池田龍夫のマスコミ時評(21)「善良な市民感覚」と言い切れるかー検察審査会の「小沢氏起訴相当」議決
昨年三月三日の大久保秘書逮捕が、「小沢氏の政治とカネ騒動」の端緒だった。衆院選挙(09・8・30)前の時期だけに世論は沸騰し、当時民主党代表だった小沢氏は、鳩山由紀夫氏への交代を余儀なくされた。当初から、東京地検特捜部の強引とも思える捜査を批判する声もあり、十一カ月後の結論は「不起訴」だった。このため、「特捜検察の詰めの甘さ」を指摘する声もあがったが、世間一般にはメディアを含め「小沢氏の金銭疑惑」がいぜん根強く残っている。
公表された「議決書」によると、「『政治資金収支報告書に真実を記載していると信じ、提出前に確認しなかった』との供述を、きわめて不合理・不自然で信用できない。市民目線からは許し難い」と指摘、さらに「絶対権力者である小沢氏に無断で石川氏らが隠ぺい工作をする必要もない」と断定的に論難していた点に驚かされた。「小沢憎し…小沢潰し」の思い込みが垣間見える文体だ。しかも、市民から選ばれた十一人「全員一致の議決」と知って、二度びっくり仰天。
今回、検察審が問題にした被疑事実とは、「陸山会が平成十六年に土地を取得し、代金として三億四二六〇万円を支出しているのに、そのことが同年の政治資金収支報告書に記載されておらず、翌十七年の報告書に書いてあった」という点。土地の取得代金の支払いを隠したわけではなく、記載時期がずれていたことに過ぎないが、小沢氏が秘書と共謀して虚偽記載させた〝共犯者〟と決め付けている。
産経は「やはり議員辞職すべきだ」と手厳しい。「司法改革の一環で、裁判員制度の導入とともに検察審査会法が改正され、二度の『起訴相当』議決で強制起訴を可能にするなど民意を反映するために権限が強化された。…小沢氏の説明を『きわめて不合理・不自然で信用できない』と退け、『絶対権力者である小沢氏に(秘書らが)無断で資金の流れを隠ぺい工作などする必要も理由もない』との疑問を呈した」と検察審議決をなぞったような論調だ。
審査員の任期は半年で、三カ月ごとに約半数が交代する。このため、最初に起訴相当と議決したときと同じ十一人で二度目の審査をするケース、最初の議決に関与したメンバーと初めての人が混在するケース、全員が入れ替わるケースの三つがある。審査員の間で情報量や心証形成のプロセスが異なる『混在型』には違和感があるし、健全な民意の反映をうたうのであれば『全員交代型』がふさわしいように思う。
ほかにも、検察官にかわって起訴と裁判を担当する弁護士の権限のあり方や、強制起訴した事件が無罪になり国家賠償を求められたときの責任をどう考えるかなど論点は少なくない」との指摘は傾聴に値する。さらに付け加えると、密室審議の検察審における審査補助員と称する弁護士の姿勢が気になる。法律に疎い市民審査員にどう説明したか、「民意の正当性」がどう担保されているかも問い正したい。
小沢氏らを先に告発した市民団体は、「世論を正す会」「真実を求める会」と言われているが、正式名称なのか疑問視する向きもあって、正体不明なのが恐ろしい。この匿名集団が健全な「市民団体」といえるか、政治的意図を持った組織のような不穏さが気懸かりである。公安当局が調査・警戒しているに違いないが、メディアは「ナゾの集団」を洗い出し、的確な情報を市民に提供してもらいたい。
こんなことをやっていたら、検察はおしまいじゃないかと心配している。世の中全体としては、いろいろな選択肢はあり得ると思う。でも、日本が今までやってきたように、検察が刑事司法に責任を持つ方向でまだまだ努力しようと、私は言いたいのです」という郷原信郎・名城大学コンプライアンスセンター長(元検事)の警鐘(同センター4・28定例記者会見)を重く受け止めたい。「市民目線」を尊重する政治改革を志向することは結構だが、無原則なポピュリズムに流されないよう警戒すべきである。
