池田龍夫のマスコミ時評(72)『大惨事招いた笹子トンネルのズサン管理』(12・5)『改憲狙う安倍自民、石原維新の会に要注意(12・3)
池田龍夫のマスコミ時評(72)
●『大惨事招いた笹子トンネルのズサンな管理』(12・5)
●『改憲狙う安倍自民、石原維新の会に要注意(12・3)
池田龍夫(ジャーナリスト)
大惨事招いた笹子トンネルのズサンな管理
中央自動車道の笹子トンネル(山梨県大月市)で12月2日起きた天井板崩落事故は、死者9人を出す大惨事となった。横6㍍の天井板が突然崩れ、連動して132㍍にもわたって天井板が崩落。通行中の車を押し潰して火災が発生、煙も充満して救急作業は難航した。
笹子トンネルが開通したのは1977年。コンクリート製の天井板を金具で吊って高さ約5・3㍍のトンネル最上部に固定していたボルトが抜け落ちて、崩落につながったことが確認された。崩落したコンクリート板は約330枚・360㌧の物凄さだ。
肝心のボルト接合部については双眼鏡による目視検査だけで、打音検査は開通以来35年間一度も行っていない。しかもボルトを交換したこともなかったというメンテナンスのいい加減さに驚かされた。
他の高速道路会社、航空会社やjR各社などは、ハンマーを使って主要部分の打音検査励行しているというから、中日本高速道路会社の無責任さは厳しく追及しなければならない。
国土交通省は12月3日、吊り天井のある全国のトンネル37カ所・49本の緊急点検を命じたが、作るだけでなく維持管理の重要性を肝に銘じてほしい。
改憲狙う安倍自民党、石原維新の会に要注意
衆院選は12月4日公示され、16日投開票が行われる。第3極、第4極を目指して新党が続々誕生、異例の12党乱立の選挙になった。
政争に明け暮れ、政策が実行されない政治状況を反映したものだけに、今回の選挙は「日本政治の転換点」とも言える重大な意味を持つ。11党首(新党日本・田中康夫代表は不参加)による討論会が11月30日、日本記者クラブで開催された。原発政策の在り方や改憲問題、金融政策、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加をめぐって論争が2時間半繰り広げられた。
「原発ゼロ」政策を掲げたのは、民主など8党
この中でも、脱原発と改憲問題が最も重要争点と考える筆者は、主だった各党の主張を簡単に紹介して、分析を試みたい。野田佳彦首相は「2030年代に原発ゼロを目指し、あらゆる政策資源を投入する」と強調。日本未来の党・嘉田由紀子代表も「大地を汚し、故郷を奪う原発から卒業する。
10年後までの卒業を目指す」と、さらに踏み込んだ考えを表明した。これに対し、安倍晋三・自民党総裁は、安全神話に寄りかかってきた過去の政策を反省しつつも、「今の段階で原発を止めてしまえば、日本には原子力関係の技術者は育たない」などと苦しい答弁。「30年までにフェードアウト(消えていく)と記した政権公約について詰問された日本維新の会・石原慎太郎代表は、公約を取り消させる」と答えざるを得なかった(松井一郎・同会幹事長は直ちに『党としての決定だ』と反論)。
東京新聞11月21日付朝刊が党首討論前の講演会で、石原氏が「核を保有しない国の発言力は弱い。核兵器に関するシミュレーションやった方がいい。一つの抑止力になる」と発言したと報じていたが、こんなことを堂々と言える時代状況になったことが恐ろしい。
また「首相候補は誰ですか」と問われた石原氏は、「平沼赳夫・元立ち上がれ日本代表だ」と答えるなど、維新の会内部のチグハグぶりを露呈してしまった。
結局、12党(新党日本を含む)のうち、民主党・共産党・社民党・日本未来の党など8党が「原発ゼロ」政策について手法・工程などに差があるものの、目指す方向は一致していると受け取っていい。
何故かトーンダウンした安倍、石原氏の改憲論
一方、憲法改正問題についての論議が低調だったと思う。安倍氏は自民党総裁に復帰してから、にわかに改憲についての発言が目立っていた。
「自衛隊を国防軍に、現行憲法9条2項を削除。集団的自衛権を行使できるように解釈を改めたい」と力説していたが、党首討論ではかなりトーダウンして、改憲は96条の改憲手続き(3分の2賛成を2分の1に)の改定から始めたい」と答えていた。
世論の動向を気にしているに違いない。右傾化する現状を危惧する共産党・社民党党首が厳しく指弾したのは当然と思うが、他党の反応は冷ややかだったのは遺憾だ。特に「平和憲法廃棄」を声高に喧伝していた石原氏が持論を表明しなかったのは、総反撃をかわす狙いがあったと勘ぐれる。メディア各社にも問題意識が欠如していたためか、報道量が不足していたと思う。
嘉田新党と小沢一郎氏へのバッシング
嘉田滋賀県知事が「日本未来の党」を結党したのは、11月27日。結党宣言してから4日目の党首討論に臨んだ。朝日新聞12月1日朝刊は「国民の生活が第一から合流した小沢一郎氏についての質問に対する防戦に追われた」と冷ややかに報じていたが、私の印象は逆だった。
デビュー戦としては評価できる答弁ぶりだったと思った。滋賀県知事6年の自負を感じた。「原発以外は、小沢氏の受け売り」との批判もあるようだが、討論会直前まで政策調整を続けた努力を無視しては気の毒だ。
11月30日付「ウオッチ」欄で,政井孝道氏が「嘉田新党に関し、どの社説も小沢氏への説明なき嫌悪感だ。数ある彼の言動の中で何をもって今回もダメという書き方は、論理を大事にする社説にふさわしくない」と指摘していたが、同感である。「小沢氏依存では」との問いに、嘉田氏は「小沢さんの力を使わせていただく。
小沢さんを使いこなせずに、官僚を使いこなせない」と言い放った心意気に感心した。真面目に政治改革を願って登場した新人を中傷するような言動こそ好ましくない。党首討論の最後に、「自党と近い政党を3つ」挙げてもらったところ、興味深い組み合わせなので列挙しておきたい。
野田佳彦(民主党)①国民新党②?③? 安倍晋三(自民党)①公明党②③なし
嘉田由紀子(未来の党)日本の未来をつくるすべての改革勢力と協働したい
山口那津男(公明党)①自民党②③なし 石原慎太郎(維新の党)①みんなの党②自民党
志位和夫(共産党)①社民党②③一点共闘はどの党とでも
福島瑞穂(社民党)①未来の党②共産党 渡辺喜美(みんなの党)①維新の党②改革③?
