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名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集⑫『勝負師に年齢はない』(大山康晴)『愛嬌は処世上の必要条件』(大倉喜八郎)

   

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言
・千言集⑫           前坂 俊之選
 
 

●人を育てるには評価し、登用、フォローすること
 
  稲盛 和夫(京セラ会長)     『心を高める、経営を伸ばす』
 
 人を育てるとは、厳しく教えながら、自信をつけさせていく。つまり、場を踏ませると
いうことです。
 しかし、部下を登用するには、人物評価ができなければなりません。この人は役割を果
たすのに、十分な資質を持っているかどうかという、評価を下さなければならない。
 人間性と能力の両面からの評価が必要となってきますが、私の場合は、人間性の評価を
優先しています。それは、人格が仕事に大きな影響を及ぼすからです。
 
 私は決して、任せっ放しにはしません。人は必ず長所、短所があるため、足りない、欠
落しているところを絶えず観察して、フォローしていきます。自ら補強するか、別の人間
を補助に置くことによって補うのです。もちろん、欠落している部分を本人に指摘し、鍛
え上げることを、忘れてはなりません。
 
 
●勝負師に年齢はない
 
大山 康晴(将棋名人) 『勝負強さの人間学』PHP研究所・1983年
 
  昭和五十八年(一九八三)に私は満六十歳を迎えた。家の近くに文化勲章を受賞され
た作家の井伏鱒二先生が住んでいらっしゃる。八十四歳(一九八三年当時)で、なお第一
線で活躍している。井伏先生は還暦祝いはむろんのこと、古稀のお祝いも何もなさらなか
った。
 
 第一線で活躍する人はどなたも「疲れた」とか「年のせいですわ」という弱音を吐かな
い。ときたまそういう言葉をもらす人に接すると、私は「年のことをいうのはやめましょ
う」と話をそらせることにしている。
 
 確かに、年とともに体力も思考力も衰えてくる。これは自然現象であって致し方ないが
、気力だけは気持ちの持ちようで、いかようにも操作することができる。現役で戦ってい
る限り、年齢を意識してはいけない。「年だな」と弱気になれば、その瞬間から本当に年
寄りになってしまう。対局して負けても、年のせいでなく、「弱かった」と素直に認める
ことが、若さを保ち、活力を産む原動力となる。
 
 
 
 ●一生は一日の蓄積である
 
  川上 哲治(巨人監督)
 
 言うまでもないことで、当然すぎ、人はこの原則を忘れ果てている。一日一日の積み重
ねが、水のしずく一滴一滴がいつの間にか岩石に大きな穴あける事実を自分の成功、不成
功とは結びつけない。
 
 たった一日サボっても、練習を怠っても、目に見えての差はつきはしない。しかし、そ
の一日をムダにせず努力していたものとはかすかな差となる。そして、二日、三日、何十
日と蓄積するとこの差は努力するものと、しないものとの決定的な差となる。
 
 川上はいつも「時間が体力を作る」と教えてきた。日々の努力、休まず続けるものと、
そうでないものとの差は結局、十年レギュラーとなって活躍するか、三年で選手生活を終
わるかになってしまう。時間を自らキチンと管理しているので、成績がよく、そのような
連中は目標がはっきりしており、このため時間管理がうまいのである。

 

  
  ◎学歴は問わないが、学問は尊重する
 
  嶋田 卓彌(蛇の目ミシン工業社長) 『体で覚える経営』
 
 嶋田は小学六年のときに、父の死去により家運が傾き、小学校の卒業を待たずに大阪船
場の呉服問屋へ丁稚奉公に出された。
 彼は正規の学歴はなかったが、このため一生涯勉強してやろうと志し、五十歳になって
も七十歳になっても時間を見つけては必死になって勉強や研究を続けた。
 
 嶋田は「無一物中無尽蔵」という言葉が気に入っているが、何もないことはいくらでも
あることであり、学歴や学問がないことは一生涯、学び続けるという意味である。
 「学とは学(まね)ぶ、学(まな)ぶことであり、問は“知らざるを問いて正す”“教
えを乞う”ことだと思う。これは一生続けても十分とはいえない。学歴のないことを恥じ
る必要はないし、就職してこれで一安心ではない」と。
 
 また、この学ぶためには「謙虚であれ」という。五十、六十歳になっても、謙虚で素直
であれば、学ぶことはいくらでもある。「謙虚」こそが“知識吸収の門戸”である、と。
 
 
 
◎ 効率が悪いことをていねいに
 
  小田 禎彦(加賀屋社長) 
 
『社長の転機・会社の転機』 佐高信経営書院・1992年3月刊
 
 
 加賀屋は一九〇六年(明治三十九年)創業の石川・能登にある旅館で、小田が社長に就
任以来十一年間、ホテルの専門家が選ぶランキングナンバーワンに選ばれている。
 その秘訣は何か。彼は畳の上での宴会に尽きると、次のように話している。
 
 「テーブルで料理をセットするのと、畳で中腰になってお膳でセットするのとでは、効
率からいうと比較にならない。畳の宴会はホテルではできない特徴だが、それは効率が悪
い。でも、その無駄とか効率の悪さ、面倒臭さというものを、ていねいにもういっぺんや
っていくことが大資本にはできない、中小企業が生き残る条件ではないか」
 