関連記事
-
-
最高に面白い人物史①人気記事再録★「日本の歴史上の人物で、最大の世界的な天才とは一体誰でしょうか>→ <答・南方熊楠こそグローバル・スーパーマンです>
2015/04/29 発表 「世 …
-
-
「2023年正月には子供を連れて逗子マリーナへ遊びに行こう」★「逗子マリーナのヤシの木公園まるでハワイのリゾートを思わせる.湘南随一のリゾート』★『逗子マリーナから見た太陽とクルーザーと富士山とオーシャンビューは最高!(2022年12月26日』
逗子マリーナから見た富士山ビューティフル(2022年12月26日)
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(50)『〝右旋回〟の時代状況を反映する2法案』―「自民・改憲案」と「秘密保全法案」
池田龍夫のマスコミ時評(50) ●『〝右旋回〟の時代状況を反映す …
-
-
『リーダーシップの世界日本近現代史』(294)★『 地球温暖化で、トランプ対グレタの世紀の一戦』★『たった1人で敢然と戦う17歳のグレタさんの勇敢な姿に地球環境防衛軍を率いて戦うジャンヌダルクの姿がダブって見えた』★『21世紀のデジタルITネイティブ」との世紀の一戦』★『2020年がその地球温暖化の分岐点になる』
地球温暖化で、トランプ対クレタの戦い』 …
-
-
★『オンライン60歳,70歳講座/長寿逆転突破力を発揮し老益人になる方法★『日比谷公園、明治神宮など造った公園の父>本多静六(85)の70,80歳になっても元気で創造する秘訣―『加齢創造学』10か条
2012/05/12 百歳学入門(38)記事転載 『加 …
-
-
「日本スタートアップ・ユニコーン史」★『アメリカ流の経営学を翻訳・マネする前に、明治のスタートアップ起業者魂に学ぼう』★『グリコの創業者 江崎利一(97歳)『 「私の座右銘は、事業奉仕即幸福!。事業を道楽化し、死ぬまで働き続け、学び続け、息が切れたら事業の墓場に眠る」』
2012/03/12 /百歳学入門(35)記事再録再編集 長寿経営者 …
-
-
速報「日本のメルトダウン」(500) Googleが世界を制する日「Google Glass発売は約1年後」シュミット会長がラジオ発言
速報「日本のメルトダウン」(500) Googleが世界 …
-
-
<F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(204)>★『2017年,7年ぶりに、懐かしのアメリカを再訪,ニューヨークめぐり(5月GW②』★『コニーアイランドとNathansのホットドッグやシーフード、ブルックリンとイーストリバー、9.11 跡地、Staten島往復‥
2017/05/12 記事再録・再編集 『ブルックリンからイースト …
-
-
★『百歳学入門』(165)『中曽根康弘元首相は来年(2018年)5月で100歳を迎え、歴代宰相の中では最長寿となる。★『中曽根流の百歳長寿10ヵ条とは』『未来は考えないね。今を充実させていくことで精いっぱいだ。未来は神様が与えてくれるものだ』』★『 いつまで生きるということが、人生だとは思っていない。「人生、みんな途中下車するけど、 俺は途中下車しない』★『(長寿の秘訣に対して)キミ、それは使命感だよ』
2016/11/02   …
-
-
『Bathing in KAMAKURA SEA』<2011/3/11/福島原発事故4ヵ月後、『梅雨明けて夏本番、海よ!鎌倉材木座海岸のシーズン開幕-逗子市小坪沖でサバが大漁だった』★『15年後の鎌倉海は海水温の上昇で和賀江島、逗子マリーナ沖の海藻がほぼ全滅、磯焼けで根魚が激減している』
2011/07/10/「3・11福島原発事故より4ヵ月」記事再録、 …
