より18パーセント増える見込みで、中国とアメリカの長期的な国力差にはねかえり、アメリカは2050年でも依然ナンバーワンを維持するとみているわけです』
(つづく)
★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー―日本興亡150年史』(1)
★◎『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー『リーダー不在の―日本興亡150年史』(2)
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