世界史の中の『日露戦争』⑪『ついに開戦へ』『遼東半島を独占するロシアと門戸開放の日本』『ニューヨーク・タイムズ』
2016/03/03
英国『タイムズ』、米国「ニューヨーク・タイ
ムズ」は「日露戦争をどう報道したか」⑪
『ついに日露戦争開戦へ』―
『遼東半島を独占するロシアと門戸開放の日本
との貿易戦争』
<『ニューヨーク・タイムズ』
1904(明治37)年2月9日<開戦2日目>—
<アメリカの態度―これは露日間の問題にとどまらない。ロシアと全人類との問題だ。なぜなら日本
は半島を所有して全人類を入れようとしたのに,ロシアはそれを所有して全人類を締め出したからだ。
満州と中国全体を独占的に搾取することがロシアのもくろみだ。ロシアには自由貿易と門戸開放の観念がない。ロシアがめざすのは独占だ。
すでに同国はその証拠を十二分に示しており,アメリカは特別の理由によりそのことを承知している。
わが国の満州貿易は最初はきわめて有望だったが,ロシアの占領下でアメリカの工場が破産する状態
にまで落ち込んだ>
―なぜロシアは戦うべきなのか
ロシアになんらかの政治的分裂があると言えるなら,そうした分裂が対日交渉をめぐって生じたことはよく知られている。一方にはアレクセーエフ提督が率いるとされる党派があって,これは日本との戦争を賭けてもロシアの東アジア征服を固定し拡大することを支持している。
もう1つの党派は,国の能力に照らし,ないしは真の国益に合致するには.その政策が冒険的で危険過ぎると考えている。もとよりいずれの党派もアメリカ的な意味での「党派」ではな
い。いずれも廷臣の集りと言った方がよく,ときによって一方ないしは他方の意見がロシア皇帝に聞き入れられ,その決定に影響を与えているらしい。
争点を冷静に見る者にとっては,保守平和派の方がはるかに筋の通った立場のように見える。中国帝国全体を含むアジアの大きな部分は将来明らかに欧米の商業開発の場となる運命にある。日本は9年前,武力によって中国に和平条件を突きつけて遼東半東を要求し獲得したが,その際、同地内ではすべての国が日本が自国のために要求した通商権を得てよいという明確な通告を行った。
ロシアはこれに反対したが,それは日本の同半島占領が「中国と朝鮮の独立への脅威となり,極東平和を恒常的な危険
にさらす」との訴えを根拠としていた。ロシアはその要求にフランスとドイツを引き入れた。
当時、門戸開放要求に最も深い関心を持ち,最も強く関与していた大英帝国が日本の援助に乗り出さなかったため,日本は譲歩する以外に選択の余地がなかった。
今や日本も世界も,ロシアが日本の半島取得を阻んだのは自分が欲しかったからだったと悟った。ロシアは同半島の所有に赴き,その突端に大要塞を築いただけでなく,半島の背後の満州全土をも所有した。
したがって,それ以来「中国と朝鮮の独立への脅威となり,極東平和を恒常的な危険にさらし」てきたのはロシアということになる。
日本は中国との戦争でロシアの手先に使われたと知って怒っているが,これは理解できるし,当然のことだ。
だがこれは露日間の問題にとどまらない。ロシアと全人類との問題だ。なぜなら日本は半島を所有して全人類を入れようとしたのに,ロシアはそれを所有して全人類を締め出したからだ。
満州と中国全体を独占的に搾取することがロシアのもくろみだ。ロシアには自由貿易と門戸開放の観念がない。ロシアがめざすのは独占だ。すでに同国はその証拠を十二分に示しており,アメリカは特別の理由によりそのことを承知している。わが国の満州貿易は最初はきわめて有望だったが,ロシアの占領下でアメリカの工場が破産する状態にまで落ち込んだ。
そして,満州で新たに条約港を開くなど,わが国が通商手段拡大に尽くした努力はことごとくロシア外交の手管によって着実な抵抗を受けた。われわれがその抵抗を克服し通商手段にありつくと,ロシアの新聞はアメリカ人は敵であり,紛争をあおっていると非難した。
これが典型的な例だ。日本が得たものは人類が得るのに反し,ロシアが得た、ものは人類が失うというわけだ。ロシアが今非合法的かつ背信的に所有している中国領を手放さずにいるならば.貿易に携わる世界は門戸開放でなく,門戸閉鎖に見舞われることになる。
つまり,ロシアが満州問題ないしは朝鮮問題で日本と戦争するなら,すべての貿易国の利益と共感に立ち向かうことになる。
その中には大英帝国と合衆国,またドイツ,フランスがある。もっともドイツの場合はその通商利益がドイツ帝国評議会に対し発言権を持っか否かにかかっており,フランスの場合は,同国が極東におけるその通商利益を無視し,それに背いて,
ひたすら大陸ヨーロッパの政治のためのみに結んだ不自然な同盟に献身するのでなければの話だが。
ロシアの方針に不満を持たされたこれら大国のいずれかが,その消極的な反露感情と対日共感を積極的な反露抵抗と積極的な対日援助に転換するには,どれほどのことが必要なのか?さらに加えて,ロシアには無数の弱点があり,日本と戦争になれば,それらの弱点をかばう能力も損なわれることも考慮されよう。
