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<名リーダーの名言・金言・格言・苦言(22) 『リーダーは“両耳判断”せよ』 『持てる力を一点に集中すれば、必ず穴があく』 

   

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言
・千言集(22)            前坂 俊之
 
 

◎リーダーは“両耳判断”せよ
 
  後藤 新一(三洋電機相談役)  『よっしゃ、イチから出直しや』
 
 リーダーたるもの、人に接する場合、どんな醜の中にも、美しさがあるはずだという前
提で、臨まなければならない。逆にどこからみても、非の打ちどころがないといわれる人
の中にも、どこか醜、つまり短所があるという前提で接し、その短所は短所として把握し
ておく必要がある。
 
 部下から「あの人間は悪い」と聞いても、その口車に安易に乗らず、どこか長所がある
はずだという前提で、冷静に見てやることだ。人を色眼鏡や固定観念で見てはならない。
もう一度見直してあげることだ。その場合、大切なのは人間に対する“片耳判断”をして
はいけないということだ。片耳だけでなく、両耳で判断すべきである。
 
 「あの人はこの点がダメ」という意見だけを聞いて、つまり“片耳判断”してはいけな
い。ウワサやカゲ口をうのみにせず、もう一度別の角度から観察して、つまり両耳で判断
すべきである。

●自分を鍛える男の鉄則

 
  古賀 実(日本コンサルティングセンター理事長)
 
 二世、三世の生まれついた経営者、社長が増えている。個性に乏しい、素直ないい子社
長である。古賀は彼らに「古賀流の自分を鍛える男の鉄則」を教示している。
 
 一 常にハングリーであれ
 二 他人のマネでは二流、自分のものを作り出して初めて一流になる
 三 プロの修行に“手取り足取り”はない
 四 男は忙しくなきゃダメ
 五 二十代は粗削り、三、四十代はキメ細かさ
 六 スキのある人間は魅力がある
 七 人間は志がないと悪い方へ流される
 八 人生は変化の連続、利用如何は自分次第
 九 上げ潮の時は乗りに乗れ
 十 プロの条件は夢、志、執念、知識、生命力
 十一 機先を制したり、返しワザを打つには基本が出来ていなければならない
 十二 定石は日々作られていくものだ
 十三 一定の水準に達する人はみな素直である
 十四 どこまで行ってもこれからだと思え
 十五 「芸」に達した人は芸人性を感じさせる
 十六 真っ暗闇の中に自分の光を見つけよ
 
 
   
 ◎研究開発はカルタ取りだと思え
 
  小林 大祐(富士通社長)     『トップの頭脳生活』
 
 “果報は寝て待て”というコトワザがあるが、仕事上の着想、発想に関してはこれはあ
てはまらない。果報は待っていたのでは決して得られず、むしろギリギリの、時間的制約
や自分の職業生命をかけた、責任感の中から得られるものだ、と思う。
 
 その意味で、私は社の研究開発に従事している者たちに常々「自分たちのやっているの
はカルタ取りだと思え」と言っている。カルタは、たとえ答えが同じようにわかったとし
ても、一瞬でも早くパチッとやられれば負けになる。研究開発も同じで、成果の発表が一
瞬でも競争相手より遅ければ、それで負けだ。
 
 時間という観念抜きの“発想”など企業にあり得ない。厳しい時間的制約と責任感があ
れば、どんな人間も創意工夫を余儀なくされ、その発想を単なる空想にとめないで現実の
行動に移していかざるを得なくなる。時間はカネであり、勝負なのだ。明確な目標が与え
られ、責任を感じれば、人間というのは驚くほど能力を発揮する。
 
 
◎企業は大きくしてはいけない
 
  中島 董(キューピーマヨネーズ創業者)  『幹部の責任』
 
 中島は「経済道義こそ企業の根幹であり、売れれば売れるほど安くし、利益を社会へ還
元する」という理念で、戦後十七回も値下げに踏み切った。
 昭和二十三年に一四〇・のびん入り二百円の製品を、合理化によって約三分の一以下の
七十円まで値下げした。
 
 中島は「企業は大きくしてはいけない」と断言する。「大きくなればなるほど、自分の
目の届かぬところができ、お客にすまないし、ノレンに傷がつく」と。
 人は小よりも大を好む。とかく、内容も伴わないのに、経営規模だけ大きくしようとす
る。大黒柱をそのままにして、より大きな家を立てると、大黒柱に荷重がかかって倒れた
り、ゆがむ。企業の原理も同じ。
 
 やたらに、従業員の頭数だけを増やしたのでは、大黒柱を太くしないで、家だけを大き
くしたのと同じだし、自らの大きさを無視してドンドン膨張すると必ず悪い結果を招く。
 
 

◎持てる力を一点に集中すれば、必ず穴があく
 
  鬼塚 喜八郎(アシックス社長)
 
 昭和二十四年に従業員二人で始めた「オニツカ」は現在、世界のスポーツシューズのト
ップメーカー、「アシックス」として世界のスポーツマンから愛好されている。
 その鬼塚の経営理念、戦略は「一点集中のキリモミ経営」である。中小企業が大資本を
相手に勝つ方法、“弱者の戦略”は常に自社の開発力、販売力、資本力の持てる力のすべ
てを一点に集中させること、という。
 
 アシックスはまず、バスケットシューズに全力を投入、成功すると、今度はマラソンシ
ューズ、次はバレーボールシューズといった具合に一点集中し、突破してきた。
 
 この“キリモミ戦略”の経営はキリが一点に集中して穴を開けていく戦略で、これはと
思われる市場を徹底的に攻める。一つの商品に力を入れ、シエアが七、八〇%になるまで
他に手を出さない。販売戦略も同じで、全国にあるスポーツ店から陸上関係者が最もよく
集まる陸上専門店三百店を選び、差別化作戦でその店だけにしか売らないことで全力投入
して成功した。