 そして、こうした無駄や非効率さが、逆にお客の側に特徴があると認められた大きな要
因であると言う。
 
 
★愛嬌は処世上の必要条件
 
  大倉 喜八郎(大倉グループ創業者)
『致富の鍵』大和出版・1992年6月刊
 
 
 昔から英雄豪傑とうたわれた人は、もちろん勇気や胆力のあることは分かりきった話で
あるが、みな奥床しい愛嬌を持っていたことは隠れもない事実である。
 
 武将とか政治家でさえ愛嬌を持っているいる方が偉人といわれるのだから、実業家など
はなおさら愛嬌が必要ではないか。実業界に立つ人のみでなく、いやしくも社交的動物と
して社会で人並み以上に活躍せんとするものは同じである。
 
 心の内から自然とわいてくるところの情愛がこもっておらねばダメである。人を使うに
も、また使われるにしても、人情の至誠によりあくまでも博愛、慈善の心根がなくてはい
けない。その博愛というものが、自然と人に対して愛嬌となり、人を喜ばせ、自分自身も
何となく心うれしく感じられるものである。
 
 愛嬌たっぷりで、いつもニコニコしていればよいが、時と場合によって威厳もなければ
ならないが、それは非常な場合で、百のうちわずかに一、二しかないものだ。
 
 
★断り方を学べ
 
  鈴木 馬左也(住友家総理事)
 
         『炎の男たち・住友変革の発想』旺文社・1985年刊
 
 宮崎を一大観光地に仕立て上げた宮崎交通相談役・岩切章太郎は一時、住友にいたこと
があった。
 岩切が東京・弁天町にあった鈴木の家を訪ねると、鈴木が・・・
 「今、僕が何の修行をしていると思うかね」と尋ねた。
 
 岩切はよくわからず「禅の修行ですか」というと、鈴木は笑いながら答えた。
 
 「そうじゃない。今、僕が一生懸命に努力し、修行しているのは断り方である。総理事
をしているといろいろ注文がくる。一つひとつ引き受けていては住友が立ってゆかぬ。し
かし、断ると怒られる。全く断り方の難しさをしみじみと感じる。
 
怒らせぬように断ることは全く難しいので、今一生懸命、断り方の修行をしているのだ
。君たちもそのうちに思い当たるようになるよ」
 
 
◎同族会社は独裁ができる。独裁で即断即決せよ
 
  上原 正吉(大正製薬創業者)
 
『商売は戦い』ダイヤモンド社・1964年刊
 
 同族会社は比近代的的な会社と頭から決めつけられるケースが多い。確かに欠点も多い
が、同族会社のワンマン、独裁型の経営者の場合、その独裁ができるというのが逆に長所
なのだ。
 
 商売は戦争であり、政治ではない。戦争に勝つためには、独裁して即断、即決、速攻が
なくてはならない。信長が民主主義を重んじ、「桶挟間を攻めようと思うがどうだろうか
」と会議にはかったら、だれも賛成しないであろう。信長も独裁して成功したのだ。
 
 同族会社の最大の欠点は無能力者が指揮権を握ることだと思う。同族会社でなくても、
無能力者が指揮をとる場合もあるが、やはり“血は水より濃い”というたとえがあるよう
に、同族会社の方が多い。これが一番の欠点だ。
 
 世間では、独裁主義をけなしてばかりいるが、成功した事業はみな独裁である。
 商売に民主主義は通用しない。即断、即決、速攻のための独裁は商売に勝つには欠かせ
ない
 

☆小言は一切言わぬ
 
  小倉 正恆(住友家第六代総理事)
 『炎の男たち・住友変革の発想』旺文社1985年刊
 
 小倉は昭和五年(一九三〇)、湯川寛吉の後を継ぎ、総理事となった。戦争に転がり落
ちていく不況の時代に、住友の近代化に尽力した。“寛容の人”“春風の如し”と評され
、一切小言を言わぬ、その人格から部下の信望が厚かった。
 
 小倉が銀行の神戸支店長だった頃、出納係長がニセの小切手をつかまされ、五万円だま
し取られたことがあった。印鑑との突き合わせを怠ったためだが、当時の五万円は今の何
千万もする金額である。
 
 係長は首を覚悟で小倉に報告したが、小倉は「印鑑を持って来たまえ」と言って、小切
手と印鑑を比べた。
 「なるほど、なかなかうまく偽造しているな。これじゃ誰でもだまされるよ」と言った
きり、一切とがめなかった。
 この時、小倉はまだ三十歳そこそこであった。
 
        
 
 ◎●☆何 糞
 
  桂 泰三(シャープ副社長)
 
 これはシャープの創業者・早川徳次に、桂が大阪の自宅を訪ねた時、色紙に書いてもら
ったもの。桂は面白いと感じると同時に、早川が「何糞、負けるものか、との気概で困難
を乗り越えたんだと実感した」
 
 そして桂は「仕事でも人生でもつらいことはよくある。そんな時にこの言葉を思い出し
て奮起するんです」と話している。
 
 第二次石油ショックの時、家電業界では一時帰休や賞与の現物支給を実施したところが
あった。その時桂は「だれも助けてくれないから、何糞と心の中で言い続けた」と、この
色紙を支えにがんばり、シャープでは一時帰休や現物支給を行わなかった。
 
 最近は急激な円高によって、国内企業が悲鳴をあげている。家電も例外ではない。
 「海外に生産拠点をシフトすれば生き残れるが、国内の従業員の仕事がなくなってしま
う。従来の発想では経営ができない時代に入った」と改めて「何糞」と思い始めている。
 
        

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