前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のためのトランプ米大統領講座㉕』★『チャレンジ精神こそがイノベーションの原動力」(ディープシーク・梁文鋒CEO)』★『 ディープシークR1のAPI価格はOpenAI o1の何と30分の1』★『しかし、ディープシーク生成アプリの正答率は17%で、欧米競合アプリより低い』

      2025/02/01

世界中から今、最も注目されている中国の「AI企業」「ディープシーク」(梁文鋒CEO(39)は1980,90年代に一早く中国で資本市場経済を取り入れてきた南部広東省の湛江市で1985年に生まれた。父親は小学校の算数の教師だった。
幼い頃から成績優秀で、中学時代には飛び級的に高校の勉強をすべて学び終えており、「大学共通入学試験」ではトップの成績で、17歳で浙江大学(せっこう)に合格した。中国大学ランキングでは①北京大学②清華大学につい三位の名門大学である。
梁氏は、勉強よりも起業を重視する人々に囲まれていたが、自身は学術志向が強かった。浙江大学に入ると電気通信工学を専攻。2010年に情報通信工学の修士号を取得した。
15年には複雑な数式のアルゴリズムを利用する「クオンツ投資」のヘッジファンドを共同で創業。21年末にファンドの資産を1000億元(137億9000万ドル)余りにまで膨らませた。
23年4月、活動を投資業界の外に広げ、汎用AI(AGI)開発に資源を集中すると発表。その翌月にディープシークが誕生した。
オープンAIの定義によると、AGIとは経済的価値を有する作業の大半で人間の能力を超える自律的なAI目指すもの。ディープシークの従業員は、中国のトップクラスの大学の卒業生や博士課程の研究者が中心で、梁氏は、「彼らはAI開発における最大の課題に取り組めるからこそ、入社してきた人たちだ」という。

梁氏は昨年7月に「何が最優秀の人材を引きつけるのかと言えば、世界で最も困難な問題に取り組むことであるのは間違いない。われわれの目標は引き続きAGI(の実現)に向けられている」と語っていた。

24年12月末に公開されたオープンソースの「ディープシーク-V3」は、「GPT-4o」の桁違いのコストパフォーマンスを示した。「GPT-4o」はエヌビディアの高性能GPU「H100」を1万枚以上使用し、そのトレーニングコストは約1億ドル(約155億円)かかった。

●ディープシークのR1のAPI価格はOpenAI o1の30分の1

一方、「ディープシーク-V3」のトレーニング費用は557万7000ドル(約8億6000万円)で、しかも米国の輸出規制に対応した中国専用の型落ちGPU「H800」を2048枚利用したのみで、コストパフォーマンスは5分の1。
さらに、ディープシークのR1のAPI価格は入力100万トークンあたり1~4元(約20~90円)、出力100万トークンあたり16元(約340円)で、OpenAI o1の約30分の1の低価格である。

東大の入試問題を両方で解いたところOpenAI が回答した5秒後にディープシークが説いた。ほぼ似た回答だっで、その差はなかったという。

米ユニコーン企業のScale AIの創業者アレグザンダー・ワン氏も「この10年、米国はずっと中国の先を行っていたが、ディープシークのAIモデルが登場したことで事態が一変する可能性がある」と語った。

「36Kr」(日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア)https://36kr.jp/327223/
は2024年7月、ディープシーク創業者の梁文鋒氏にインタビューを行っている。この中で梁文鋒氏は開発精神、そのプロセス、イノベーションについて語っている。

① ディープシークは、オープンAIと異なり、全てのモデルをオープンソース方式に決めている。基本コードは開発者なら誰でも利用可能で、自由に修正できる。オープンソースはビジネス慣行というよりも文化的慣行で、これを採用する企業はソフトパワーを手に入れる。

② 我々の目指すAGI(汎用人工知能)を実現するには、限られたリソースの中でAIモデルをスケールアップするのに欠かせない基礎研究だった。トレーニング効率や推論コストの面で、海外の最先端レベルと比べて2世代分ほど遅れていると感じた。
③ 過去30年間(中国のハイテク産業は)収益化だけを強調し、イノベーションは無視してきた。イノベーションはビジネスのほか、好奇心や創造意欲にけん引される。
④ 米中ギャップは「オリジナル」と「模倣」という違いにある。米半導体大手の「エヌビィディア」が今の地位を確立できたのは、西洋の技術コミュニティや産業全体の努力が結実したからだ。中国のAIもこのようなエコシステムの形成が不可欠だ。中国で国産チップの開発がなかなか進まないのも、技術コミュニティのサポートが不足しており、最新の情報が手に入らないからだ。