鈴木宗男(新党大地)①未来の党②改革 自見庄三郎(国民新党)①民主②自民③社民
舛添要一(新党改革)①みんなの党②維新の党③自民党
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
関連記事
-
-
★『コロナ不況を突破するためにロボットをどう活用するかを考える巣ごもり勉強動画一挙公開(100本)』★『日本の最先端技術「見える化」動画に協働ロボット、組み立てロボット、タコ焼きロボットなど各種ロボット動画が100本以上、公開している』
日本最先端技術『見える化』チャンネル ー Youtube公式サイトで「前坂俊之× …
-
-
「トランプ関税国難来る!ー石破首相は伊藤博文の国難突破力を学べ③』★『金子堅太郎(農商相)は伊藤博文の「ルーズベルト大統領工作に同意』★『金子サムライ外交官はその舌先三寸の『英語スピーチ、リベート決戦」で、ホワイトハウスにルーズベルト大統領を訪問し、獅子奮迅の大活躍をした』
日露戦争に勝てる見込みはないーと伊藤 ところが、伊藤公いわく、 「君は成功不成功 …
-
-
渡辺武達(同志社大学社会学部教授)の震災レポート②『風評「加害」の社会構造』
渡辺武達(同志社大学社会学部教授)の震災レポート② 『風評「加害」 …
-
-
日本メルトダウン(996)ー『プーチン大統領12/15来日』●『安倍総理の「歴史に名を残したい!という功名心、前のめり姿勢がロシア側に見透かされている』(江田憲司)★『対露経済協力に前のめりになる安倍首相の突出が目立った。 安倍首相が対露経済協力相を新設し、世耕弘成経済産業相に兼務させたことも異例だ』
日本メルトダウン(996) 北方領土交渉。ロシアの腹芸にだまされた?・・・ …
-
-
『オンライン講座/東京五輪開催での日本人の性格研究』★『 緊急事態宣言下の五輪―開催も地獄、中止も地獄』★『あと40日余の東京五輪はますます視界不良に包まれている』★『 日本人には何が欠けているのか?論理の技術、科学的思考法だ。西欧の近代合理主義と中国文化圏(古代中華思想)を分ける方法論の違いは、中国・日本の教育制度は.ただ記憶力だけを重視している』
前坂 俊之(ジャーナリスト) 6月9日、東京五輪開催、経済対策、新型コロナ問題な …
-
-
『なぜ日中韓150年の戦争・対立は起きたのか』/『原因」の再勉強ー<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した。これは当時の国際法で認められていた国防概念でオーストリアの国家学者・シュタインの「軍事意見書」のコピーであった。
記事再録/日本リーダーパワー史(701) 日中韓150年史の真実(7) 「福沢諭 …
-
-
「Z世代のための生成AIなどはるかに超えた『世界の知の極限値』ーエコロジーの先駆者、南方熊楠の家族関係』★『父・弥兵衛は遺書(財産分与)に「二男熊楠は学問好きなれば、学問で世を過すべし。ただし金銭に無頓着なるものなれば一生富むこと能わじ。』と記していた」
日本天才奇人伝③「日本人の知の極限値」評された南方熊楠の家族関係 & …
-
-
『オンライン/160年前の『ニューヨーク・タイムズ』で読む日本近現代史講座』★『日本についての最初の総括的なレポート<「日本および日本人ー国土、習慣について>(1860(万延元)年6月16日付)
2012/09/10 の記事再 …
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑩』★『世論調査はハリス氏42%、トランプ氏37%で、5%差が拡大』★『民主党副大統領候補にはミネソタ州知事・ティム・ウォルズ氏(60)に決定』★『「ラストベルトでの世論調査でもハリス氏がトランプ氏を僅差で上回った』
8月5日、バイデン大統領の後継候補について、民主党の代議員によるオ …