日本リーダーパワー史(794)ー 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス』⑪『ロシアのクロパトキン陸相が敵前視察に来日した影響』●『 恐露病とクロパトキン来日疑惑が日本側に疑心暗鬼を生んで露探事件が起きた』
日本リーダーパワー史(794)ー
「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、
インテリジェンス』⑪『ロシアのクロパトキン陸相が敵前視察に来日した影響』
桂太郎首相はクロパトキン陸相とは2度会談したが、クロパトキンはシベリア鉄道についてこう説明した。
「ロシャがシベリア鉄道を建設した当初の目的はシべリア開発であった。ところが中途から東清鉄道支線、ハルピンー旅順)を設けることになり、これには自分は反対したが、ロシャ皇帝の勅裁があった現在では致し方がないと思っている。
シべリヤ鉄道の建設費は予定以上にかかり、現在その額は、約十三億ルーブルの巨額に達し、利子の支払いだけでも莫大なため、まことに困り抜いている。日露両国関係の問題解決に際し、このシべリア鉄道建設問題だけは除外して何分にも大目に見てもらいたい」
また、クロバトキン陸相は寺内陸相の会談では「吾が輩は軍人である。従ってもしも日本から挑戦されたならば、直ちに三百万人のロシア常備軍を率いて日本の本土に進攻し、東京を手に入れてみせる。しかし私個人としての見解は、あくまで日本との開戦を望むものではない」と豪語していた。
突然、帰国を延期して、日本を疑心暗鬼にさせた
ところでクロパトキン大将一行は6月16日に離京して、旅順へ向う予定を急に変更してきた。ロシア皇帝からの親展電報により、急に在日期間を延期したいと申し込んできて、その理由については説明できないというので、日本側は疑心暗鬼ながら了解せざるを得なかった。
次の連絡では予定通り六月十六日に出発して、関西方面に向かうことがわかったが、須磨・明石の観光地で数日間休養するという以外は内容は不明で、日本側はますますその意図、その目的に疑惑を募らせた。
結局、あとになってわかったが、約10日間も瀬戸内海で釣りなどをして過ごし、6月28日に長崎を出発、6月30日に旅順に着いていたことが判明した。
クロパトキンの敵前視察旅行は日本を恐怖に陥れ、その際後のスケジュールの延期と滞在理由の不明は日本側に一層不信と不安を煽り、ロシアへの敵意を増幅させる結果となった。
日本側の『恐露病』この疑心暗鬼が「露探」事件を生んだ
「露探」とはロシアのために働くスパイ、密偵のことをさしており、日露戦争当時に騒がれた言葉である。伊藤博文、山県有朋2元老だけでなく、広く国民の植え付『恐露病』「恐露しや(恐ろしや)なども流行語となったが、「露探事件」もこの流れの中で発生した。『露探』のレッテルを貼り付けられた人間は証拠のないまま敵視され冤罪のケースも多かった。
「露探事件」により引責辞任した海軍大佐・竹内平太郎
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E5%86%85%E5%B9%B3%E5%A4%AA%E9%83%8E
政府攻撃や三井財閥を攻撃していた労働者の味方の新聞「二六新報」の秋山定輔社長(衆議院議員)がクロポトキンと明石で密会したとでっち上げられて議員辞職に追い込まれた事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%8B%E5%B1%B1%E5%AE%9A%E8%BC%94
忘れられた巨人・秋山定輔は何者かー新聞経営、孫文を全面支援し政治家に露探汚名を着て政界の黒幕になる波瀾万丈の人生http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/1753.html
も、クロパトキンの来日疑惑から生まれた事件であった。
クロパトキンは明治37年4月の奉天会戦後に、この時の視察、研究、奉天会戦での戦闘を経験した報告
レポート「日本陸軍秘密研究書」なるものを刊行している。
http://www.mytown-nagoya.com/booklist/shosai/oyama/kuropatokin.html
それによると、日本軍の実力、長所、欠点などを次のように分析している。
(1) 西欧的に改造して間もないのに、軍隊的精神において優れたものがあり、それが日清戦争で発揮された、
(2) 特に将軍に有能な人物として大山元帥、野津道貫将軍を挙げている。
(3) 日本、日本兵については「騎兵の動作は取るに足らない」「一度立てた目的は成し遂げるまでやめない」「電信、偵察に技能を有する」「陣地を迅速に築く」
また、短所については。
④西欧的機関が表面的にしか理解されていなくて、内面化するまでに至っていない。
⑤無能な老将校が存在する。
⑥物資の搬送は人力が中心であり、補給に著しい弱点がある。
⑦日本軍には忍耐力が欠けている。例えば野津将軍の部隊は4カ月間に戦死者900人、負傷者1500人を出し、患者は1万8000人にも達した。
⑧朝食を取らないと能力が発揮できない。
➈部隊長は一つの決定をするまでに熟考・熟慮するので、急激な変化に対応できない。
➉初戦に勝つと元気が出る傾向にある。
⑪、日本軍に対して最も効力があるのは夜襲である。夜襲を行うには成るべく少数づつ兵を動かし、陰に大部隊を集め強襲して敵の陣地を奪うのである。時期は即ち払暁に近く、朝霧を利用するのは最もよい、など・。
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