『明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破の交渉力」➃『『軍事、外交は、嘘(ウソ)と法螺(ほら)との吐きくらべで、吐き負けた方が大損をする。国家の命脈は1にかかって嘘と法螺にある。『 今こそ杉山の再来 が必要な時」』
2024/11/15
2014/08/09 /日本リーダーパワー史(520)「ほら丸を自称した杉山の交渉術」―記事再録,再編集
大物キラーの茂丸の交渉術には一貫した『戦略的思考』「外交術」が見えるが、それについて明治42年1月号、週刊『サンデー』の『法螺の説』の中でこう書いている。
『一体、法螺(ほら)いうものは、大きい嘘を吐くことにて、嘘というものは人間の一番悪い行為としてあるが、悪い行為だから一切これを吐かぬことに厳禁したら、人間の交際は丸で石地蔵の頭を金槌でたたくようなものである。中国戦国時代の諸葛孔明も「手のつけようのない大法螺吹き」ということになる』
『殊に軍事、外交の如きは、嘘と法螺との吐き競べで、吐き負けた方が大損をするのである。つまり国家の命脈はかかって嘘と法螺にあると云うてよいのである。
『捨身でさえかかれば世の事は安々と運ぶものだ。無を有にし、有を無にするという禅味三分と、世界識見五分とを突き混ぜて足の親指と下っ腹に渾身の力をこめて大法螺をふくのじゃ》(某日庵叢書弟二篇) (以上多田茂治『夢野久作と杉山一族』弦書房2012年刊)
これが「ほら丸」交渉術なのである。捨て身の覚悟、胆識と世界識見(グローバルインテリジェンス)を心得て実践、成功した日本を勝利に導いた稀有の戦略家であった。
このようにして杉山の「ホラ丸交渉術」は次々に功を制していくが、杉山と他の国粋的なカチカチ、ゴロツキの右翼壮士、玄洋社のメンバーとも大きく違うのは、経済通、国際経済にも深い造詣を持っていたこと。茂丸は「経済の神様」といわれた松方正義首相、金子堅太郎農商相らのところを度々訪れ、経済、金融政策について議論をふっかけた。一国の総理からみれば全くの若造だが、松方が真剣に耳を傾けたところを見ると、その並々ならぬ経済通がうかがえる。
朝日新聞副社長の下村海南も『茂丸の座談は、まことに経済なるもの口にする。払い込がいくらで配当が何分だから利回りがいくらくになる、為替が何ドルを割ったから外債の利子がいくらいくらになるとか、日歩がいくらの、コールが何厘だのと、ソロバンの細かい数字を、大日本の百年の国策に取り交ぜ、談論風発、相手を煙幕に巻き込んでしまう』という。今から言えば140年も前のことである。いかに経済、金融、外交に通じていたかがわかる。
政治分野と同時に、「日本の空を工場のエントツで真っ黒にしてみせる」といち早く工業立国論を唱え、児玉台湾総督の知恵袋として台湾銀行を作り、日本興業銀行の創設、満鉄の創設、鉄道の国有化にも熱心に取り組んだ。
香港や上海、アジアを相手に貿易に携わり、特に米国には工業の視察に前後五回も訪れ、内閣嘱託として日本公債引き受け交渉にも従事した。
日本興業銀行創設のため、一片の紹介状も持たず渡米して、金融王・モルガンとわたり合ったいきさつは、「もぐら流」のタフネゴシエイタ―が世界にも通用した一例である。
・金融王・モルガンを煙に巻く
1898年(明治31)、杉35歳は一片の紹介状も持たず単身渡米して、各国の元首でも容易に会えないといわれた世界最大の金融業者のモルガン商会のJ・P・モルガンに面会した。
その得意の舌先三寸の雄弁術、ディベート力で一億三千万ドル(1950億円)の融資を引き出すことに成功する離れ業を演じた。
この時のやりとりも無類に面白い。茂丸一流である。交渉がまとまった際、茂丸はその内容を覚書にしてほしいと依頼すると、モルガンは突然大声で怒りだし「私がイエスといったのだぞ」とテーブルをドンと叩いた。
部屋の空気は一瞬、凍りついた。通訳らも契約破棄?か、と青くなった。しかし、茂丸は平気の平座。「もう一度、テーブルを叩いてください。そうすれば、その音が日本まで聞こえるでしょう」とタンカを切った。
「Why!」-今度はモルガンが驚いた。
「私は日本政府と関係ない一介の観光客にすぎない。その私が世界のモルガンに会えて、日本にとって大変有り難い工業開発の条件をいただいた。その声、音を日本政府、国民に聞かせたい。私はあなたがイエスと言った言葉を信じるとか、信じないかの資格のある男では有りません。私の希望としてはあなたがテーブルを叩く音よりも、あそこにいる美人秘書のタイプライターの音なのです」
ジョークを交えての、胸のすく一発である。
これには、さすがのモルガンも1本参って、早速、美人文書をタイプさせ、茂丸に手渡した。この手のエピソードには事欠かない。
茂丸は日本刀の愛好者で「備前長船」の名刀を頭山にプレゼントすると、即座に頭山は手放してしまい、杉山をあきれさせたというエピソードがあるが、このやりとりを見ていると『交渉の達人』の日本刀切れ味鋭い、一閃というかんじである。
この茂丸の離れ業には伊藤、山県とも今更ながら茂丸の交渉力に目を見張った。ところが、松方蔵相が銀行家の猛反対に押されて「そんな安い外資が入ると、日本の銀行はつぶれる」と反対に回り、外資導入はオジャンとなった。