イギリスのチベットとベルシアに対する圧力.フィンランドにおけるフィンランド人の蜂起,ポーランドにおけるポーランド人の蜂起,そのほかロシアが極東に没頭しているすきに乗じて,同国を無視してバルカン諸国で懸案を解決しようとする党派が動き出す可能性はどうか?満州や朝鮮の問題をめぐって日本と戦争をしようとするロシアの決定ほど,重荷を伴う国家的決定はほかには想像しがたい。
関連記事
-
-
『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争➅』★『英国の歴史家H・G・ウェルズは「日本国民はおどろくべき精力と叡智をもって、その文明と制度をヨーロッパ諸国の水準に高めようとした。人類の歴史において、明治の日本がなしとげたほどの超速の進歩をした国民はどこにもいない。』★『日露戦争』は川上操六プロデューサー、児玉源太郎監督、主演は川上の薫陶をうけた情報参謀の福島安正、柴五郎、明石元二郎、海軍は山本権兵衛、東郷平八郎、秋山真之らオールキャスト
2017/08/14   …
-
-
『オンライン講座/今、日本に必要なのは有能な外交官、タフネゴシエーター』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス➅』★『シベリア鉄道のおどろくべき秘密』●『ドイツ皇帝からの親書を金子が読む、大統領は親友だから見せないが、話すよ』●『日本海海戦勝利にル大統領 は大喜びして、熊皮を明治天皇に プレゼントした』
2017/06/25&nb …
-
-
『オンライン講座/今、日本に必要なのは有能な外交官、タフネゴシエーター』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス④』★『日露戦争勝利の秘密、★『『武士道とは何かール大統領が知りたいー金子のハーバード大での名スピーチ④』★『マカロフ大将の死を悼み、新聞に賞賛される』★『日露戦争は正義のための戦いで日本は滅びても構わぬ』★『ル大統領は「日本が勝つが、黄禍論を警戒せよ」と忠告』
2017/06/23 日本リー …
-
-
『Z世代への遺言 ・日本インド交流史の研究①』『インド独立の原点・日本に亡命,帰化しインド独立運動を指導したラス・ビハリ・ボース(中村屋ボース)』
ラス・ビハリ・ボースは英国からインドが独立する引き金となった男である。英国官憲に …
-
-
『オンライン講座』「延々と続く日中衝突のルーツ➈の研究』★『中国が侵略と言い張る『琉球処分にみる<対立>や台湾出兵について『日本の外交は中国の二枚舌外交とは全く違い、尊敬に値する寛容な国家である』(「ニューヨーク・タイムズ」(1874年(明治7)12月6日付)』
2013年7月20日/日本リーダーパワー史 …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1065)>★『トランプ真夏の世界スリラー劇場・各国の興亡史は外部要因(戦争などの)より以上に、内部要因による自壊・自滅現象である。オウンゴール連発のトランプ大統領はレッドカードで退場か?』★『米デフォルト・リスク、トランプ政権の混乱で「正夢」も』★『トランプに「職務遂行能力なし」、歴代米大統領で初の発動へ?』●『「トランプおろし」はあるか、大統領失職の手続き』
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1065 …
-
-
『Z世代のための日中外交史講座②』★『日中異文化摩擦―中国皇帝の謁見に「三跪九叩頭の礼」を求めて各国と対立』★『日中外交を最初に切り開いた副島種臣外務卿(外相)の最強のインテリジェンス②』★『1873(明治6)年8月28日「英タイムズ」は「日中の異文化対応」を比較し、中国の排他性に対して維新後の日本の革新性を高く評価』
• 困難な日中外交を切り開いたのが副島種臣外務卿(外相)の外交力。 この困難な相 …
-
-
『Z世代のための日本敗戦史研究』★『日本敗戦の日(1945年8月15日)、惨殺された森赳(たけし)近衛師団長の遺言<なぜ日本は敗れたのかー日本降伏の原因』★『日露戦争に勝利すると、本当の実力で勝ったと錯覚し、一躍、五大強国にのし上がったと思いあがった』★『近代合理的精神の欠如、秘密隠ぺい主義など<人間を幸福にしない日本というシステム>がいまだに続いている』
2010/02/10 日本リーダーパワー史 …
-
-
片野勧の衝撃レポート(53)被爆記憶のない世代は被爆体験をどう伝えていくか(下)
片野勧の衝撃レポート(53)太平洋戦争とフクシマ(28) 『なぜ悲劇は繰り返 …
-
-
『日本最強の参謀とは一体だれか?』ー「「其日庵主」「もぐら」こと魔人・杉山茂丸」の経済雄弁術⑦ 』★『細かい数字を百年の国策に取り交ぜ、談論風発、相手を煙幕に巻く」』★「下村海南(朝日新聞副社長の証言)(『雄弁』1938年(昭和7)9月号)
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/11/14am700) &n …
