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記事転載/1895(明治28)年1月20日付『ニューヨーク・タイムズ』 ー 『朝鮮の暴動激化―東学党,各地の村で放火,住民殺害,税務官ら焼き殺される。朝鮮王朝が行政改革を行えば日本は反乱鎮圧にあたる見込』(ソウル(朝鮮)12/12)

   

2014年11月4日/「申報」や外紙からみた「日中韓150年戦争史」

日中韓のパーセプションギャップの研究』(72)

 

以下の記事を読むと、120年前から、現在までも引き続いて『韓国、北朝鮮』とうまく付き合っていくことがいかに難かしいかがわかる。このところの、韓国、北朝鮮の同民族同士の融和、話し合いも決裂、対立は延々と続いているが、日本側の日清戦争の原因となった『韓国の政治体制改革』への介入の失敗と御しがたい韓国の民族性を『ニューヨークタイムズ』は指摘している。  

1895(明治28)年120 『ニューヨーク・タイムズ』 

『朝鮮の暴動激化―東学党,各地の村で放火,住民殺害,税務官ら焼き殺される。朝鮮王朝が行政改革を行えば日本は反乱鎮圧にあたる見込』(ソウル(朝鮮)12/12)

 

平壌の戦いが朝鮮に対する中国の宗主権に致命的打撃を加えて以来3か月になる。日本が推し進めてきた朝鮮の改革は一般に知らされた限りでは,朝鮮人の信頼ではなく.朝鮮の繁栄に関心を持つ部外者の信頼をかき立てたことは間違いない。日本が援助しようとしている朝鮮国民は頑固で恩知らずの生徒であることがわかった。

 

 政府の役人の間には提示された改革を支持しようとする動きがわずかにあるものの,朝鮮の一般大衆はこれらの改革を不信と批判の目で見ている。一部の役人が1っの方向へ進もうと努力しているのに対し.民衆は力の限り別の方向へ引っ張っているのだ。

 

不安定要素となっているのは地方の反乱分子で.彼らは時勢に逆らって服従を拒んでいる。彼らの存在により.朝鮮は安定とはほど遠い状況が続いてきた。現在大規模な戦争が行われており,中国と日本は共に朝鮮半島で軍事力を誇示している。

 

優勢な日本は朝鮮の現王朝と同盟を結んでおり、反乱が失敗すれば悲惨な結果になるだろう。こうした状況があるにもかかわらず東学党は依然として反政府的行動をとり続けている。

 

 朝鮮の南部地域は王国でも最も豊かな3つの地方から成り,合わせて500万人余りの住民を抱えているが.この南部一帯は現在,反乱分子に制圧されている。日本軍は大規模の討伐隊を何度か送り込んだ。その際戦闘で数百人の朝鮮人が死亡したと伝えられるが.反乱分子が火をつけた運動は各地へ広がりつつある。

 

 何か不可解な理由から彼らは威嚇的態度を変えようとせず,是が非でも国民全体を自分たちの列に加わらせようと全力を尽くしている。

今ほど朝鮮が平穏であるべきときはない。中国の支配という抑圧から解放され東洋で最も進歩的な国が内政改革を援助しょうと手を差し伸べている今こそ朝鮮は官民共にこの好機を逃さず両者団結して進歩を推し進め,反動分子が旧態に揺り戻そうとしても不可能なところまで行くべきなのだ。朝鮮の実状はその正反対だ。

 

 「東学」はもともと政治的宗教結社の名だったが.今では現王朝とその支持者に対する広範な反乱を表す名称となった。犯罪者や無法者がこれを大義名分に乱暴を働いたり,各層の不満分子がこの名の下に吐け口を求めたりしている。

 

 東学党発祥の地である朝鮮南部は暴動の温床だ。朝鮮人に関する限り,暴徒が一帯を支配している。彼らは武装して集団で動き回って政府の役人を追い払い,捕らえた役人で失政の疑いのある者は皆処刑する。

 初めのうち東学覚は穏健な路線をとり、住民はもちろんのこと,横柄な役人に対してさえ暴力をふるうことは控えていた。だが,すぐに変化が訪れた。行く先々で暴行と略奪が多く見られるようになり主張を異にする各派と抗争をくり返している。

 つい2,3日前に本紙に届いた情報では,彼らは南部の3つの町それぞれ300戸,600戸,700戸の町を破壊したという。これらはすべて灰じんに帰した。

 金持は強制的に彼らに資金援助させられている。東学覚は,平党員が必要になればどこからでも力ずくで連れてくる。その結果,ソウル周辺は難民の群でふくれあがっている南部のカトリック教徒たちは早くから東学覚の攻撃目標とされ,残虐非道な扱いを受けた。女は斬殺され,老人も無慈悲に殺された。カトリック教徒たちは北へ逃げた。