⑤ 「桁外れの天才技術者たち」を雇っているとの声もあるが、メンバーは中国国内のトップ大学(北京大・清華大が多い)のみ。「ディープシーク」に
トップレベルの人材が強い興味を示すのは、世界的な難題に取り組み、それを解決することだと思う。われわれは最も困難な課題に取り組んでいるので、この環境が彼らにとって魅力的に映るだろう。
⑥ これからは本当に価値のあるイノベーションがますます増えていくはずだ。功績を挙げた真のイノベーターが高く評価される社会になれば、全体の見方も変わるだろう。

以上の高評価に対して、真逆の評価も出てきた。

●ディープシークの生成アプリの正答率は17% 
 

時事通信 (1月30日配信)によると、「情報の信頼性を分析する米ニュースガードがディープシークの生成プリを検証した結果、正答率が17%だった。 ニュースガードは、他の生成AIの回答精度を測るのに使ってきた300の質問を活用。結果は30%が誤りで、53%があいまいもしくは役に立たないものだった。「失敗率」は83%と、欧米競合アプリの平均(62%)より高かった。

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『オンライン/『英タイムズ紙による海洋国家日本の900年の歴史講座』★『蒙古襲来(1274年)から日露戦争(1904)までの海の道』★『今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍しようー』

   2019/11/13  『リーダー …

no image
知的巨人たちの百歳学(182)ー人気動画再録/-『鎌倉サーフィンを眺めるだけで、スカット、さわやか!健康長寿になるよ』★『『今はもう秋。今夏(2012)最大のビッグウエーブの押し寄せた七里ヶ浜の『カマクラ・サーフィン』は見るだけで寿命が延びるよ、夏の終わりの思い出!』

  2012/09/04/ 記事再録『百歳学入門(241)』 …

『Z世代のための日本スリランカ友好史』★『 日本独立のサンフランシスコ講和条約(1951年)で日本を支持したジャヤワルデネ・スリランカ大統領』★『同大統領ー感謝の記念碑は鎌倉大仏の境内にある(動画)』

2014/11/30 記事再編集 瀬島龍三が語る『日本の功績を主張したセイロンの …

no image
日本メルトダウン脱出法(742)「世界経済:ドルの支配とその危険性 勢い失う米国の経済覇権」(英エコノミスト誌)●「ウラジーミル・プーチンの対テロ戦争」(英FT紙)

日本メルトダウン脱出法(742) VWの不正が引き起こした株安と通貨安の必然 信 …

no image
速報(193)『東電発表の溶け落ちた燃料の状態の解析結果への疑問 』『玄海1号炉が約90度で原子炉が脆性破壊の恐れ』ほか

速報(193)『日本のメルトダウン』   ●『東電発表の溶け落ちた燃料 …

no image
日本リーダーパワー史(130) 『自滅国家日本の悲劇』ー迫り来る国家破産と太平洋戦争敗戦の類似性②

『自滅国家日本の悲劇』ー迫り来る国家破産と太平洋戦争敗戦の類似性② ジャック・ア …

no image
『サハラ砂漠南側の「サヘル地域」への国連人道援助』ートビー・ランザー国連サヘル地域担当人道調整官の日本記者クラブ会見動画(60分)(2016.3.18)

 サハラ砂漠南側の「サヘル地域」への国連人道援助について トビー・ランザー国連サ …

「Z世代のための日中外交敗戦10年史の研究(下)」★『明治リーダーの必勝法は決断し、命令し、誓約させ、断固実行させる」★「川上の戦訓「上司の機嫌にとらわれず、勝者にその範をとれ」★『 リーダーは長期に担当させよ、川上参謀総長は軍令を十四年間、桂太郎首相は軍政を通算十五年間も担った』

『リーダーなき日本の迷走と没落、いまこそ明治のリーダシップに学べ』 ②&nbsp …

no image
★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史④』150回連載の41回~51回まで』●『『太平洋戦争の引き金を引いた山本五十六のインテリジェンス』★『東條英機自身も仰天した組閣の大命降下ー東條首相誕生の裏側』★『<軍人たちは『戦争責任』『敗戦責任』をどうとったのか、敗戦で自決した軍人は一体何人いたのか』★『無謀な大東亜戦争での日本兵残酷物語の「内務班」<兵士たちは召集令状「赤紙」1枚(1銭5厘の命―現在の値段で約100円)とただ同然で招集』

★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』 ★『ガラパゴス国家・日本敗戦史④』 & …

『Z世代のための新日本・世界史クイズ?『「歴史の研究」(12巻)などの世界的歴史学者アーノルド・トインビーは「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康をしのぐ業績を上げた」と最大評価した日本史上の偉人とは一体誰でしょうか?③」★『答えは「電力の鬼」・松永安左ェ門で昭和敗戦のどん底ゼロからわずか20年で世界第2の経済大国にのし上げた奇跡の名プロデユーサー兼監督です』

『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力③』が世界第2の経 …