 

◎頭を下げれば情報が入ってくる
 
三沢 千代治(ミサワホーム社長) 『価値を逆転すれば現代に勝てる』
 
 先端技術などで新聞を読んでも十分飲み込めず、詳しく知りたい場合には、私はその会
社や人物へ頭を下げて教わりに行く。
 
 ほとんどの人はこうした場合、反応があったことを喜ぶ。相手は必ず「どうぞ、どうぞ
」と答えてくれる。実際に聞きに行けば、実に親切に教えてくれる。技術者の方など、喜
んで極秘の部分まで話してくれる。こんなことまで聞いてもいいのかなと思う時もあるほ
どだ。
 
 まったく知らない会社はもちろん、ライバル会社でも「せっかく来られたのだから仕方
ありませんね」と苦笑しながら。、かなりの部分まで教えてくれる。
 
 情報は高いところから低いところに流れる。うちの会社にはいい技術者がいないからダ
メだ、などというのは見当外れで、頭を下げて聞きにいく気があるかどうかがカギだ。絶
えず注意して、気になる情報が引っ掛かったら、謙虚な気持ちで教わりに行くことだ。
 
 

◎商売の秘訣は世間より一歩ずつ先に進むこと
 
  服部 金太郎(セイコー創業者)
 
 服部は明治初期に時計の修繕工からスタートし、一代で世界有数の時計王国・セイコー
を築き上げた立志伝中の人。服部は自分の成功について、服部時計店の重役たちに次のよ
うに言っていた。
 
 「自分は他人が仲間同士で商売をしている時に、一歩進めて外国商館から仕入れた。他
の人が商館取引を始めた時には、さらに一歩進めて、外国からの直輸入をやった。
 他人が直輸入を始めた時には、こちらはもう自分の手でそれを製造し始めた。そして他
人が製造を思いついた頃は、とうに世界的水準に達する立派な国産品が、出せるようにな
っていたのである」
 
 「すべて商人というものは、世間より一歩先に進む必要がある。ただし、それは一歩だ
けで、一歩よりよけいに進み過ぎてはいけない。何歩も先に進み過ぎると、世間とあまり
かけ離れて、商売人ではなくなってしまう」
 
 

リーダーは部下に常に“窓”を一つ開けておけ
 
後藤 新一(三洋電機相談役) 『よっしゃ、イチから出直しや』
 
 トップやリーダーは部下に対して、常に“窓”を一つ開けておくべきだと思う。その“
窓”とは心の窓であり、そこからは、みんなが自由に出入りできるようにしておく。
 そうしなければ、みんながついていかない。部下が人事百般あらゆる問題・悩みを相談
にいけるようなリーダーにならなければいけない。
 
 そのためには、リーダーは渋味豊かな人間性がなければいけない。渋味豊かとは無欠点
から生じるものではなく、ある程度欠点のあるところから生じる。
 あるいは、ハメを外すところから生じる。その欠点やハメを外すところ、換言すれば、
“許されるところ”が、実は“窓”となり、部下はその“窓”から気軽に出入りするよう
になるといえるだろう。
 “欠点のない男は友人に
すべからず”という言葉がある。仕事は欠点がない方がいいが
、生活面ではある程度、抜けている方が楽しい。
 
 
 
◎鈍と根がなければ運はつかめない
 
 立石 一真(オムロン創業者)   『人を幸せにする人が幸せになる』
 
 「運・鈍・根」という言葉があるが、「鈍」と「根」がなければ運はつかめない。
 運をつかむには、正確な未来予測、“時代を先取りする”ことが必要であろう。先駆者
には先駆者の悲哀があり、いつの場合も時代に容れられず、〇〇と困難がついてまわる。
 
 あまり、賢すぎてはできぬことで、「鈍」がなければなるまい。それから、いま一つ、
いろんな批判に耐え、さらに〇〇と困難を排して、それをやり続けるには「根」がいる。

 

 いまの情報システムにしても、サイバネーション技術の自主開発とそれによる三つのジ
ャンボ・システムの開発、それをジャンボ・マーケットに育て上げる仕事は、やはり「鈍
」と「根」がなければやれなかった。
 「運・鈍・根」が、わが社をここまでもってきたといえる。
 
 
 

◎叱った後の手当てが大事
 
松下幸之助(松下グループ創業者) 『山本五十六と松下幸之助』
 
 松下の叱り上手は有名であった。彼の指導を受けた部下たちは、口を揃えて言う。
 松下は「上手な叱り方や、ほめ方をすること自体すでに、間違いではないかと思う。

はり、叱らなければならない時は叱る。ほめるべき時にはほめる。いわゆる直情径行でい
いと思う」と述べている。叱る時はこのように厳しかったが、大事なことは、松下は叱っ
た後にしこりを残さないように、うまく手当てをしていたことだ。叱りっ放しにはしなか
った。
 
 九州松下電器社長であった青沼博二の証言。
 
 「特に重大な問題で、我々のやり方に間違いがあった時には、徹底的に叱られた。が、
その日ならその日のうちに、全く話題を変えて『時に、あれ何だったかな』と電話を掛け
てこられたり、数日たってもう一度呼んで、叱ったことを全く忘れたかのような、顔をし
て他の話をされたりしておられた。他の人を介して『落胆していないだろうか。気にして
いないか。あんたから激励しておいてくれ』と間接的に、慰められていた」
 
 

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