 難民は大多数が裕福な人々で,自衛のため家をたたみ.逃亡して身の安全を図ることを余儀なくされたのだ。

 南部がこうした混乱状態にあるため国内の交通はほとんど麻痺し,通信は非常に不安定だ。逃げ延びてきた朝鮮人たちは口々に,人々が捕らえられたとか,旅行者が金品を取られたとか,道は事実上反乱分子とそのシンパ以外には封鎖されているとかいった話を伝えている。

 日本は討伐のため教部隊を派遣し.武装した反乱団が向かってきたところでは簡単にこれを打ち負かし,追い散らした。だが大きな問題はこうした武装集団を見つけ出すのが不可能に近いことで,彼らは討伐軍が来る前にそれぞれの故郷へ逃げ帰って味方にかくまわれてしまうのだ。

 朝鮮国内の革命軍に戦争を仕掛けるはめに追い込まれるのは.日本としてはなんとしても避けたいところだ。その反乱になんらかの正当性があって,民衆の支持をいくらかでも得るとすればなおさらだ。

しかし朝鮮政府には反乱を鎮圧するだけの軍事力がなく.東学党の戦術は日本が民衆に対して軍隊を導入せざるを得ない体のものなの

だ。

 これにより,朝鮮の国家としての成長に不可欠な改革を民衆に受け入れさせる上で日本が必要とする.民衆の好意が育っのが遅れることは言うまでもない。

 南部で始まった反乱は今や北都にまで広がってきた。首都圏のすぐ北にある黄海で大規模な蜂起があった。南の東学党の密使が,かつての体制の失政で久しく反乱の気運があった黄海道の住民のところに現れたのだ。

 地域的な暴動が何件か起こり,首尾よく地方政権を倒して代わりに東学党のリーダーを立てた。その後暴徒は道の首府である海州に押し寄せて長官をその地位から追い,駐屯軍司令官の大佐を撲殺し,気にくわない税務官を数人焼き殺した。彼らは自分たちの道政権を樹立したが,この記事を書いている現在,これはまだ倒されていな

い。

 この東学党の狂気にはそれなりの筋道があるようだ。計画の首謀者が朝鮮の農民でないことは確かで.驚くほどの成果をあげている。彼らは明らかに行政の不正を正す以上のことに着手したのだ。

 

すでに彼らの中から1人の人物が現れて王の称号を自ら名のっていると言われる。

 記者が話を聞いた難民の語るところでは.彼らは東学党の密使の前に引き出されたそうで,その密使は最高位にある者のごとく振る舞い.公印を所持し.王の委任のしるしである「ピョンプ」という竹の護符まで持っていたという。

 

東学党は計画に沿って次々と地域を占領し,そこに地方政権や道政権を打ち立てていく。今後の問題としては彼らが現政府の廃止を宣言し.好戦的な権利を要求して,この局地的反乱を重大な国家的反乱とするかどうかということだけだ。

 この反乱に関して2つの疑問が浮かび上がってくる。彼らは成功するか!成功したらその結果どうなるか?最初の疑問に対する答は日本にある。

 

今のところ彼らを鎮圧できる国は日本だけだからだ。しかし東学党に対する日本の態度はなんといっても朝鮮政府次第だ。現政権が,反乱のおきる原因となった悪弊の改革に真剣に取り組み,進歩的政策を本気で行う努力をすれば,反乱は鎮圧されるだろう。

 

 しかし,事あるごとに陰で反対したり敵対したりしながら.見事なまでになにもしないというあの伝統ある政策を引き続き行うなら,日本は軍隊を引き揚げ,東学党が権力を握るままに放置するかもしれない。

 

実際.井上伯爵はすでに.所定の方針に従わない場合はその罰としてこの措置をとると通告せざるを得なかったということが公然と伝えられている。

 日本は,過去10年間朝鮮を支配してきた政治より平和的で高潔で安定した政治を導入すると誓約したが,これまでのところ朝鮮の役人の二枚舌に悩まされている。親日派の要人は暗殺されたり,暗殺の脅迫を受けたりしており,日本が激怒して強硬策をとると脅したのも不思議ではない。

 東学党が成功した場合その結果はどうなるか?彼ら自身だけに任されれば,一時的には行政上の不正はなくなるとしても,おそらく2,3年すれば無政府状態となり,内乱が勃発するだろう。

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