『Z世代のための「原爆裁判」の歴史研究講座」★『「原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子」(山我浩著、毎日ワンズ)の書評』★『オッペンハイマーは原爆被災者に涙の謝罪、孫は核廃絶の連帯を訴えた』
「原爆裁判」は必読の歴史的ドキュメントです。
今年4月から始まったNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が6月21日放送の世帯視聴率は18.1%と番組最高を記録した。ほかのドラマが軒並み10%前後であることを思えば、圧倒的な人気である。「日本で最初の女性裁判官・家庭裁判所の母」三淵嘉子をモデルにしたドラマだが、彼女が1963年に「広島原爆は国際法に違反したジェノサイドである」との判決を下した「原爆裁判の実態」はあまり知られていない。
その実態を明らかにしたのが、「原爆裁判―アメリカの大罪を裁いた三淵嘉子」(山我浩著、毎日ワンズ、2024年6月刊、1400円+消費税)である。私は同書の前文を書いた。
この「毎日ワンズ」社長の松藤竹二郎氏は毎日新聞記者で1974年に入社、主に出版局で文化・社会・スポーツなどを担当、サンデー毎日や、毎日グラフで活躍、事業本部などを経て86年に退社した。この間にキッシンジャー米元国務長官や、フジモリ元ペルー大統領らと会見するなど海外取材経験を積んできた。
1989年に出版社「毎日ワンズ」を設立。近現代史の政治、軍事、教育の盲点を深堀するのをモットーに次々に問題作、意欲作のベストセラーを刊行、出版界からも注目されている異色の出版社である。
三淵嘉子は1952年、名古屋地裁に初の女性判事で赴任した。56年に裁判官の三淵乾太郎(けんたろう、初代最高裁長官・三淵忠彦の長男)と再婚。東京地裁判事に就任した。
東京地裁では55年、広島と長崎の被爆者5人がおこした「原爆裁判」の口頭弁論が56年2月から63年2月まで9回開かれたが、三淵嘉子(右陪席、主に主文を書く裁判官)が最初から結審まで一貫して出廷した。
その間、裁判長と左陪席は何度も交代している。三淵はこの国際的にも注目された「原爆裁判」について、後年、回顧したり、書いたり、話したものは一切残していない。裁判官の守秘義務を最後の最後まで守り通したのであろう。彼女が主文を書いたものを3人で合議したうえで判決文となったものと思われる。63年12月7日に8年に及んだ原爆裁判の判決が下った。
主文では「被爆者への賠償は認めなかったが、「広島市死者(約26万人)、長崎市(約7万4千人)に対する原子爆弾による爆撃は、無防守都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法から見ても明らかな違反である(ジェノサイド)」。
「国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んで甚大な被害を与えた。その十分な救済策を執るべきである」と被爆国日本の裁判所が初めて「原爆投下は国際法違反」と明言し、最後に「政府の貧困を嘆かざるを得ない」と被爆者への支援策を強く求めた点は国際的にも大きな反響を呼んだ。
この判決の結果、判決後には「原子爆弾被爆者に対する特別措置法」が制定され、1994年には「被爆者援護法」が制定された。世界的には約半世紀も遅れてしまったが、2017年7月「核兵器禁止条約」にもつながった。
今、21世紀AI(人工頭脳)時代が開かれてきたが、時代は20世紀「戦争の時代」に逆戻りしている。ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争、迫りくる台湾有事、北朝鮮の弾道弾ミサイル連続発射などで第3次世界大戦前夜のような危機的な状況に直面している。
また、世界は今「ジェンダーフリー」時代にも突入しており、日本のジェンダーギャップ指数は115カ国中80位と低迷し続けている。三淵嘉子はこの2つの問題の先駆者として改めて再評価されている。
本書は「原爆誕生秘話から「マンハッタン計画」、広島・長崎への人類初の原爆投下、恐るべき放射能による甚大な被害実態、米軍の原爆症の秘密隠ぺい工作など」をスリリングにテンポよく、読みやすく書いている。最終章には「原爆投下は国際法違反(ジェノサイド)である」との画期的な判決全文が掲載されており、国民必見のドキュメントに結実している。
連日のニュースやSNS,Youtubeなどでリアルタイムに報道されているイスラエルのガザ地区へのジェノサイド攻撃(子供、女性中心の死者3万人超)、ロシアのドローン・無人機攻撃でのウクライナ攻撃で、2年間で民間人死者は1万人超(国連調査)などの歴史的な背景を知るための絶好の教科書である。
●オッペンハイマーは原爆被災者に涙の謝罪、孫は核廃絶の連帯を訴えた。
昨年公開されたアメリカ映画「オッペンハイマー」(クリストファー・ノーラン監督)は世界初の原子爆弾を開発した「原爆の父」として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画。アカデミー賞で7部門を受賞し、世界的な話題となった。今年3月、日本で公開された。
オッペンハイマーはこの映画の中での核開発への激しい後悔を見せている。
Wikiによると、1945(昭和20)年10月にトルーマン米大統領と初対面した際、「大統領、私は自分の手が血塗られているように感じます」と語った。トルーマンは憤激、彼を「泣き虫」と罵倒し、生涯面会を許さなかった、という。その後、オッペンハイマーは水爆開発、核兵器開発に反対し、米マッカーシズムの嵐の中で1959年、オッペンハイマー事件が起こり公職追放となった。