結局、国内資本だけで日本興業銀行は創設され、杉山は初代総裁に推されるが、蹴ってしまう。伊藤からも警視総監に就任を要請されたが、そんな小さい役はゴメンだと、生涯浪人を貫いて、自由自在に国益のために奔走したのである。
杉山の交渉術、凄腕についてはモルガンの顧問弁護士のF・ジェ二ンゲが明治三二年六月、母校ハーバード大学において法学博士(名誉学位)を受けるために渡米した金子堅太郎に次のような茂丸評を寄せた。
「彼があなた(金子のこと)と同じょうに英語が話せるのなら、この国では大いに歓迎されることであろう。彼は既成概念を超えた新しい発想の持主であるようで、その発想を数字具体的に組立て、理論整然と説き来り、説き去り、聞く者をして十二分に納得せしめ得る話術の持ち主である。私は今までに沢山の日本人に会っているが彼ほどの人物には会ったことがない。あなたから時々米国に来るように話してくれ」(野田「杉山茂丸伝」204P)と折り紙をつけている。
つづく


関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(527)『有言不実行』の安倍首相よりも 「有言実行」「断固行動派の橋下氏のほうが数段と上↑」①
日本リーダーパワー史(527) 安倍首相と …
-
-
日本メルトダウン脱出法(725)「低金利を維持せよ―世界はまだ異常だー現時点でFRBが金融引き締めに乗り出すべき理由はない](英FT紙)●「中国の盛大な軍事パレードは政権の弱さの現われ 習近平の目指す危険な「国際秩序への挑戦」
日本メルトダウン脱出法(725) 低金利を維持せよ――世界はまだ異常だー現時点 …
-
-
人気リクエスト再録『百歳学入門』(233) -『昭和の傑僧、山本玄峰(95歳)の一喝!➀」★『法に深切、人に親切、自身には辛節であれ』★『「正法(しょうほう)興るとき国栄え、正法廃るとき国滅ぶ」「葬儀は絶対に行なわざること」(遺書)
2012/06/01 記事再録 百歳学入 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(96)』「引退した日本の零戦パイロットは、昔経験した戦争の危険が今差し迫っていと感じる)」(ニューヨークタイムズ」(4/3)
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(96)』 「引退した日本の零 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑯』『最新映画が描く米国対イスラム世界小史』『原発新設からすべての英国企業が撤退』
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ⑯』 ◎『最 …
-
-
世界、日本メルトダウン(1029)ートランプ大統領、習近平の注目の米中会談が6日から始まった。『米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ ソウルは火の海に、日本も報復攻撃されることは確実』★『北朝鮮攻撃の日は近い?米国で崩れてきた前提とは 米中首脳会談は成果を出せるか(古森義久)。』
世界、日本メルトダウン(1029)ー トランプ大統領、習近平の注目の米中会談が …
-
-
『70-80代で世界一に挑戦、成功する方法①』『三浦雄一郎氏(85)のエベレスト登頂法』★『老人への固定観念を自ら打ち破る』★『両足に10キロの重りを付け、25キロのリュックを常に背負いトレーニング』★『「可能性の遺伝子」のスイッチを切らない』●『運動をはじめるのに「遅すぎる年齢」はない』
2018/12/06知的巨人の百歳学(116)/記事再編集 『三浦 …
-
-
世界、日本メルトダウン(1017)ー「トランプ操縦の『エアホースワン』は離陸後2週間、目的地も定まらず、ダッチロールを繰り返す」★『仏大統領選 ルペン氏が首位 左派アモン氏低迷 世論調査』→『トランプ大火災は「パリは燃えているか」(第2次世界大戦中のヒトラーの言葉)となるのか!
世界、日本メルトダウン(1017) トランプ操縦の『エアホースワン』は離陸後 …
-
-
『Z世代のための日本戦争学講座②』★『 歴史インテリジェンスからみた真珠湾攻撃と山本五十六②』★『山本五十六は三国同盟への反対をなぜ最後まで貫けなかったのかー今の政治家、トップリーダーへの遺言』
『Z世代のための日本戦争学講座①』★『今日(2024/12/08)は80年前の真 …
-
-
『鎌倉カヤック釣りバカ快楽日記』★『釣った魚のおいしい食べ方「ワカシのカレー粉オーブン焼」★『忍者「カワハギ君はこうして御用じゃ」-釣り仙人の教え(稲村ケ崎沖)』★『35㎝巨大カワハギとの決闘!ー大地を釣ったズシン!重い感じ、ガツガツ、・グイ-グイー!そう暴れるな、細竿が折れるよ!』
鎌倉カヤック釣りバカ日記ー釣った魚のおいしい食べ方「ワカシのカレー粉オーブン焼」 …