オッペンハイマー氏は原爆投下から19年後の1964年に非公式に被爆者と面会し謝罪をしていたことが明らかになり、その証言映像が公開された。
https://www.youtube.com/watch?v=u8zRyX_AiO4
この時、通訳を担当した故・タイヒラー曜子さんは「オッペンハイマー氏は涙ぼうだたる状態で、ごめんなさい、ごめんなさい本当に謝るばかりでした」と語った。
そのロバート・オッペンハイマーの孫にあたるチャールズ・オッペンハイマー氏が6月1日、被爆者の小倉桂子さん(86)に案内され、G7広島サミット記念館を訪れた。小倉さんは長年、被爆者であると言えなかった自分と、オッペンハイマーの孫だとカミングアウトするのが大変だったというチャールズ氏を重ね、「同じように感じた」と話し「通常兵器と核兵器の明確な違いを一般の人が知ることが大切だ」とも語った。
チャールズ・オッペンハイマー氏は6月3日、日本記者クラブで会見し、祖父のオッペンハイマーが原爆投下による惨状を知り水爆開発や核拡散に反対したことを踏まえて、「大国間の緊張が高まり軍備競争が続く今こそ、国際連帯の必要性を訴えた祖父の助言から学び世界平和について考えるべきだ」と訴えた。
さらに日本が果たす役割について「アメリカやロシア、中国といった超大国の間でコミュニケーションがとれず、緊張関係がエスカレートしていくという危険な時代において、国家間の協力を呼びかける最適な立場にいるのが日本だ」と期待を寄せ、兵器ではなく原子力エネルギーをテーマに日本が中心になって各国の対話の機会を作っていくことが必要だと訴えた。

関連記事
-
-
★「コロナパンデミックの外出自粛令で、自宅で閉じこもって退屈している人のために、見るだけで!スカット,さわやか、ストレスクリーンアップ、超元気になるよ!>★<サーファー必見!、レッスン動画/鎌倉稲村ヶ崎ビッグサーフィン/ベストセレクション>➀
前坂俊之YouTube/チャンネルには稲村ヶ崎サーフィン動画が2013年ごろから …
-
-
『オンライン/2022年はどうなるのか講座➂』★CO2とEV世界戦の2022年』★『COP26では石炭火力発電は、当初の「段階的な廃止」から「段階的な削減」と表現を後退させた』★『●EV市場の将来を予測する週刊「エコノミスト」(2021年9月7日付)の「EV世界戦特集号」』
CO2とEV(電気自動車)大競争の2022年になる 前坂俊之( …
-
-
歴史秘話「上野の西郷さんの銅像はこうして作った」「西郷さんと愛犬」の真相ー彫刻家・高村光雲が語る。
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/28 /am1100) 2015/0 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(618)「仏紙襲撃、地元出身のジハード主義者の「報復」[グーグルがERPに参入する衝撃-
日本メルトダウン脱出法(618) ●「仏紙襲撃、地元 …
-
-
『Z世代のための昭和100年、戦後80 年の戦争史講座』★日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起きたか③』★『一国平和主義に閉じこもっていた鎌倉日本に対して世界大帝国『元』から朝貢(属国化)に来なければ武力攻撃して、日本を滅ぼすと恫喝してきた!、国難迫る!』
2019/10/01『リーダーシップの日本近現代史』(68)記事再編集 日本の「 …
-
-
人気リクエスト記事再録 『百歳学入門(186 )』-百歳長寿社会へのお手本『世界ベストの画家・葛飾北斎(90歳)の創造力、晩年学こそ長寿力』★『北斎こそ世界を席巻した「ジャポニズム」「ジャパンアニメ」「ジャパンクール」の元祖である』
2011年1月15日執筆<超高齢社会のモデル> 世界ベストの画家・葛飾北斎―90 …
-
-
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑰『開戦4ゕ月前の『米ニューヨーク・タイムズ』報道ー『ロシアがもし撤退を遅らせるなら,世界の前で破廉恥な背信を断罪される』●『ロシアの日本に対する待遇は協調的とは逆のもので,現実に欲しいものはなんでも取り,外交的にも,絶大な強国のみがとってはばからぬ態度で自らの侵略行為を正当化している』★『ロシアの倣慢な態度は,人類に知られた事実に照らし,正当化されない』
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑰ 1903(明治36)年10 …
-
-
チャイナ/メルトダウン(922)『南シナ海、中国の主張認めず=「九段線」に法的根拠なし-初の司法判断・仲裁裁判所』★『中國が一貫して日本軍国主義の暴走と非難してきた謀略の満州事変と国際連盟の反対を押し切った『満州国建国』と同じ失敗パターン!、習近平の『核心的利益政策』という名の独善的『共産党独裁帝国主義は国際的な孤立を招くだろう。
チャイナ/メルトダウン(922) 中國は日本軍国主義の暴走として批判して き …
-
-
速報(418)『長期沈滞からテイクオフしかけたばかりの<アベノミクス>は外交オウンゴールで失速してはならない!」
速報(418)『日本のメルトダウン』 ●『対外的には未来志向・戦略的 …
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑧』★『米大統領選挙・激戦州でハリス氏僅差でトランプ氏上回る」★『トランプ氏の終身大統領の野望!?』
ブルームバーグ(7月31日)によると、ハリス副大統領が激戦7州の有権者支持率で共 …
